ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが?   作:名無しのナナシ

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仕様かバグかわからんが使えるものは使っていく方向で

 なんやかんやありながらもトウカシティに到着した昼下がり。

 早朝の時と違って道中にはトレーナーがいたからバトルしてみたんだけど、まあそこまで手強くはなかった。

 ハルカの事さえ除けば今のところはだいたいゲーム準拠って感じで俺の知識もまだ通用する。賞金巻き上げる文化も存在してた。

 ジェネレーションどころかワールドギャップだわ。カツアゲとどう違うのか俺にはわからない。

 それは置いといてバトルの方だけど、強いて言うならターン制バトルなわけがないからリアルタイムで状況が変動し、それに応じて指示を出す必要があるって事くらい。

 もちろんこれから慣れていく必要はあるけど、まあ序盤のうちはそこまで困らないだろう。キモリ(カイン)もちゃんと言う事聞いてくれるし。

 ……さらっと流したけどマジでハルカが圧倒的におかしいんだよな。

 別に全部がゲーム準拠で起こるとは思ってないけど、ハルカだけはなんかもうそういう話じゃない気がする。バグだろコイツ。

 これからの展開を憂いながら盛大に溜め息を吐く。

 

「あれ、もしかして連戦で疲れたの?」

 

「ウンソウダヨ」

 

「そっか。でもユウキくん才能あるよ! 指示の出し方とかも落ち着いてて的確だし、流石はセンリさんの子どもって感じ!」

 

「そりゃどうも」

 

 親父に直接バトル習った事はないけどな。

 それに今のところのバトルって結局『避けろ』と『当てろ』でしかないし、ほぼポケモンそのものの能力に依存してる。

 だから俺の介在する余地はそんなに無い。そういうのが試されるのはジム戦とかからだと思う。

 そんな事を考えながら親父のいるトウカジムへと足を運ぶ。

 

「親父ー」

 

「おお、来たかユウキ──と、ハルカちゃんもいたのか」

 

「こんにちは、センリさん!」

 

 溌剌と親父に挨拶するハルカ。

 

「やっぱり知り合いなのか」

 

「そりゃあな。ハルカちゃんとは仲良くしてるか?」

 

「もちろんです! ねーユウキくん!」

 

 親父の質問に答えたのは俺ではなくハルカだった。

 仲の良さをアピールするかのように腕を絡ませてくる。

 と、ここで天啓。

 親父はハルカの親父と違って都会の常識持ちだ。そんな人が年頃の男女がベタベタとくっついているのを見たらどう思うか。不純異性交友を疑うに決まっている。

 その場合注意を受けるのは俺になるだろうけど、この際それは許容しよう。

 さあ親父よ、この明らかに行き過ぎなスキンシップをしてくる少女に男がどういう生き物かを教えてやるのだ! 

 

「うむ、これからも仲良くしてやってくれ。友だちは大切にな」

 

 親父ィィィィィィ!? 

 どうして!? あなたは良識を持った大人のはず! 

 

「親父! もっとこう……他に無いのか!? 女の子に無闇に近付く息子に拳骨とかさあ!」

 

「近付いてきたのはハルカちゃんからだろう? 何故お前が拳骨を受けねばならん?」

 

 ド正論過ぎる。ここは理不尽に俺が怒られる場面のはずなのに。

 

「ごもっとも……! いやでも年頃の男女のスキンシップにしては些かやり過ぎだとは思いませんか!?」

 

「思わなくはないが……同年代の友だちが出来て嬉しいんだろう。お前が自制すれば何も問題は無い」

 

 そりゃミシロには俺くらいの子どもとかいなさそうだったけども! 

 

「自制って……! やっぱわかってて言ってるよな親父!? そうだよ精神の毒なんだよ! 息子が性犯罪者になってもいいのか!? 可愛い女の子にこんな過剰なスキンシップされたら身が持たないんだよ!」

 

「可愛いだなんて……そんなふうに思ってくれてたなんて嬉しいな♪」

 

「ちょっとハルカさん黙っててくれませんかねぇ!?」

 

「自覚があるなら抑えも効くだろう。分別のある男に育ってくれて父さんは嬉しいぞ」

 

「だからその分別が怪しくなるって言っとるんじゃああああああ!!」

 

 なんだこの空間! 敵しかいねぇ! 

