ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが?   作:名無しのナナシ

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まさかの1ヶ月以上間隔が空くという。


何一つ解決してないのに課題ばかりがどんどん増える

「で、あれはなんなんですか?」

 

 ジム戦を終えるなりテッセンを問い詰める。

 ライボルトが使った技──“らいごうせんが"だったか──あれは明らかにオーバーパワーだ。(ハルカのせいで)ジム戦の難度を上げるよう連絡が回ってるらしいが、それにしたってあんなものを使われたらまともに突破出来る道筋が見えない。

 何しろこちらのエースはほぼ何も出来ずに落とされたし、今回突破出来たのは事前の完璧な試合運びによる貯金と、あとはチルット(フォルテ)の進化という運があったからだ。

 逆に言えば『序盤の流れを完全に握って相手のエースを引きずり出す』事が出来なければ勝ち目は無かったというわけである。要求値が高すぎではなかろうか。

 

「ああ、『閃撃』か。普通に今の段階で使っていい範疇を超えとるよ」

 

「やっぱそうじゃねえか!」

 

 あっけらかんと言うテッセンに思わず叫ぶ。そりゃそうだろうな、あんなん普通に使われたら勝てるか。

 

「……ん? 『閃撃』?」

 

「あの技の通称だよ。本気のテッセンさんが使うライボルトの代名詞でもあるから」

 

 聞き慣れない単語に首を傾げていると、ハルカが横から補足してくれた。なるほど、確かにあれだけ派手なら代名詞にもなる──

 

「──いや待て、本気っつったか今?」

 

「うむ。正真正銘、ワシの切り札じゃよ」

 

「三つ目のジムで本気解禁とか流石におかしいと思いませんかねぇ!?」

 

 道理でやたら強いと思った! 試練としてじゃなく本気のバトルで使う技ならそりゃ壊れ火力にもなるわ! 

 

「そうは言っても、仮にお前さんが負けたとしてもバッジは渡すつもりだったぞい? あれをワシに使()()()()時点でバッジ三つ目としては十分以上に合格じゃ」

 

 喚く俺をどうどうと窘めながらテッセンが言う。ああ、このパターン前にもあったな。ツツジん時と一緒だ。

 

「それに本気って言ってもあの技だけだったし、ジム戦で使うライボルトじゃ技術に体が追いついてないから結構スペック下がってたよ」

 

「マジかよアレまだ上があんの?」

 

 ここでハルカが恐ろしい事を告げてきた。そういやそんな事呟いてた気もするけど、あれ反動ダメージとかじゃなくてそういう意味? 

 

「なんでそんなトンデモ技使ったんすか……」

 

 辟易としながらテッセンに聞く。流石に試練としてはやりすぎだと思う。

 

「なるべくギリギリの勝負にしたかったんじゃよ。そりゃあのまま続ければお前さんが順当に勝ったじゃろうが、それだと得られる経験も少ないだろうとな」

 

 そりゃさっきの試合内容だけを見ればそうだけど、そもそもあそこまで順調に試合を運べたのも事前の負けから学んだ結果である。その上で更に試練を課すというのかこの男は。

 

「しかし『閃撃』まで使ったのに負けるとは思わなんだ。チルットくらいなら押し切れると思ったんじゃが進化されてはなぁ、ワッハッハ!」

 

 などと、俺に頭を擦りつけるチルタリス(フォルテ)を見ながら豪快に笑うテッセン。

 チルタリスに進化した事でフォルテのタイプは『ドラゴン』と『でんき』の複合になった。つまり『でんき』タイプの技を1/4に軽減する。

 ライボルトの“10まんボルト"をあっさりと払い除けたのはこの耐性あっての事であり、更にチルットの時とは比べ物にならない程の攻撃能力を獲得した。

 もちろん他のアタッカーには劣るけど、体力僅かの相手を落とすには十分過ぎる。新技習得も相俟って完全に運が味方したと言えるだろう。

 

「ま、ともあれキンセツジム突破おめでとう。ほれ、ダイナモバッジじゃ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 バッジを受け取り、バッグから取り出したケースの中にそれをしまう。

 これで三つ目。まだまだ先は長い。

 

「で、一つ気になったんじゃが」

 

 そして副賞のわざマシン72(“ボルトチェンジ")を手渡される最中にテッセンの言葉。

 

「お前さん、試合途中で一瞬諦めたじゃろ」

 

「うっ……」

 

 突然核心を突かれて言葉に詰まってしまう。確かに一瞬降参しようと思ったけど、まさかバレてるとは。

 

「……顔に出てました?」

 

「そこまで露骨ではなかったがな」

 

 どうやら表情以外にも、俺の細かい動作から降参の気配を感じ取ったらしい。年の功なのかジムリーダーとしての経験則なのか……多分両方だろう。

 

