ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが? 作:名無しのナナシ
112番道路から少し逸れた茂みの奥地にて、丁度いい感じに開けた場所があったのでそこを訓練場所とし、早速訓練を開始する。
側に立つ
邪魔にならないようハルカと一緒に少し離れた位置に移動し、それを確認したカインが深呼吸を一つして“リーフブレード"を発動させる。
「よし、そのまま少しずつエネルギーを込めるんだ」
「ジュカッ」
答えたカインが一層集中して力を込めると、右手首から伸びた新緑の刃が輝き始めた。そしてその光は徐々に強く、濃くなっていく。今まさにあの刃へと、通常より多くのエネルギーが注ぎ込まれている証拠だ。
その推移を見守っていると、刃が不規則に伸縮を始めた。それと同時、カインの表情が苦悶の色に変わる。
「ジュ……カァッ!!」
一際強く吠えた、次の瞬間だった。
刃が突然風船のように膨れ上がる。
間もなく形を留められなくなった刃が弾け、無数に砕けた刃が俺を目掛けて飛んできた。
「っ!? やばっ──!?」
「
慌てて防御姿勢を取る──より早く、ハルカの呼び掛けに応じてちゃもがボールから飛び出し、そのまま俺たちの前に立って迫り来る刃の欠片を一蹴りで薙ぎ払ってみせる。
「サンキュ──って、カイン!」
おかげで俺たちは怪我をせずに済んだが、至近距離で弾け飛んだ刃の直撃を受けたカインはそうもいかないだろう。すぐさまカインに駆け寄って傷の具合を確認する。
「大丈夫か? 思いっきり爆発してたけど」
「ジュカ」
大丈夫だという風に手を持ち上げるカイン。
身体のところどころに裂傷が出来ているものの、傷自体は大きなものではなさそうだ。ひとまず安心したところで『キズぐすり』を使って治療してやる。
「やっぱり失敗したね。思ったより派手だったけど」
言いながらハルカがちゃもと一緒にこちらにやってくる。
口振りから察するに、どうやらハルカも成功するとは思っていなかったようだ。だからこそ失敗に備えてちゃもをいつでも繰り出せるように待機していたという事だろうか。正直助かった。
「うーん……最初はいい感じだと思ったんだけどな……」
おそらくはエネルギーの込め過ぎで暴発したのだろう。それならもっと込めるエネルギーを減らした方が……。
「……いや、数をこなす方が先だな。考えるのは後だ」
試行回数が少ない内から上手くいかない理由を探したってしょうがない。俺だって最初から上手くいくなんて思ってなかったし、まずはとにかく数をこなすべきだ。そのうち見えてくるものもあるだろう。
「…………」
「ん? どうした、ハルカ?」
「……ううん、やっぱり今はいいや。それよりその意気だよ! 頑張れ二人とも!」
「そうか? それなら……もう一度だカイン!」
「ジュカァッ!」
何か考えているようなハルカの反応が少し気になったが、ともあれ技能習得に向けての訓練がスタートした。
* * *
さて、“リーフブレード"の強化案だが特に捻った事をするつもりはない。
ポケモンの技というのはエネルギーの塊のようなもので、ポケモンが持つ生命エネルギーをタイプエネルギーに変換して放出されたものだ。
ではそんな技の威力を上げるにはどうすればいいのか。
簡単だ。技に使うエネルギー量を増やせばいい。単純にして真理である。
今回はエネルギーの密度を高めて斬撃を重くするのが狙いなのだが。
「……また失敗か……」
刃が歪曲し膨らんで弾け、僅かに遅れて刃が砕け、散った破片を
あれから一週間が経ったが、どうにも成果は芳しくない。どうやら技に追加でエネルギーを込めるという行為は想像以上に難しいらしい。
今日までの時間を全てこれに費やして来たが、結局“リーフブレード"が爆散するのは変わらなかった。
まだ一週間だと様子を見るべきか、もう一週間だと焦るべきなのか。
などと考えていると腹の虫が鳴った。もうそんな時間か……。
「……とりあえず休憩にするか。おーいハルカー、飯にしようぜー」
「ん、はーい。ほら、ご飯だって」
「チルッ!」
「ペラッ」
