ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが? 作:名無しのナナシ
ノリで書いてるとこうなる。
トウカの森を彷徨い歩いて一時間くらい──いや、二時間くらい経ったのか?
そこらのトレーナーと戦いながらだから普通に抜けるより進みが遅いような気がする。
「なあハルカ、この森って抜けるのにどれくらいかかるものなんだ?」
「ん〜……それくらいならいいかな。だいたい一時間半くらい? ちょっと時間かかってる方かな」
「やっぱりか。うーん、それならもう後半に差し掛かってないとヤバいかもなぁ」
ナビで時間を確認してみれば十六時を示している。仮にまだ半分残ってますよとか言われたら日が暮れてしまうかもしれない。
森で野宿はちょっと避けたいので少し急ぎ足で進む事にする。
「……そういえばまだ見つかってないなぁ」
「何が?」
「いや、こっちの話」
適当に流しつつ自分の知識を思い出す。
確かゲームだとこの森で一悶着あるはずなのだ。それこそ森の中盤辺りで。
まあああいうイベントこそ完璧に時間とか合わせないと起こらないものだろうし、いくらなんでもそこまで原作通りとは──
「キノココちゃ〜ん、待て待て〜」
……明らかにこの森に不相応な格好した研究員みたいなのがデレデレしながらキノココを追いかけていた。
主人公の運命力すげぇな。
「ほ〜ら捕まえた〜」
「キノ〜♪」
「……あの〜」
「ん? ああ、こんにちは。何か用かな?」
キノココを抱き上げながら挨拶する眼鏡の男。何か用かなじゃねえよ。
「そんな軽装で何してるんすか」
「いやー、おじさんキノココが好きでね。歩いてるのを見つけたものだから……いつの間にか結構来てたのね」
このおっさん無自覚にここまで歩いてきてたのか……しかもそんな軽装で……。流石キノココ好きってキャラ付けされるだけあるな。
「なあハルカ、この森って実はそんなに危なくないのか?」
「さっきも言ったけど道さえ外れなければ初心者トレーナーもよく来るし比較的安全だよ。虫取りしてた子もいたでしょ?」
夜は全く保証出来ないけど、とハルカは続ける。やっぱ危険地帯じゃねえかよ。
「あの、もしよければ俺たちと一緒に来ます? 俺たちカナズミシティに向かってるんですけど」
「お、そうなのかい。なら連れて行ってもらおうかな。流石に一人で戻るのは心細いしね」
ここまでフラフラと歩いて来た人間が何を言ってるんだろうか。というかこんなのが研究員って大丈夫かこの世界の会社。
それじゃま、時間も押してるしサクッと──
「待て待て待て──い!」
──抜けれませんよねー。
「せっかく森の奥に入るまで待ってたんだ。邪魔されてたまるかよ」
「ひぇっ! な、なんだね君たちは!」
「話す必要はねぇ! いいからその書類を寄越しな!」
なんか勝手に会話が展開されてるなぁ……。といってもまあ、だいたいゲーム通りのイベントなんだけど。
このタイミングで現れた人間こそマグマ団……か、アクア団。どっちかはわからん。
だってあの制服着てないもん。そりゃ白昼堂々と『俺たち悪の組織でーす!』って言って回るような格好しないわな。やってたらアホだし。
で、本来ならここは研究員を庇って俺が代わりに戦うところなんだけど……なんか数多くね? 三人くらいいるんですけど。
「き、キミたちなんとかして!」
そう言って研究員が俺の後ろに隠れる。
アンタ大人の癖に情けないな。子どもを盾にしようとするなよ。
「あん? なんだお前ら」
そうして前に出る事になった俺にガンつけてくる目の前の男。ガラ悪いなぁ……。しかもまあまあ怖ぇし。不良と正面切って対峙した事ないもん。
「退きな。俺たちはそいつに用があるんだ」
「俺も出来ればそうしたいんだけどなぁ……」
ここでこの人を引き渡したら確実に面倒事になるのが目に見えてる。かといって三人相手は普通にキツい。
そもそもレベル足りるのかこれ? 向こうもそれなりにトレーナーやってるだろ?
あれこれ俺結構頑張らないと序盤ハードモード過ぎでは?
「退かねぇなら力ずくで……ん? そっちの女は……」
「ねえユウキくん。この人たちって悪い人?」
「え? ああ、うん。多分そう」
制服着てなくても書類狙いって事はマグマ団かアクア団のどっちかだ。それは間違いない。
「じゃあ──ぶっ飛ばすね」
「へ?」
そうしてハルカがボールを投げる。光と共に現れるのは──
「──シャアアアアアアッ!!」
──昨日俺をボコボコにしたバシャーモだった。
「ちゃも、蹴散らして!」
「シャッ!」
バシャーモが団員と思しき男の一人に蹴りを入れ、まるでサッカーボールのように男を吹っ飛ばした。
え? ぶっ飛ばすって物理的に?
