ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが?   作:名無しのナナシ

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いざ行かん、えんとつ山の頂上へ

 フエンジムにてジムトレーナーを突破し、ジムリーダー(アスナ)とのバトルも終盤に差し掛かったところ。

 

「コータス、“オーバーヒート"!」

 

「避けろぺラップ(コード)!」

 

 “ほのおのこころえ"

 

 “もえるけいてき"

 

 “オーバーヒート"

 

 アスナのラストであるコータスの甲羅から蒸気が噴き出し業火が放たれ、危ういところでペラップ(チョウチョウ)改めコード*1が回避する。

 あのコータスはどうやら固定砲台として育成されているようで、今のような大火力技を『はれ』下で連発してくるのだ。

 しかもさっきから“オーバーヒート"を連発してるのに『とくこう』が下がった様子も無い。デメリット付きだから許されてる高火力をデメリット無しで撃つんじゃねえ。

 さて、なんとか近付ければ勝機も見えるんだけど……。

 

「いけそうか?」

 

「ヤッテミマス」

 

 コードからの返答。少し緊張しているようだが尻込みしてるわけじゃなさそうだ。

 よし、それならやってみるか。ここで一気に勝負をかける! 

 

「行け!」

 

「ペラッ!」

 

 指示と同時にコードが真正面からコータスへと飛んでいく。

 飛び抜けて速いわけじゃないが、しかし決して遅くもない飛翔は数秒程でコータスへと到達するだろう。

 だけど。

 

「へえ、突っ込んでくるんだ。でもこれが避けられる!?」

 

「コォォッ!」

 

 コータスが口元に炎を蓄える。このままじゃコードが到達するより先に技が放たれるのが目に見えている。

 コードは賢いけどバトルが得意なわけじゃない。さっきまでだって離れた距離でもあの“オーバーヒート"を避けるのに苦労していたのだ。それが今まさに距離が縮まっている状態で避けられるかと言うと正直NOと言わざるを得ない。

 

 だから、その分をクレッフィ(クレフ)がカバーする。

 

「フィッ!」

 

 “ほのおのこころえ"

 

 “もえるけいてき"

 

 “オーバーヒート"

 

 “かぎえらび"

 

 “ひかりのかべ"

 

 爆炎がコータスの口から発せられ、コードを呑み込まんと殺到する。

 しかしその軌道はコードに当たる手前で逸れ、翼を僅かに掠めるに留まった。

 

「──っ! 壁で……っ!」

 

 通常“ひかりのかべ"は自分の周囲を覆うように展開する。そうする事で相手の特殊攻撃がどこから来ても威力を減衰させられるようにするのだ。

 だけどそれだけじゃコードの耐久だとあの“オーバーヒート"を耐えられるかわからない。というかあの火力だと下手したら壁ごと焼却される。

 だからクレフにはただ“ひかりのかべ"を貼らせるんじゃなく、()()()()()()()()()()()()()するように指示した。

 本来の形とは違い、文字通りの壁として使う事で力の流れを逸らす。幼いながらもぶっつけ本番でそれをやってみせたのは、偏にクレフの才能あってこそだろう。

 案の定というか、力を逸らすように貼ったはずの“ひかりのかべ"が二秒と保たずに燃え散らされた。呆れたバ火力だ。真正面から受け止めさせなくてよかった。

 一瞬コードの体勢が崩れ、それでもすぐに持ち直してコータスの目の前まで辿り着いた。ここで詰め切る。

 

「くっ、“ふんえ"──」

 

「“ばくおんぱ"!」

 

「ぺラップ──ッ!!」

 

 “ばくおんぱ"

 

「コォッ!?」

 

 相手が行動する前にゼロ距離からの爆音攻撃。

 いくらポケモンが頑丈といっても、あんな爆音を耳元で聞かされれば三半規管に異常をきたすはずだ。しばらくはバランス感覚を失い、トレーナー(アスナ)の指示も聞こえなくなるだろう。

 前後不覚の状態でトレーナーの指示も通らないとなれば、勝敗は決したも同然である。

 

「そのまま沈めろ!」

 

「ペラ──ッ!!」

 

「コ……コォォォ──ッ!?」

 

 “ばくおんぱ"

 

 二度目の“ばくおんぱ"がコータスに浴びせられる。

 ろくな防御姿勢も取れないままその身に音波を浴び続け──そしてついにダウンした。

 

「……うん、あたしの負けかな。君の勝ちだよ」

 

「よっしゃ!」

 

 グッと拳を握る。これでヒートバッジゲットだ! 