「無論、一概に降参が悪いとは言わんが──お前さんはもう少し我儘になった方がいいかもしれんのう」

 

「我儘?」

 

「うむ。もっと貪欲になるというか……まあ年寄りの戯言じゃよ。単にワシがハングリーな若者が好きというだけじゃから気にせんでくれ」

 

 言ってテッセンがニッと笑う。

 確かに俺はあまりガツガツしないタイプという自覚はあるし、それが悪いとも思ってないけど……どうしてかテッセンのその言葉が妙に引っ掛かった。

 

 

 * * *

 

 

「なあハルカ」

 

「なに、ユウキくん」

 

 ジムを出て、手持ちの回復の為にポケモンセンターへ行く道中、ハルカに尋ねる。

 

「その……ハルカもやっぱ気付いてたか?」

 

「ん〜、まあね」

 

 もちろんこれは『俺がバトル中に諦めかけた事を察しているか』という問いであり、そしてハルカはあっさりと首肯した。やっぱりある程度の実力者なら勘付くらしい。

 

「いや、でもあれはフォルテを出しても無駄に傷付けるだけだと思ったから、そうなるくらいなら続けるよりも降参した方がいいと思ったからで……」

 

 なんとなくバツが悪くなった俺は、聞かれてもないのに言い訳を並べる。

 そんな俺を見てハルカはきょとんとした表情を浮かべた後、くすくすと笑いだして。

 

「大丈夫だよ、そんな事だろうと思ってたし。ユウキくんは優しいもんね」

 

 ……どうやら見透かされていたらしい。それはそれで気恥ずかしいものがある。

 頬を掻きながら、照れを誤魔化すついでにハルカの見解も聞いてみるとする。

 

「……ハルカも、俺はもう少し我儘になった方がいいと思うか?」

 

 我儘になる。貪欲になる。

 つまり、自分の都合でポケモンたちを動かすべきかという話。

 例えばさっきの状況でいうなら、有利不利を考えずに自分の勝利の為にフォルテを出すべきだったのではという事だ。

 俺はあの時、フォルテが望んだから試合を続行した。つまり自分ではなく、ポケモンの都合を優先したわけだ。

 これがいい事か悪い事かは置いておくとして、少なくともポケモントレーナーとしてはあまりよくない考え方なのではと不安になってきたのだ。

 だからハルカの意見が聞きたい。俺よりもずっと強い先輩のハルカに。

 

「どうだろ。手持ちの子たちの事を最優先に考えられるのは、ユウキくんのいいところでもあるから」

 

 だけど返ってきた答えは肯定でも否定でもなく。ハルカは『そのままでいい』とも『変えた方がいい』とも言わなかった。

 自分で考えろという事だろうか。やんわりとだけど、なんだか突き放されたように感じてしまった。

 ……いや、俺の方が精神的に歳上なのになんで歳下の女の子に頼ろうとしてるんだ。突き放すも何も自立してなきゃダメだろ俺。

 

「ただ、一つ言えるとしたら──」

 

 ひっそりと心にダメージを受けている間にもハルカの言葉は続く。

 正直軽い自己嫌悪で意見を正しく受け止められるか不安になってるけど、それでも先輩からの大事な意見。しっかり受け止めないと──。

 

「──その子たちは、ユウキくんがユウキくんだから一緒にいるんだよ。それは忘れちゃダメだからね」

 

 ──なんて身構えていたけど、ハルカは柔らかい笑みでそんな事を言った。

 てっきり何か厳しい言葉が飛んでくるかもと思ってたから、肩透かしを食らった気分だ。

 ……でも、そうか。こいつらは『今の俺』についてきてるんだよな。それなら無理にやり方を変える必要は無い……のか? 

 うーん、わからなくなってきた。テッセンの言う事も一理あると思うし……。

 

「……やっぱり悩む?」

 

「ん……そりゃ俺よりずっと色々経験してる人たちの言葉だからな。そんなにすぐには割り切れない」

 

「そっか」

 

 そうして会話が一度切られる。

 俺はトレーナーとしてはハルカやジムリーダーどころか、そこらのトレーナーよりもよっぽど未熟だろう。

 今の俺のやり方が正しいのかなんてわからない。『我儘になる』というのが正しいのかもわからない。

 わからないから悩む。悩んで悩んで、それでようやく答えが出せる。

 それまでは悩みを抱えて歩くしかないけど、考える事を放棄するよりはずっといいはずだ。もうしばらくはこの問題と付き合っていくとする。

 

「まあ少し考えてみるさ。それより次の目的地を決めなきゃな──ん?」

 

『──次の任務ってロープウェイで見張りだっけ?』

 