一旦訓練を切り上げさせ、邪魔にならないようにと離れたところで遊んでいた
みんなが来る間にバッグからレジャーシートを出してポケモンフーズを用意しておく。
いつもならここに買ってきた弁当等も並べているところなのだが、ハルカがどうしてもと言うので今日は昼食を任せている。何を持ってきてくれたのか楽しみだ。
「で、何買ってきたんだ?」
「今日はね……じゃーん!」
言いながらハルカが紙袋から取り出したのは細長いパン──いわゆるバゲットだった。次いでトマトやレタス、ハムやスライスチーズと様々な食材を並べていく。
「これでサンドウィッチを作ろうと思って。ピクニックみたいで楽しそうでしょ? 一緒に作ったらきっと美味しいよ!」
喜色満面といった表情で笑うハルカがとても眩しい。どんな時でも楽しむ心を忘れないのは本当に素晴らしいと思う。
丁度気分転換もしたかったところだしいいタイミングだ。
「……そうだな。よし、じゃあ作るか」
「うん!」
元気に返事したハルカが早速サンドウィッチ作りに取り掛かったのを横目に見つつ、俺も作業に入るとする。
まずはパンが少し大きいので半分のサイズに切り分け、それぞれに縦の切り込みを入れる。スライスエッグがあったので容器の蓋を貰い、その上でタマゴを粗めに潰してマヨネーズと和え、それを挟んでタマゴサンドの完成。
もう片方は……お、ポテトサラダがあるな。ならこれにハムとコーンを合わせて、少しマヨネーズと黒胡椒を足して味を整えれば──よし、ポテサラサンド完成だ。
もう一セットくらい作っておくか。今度は肉類を使ってみよう。
とりあえずソーセージでいいか。これとキャベツを挟んで、マヨネーズとマスタードを混ぜたソースを作ってケチャップと一緒にかける。これでホットドッグが作れた。
最後はガッツリ系で。ベーコン、レタス、トマトを挟み、さっきのマスタードソースと黒胡椒をかけてBLTサンドに。ついでにチーズも乗せておこう。
……まあ、こんなもんかな。勢いに任せて作りすぎたような気もするが、多ければカインたちと分ければいいだろう。
さて、ハルカの方はどんな感じかな……って、
「……なんだよその顔は」
「いや……ユウキくんってもしかしてお料理出来る方?」
驚いたような顔でこちらを見ているハルカ。
そりゃ全く出来ない事は無いが……
「人並み程度だよ。必要になったらやるってくらい」
「でもその割には手際がいいって言うか……なんかソース作ったりしてたし……」
「別にこれくらいは誰でも出来るだろ。それにせっかくハルカが用意してくれたもんだしな」
実際こういうのは料理が上手いとかではなく、ひと手間かける時間をどう思うかだ。
俺自身はそこそこの味があればいいので料理を作るにしてもなるべく楽をするけど、今回はハルカもいるしちょっとの手間を惜しむような状況でもない。
何よりあんなに楽しそうな顔のハルカを見たら俺だって少しはやる気を出そうというものだ。……こっちの理由は気恥しいから口には出さないけど。
「それよりほら、早く食べようぜ」
「あ、うん。いただきまーす!」
これ以上詮索されると面倒なのでさっさと食べ始めるとする。
まずはタマゴサンドから手に取ってパクリ。まろやかな味わいの黄身と程よく残った白身の食感が非常にグッドだ。
もう一口いこうとすると、物欲しそうな目で
「チルルッ」
「ああダメダメ。マヨとか多めに使ってるからあんま食べ過ぎると塩分が──あっコラ、だからダメだって!」
どうやら相当気に入ったらしい。首を伸ばして強奪しようとしてきやがった。
少しなら問題無いけど、人間の食べ物を与え過ぎるのは塩分や脂肪分の関係であまりよくないのだ。ここは心を鬼にして全力でフォルテを遠ざける。
「……チル……」
「……そんな悲しそうにすんなよ……俺だって別に意地悪してるんじゃないんだって……」
しょんぼりと
気持ち的には好きなだけ食わせてやりたいが、それだと健康的に問題があるからこればっかりは仕方ない。
「あはは。わかるよ、ユウキくんの気持ち。あたしも今でもそうなっちゃうもん」