 

「ツカレマシタ」

 

「フィフィー!」

 

「おう、お疲れ。クレフもよく頑張ってくれたな。……で、どうだった?」

 

「ワルクハナイデスガ、ドウモシックリキマセンデシタ」

 

「そうか。まあそんな気はしてたよ」

 

 パタパタと飛んできたコードとクレフを労りながらコードに問うも、予想してた通りの答えが返ってきた。

 一応と思って今回は経験を積ませる意味でも攻撃役も兼任させてみたけど、やっぱりコードは自分で相手を倒すより味方の援護に回る方が得意なタイプのようだ。フィニッシャーになって尚その感想ならこいつは根っからのサポート気質と言える。

 そもそも野生で生きるより人の街(キンセツシティ)で生きる事を選んでたくらいだし、元来闘争心が強い方じゃないんだろう。

 かといって戦う意思が無いわけじゃない。生態的に明らかに戦いに向いてるとは言えないラッキーですらバトルに出るとそれなりに戦う意思を見せるんだから、ポケモンと闘争は切っても切れない関係にあるというのがよくわかる。

 もちろん何事にも例外はあるけど。

 

「はい、じゃあこれ、ヒートバッジとわざマシン50(“オーバーヒート")。あたしお気に入りの技が入ってるから、もし『ほのお』タイプのポケモンを捕まえたら覚えさせるといいよ」

 

「ありがとうございます」

 

 バッジとわざマシンを受け取ってバッグにしまう。

 今のところは俺の手持ちでオバヒを上手く活用出来るポケモンはいないけど、何か捕まえたら有難く使わせてもらおう。

 ……それはそうと、なんというか……。

 

「にしてもユウキくん強いね。バッジ三個持ちって聞いたからそれ相応のポケモンをぶつけたのにあっさり勝っちゃうなんて」

 

 アスナが感心したように言う。

 そう言ってくれるのは有難いんだけど、俺はバトル中ずっと違和感があった。

 

「それなんですけど、アスナさん手加減しました?」

 

「へ?」

 

 さっきのバトル、確かに強い事には強かったけど、なんというか今までのジムに比べると正直かなり簡単だった。

 イメージ的には適正以上にレベルを上げてしまいジム戦がヌルゲー化した時の心境に近い。

 

「まさか! ちゃんと本気でやったよ!」

 

「ですよね……うーん?」

 

 言ってはみたものの、アスナの性格的に緊張で空回りはあっても手を抜くなんて事はしないだろう。

 でもさっきのバトルじゃ緊張してるようには見えなかったし……。

 

「ホントにバッジ三個持ち相手を想定してたからじゃない?」

 

「ハルカ?」

 

 いつの間にか近くに来ていたハルカがそんな事を言う。どういう事だ? 

 

「だってほら、ユウキくんのジム戦って本来よりレベルを上げられてたでしょ?」

 

「……ああ、そういえば」

 

 その言葉で得心がいった。

 どっかの誰かさんがふざけた事を抜かしたせいでハードモードやらされてるんだったな。

 

「え? 何? どういう事?」

 

「実は──」

 

 一人話に着いて来れてないアスナにかくかくシキジカと事情を説明する。

 

「……そういえばそんな話もあったような……正直それどころじゃなかったからすっかり忘れてたよ」

 

「俺からすれば有難い事この上ないですけどね」

 

 なんの事はない。アスナは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だけの話だ。要はここだけノーマルモードだったのである。

 色々事情が重なってた時期にその話があったんだろうな。そりゃチャレンジャー一人の事なんて頭から抜け落ちてても仕方ないと思う。

 

「えっと……じゃあどうする? やり直す?」

 

「やり直します!」

 

「やらんわバカ野郎」

 

 何勝手に返事してんだ。勝ったんだからいいだろ。

 

「……別にバッジ取得に問題があったわけじゃないんですよね?」

 

「それは、うん。個人的には五つ持ちだとしても納得するくらいだよ」

 

「だとよ」

 

「え〜……」

 

「えーじゃない」

 

 だいたいバッジ数というのはそのトレーナーがどれくらい強いかを表す指標の一つだ。他にも一部の技の使用許可を貰えるとかもあるけどそれはさておき。

 ジム一つ当たりの難易度を上げても貰えるバッジが増えたり質が上がったりはしない。だからそれをやるのは挑戦者の自己満足でしかなく、特にメリットがあるわけじゃないのだ。

 多少強くなるのが早くなったりはするかもしれないけどな。

 

「……まあいっか。いざとなったらあたしが……」

 

 なんか不穏な事呟いてるが聞かなかった事にしよう。

 