「おいやべーぞこの女! 躊躇いが無ぇ!」
それを見ていた団員が悲鳴じみた声を上げる。
俺もやべーと思う。人間にダイレクトアタックとかポケスペかよ。
「残りもやっちゃって!」
「シャアアッ!」
「くっ……グラエナァ!」
「こっちもだ!」
ようやく防衛に繰り出されたのは黒い狼のようなポケモンのグラエナだった。
やっぱ普通にレベル高そうなやつ持ってたな。危ねぇ。
「「グルアァァァァァァ!!」」
登場したグラエナ二匹が闘争心を昂らせて『いかく』する。
ある程度予測してたし身構えてたけど実際に対峙するとその効果がよくわかる。
本能に訴えかける恐怖とでも言おうか。これを受ければ確かに『こうげき』も下がろうというもの。俺や研究員の人なんて身が竦んでしまっている。
しかもそれが二匹分だ。ゲーム的に言えば『こうげき』が二段階下げられた状態である。ハルカのバシャーモがどう育てられているかはわからないが、物理攻撃主体だとやや厳しいかもしれない。
──俺も加勢するか?
ホルダーに付けたボールに手を掛ける。
今の
如何にハルカが強くとも二対一では分が悪かろう。
「オラァ
「
片方のグラエナが砂で目潰し、その間にもう片方が接近するコンビネーション。
上手いな、これが現実のダブルバトルか……って感心してる場合じゃない!
「くっ、カイン俺たちも──」
ボールを手に取り、グラエナとバシャーモの間に投げ入れようとして。
「──
それよりも先にハルカの指示でバシャーモの足が紅蓮に燃え、飛びかかってきたグラエナの顎を蹴り抜き。
“ひてんげり"
蹴り上げた勢いを維持したまま回転し、後ろ回し蹴りへと派生させて。
“ブレイズキック"
無防備な腹へと二度目の“ブレイズキック"がグラエナに突き刺さり、後方のグラエナを巻き込みながら吹っ飛んでいった。
「なっ……!? 一撃だと!?」
団員が驚愕の表情でハルカを見る。多分俺も同じような顔をしていると思う。
レベル差なのかわからないけど『こうげき』二段階下げられてるのに一撃ってのは相当だぞ。
いやまあ一撃っていうか一ターンに二発攻撃当ててた感じだけども、それは置いとくとして。
「思い出したぞ……お前、確か前回のホウエンリーグ本戦で優勝してたやつか!」
「あ、あたしの事知ってるんだ。やっぱテレビ中継があると知られちゃうもんだね」
事も無げにハルカが言う。知ってはいたけど改めて言われるとやはり衝撃である。
こっちのリーグ形式はゲームと違ってちょっと面倒なもので、要約すると規定日にリーグ予選が始まってその後に本戦、優勝した人がチャンピオンリーグに挑戦する資格を与えられる──つまりゲームにおける四天王戦が始まるって仕組みだ。アニポケが確か似たような感じだったっけな。
本戦まではテレビ中継されるし、アサギシティでもカントーリーグの本戦が中継されていたからレベルの高さはよく知ってる。
まあ俺が見てた頃のカントーリーグって厳密にはチャンピオンとかいなかったんだけどさ。
大抵四天王の誰か──ほとんどワタルだった──が優勝するからチャンピオン名乗ってただけで、肩書きとしては四天王。
ワタルさんクソ強かったよ。
とかいう関係無い話は置いとくとして、現時点のハルカは少なくとも四天王に匹敵する実力があるわけだ。
「さあ、何が目的か言いなさい」
ふんすと鼻を鳴らすハルカに迫力は無い──が、代わりに後ろのバシャーモが圧倒的な存在感を放っている。
正直今のを見る限りでは団員側に勝ち目は無さそうなんだよな。
既に腰が引けてしまっているようだし、とりあえずこの場は乗り切ったと思っていいだろう。それなら少し先を見据えたい。
「ハルカ、こいつら捕まえよう。何をしてたか聞き出すんだ」
原作知識があってもそれを直接伝える事は出来ない。だからこの団員を尋問するなりして間接的にハルカに情報を渡したいのだ。
そうすれば積極的に動いてくれるかもしれないし、俺の役割も楽になる。
「そうだね。じゃあ大人しくしててよ」
ハルカがウエストバッグから『あなぬけのヒモ』をずるりと取り出しながら一歩踏み込み、団員がそれに合わせて後退りする。
本来は洞窟脱出用の目印に使うものだけど、捕縛の為に使っても強度的に問題無いはずだ。
一歩、また一歩と距離を詰めながら躙り寄っていくハルカに、ニヤリと団員が笑みを零した。
「ハッ! 捕まってたまるかよ!」
吠えながら団員が腕を掲げる。その手にあるのは玉のような何かが複数。
そしてそれを一気に地面に叩きつけると同時、玉から勢いよく白煙が噴出した。これは……『けむりだま』か!