「ハルカもか。やっぱみんな同じ事思ってんだな」
「そりゃそうだよ。みんな可愛いからつい甘やかしたくなっちゃうんだよね」
「そうだなぁ。懐いてくれるのは嬉しいしな」
どうやらこの気持ちは万人共通らしい。まあ手持ちを可愛がる気持ちに新米もベテランも無いよな。
「締めるところはちゃんと締めればいいんだけどね。そこのバランスが難しいんだよ」
「ああ、肝に銘じとく」
最後の一口を口の中に放り込んで次を手に取る。密かに自信作のBLTサンドだ。
「あ、それ美味しそうだよね」
「だろ? 焼きたてのカリカリベーコンならもっといいんだけどな」
生憎俺の手持ちには炎を上手く扱えるポケモンがいないので断念したが。実に惜しい。
「それならちゃもに頼んでみる?」
「え? いいのか?」
「もちろん。おいで、ちゃも!」
そんなハルカからの望外の提案と共に投げたボールからちゃもが現れる。確かにちゃもなら上手い感じに焼いてくれそうだ。
「このベーコン焼いてあげて」
「…………」
凄く微妙な顔をしている。こんな事で呼び出すなと言わんばかりだ。
「お、お願いします……」
「……シャモ」
本当に渋々といった様子で手首から炎を噴き出すちゃも。いやホントすんません。
しかしちゃもの心情とは裏腹に効果は覿面に現れ、串に刺して差し出したベーコンはいい具合に焼けていく。
改めてカリカリに仕上がったベーコンを挟めば、熱でとろけたチーズも合わせて極上の逸品に。匂いも相まって実に美味そうだ。
「ありがとな。お礼ってわけじゃないけどちゃもも──」
食うか、と聞くよりも早くちゃもはボールの中に帰ってしまった。取り付く島もない。
「……俺嫌われたかもしれん」
「そんな事無いと思うけど……ちゃもはちょっと気難しいところがあるから」
「いや、気難しいってか普通にキレてただろアレ……」
とはいえ俺もベーコンを焼く為だけに呼び出されたらキレるかもしれない。
「オノオノ」
「ん? どうしたファング」
なんて事を話していると、ファングがくいくいと服の裾を引っ張ってきた。その目線の先にはBLTサンドがある。
何を言わずとも口から垂れる涎が雄弁に物語っていた。『それを食わせろ』、と。
「ああ、わかったわかった。ほれ」
「オノ!」
少々カロリー高めな一品だが、まあドラゴンなら大丈夫だろと三分の一程の大きさにカットしたそれを渡すと、ファングは大きな瞳を輝かせてガブリといった。
瞬間、ファングの身体がカッと光り始める。
「は?」
呆気に取られている間にもファングの姿が変化していく。
一メートル程だった体は一気に二倍近く成長し、体格もどこかキバゴの面影を残したずんぐりしたものから恐竜のようなスマートなものへ。
外側に伸びていた牙も斧を思わせる形状になり、まさに名は体を表すといったところか。
全身を黄緑色の鎧のようなもので覆われたそのポケモンの名はオノノクス。ここに来てファングがついに最終進化を果たした。
……のはいいんだけど。
「……『ふしぎなアメ』なんか混ざってなかったよな?」
「うん……そのはずだけど……」
まさかサンドウィッチ食って最終形態に進化するとは。あまりにも予想外過ぎる。確かにゲームでも飯食ったら経験値入ってたけども。
「ユウキくんが作ったサンドウィッチが美味しくて嬉しかったから進化した……のかな?」
「えぇ……」
「オノ?」
仮にも──いや、れっきとしたドラゴンなのにそれでいいのか。こんなの前代未聞の進化じゃないだろうか。
しかもこいつ自分が進化した事にまだ気付いてねぇ。『あれー? みんな小さくなった?』みたいな顔すんなお前がデカくなったんだよ。
自分の姿を確認するようファングに伝えると、確かめるように自分の顔や体をぺたぺたと触り、ようやく進化した事に気付いて喜び始めた。
「オノノ♪ オノノ♪」
「チルル♪ チルル♪」
「平和だなぁお前ら……」
「ユウキくんのポケモンってみんな個性的で面白いね。これもレポートに纏めないと」
フォルテもファングの進化を祝うように歌いながら飛び回っている。