「とにかくおめでとう。それじゃ明日は遅れないようにしてね」

 

「あ、はい。ありがとうございました」

 

 アスナにお礼を言ってジムを出る。

 明日は午前十時にジム前集合だ。どうなるかはわからないけど出来る準備はしっかりしておかないとな。

 

 

 * * *

 

 

 次の日の朝。

 時間通りに集まった俺たちは、えんとつ山の頂上に向かって空を飛んで行く事になった……のだが。

 

「さあユウキくん! あたしとアスナさん、どっちを選ぶの!?」

 

 俺は究極の選択を迫られていた。……なんでこうなるんだ。

 

 いや、別に修羅場とかでは全く無い。単にどっちのポケモンで頂上に向かうかってだけの話だ。

 というのも、空を飛べるポケモンなら俺も持ってるけど残念な事に資格*2を持っていないので、自由に“そらをとぶ"事が出来ないのだ。

 ならハルカかアスナのどちらかに乗せてもらおうという流れになる。だがそうなると問題になるのが体勢の関係上、身体を密着させなければならないという事だ。これは健全な青少年としては非常にまずい。

 しかも何がタチ悪いって、これで俺がどっちか選んだらそっちとくっつきたい変態みたいになりそうなところだよ。

 

「ほらほら、素直になりなよー♪」

 

「怒るぞ」

 

 ハルカもわかっててやってるのか顔が若干ニヤついている。ふざけんなよお前。

 これどっちを選べば傷が浅くて済むかな……。

 

「あはは、仲良いね。だったらあたしはその間には入っていけなさそうだし、二人で行くのがいいんじゃないかな」

 

 なんて考えていると困っている俺を見かねたのか、アスナがそんな提案をしてくれた。

 ……実際それが一番無難か。幸いと言っていいのか、普段から身体的接触も多いしな。今更どうこう言う事もあるまい。

 

「んじゃそうするか。乗せてもらってもいいか?」

 

「んふふー、もちろん!」

 

 謎に満足気なハルカがチルタリス(ちるる)を出し、慣れた動きで跨った。

 

「ほら、ユウキくんも」

 

「お、おう」

 

 促されるままに俺も後ろに回ってちるるの背に乗る──が、チルタリスは意外と体格が小さいので結構詰めないといけない。

 つまり、わかっていた事ではあるがハルカとかなり密着する形になるわけで。

 

「……い、嫌だったら言ってくれよ?」

 

「そんなわけないよー。それよりほら、ちゃんと掴まって」

 

「わかった」

 

 言われて、はたと気付く。

 掴まる……掴まる? どこに? 

 肩……は上下に揺れた時に手が離れそうで怖い。ならちるるの身体にしがみつけば……いや、ハルカと密着する体勢じゃしっかり掴めない。じゃあ他に掴まれそうなところは? 

 視線がそこに集まる。口が乾く。無意識に固唾を飲み込んだ。

 だって、そこしかないのだ。ハルカだってきっとその事を言ってるんだろうし。だからこれはやましい気持ちでするわけじゃない。

 なんて、誰にしてるのかわからない言い訳を頭の中で並べながら、意を決してその場所──ハルカの細い腰に腕を回すと。

 

「ひゃあうっ!?」

 

「おわぁっ!?」

 

 ハルカが短い悲鳴を上げた。

 予想してなかった反応に反射的に腕を解いてハルカから離れようとし──体勢を崩してそのまま後ろに転げ落ちる。

 なんで!? 俺間違ってた!? いや、でもとにかく謝らなければ! 

 

「ごごごごめんハルカ! でも他に掴まれそうな場所なんて──!」

 

「ちっ、違うの! ちょっとくすぐったくて声が出ちゃっただけで……っていうか大丈夫!?」

 

「……青春だねー」

 

 アスナさんのそんな呟きは、騒ぎ声に掻き消されてよく聞こえなかった。

 

 

 * * *

 

 

 なんやかんやありながらも大空をフライト。

 二人乗りに不安はあったけど、どうやら“そらをとぶ"という技は風やらなんやらの影響を軽減する効果もあるらしく、多少風に吹かれた程度じゃ安定感は崩れなかった。

 何より風を切って空を飛ぶ感覚はとても心地よく、ホウエンの大地を見下ろしながら進む様はまるで自分が鳥ポケモンになったような気分だった。

 船旅と比べると揺れも少なく、十数分程度のフライトだったとはいえ山頂付近に到着しても酔いを感じる事はなかった。ここら辺はハルカやちるるの技量によるものなのかもしれないが、とにかく安全運転万歳。

 

