ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが?   作:名無しのナナシ

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遅れてマジですみません。シンプルに難産でした。


やけどしそうなホットな戦いを

 当時、自分がまだジムトレーナーであった時の事を思い出す。

 ジムリーダーに挑む前の関門として、三人のジムトレーナーが選ばれた。

 ジムに所属している以上は当然、そこらのトレーナーよりずっと強い人たちだった。普段あたしたちが稽古として行うバトルにおいても勝ち数の方が多い、そんな優秀なトレーナーたちなのだ。

 

 だからこそ、あたしは目の前の光景が信じられなかった。

 

 彼女はたった一匹のポケモン──バシャーモのみで、彼ら全てを打ち倒したのだ。

 あたしを含めて、周りのジムトレーナーたちも信じられないといった面持ちでその勝負を見ていた。

 先代とのバトルも驚愕の内容であり、烈火と称される程凄まじい攻めが特徴の先代の攻撃を、彼女のバシャーモは水流の如くいなしてみせる。

 仮に自分に『あれと同じ事をしろ』と言われてもまず無理だろうと思った。それだけ先代の攻撃は苛烈であり、また彼女のバシャーモの練度(レベル)が非常に高いものなのだという事をありありと感じさせた。

 結果として、彼女は最後までバシャーモ以外を出さずにフエンジムを制してのけた。いくら手持ちが制限された状態だったとはいえ、一つのジムを相手にそんな真似が出来るのは常軌を逸している。

 

 であれば──これが才能というものなのだろう。

 

 凡人の努力を一足飛びに超えていく、周囲から隔絶したバトルの才能。

 自分と比べるのもバカらしくなるような圧倒的な天賦の才。

 

 先輩たちの話によれば、稀にこういう人間は現れるのだそうだ。例えば現チャンピオン(ツワブキダイゴ)がそうだったように。

 そうして口々に言う。『自分たちとはモノが違う』と。

 それを聞いて、確かにそうだと思った。多少腕に自信はあれど、あそこまで突き抜けた才能を持っているわけじゃないのは、他ならぬわたし自身がよくわかっているから。

 

 それでも──それでも、あたしは憧れた。

 あの鮮烈な強さに。美しくも力強いバシャーモの強さに。それを引き出すハルカというトレーナーの強さに。

 そして──『ほのお』ポケモンを愛する身として、あのバシャーモを超えたいと強く思った。

 

 その後しばらくして先代がジムリーダーを辞任宣言をし、何故か後継人としてあたしを選んだ。

 まさか自分が選ばれるなんて夢にも思ってなかったから、何かの間違いじゃないかと何度も聞き直したけど、先代は『お前ならやれるさ』と笑うばかり。その時のあたしが一体どんな気持ちだったか。

 ともあれ、未だにその理由はわからないけど……託されたからには先代に恥じる事のないジムリーダーにならなければならない。

 

 バトルコートに立ち、手に持った相棒の入ったボールに目を落とす。

 今回用意した六つのボールに入っているのは、今の自分が育てられる出最高のメンバーたちだ。

 尤も、今回使えるのは三匹までというルールなので全部を出すわけじゃない。試合の流れで誰を出すかは変わってくるだろう。

 

「いつでも行けますよー!」

 

 声に視線を上げて対面を見れば、バトルコートの向こうで赤いリボンバンダナが特徴の女の子が手を振っている。

 

 ──その可愛らしさからは想像もつかないような、眩しく輝く才能を持った、ホウエンでも屈指の実力を持ったトレーナーがいる。

 

 今回のバトルは正式な試合じゃない。

 勝敗が公式な記録に残るわけじゃないし、その結果が何かを左右する事もない。

 だけど──だからこそ、思いっきりやれる。彼女はそういう場を用意してくれたのだ。

 緊張してないと言えば嘘になる。だけどそれとはまた別の高揚感がわたしの不安を塗り潰してくれる。

 

 大きく息を吸い込んで──一気に吐き出しながら思い切り叫ぶ。

 

「──しゃッらあああああああい!!!」

 

 気合は十分。全力でこの試合に臨む! 