どうしてうちのドラゴン共はこう、威厳が無いというか……。もっと闘争の中で己を高める、みたいなのがドラゴンのイメージなんだけど……まあ色んなドラゴンがいるって事だな、うん。
「ニギヤカデスネ」
「うおっ、びっくりした」
しれっと傍に寄って来ていた
こいつはこいつで神出鬼没なところがあるな……。
「お前も食いたいのか?」
「イエ、ダイジョウブデス」
言ってからまたパタパタと飛んでいき、何故かポケモンフーズが入った皿を俺の近くまで引きずってから
……まさか輪に入りたかっただけか? 意外と寂しがり屋だな……と思ったけど意外でもないか。前に
可愛い奴だと思いながら俺もBLTサンドにかぶりつく。
カリカリに焼けたベーコンととろけたチーズ、それを黒胡椒のスパイシーさが引き立てる。うん、最高。
「……そういやハルカの手持ちってちゃもくらいしかろくに見てないな。ピクニックってんなら手持ち全員出した方がいいんじゃないのか?」
と、わいわい騒ぐ自分の手持ちたちを見ていて思い出す。
こういう食事時でもハルカは自分の手持ちをほとんど出さない。出したしても大抵の場合はちゃもだけだ。
一応チルタリスとアブソル──ちるるとそるるだっけ? がいるのは見たが、それだって片手で数える程度で、残る三匹については種族すら知らない。
持っているボールの数から見て六匹いるのは間違いないと思うんだけど。
「えーっと……ほら、あたしのポケモンって結構強いから、いっぱい出すと周囲のポケモンを刺激しちゃってよくないんだよ」
「……ああ、なるほど。縄張りを荒らしに来たとか思われる可能性があるのか」
「そうそう、そんな感じ」
ハルカの説明を聞いて納得する。
確かに強いポケモンが何匹も固まっていたらそこに恐怖を覚えて萎縮したり、逆に縄張りを守ろうと襲いかかってくるかもしれない。
森や洞窟に入る前に護身でポケモンを出しておく事もあるけど、出し過ぎもよくないのか。勉強になる。
……あれ? でもなんか……。
「あ、ユウキくん。口にソース付いてるよ」
「え、マジで? どこだ?」
「そこじゃなくて……もー、しょうがないなぁ」
何か引っ掛かりを感じていると、ハルカがそんな事を言いながらウェットティッシュを取り出し、俺の方に手を伸ばしてきた。
「ほら、拭いてあげるから動かないでね」
「いや、言ってくれればそれくらい自分で──むぐっ」
「いーからいーから」
抵抗も許さずハルカが俺の頬をぐいぐいと拭う。これじゃ俺が子どもみたいだ。そしてそんなに悪い気がしないのも困る。
そうしてされるがままになっていると、さっき感じた引っ掛かりもどこかへ消えてしまった。まあそこまで気にするような事でもないだろう。
「それにしても、かなり苦戦してるね」
頬を拭いながらハルカがそう切り出す。
一瞬何の事だかわからなかったが、すぐに技能の事を言っているのだと思い至った。
「そうだなぁ。ここまで難航するとは思わなかった」
ハルカは初めての挑戦には丁度いいと言ったがそれでもこの難しさだ。技能というものがどれだけ習得に難儀するかがよくわかる。
「正直何をどうすればいいのかわかんねぇ。エネルギーを上手く調整出来てないって事なんだろうけど……」
「それなんだけど、ユウキくん多分勘違いしてるよ」
「え? 勘違い?」
「えーっと……一緒に説明した方がいいかな。カインくんもこっちおいで」
「ジュカ……?」
さっきの騒ぎの中でもどこか上の空だったカインを呼び寄せ、ハルカが話し始める。
「まず、カインくんが今やってるのって実はとても難しい事なの。あたしが初めての挑戦でも丁度いいって言ったのは、あくまでも使うエネルギーを増やすだけだからなんだよ」
「ん……? どういう事だ?」
いまいち言葉の意味がわからず聞き返す。
「まずポケモンの技って大まかに分けてエネルギーの生成、放出、形成の三段階で完成するんだけど、エネルギーを増やすっていうのはこの内の生成の段階なの。一番最初の部分だから調整が効きやすいわけだね」
ふむふむ、と先を促す。