 

「あ、あの〜……」

 

 ブチ切れていっそここで大暴れしてやろうかと思った直後に声がした。そちらに振り向けば病弱そうな少年が立っている。

 この場面でこの容姿……って事は──。

 

「ん? 確か君は……ミツルくんだったかな?」

 

「はい。今日はお願いがあって来ました」

 

 やっぱりミツルくんか。

 彼は多分RSE(リメイク前)ORAS(リメイク後)で一番評価が変わった子だ。

 かつては純粋な少年として登場し、やがて主人公の前にライバルとして立ち塞がるという至極真っ当なキャラだったが、何故かORASでポケモン廃人みたいな設定が追加された。

 いや別にそれが悪いとかじゃないよ? 強くなりたいって意思がそういうふうに描写されたってだけの話で、善悪がどうのというのはお門違いだ。

 ……いやまあ、確かにちょっとやり過ぎかなーとは思ったけどさ。

 悪ふざけというか強烈な風刺というか……まあ条件的にプレイヤーが廃人でなければミツルくんも廃人になる事はまず無いし、ライバルとしてはある意味正しい在り方だろう。

 それはともかく、ミツルくんのお願いだ。

 これもゲーム通りシダケタウンに引っ越すから寂しくならないようにポケモン捕まえたいです、ってやつだった。メタ的な事言えば捕獲チュートリアルだな。

 その後? 普通に上手くいってミツルくんはラルトス捕獲したよ。

 あの場所ゲームだとラルトス出にくいのにな。一発で引き当てるのは運命としか思えない。見た目も似てるし。

 それでジムに戻ってポケモン返してミツルくんバイバイって感じの流れ。

 

「うむ、上手くいったようで良かった。元気になってくれればいいのだが」

 

 ミツルくんを見送りながら親父が言う。

 

「大丈夫だろ。案外めちゃくちゃ強いトレーナーになるかもよ」

 

「はは、そうだと俺としても喜ばしい。是非挑戦しに来てほしいものだな」

 

 大丈夫だ。原作通りならアンタ含めてジムリーダー全員ちゃんとボコボコにされるから。

 成長速度だけなら歴代主人公勢よりも早いんじゃね? 

 

「それで、お前はジムに挑戦するのか?」

 

「ん、そのつもり。親父のとこから挑戦してもいいんだけど」

 

 ゲームでなら普通にレベル差で絶対に勝ち目がない挑戦だがこの世界だとジム巡りの順番というのは自由であり、挑戦者のバッジ数に応じて戦力を調節してくれる。

 だからバッジゼロ個の俺でも勝ち目は普通にあるんだけども。

 

「いや、俺は強くなったお前と戦いたい」

 

「職権乱用だろソレ」

 

 まあ予想出来てた答えだ。ゲーム内でも突っぱねられるし。

 挑戦者を選り好みするってのはジムリーダーとしてどうなのかと思わなくもないが、ここら辺どうにかなるくらいには信用あるんだろうなぁ。

 

「何、バッジを集めて来ればちゃんと相手をしてやるさ。出来れば全力で戦いたいから七つ集めてから来てくれ」

 

「ふざけんな四つで来るわ」

 

 ケッキング──いや、シュッキング(『なまけ』無効)となんか戦えるか。

 四つもあれば中盤戦だし断られはしないだろう。

 

「やれやれ、我儘だな」

 

「親父、鏡って知ってるか?」

 

「ハルカちゃんは全力の俺を打倒したというのに」

 

「……………………は?」

 

 親父の言葉に固まる。ちょっと俺の耳が悪くなったのかもしれない。

 

「悪い、聞こえなかったからもう一回言ってくれ」

 

「ハルカちゃんは全力の俺を倒したぞ」

 

「マジでッ!?」

 

 ぐるんッ! と勢いよく首をハルカに向ける。

 親父のバトルビデオ見た事あるけどめちゃくちゃやってたぞ!? あれ見て頂点目指すのやめたんだぞ俺!? 

 

「まあ、一年くらいかかっちゃったけどね」

 

 えへへとはにかむハルカ。マジかよ……。

 

「あれはいいバトルだった。是非また手合わせ願いたい」

 

「また機会があればですね。今はユウキくんの旅を優先したいですし」

 

「うむ。ではそれまで精進するとしよう」

 

 そんな親父とハルカの会話。

 えっ? って事は何? まさかとは思うけど──。

 

「ハルカさん、もしかしてバッジ八つ持ちだったりします……?」

 

「そうだよー。大変だったけどねー」

 

 そうして差し出されたバッジケースには燦然と輝く八つのジムバッジ。

 もうこいつが主人公だろ。なんで原作開始時点でコンプリートしてんだバランスブレイカーも大概にしろよ。

 ってか最低でも十一歳でバッジコンプリートしたって事? それ確かレッドさんたちと並ぶ最年少記録じゃなかったっけ?