 

「行くよ、コータス(ガッツ)!」

 

バシャーモ(ちゃも)!」

 

「いっ──!?」

 

 ──いきなりエース!? 

 

 まさかの選出に一瞬思考が停止する。こんな最序盤でエースアタッカーが出てくるなんて思いもしてなかった。そしてその一瞬で既にバシャーモはこちらとの距離を半分以下にまで詰めている。

 流石の速度と感服する他無い──が。

 

 “ひでり"

 

 “パワープラント"

 

 ガッツは 石炭を貯めている(せきたんカウンター+10)! 

 

 開幕の動きをほぼ固定してるお陰でガッツの始動も完了してる。

 元より先手を取られるのは大前提。攻撃してくるようならそこに合わせる! 

 

「“ブレイズキック"!」

 

「受け止めて!」

 

 “ほのおのあしわざ"

 

 “ブレイズキック"

 

 “こうらでまもる"

 

 ガッツが甲羅の中に閉じ込もり、その上からバシャーモの強力な脚技が上段から振り下ろすように振るわれ。

 

「シッ──!」

 

 “ひてんげり"

 

 “ほのおのあしわざ"

 

 “ブレイズキック"

 

 そのまま流れるように身体を捻りながら左脚でかかと落とし。更にバシャーモが追撃を加えんとシュートのような体勢に入る。

 

 ──狙うならここ! 

 

「退いて!」

 

「“ふんか"ァ!」

 

「コォォ──ッタスッ!」

 

 “パワープラント"

 

 ガッツの体内で 石炭が燃え盛る(せきたんカウンター-5)! 

 

 “ふんか"

 

 ガッツの甲羅から文字通り噴火の勢いで炎が爆発し、バシャーモを呑み込んでいく。

 タイプ相性で半減ではあるけど、バシャーモ自体はそこまで耐久が高くないし、天候の恩恵と石炭を燃やして得たパワーで結構な痛手になったはず。

 何よりあの至近距離なら一撃も有り得るんだけど──

 

「……ふう、危ない危ない」

 

「──そう上手くはいかないよね……!」

 

 バシャーモの姿は健在。見た感じだとHPは残り半分強ってところだろうか。

 技を出す寸前にハルカちゃんの指示が飛んでたし、あれでギリギリバシャーモの回避が間に合ったんだろう。あのまま攻めてくれれば楽だったんだけどな。

 ともあれ──

 

 “パワープラント"

 

 “だいかさい"

 

 “もえるいわ"

 

 “ステルスロック"

 

 “ひのうみ"

 

 ──場作りも出来たし相手のエースも削れた。始動としては上々だろう。

 とりあえず序盤戦はこちらが有利を取ったと言っていいはず。この有利を大事にしたい。

 

「大丈夫、戦えてる……!」

 

 向こうのエースの猛攻にもガッツは耐えた。それは少なくとも性能面(スペック)なら、あたしの育成したポケモンたちはリーグ優勝者にもちゃんと通用するという事。

 その事実に少し安堵しながら、しかしすぐに次のボールを手に取る。

 

「さあここからだよ、みんな……!」

 

 有利を取れたといってもほんの僅かだ。こんなリードは簡単にひっくり返る。むしろ自分の土俵を作れた今、ようやく五分くらいに捉えた方がいいくらいだろう。

 少なくとも、あたしにとってのハルカちゃんは()()なのだから。

 

 

 * * *

 

 

 圧巻、という他無い。

 強いトレーナー同士のバトルはテレビなんかでもやってるけど、実際に目の前で行われてるのを見るとやっぱり迫力が違う。

 勉強させてもらうつもりで観戦してるけど、果たしてこれは本当に参考になるのだろうか……。

 強いて言うならハルカの判断が早い。鈍足のコータス相手ならあの連続攻撃──“ひてんげり"だったか──を最後まで出し切りそうなものだけど、敢えて二段で止めて回避を間に合わせた。ここら辺の判断力は経験によるものだろう。

 

 後は……どっちも火力おかしいな? 