「でも今カインくんがやってるのはさっきの手順に圧縮が加わってるんだよ。順番で言えば生成か放出の次なんだけど、この時点で作業が一つ増えてるし、何より圧縮したエネルギーを維持するのが難しいの。凝縮したエネルギーが暴発しないように抑える必要もあるからね」
「そうか、元々必要の無い手順が加わってるから余計に難易度が上がってたのか。……ん? もしかして初日に何か言いかけてたのって……」
「うん、止めようかどうか迷った。それでもやる気になってるところに水を差したくなかったし、飛び抜けた才能があれば成功する可能性もあったから様子を見たの。……そう上手くはいかなかったけどね」
その様子を見る期間としてハルカが定めたのが一週間だった。それが長かったのか短かったのかはわからないが、カインの資質を見抜くには充分な時間だったのだろう。
あるいはもっと早くに見抜いていたのかもしれないが、それでも今日まで何も言わなかったのはきっとハルカの優しさだ。
「だから今の内に言っておこうと思ったの。このまま同じ訓練を続けても技能習得は遠いよって」
一瞬躊躇う素振りを見せ、しかしはっきりと告げる。
これ以上は見過ごせない。やり方を変える必要があると。
「……悪いな、色々気を回してもらって。言い難かったろ」
「ううん。ごめんね、嫌な事言って」
ハルカが謝ってきたがそんな必要は無い。
ともすれば反感を買いそうな指摘なのにそれでも俺たちの為に言葉にしてくれたのだ。多少ショックではあるがそこにハルカに対する怒りや不満は無い。
「しかしそうなると別の方法を考えないとな。なるべく元の形は変えたくなかったんだけど……」
「やけに拘るね。個人的には足りない
「それは俺も考えた……というか、最初はそのつもりだったんだよ」
確かに“リーフブレード"は威力こそ安定しているが近接攻撃の宿命として射程が短い。
当たり前だが相手に近付かないと当たらないので延々遠距離から対応されたり、逆に近距離が得意な相手には反撃を貰う可能性が高まったりと相応のリスクがある。
では遠距離攻撃が圧倒的に有利なのかと言えばそういうわけでもなく、飛距離が長くなる程エネルギーが拡散して威力の減衰が起こるので致命打になりにくいという難点を抱えていたりするのだが、それはさておき。
ハルカの言う通り“リーフブレード"の長さを拡張すれば威力と安定性の両立が出来る上、対応距離も広がるのでいい事尽くめのように思える。
しかしここで問題が一つ。
「けど前に話したようにカインがガンガン接近戦を仕掛けるタイプだからな。下手にデカくすると取り回しが……」
「……なるほど。確かにそれはちょっと困るかも」
カインの戦闘スタイルは高い機動力から素早く相手の懐に潜り込んで攻撃を叩き込むという形であり、その関係上下手に“リーフブレード"を大きくしてしまうと取り回しに難が出る。カインの強みを活かす為の技能なのに、肝心の近距離で使い難くなるのは困るのだ。
別に中距離戦が出来るようになると考えれば決して悪くはないのだが……。
「……一応だけど、戦い方を変えるのも一つの手だと思うよ。少なくともあたしが知ってる中で一番強かったジュカインは中距離戦闘がメインだったし」
「へえ。参考までにどんな感じだったか聞いていいか?」
「そうだね……基本に忠実だったかな。“タネマシンガン"や“くさむすび"で相手を近寄らせないようにして、隙が出来たら“リーフストーム"みたいな大技で攻撃って感じ。どこにいても斬られるよくわかんない技もあったけどね」
「ふーん……」
なるほど。確かに理想の中距離型って感じだし、それが強い戦い方というのもわかる。
最後のは本当によくわからんが。どこにいても斬られるって、そんなふざけた技が存在するのか。
「まあ無理に拘らなくても色んな道があるって事だよ。まだ時間もあるし、少し考えてみてもいいんじゃないかな」
「そうだな……」
現状道は三つだ。
戦闘スタイルを変えるか、別の方法を模索するか、はたまたこのまま難易度の高い技能の習得を目指すのか。
きっとこの選択が今後のカインのに大きな影響を与えるだろう。ここがターニングポイントだ。
どうするのが一番いいのか、それを考えないといけない。時間は無限ではないのだから。