「ハッハー! 逃走手段くらい用意してるに決まってんだろ! 逃げるぞお前らぁ!」
「おうよ! 兄貴に報告だ!」
「ゴホッゴホッ、くっそ待ちやがれ! ハルカ!」
「ちゃも! 追って!」
白煙で奴らの姿は見えない。一縷の望みをハルカに託すも、煙が晴れた時には団員たちの姿は見えず。
どうやらまんまと逃げられてしまったらしい。
「下っ端の分際でなんで一丁前に逃げ足だけは早いんだよ……いや、下っ端だからこそか」
自らが勝利するよりも負けた時の手段をより多く講じておく。組織の人間ならむしろ自然な考え方だ。意外と徹底してやがるぞあのリーダー。
「ごめんユウキくん……もう少し早く動いてれば……」
「いや、あれは仕方ないだろ。俺なんて何も出来なかったんだぞ」
ハルカが謝ってくるが、それで言うなら俺なんか後ろでごちゃごちゃ考えてただけだ。何も文句を言う権利は無い。
まあ捕まえられなくてもシナリオ的には問題なかろう。三人いたのが気がかりだけど、大筋に変更は無いはずだ。多分。
それに先の連中が何なのかは予測がついた。おそらくはアクア団だ。
リーダーを兄貴と呼ぶのはアクア団の特徴だった気がする。
ゲームで団員がそう言ってたまでは覚えてないけど、現実にあの性格なら慕ってる奴らも多いだろう。とりあえずはアクア団が動いていると仮定しておく。
となるとカナズミシティには今アクア団が潜伏してる事になるのか。荷物奪われるのってジム戦の後だっけ?
まあここら辺の差異はこの際関係無い。ジム戦やろうがやるまいが時が来れば動くんだから、先に張り込んでおけばいい。
「た、助かったぁ……ありがとうキミたち」
「礼はいいんですけど今後子どもを盾にしないでください」
ハルカいなかったら蹂躙されて終わってたぞ。
「は、はい、すみません……」
「……まあいいか。まずはカナズミシティまで行こうぜ。この人もちゃんと送り届けなくちゃだし」
「……そうだね。そうしよっか」
ハルカが元気無く頷く。
うーん、気落ちしてるなぁ。別にまだ決定的なミスしたわけじゃないからそこまで落ち込まなくてもいいのに。
こういう時に気の利いた話の一つも出来ればいいのに、女性経験の少ない俺では到底その領域には辿り着けない。
無言の時間が凄く気まずい。普段ハルカがアレな分余計に。
いや別にアレを求めてるわけじゃないけど極端なのだ。
……あまりにも手持ち無沙汰なので、なんとなく図鑑を取り出してバシャーモを調べてみる。
そんな場合じゃないのはわかってる。でもあの強さの理由がどうしても気になった。強すぎだろアレ。
自分の手持ちじゃないから詳細はわからないけど、まあレベルくらいはわかるだろう。
スキャンが終わり画面にデータが表示される。どれどれ……?
【種族】バシャーモ
【レベル】100
パタン。
図鑑を閉じる。
多分この図鑑がバグってるんだろう。後で博士に言っておかなければ。
念の為にもう一度開いてスキャンしてみる。貰ったばかりの図鑑が壊れてるなんて事は──
【種族】バシャーモ
【レベル】100
──無いですよね現実でこうなんですよねっ!!
ちなみに俺のキモリは現在十四。圧倒的過ぎる。
というかハルカさんマジ強ぇ。グラカイ問題もハルカに全部任せれば何とかなりそうな気がしてきた。グラカイってアクマグ団潰しだけど。
まあそれもこれも全部カナズミシティに到着してからだ。
「……とりあえず歩くか」
「はーい」
立ち止まってても日が暮れるだけだし、まずはここを抜けてしまおう。
ご機嫌取りはその後だ。
評価や感想、批評等お待ちしておりマース。
あと誤字脱字報告してくれた方ありがとうございました。
感想や評価、お気に入りもありがとうございます。励みになってます。
しれっと出てたオリジナル要素は後の話で解説する予定があったりなかったり。まあ知ってる人は知ってるよ。