 

 ナビを通して見るとポケモンの残りHPがざっくりわかるんだけど、今の段階でちゃもが残り五割程度、コータスが七割といったところ。

 ……なんだけど、実はコータスの方は何らかの効果で体力を回復しているのが見えた。その時点でのHPは確か約五割。

 つまり、連打してたとはいえ防御を硬めてる上に半減のはずの“ブレイズキック"二発でコータスのHPを半分くらい削った、という事になる。

 火力は裏特性や技能、あるいは指令で盛る事も出来るけど、流石に純粋な火力だけでそこまで削れるとは思えない。となると……あれか、タイプ追加系のやつか。

 ゲームでいう“フライングプレス"に近い感じ。ただしそれとは違って相性判定は有利な方が優先される。*1

 バシャーモって事を考えるなら追加タイプは『かくとう』かな。つまり事実上等倍で殴ってた事になる。三発目入れれてたらワンチャンコータス落とせてたんじゃないだろうか。……まあそれをやったらハルカもちゃもを失ってたんだろうけど。

 

 コータスもコータスでなんでダメージ受けてるのに“ふんか"の威力下がってないんだ。いや、むしろ普通のものより火力上がってるようにすら見えた。

 これも多分裏特性か何かなんだろうけど、常に最大威力の“ふんか"はダメだろ。コータス別に火力低くないんだぞ。

 

 ……あれ? コータスにそれが出来るならグラカイも……? 

 

 ……考えないようにしよう。

 さておき、バ火力に加えてステロと“ひのうみ"の形成。更に素の特性で『はれ』を展開。一ターンに詰め込み過ぎだろ。起点型の理想形みたいな能力してやがる。

 状況を見るなら色々撒かれたハルカが微不利か。多分開幕から奇襲をかけて相手を一匹落とす算段だったんだろうけど、コータスは流石の物理耐久でしっかり耐え抜いた上で起点役として完璧な仕事をこなした。

 逆にハルカはエースが半分近く削られてしまった状態。正直渋いと言わざるを得ない。

 ゲームでも初手から大火力を叩き込んでダメージレースを優位に進める戦法はあったし間違いなく強いんだけど、それを凌がれてしまうと途端に脆くなってしまう諸刃の剣でもある。

 さて、ここからハルカはどう切り返すのやら……。

 

「戻ってちゃも! アブソル(そるる)!」

 

「お疲れガッツ! 行ってウインディ(ヒート)!」

 

 ここでお互いにポケモンチェンジ。ハルカ視点からは一度仕切り直しで、アスナ視点からは仕事を終えた起点役を残して積まれるのを嫌った、とかだろうか。

 

 “いかく"

 

 “いあつかん"

 

「──ウォォォォン!!」

 

 アスナのウインディが威風堂々とフィールドに立ち、ジム全体を震わせるような雄叫びを上げる。

 直接対峙してるわけでもないのにこの重圧。同じ“いかく"でも前に会ったアクア団のグラエナのそれとはまるで違う。そこにいるだけで周囲を萎縮させるような威圧感を放っていた。

 対してハルカが繰り出したのはアブソル。“ステルスロック"に被弾しながらも悠然と立つその姿は、ウインディとはまた別の存在感がある。例えるなら動と静って感じだ。

 これでハルカの手持ちはバシャーモ(ちゃも)チルタリス(ちるる)に続いて三体目が判明した。見るのは初めてだけど……──

 

「──角が折れてる……?」

 

 アブソルという種族の特徴は、なんといっても弓なりに反った一本の角だろう。

 これは見た目通り鋭い切れ味を持っている他、災い等の危険を感知する為のセンサーでもあり、アブソルにとって無くてはならないものだ。

 そんな重要な代物であるはずの角が、ハルカのアブソルは何故か半ばから折れてしまっていた。

 小さい、とかではなく折れている。あれじゃ本来の機能を果たすのは難しいだろう。少なくとも攻撃手段を一つ失くしてるのは確かだ。

 

「特殊型……か……?」

 