 さて、マツブサが待っているのはここから少し歩いた火口付近らしい。特に疲れも無いのでそのままアスナを先頭に目的地に向かう事にした。

 そうしてしばらく歩いていると、角付きフードの赤い制服の下にこれまた赤い長袖のアンダースーツと、ふくらはぎ近くまであるブーツを着用した人間が男女問わずに幾人か見える。

 あんな特徴的な服装を忘れるわけがない。間違いなくマグマ団だ。

 思わず身構えてしまうが、すれ違うマグマ団たちは俺たちを見ても特に何をするわけでもなく何かの作業に戻っていく。そしてアスナもマグマ団に対して思うところは無いようだ。

 ゲームでの所業を知っているだけに、ここのギャップに思わず尋ねてしまう。

 

「あの……あれがマグマ団ですよね?」

 

「そうだよ。それがどうかしたの?」

 

「いや……ほっといていいのかなー、と」

 

「サボってるようには見えないし、仕事もしてると思うからいいんじゃない? それより早くマツブサさんに会わないとね」

 

 気にするような事じゃない、とアスナ。

 どうやらマグマ団はあの制服を着てても敵と認識されてないらしい。少なくともこの時点では本当に一般企業として扱われているようだ。

 だったら本来のユウキはどうやってこの事件に介入したんだろうか……考えられるとすればやっぱり隕石盗難事件がきっかけなんだろうけど、それはこの世界でも起こるものなのか。一般企業に扮しているなら強引な手段は選ばないような気がするんだけど……。

 大まかにはゲームのシナリオ通りに進んでるはずだ。だけどゲームとリアルの違いってだけじゃなく根本的に何かがズレている気がする。

 そうだとするなら俺の知識がどこまで役に立つのか。どこかで致命的なズレが発生するんじゃないか。そうなった時、俺は対処出来るんだろうか。

 

 ……いいや。

 

 今それを考えたところで何も変わらない。それよりはまず、すぐ先で起こる事にどう対処するか考えた方がよっぽど建設的だ。

 辿り着いた先、一人の男が火口を向いて立っていた。

 

「お待たせしました、マツブサさん」

 

 アスナに名前を呼ばれ、その男がこちらに振り向く。

 さっき出会った連中と似たような赤い服装に上着を羽織り、独特な形状の眼鏡を掛けた研究者然とした出で立ちの七三分けの中年男性。

 

「……来たか、ジムリーダーよ。そして貴様たちが(くだん)の子どもだな」

 

 ポケモンの理想郷を追い求めるアクア団とは対極に、人類の発展こそを至上に考えるマグマ団のリーダー──マツブサが眼鏡の奥に光る冷たい双眸で俺たちを見つめていた。

 

*1
名前の由来はchord(コード)(和音の意)。ちなみにクレッフィの方はclef(クレフ)(音部記号の意)。

*2
地方により規定は様々だが、ホウエンの場合はフェザーバッジを含むバッジ四つ以上所持する事が条件。もしくは指定の試験をクリアする事でも解禁される。




たまに裏設定や進捗状態とかを呟くツイッターをやってるので興味があるなら是非。
評価感想もあると喜びます。
ここすき機能なんかもご利用くださいませ。誤字報告もとても感謝してます。


アスナ
【指令】
【ほのおのこころえ】
味方が使う『ほのお』タイプの技の威力が1.2倍になる。

【フルバースト】(手加減版)
威力120かつ残りPPが5以上の技を使う時、その技の残りPPを全て消費して威力を2倍にする。この効果は一体に一度までしか使えず、使ったポケモンは最大HPの1/3を失う。
使用場面はカット。

コータス(ジム戦用の別個体)
【裏特性】
【もえるけいてき】
場に出たターン中に自分の『とくこう』が下がらない。この効果は『ほのお』技を使う度に1ターン延長される。

【技能】
【しょうきゃく】
威力120以上の『ほのお』技を使った時、相手の“リフレクター"や“ひかりのかべ"、“オーロラベール"を貫通して破壊する。

【さいねん】
技のPPが切れた時、そのバトル中一度だけその技のPPを全回復する。

ちなみに他に使ったのはマグカルゴとバクーダだけど割愛。


ペラップ(コード)
【裏特性】
【かぎえらび】
持ち物が【クレッフィ】の時、クレッフィの覚えている技を自分の技として使う。

書いたの結構前なので再掲。ようやく名前を貰えた。


Q.テッセンさんよりヌルくない?
A.経験の差。あとあのジジイは途中で難易度を+1.5段階くらい上げてた。壁貫通無限オバヒ編は普通に脅威です。
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