 

「お前バッジコンプしてる癖に『か弱いから守って』とかほざいたの?」

 

「やだなー、半分冗談だって言ったでしょ?」

 

「だから半分本気なんじゃねえか」

 

 どの口であんなセリフを吐いたんだ。この世界でもトップレベルの人間が経験ゼロの初心者に守ってもらおうとするな。

 

「……じゃあアレか。リーグにも挑戦したわけか」

 

「そうだね。まだチャンピオンはダイゴさんのままだけど」

 

 ダイゴさん強かったなーと呑気にハルカが言う。

 つまりダイゴはまだ健在、と。最低でもこのハルカよりも強いって事か……。

 いやでも別にチャンピオンになれなくてもマグマ団とアクア団さえ潰せれば、そこまで高い目標を掲げなくてもいいのか。

 なんなら適当に理由付けてハルカに潰してもらえばいいんじゃね? 

 そう考えるとちょっと気が楽になってきた。

 今までは俺が何とかしないとって気持ちだったけど、ハルカがこれだけ強いなら早期に連中ボコすのも難しくないだろう。

 それならせっかくだし自分がこの世界でどこまで行けるか試してみたい。

 頂点は無理でも挑戦なら許されてもいいはずだ。とりあえずバッジコンプリートを目標にしておく。

 つまりは親父レベルのトレーナーになるって事だけど、念の為に自分も戦力に数えられるくらいにはなっておきたい。

 どこでシナリオぶっ壊れて未知の領域になるかわからないからな……正直今の時点でちょっと不安だし。アクマグ団早期壊滅ルートって壊れ方なら歓迎するけどな! 

 

「うし。それじゃあまずはカナズミシティを目指すか」

 

「それがいいだろう。あそこのジムなら勉強するのにもってこいだ。しっかりしごかれてこい」

 

「うっす。親父は適度に鍛錬サボって楽に勝たせてくれ」

 

「ジムリーダーが手を抜けるわけないだろうが」

 

 そんな軽口を叩けばデコピンをお見舞いされた。

 へーへー、期待してませんよーだ。

 

「んじゃ、行ってきます」

 

「ああ、行ってこい。ハルカちゃん、ユウキを頼む」

 

「任せてください!」

 

 ビシッと親父に敬礼するハルカ。

 実際これから本当に色々お世話になるかもなぁなんて考えながら、とりあえずカナズミシティを目指す事にした。

 

 

 * * *

 

 

 それでまあ、意気揚々とトウカの森に入ったけどさ。

 

「……気ぃ抜いたら迷いそうだな……」

 

「まあそういう人もいるみたいだね。だから野営スキルも持っとかないと」

 

 鬱蒼と茂る森の雰囲気に圧倒される。

 前世で自然と触れ合う機会なんてせいぜい遠足で登山したくらいだった。不安もあるけどそれ以上になんか感動する。

 ゲームならほとんど一本道だし迷う要素なんか無かったけど、まあ森って言ったら現実的にこうだよなぁ……。

 

「あんまり深いところに行くと高レベルのポケモンが出たりするから気をつけてね」

 

「あ、案内とかしてくれないんだ」

 

「本当に危なくなったらそうするけど何事も経験かなって」

 

 うーむ正論。旅のサポートをしてくれるらしいが、甘やかすわけではないようだ。

 まあそっちの方がいいか。せっかくなら俺だって旅を楽しみたいし、基本的には俺が主導でやらせてもらおう。むしろセーフティがあると考えればお得な気分だ。

 しれっと言われたけどこの世界マジで普通に進化系とか野生で出てきたりする。

 もちろんよっぽど道外れたりしなきゃってレベルだけど、極稀に場違いに強いやつがのっそのっそとそこら辺を歩いてたりもするから怖い。

 アサギにいた時もケンタロスの群れの暴走とかミルタンクとの縄張り争いとかあったっけ。

 ミカンさんが鎮圧してたけど、そういう面でもやっぱジムリーダーって強さ大事だわ。

 森とか下手したら本当に命の危機に瀕するポケモンも多いし警戒はしとこう。ちなみにここで言うならドクケイルとかキノガッサ。

 ジョウトならスピアーとかいう凶悪極まりないのもいるからその意味ではまだマシと言える。

 それに町と町を繋ぐ場所だからか、完全な整備とはいかないまでも道案内の立て札は用意されてるみたいだし、普通に抜ける分には問題無いだろう。

 

「よっし、じゃあ行ってみるか。ついでにトレーナーいたら経験値溜める感じで」

 

「頑張れー!」

 

 こんなふうに応援してくれる人がいると、なんだかんだ二人旅って心強いんだなと思えた。

 ……まあ、それとこれとは話が別なんだけどさ。

 




評価や感想、批評等お待ちしておりマース。
そしてしてくださった方々、ありがとうございます。
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