 そんなアブソルの風貌を見て考える。

 種族値で考えるならアブソルの適性は圧倒的に物理攻撃だが、特殊攻撃もかなり豊富に覚えるので特殊方面もやれなくはない。

 けどそれはメガシンカすればの話。通常状態でやるのは正直力不足と言える。

 それに今のアブソルは“いかく"で『こうげき』も下げられている。このままだと耐久もそこそこあるウインディ相手は厳しそうに見えるけど……。

 

「接近!」

 

「寄らせるな!」

 

「ガウッ!」

 

 “おにび"

 

 そんな定石なんて関係無いとばかりにハルカの指示でアブソルが動く。

 驚くべきはそのしなやかさ。高速で移動するアブソルからは足音が殆どしない。極限まで無駄な動きを削ったその動きは美しさすら感じさせる。

 迎撃の“おにび"も最低限の動きで躱し、そして彼我の距離を詰め切った。

 

「“つじぎり"!」

 

「ソルッ!」

 

 “ほろびのやいば"

 

 “つじぎり"

 

 アブソルの角が閃き、ウインディの胸に三本のラインを残す。

 誰が見ても完璧に決まった。だけど──

 

「ヒート!」

 

「ガルルッ!」

 

 “かえんほうしゃ"

 

 まるでダメージを感じさせない動きでウインディが振り向き“かえんほうしゃ"を薙ぎ払うように放つ。

 それすら軽やかなステップで躱すアブソルだけど、やっぱり火力が足りない。折れた角じゃどうしても斬撃が浅くなって致命傷には至らないんだ。せめて爪を使えば……! 

 

「そるる!」

 

 ハルカがアブソルの名を呼ぶと同時、切り返す動きで再びウインディに向かっていく。動きは素晴らしいけど、どれだけやってもそれじゃ届かないだろ──!? 

 

「防御はいい! 捕まえて!」

 

 向こうもアブソルの火力の低さに気付いたらしく、最早避ける素振りも見せない。肉を切らせて骨を断つつもりだ。

 アブソルも華奢な見た目通り耐久のないポケモンだ。もし捕まってしまえば戦闘不能は免れないだろう。いくら速くても捕獲に専念した相手から逃げられる可能性は高くない……! 

 

「ハルカ──!」

 

 思わず観客席から身を乗り出して叫ぶ。

 そうしてる間にもアブソルとウインディの距離はどんどんと縮まっていき──

 

「──()()()()()()()()()()()()──」

 

「──え──?」

 

 “つじぎり"

 

 “エッジエンド"

 

 急所に当たった!

 

 すれ違いざまにアブソルが角を一閃──したかと思えば、あんなにも強烈だったウインディの威圧感が霧散し、まるで糸が切れたかのように上体をぐらりと揺らして地に伏した。

 

「……何……が……?」

 

 信じられないといった様子でアスナがうわ言のように呟く。俺も全く同じ気持ちだ。一体何が起こった……?

 

「ダメですよ、アスナさん」

 

 ハルカの声がする。いつもと変わらず、なんてことないような調子で。

 

「──そんな無防備を晒したら、この子が全部狩り取りますよ?」

 

 そうしてハルカが人差し指を立てて片目を瞑り、「なんてね」なんて言いながらはにかむようにたははと笑う。

 ハルカのやりそうな仕草だ。何も不思議はない。可愛らしいとさえ言えるだろう。

 だけど……今、この状況を作ったハルカが、俺にはどうしても『可愛い』だなんて思えなかった。

*1
一見ご都合主義的な処理に感じるが、ここら辺はポケモンが技を出す時のエネルギー量が関係している。要は『技のタイプはどうやって決められるのか』という話。技を使う時に本来のものとは別のタイプのエネルギーも同時に放出する事で、別タイプを付与する技術である。そしてそれは片方を強める事でタイプ相性を任意に変動させる事も出来る。




評価や感想、批評等あればよろしくお願いしマース。
ここすき機能なんかもご利用くださいませ。
あとツイッター始めてみたので興味があるなら是非。

今作初めて他者視点やってみたけど、やるなら一話丸々その人の視点が一番いいんだろうなと思う今日この頃。
あと解説はバトル終わったらまとめてやります。効果は想像してみてください。みんなユウキくん視点。
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