『──そうだ。ホムラ隊長にドヤされる前に急ぐぞ!』

 

 と、ナビのタウンマップを開いて考えていたら、すれ違ったグループからそんな会話が聞こえた。服装こそ一般人に紛れるものだが内容がおかしい。

 このタイミングで見張り、そしてホムラという名前が出た事からおそらくマグマ団の連中だろうか。

 実際、何らかの作戦中に一般人が入ってくるのは避けたいだろうし、むしろ作中で主人公があっさり侵入出来た事の方がおかしい。見張りなり封鎖するなりがあって然るべきだ。

 ……というか、今えんとつ山はアクア団じゃなくてマグマ団が押さえてるのか。やっぱエメラルドのストーリーが混ざってるっぽい。そうなると目的はグラードンだよなぁ……。

 で、その為にホムラはハジツゲに──正確にはソライシ博士のところへ隕石を奪おうと向かってる頃か。これを妨害出来れば、少なくともグラードンの復活は阻止出来るかもしれない──けど……。

 

「……今の俺じゃ無理だよなぁ……」

 

「? 何が?」

 

「いや、なんでもない」

 

 知らず口に出てしまっていたようなので適当に誤魔化すと、ピピピという電子音がハルカの方から聞こえてきた。

 

「あ、ごめん。ちょっと出てくるね」

 

「ん」

 

 どうやら誰かからの電話らしく、ハルカは俺から少し離れてナビを起動して通話し始めた。相手はオダマキ博士だろうか。さておき、その間に今後の行動を整理してみる。

 マグマ団のあの会話があったという事は、近々ソライシ博士の隕石略奪イベントが発生するのだろう。出来ればそれも阻止したいところではあるけど……実は俺には()()()()()()()()()()()()()()()()

 俺の旅の目的は名目上ジムを制覇する事であり、またゲームと違って段差があるから直接フエンに向かえない、という事もないので寄り道する必要が無いのだ。

 ゲーム通りにハルカがソライシ博士に挨拶しに行くというのならそれに便乗する事も出来たけど、俺と二人旅をしてる以上はそういう話も無いだろう。

 こうなると理由探しが難しくなる。つまり隕石の略奪はほぼ止められない確定事項になるわけだ。

 さて、どうしたもんかな……ぶっちゃけ隕石を奪われる事に関しては最終的に取り戻せるだろうからいいんだけど、主人公()が向かわなかった事でイベントに何らかの影響が出るかもしれない。

 いや、影響っていうなら本来博物館で会うはずのアオギリの顔も見てなかったりとか、その他色々出てるから今更ではあるけども。

 

「お待たせ。次行く場所は決まった?」

 

「お、おかえり。いや、まだ悩み中」

 

「そっか。それなら悪いんだけど、ちょっとあたしの用事に付き合ってもらえないかな?」

 

 と、戻ってきたハルカがそんな事を言う。お? これはハジツゲに向かうフラグか? 

 なるほど、さっきの電話がそうだったのか。それなら余計な心配をしなくても済む──。

 

「別にいいぞ。それで、どこに行くんだ?」

 

「フエンタウン」

 

「え? フエン?」

 

 ──なんて思ってたら、思ってもいなかった場所がハルカの口から飛び出してきたので思わず聞き返してしまう。なんでフエン? 

 

「うん。ジムもあるし、ユウキくんの旅の邪魔にはならないと思うんだけど……ダメ?」

 

「い、いや、ダメじゃないけど……」

 

 ハジツゲじゃないのか、と聞きそうになって危うく堪える。そんな事を聞いたらあまりにも不自然すぎる。

 

「よかった! それじゃあポケモンが回復したらすぐに出発しよう。そうすれば夕方には着くはずだから」

 

「……そうだな。行動は早い方がいいか」

 

 明確に連中が動き始めている以上、あまり時間をかけてる余裕は無い。次の方針が決まったのなら早く動くべきだ。

 ソライシ博士の事は気にかかるけど、そっちは自力でなんとかしてもらおう。ゲーム通りなら隕石を奪われるだけ、悪くて拉致くらいならあるかもしれないけど、シナリオにおける致命傷にはならないはず……多分。

 どちらにせよ、今から真っ直ぐハジツゲに向かわないのなら間に合わないだろう。それならそれで出来る事をしていく。それしかない。緊急事態ならソライシ博士の助手からオダマキ博士経由でハルカに連絡がいくだろうし。

 

 ともあれ目指すはフエンタウン。やるべき事は四つ目のジムバッジの獲得。

 後は……本格的に手持ちを鍛えていかないとだな。




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このユウキくんだとハジツゲ行く理由無いよなぁって。ソライシ博士は犠牲になったのだ。
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