ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが?   作:名無しのナナシ

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攻めるのは強いけど受けに回ると途端に脆くなるタイプ

 じりりりり、と音がする。

 夢現の狭間で音のなる方へと手を伸ばせば硬いものが手に当たった。条件反射的にそれを手繰り寄せてスイッチを切り身体を起こす。

 昨日の疲れが残るという事も無く、ぐぐっと伸びを一つすればある程度目が覚めた。

 別々のベッドで寝たはずのハルカが何故か俺の隣にいる事には最早何も言うまい。もうこれはそういう現象だ。

 

「……ん……おふぁよ……」

 

 さっきの目覚まし音が聞こえていたのか、ハルカもゆるゆると起き上がってきた。

 呂律が微妙に回ってないあたり、相当熟睡していたらしい。

 

「おはよう。よく眠れたようで何よりだ」

 

「ん〜……? えへへ〜……」

 

 ふにゃっと笑ったハルカが倒れるようにして俺に身体を預けてくる。

 

「あったかい……」

 

 倒れてきたハルカを抱きとめると、まるで猫のように頭を擦りつけてきた。完全に寝ぼけてるなこれ。

 思ったより朝強くないのか? 起きれるには起きれるけど覚醒に時間がかかるタイプらしい。

 それを考えると昨日の弁当事件ってマジでやらかしてるんだな。ハルカの寛大さに感謝を。

 

「おーい起きろって。朝飯逃すぞー」

 

 朝から大声を出すわけにもいかないので背中をポンポンと叩く。

 平気な顔してるけど実はさっきから理性を保つ為に脇腹を全力で(つね)ってるんですよ。抓ってるっていうかもう鷲掴みにしてるけど。

 パジャマの生地が薄いから普段着より密着感あるし体温高いしでギリギリなんですよ。はよ起きろ。

 

「……すぅ……」

 

「おい寝るな。くっそなんだコイツ幼児か?」

 

 背中ポンポンで寝るなや。何安心しきった面してんだお前の目の前にいるのは狼なんだぞ。

 自分の脇腹を捩じ切る勢いで捻りあげながらハルカの肩を揺らして目覚めを促してみる。

 

「起きろ。起ーきーろー」

 

「んゃぁ〜……」

 

 しかしハルカは猫みたいな声で力無く抗議するだけで中々起きてくれない。

 あんまり気安く女の子に触れたくないけどこうなっては仕方がない。最終手段としてハルカの頬をペチペチと叩く。

 

「起きろってば。おーい」

 

「ううん……」

 

 しばらく続けているとハルカの目がゆっくり開いていく。お、これで起きてくれるか? 

 

「あれ……? ユウキくん……?」

 

 寝ぼけ眼を擦りながら俺を見るハルカ。さて、会話が出来るか試してみよう。

 

「おはよう。いい夢見れたか?」

 

「うん……なんか幸せな夢……」

 

 よし、まだふわふわしてるが会話出来るくらいには目が覚めたようだ。これならもう少しすればしっかり起きるだろう。

 寝ぼけた瞳でハルカが俺をじっと見つめた後、視線が頬に当てられた俺の右手に移動して、数秒間を置き再び視線が元に戻り。

 

「〜〜〜〜〜〜っ!?」

 

 瞬間、ハルカの顔が沸騰したかのようにみるみる赤に染まっていき、俺をベッドから突き落とした。

 

「痛ぁっ!? なんっ、ええっ!? お前今までこれくらいの距離感だったじゃん!」

 

 なんで急にそういう反応!? ちょっと傷付いたんですけど!? 

 

「だっ……! いっ、今っ……! ほっ、ほっぺっ……きっ、ききき……キス……!」

 

「はあ!?」

 

 布団に包まりながら紅潮した顔を押さえてどうにか言葉を紡ぐハルカ。

 何!? キス!? そんな事してないけど!? 

 

「落ち着けハルカ! 俺は何もしてないぞ!」

 

「で、でもさっきの手……!」

 

「手!? それが──」

 

 言われて自分の行動とハルカが目覚めた時の状況を思い返してみる。

 ハルカの頬を叩く。ハルカが起きる。その時俺の手はハルカの頬に添えられたまま。そして非常に顔の距離が近い。

 ……ふむ、なるほど。

 

「──違う! 誤解だ! お前を起こそうとしてただけだ!」

 

 状況を客観視して見れば確かに映画やドラマにありそうなシーンだ。だが断じて変な気を起こしたわけではない! 

 

「あ、あたし眠り姫じゃないもん……!」

 

「だああ! 違う! そういう事して起こそうとしたんじゃない! 軽くほっぺた叩いてただけだ!」

 

「じ、じゃあ、き………………しようとしたわけじゃないの?」

 

「ああ! これっぽっちもそんな気は無い!」

 

「……それはそれで複雑なんだけど……」

 

 何か小さい声で言ってるけどよく聞こえない。疑われてるんだろうか。

 

「……と、とりあえずあっち向いててもらえる? 今ちょっと見せられない顔になってるから……」

 

 そう言ってハルカは布団の中に引きこもってしまった。確かにあれだけ真っ赤になった顔は人に見せられないだろうけども。

 まあこれだけ騒げば二度寝……いや、三度寝する事もないだろう。洗面所で身支度を整えるとする。

 ……大声出さないようにしてたのに結局騒いじゃったな。このホテルって防音なんだろうか。もし違ったら隣の部屋の人ごめんなさい。

 その後歯磨きが終わる頃にはハルカも復活しており、ハルカの準備が終わるのを待ってから二人で朝食のバイキングを食べに行った。

 にしても一緒に風呂入るのはいいのに、キス(疑惑)であんなに取り乱すってやっぱりハルカの基準はどこかおかしい。

 

 

 * * *

 

 

 今日の目的はカナズミジムの制覇……と、起こるんならデボンの荷物盗難事件を防ぐ事。

 ただ後者はいつ起こるか予測がつかないので、とりあえずジムの方を先に済ませようと思う。

 本当なら盗難事件の方を優先したいところではあるけど、話せる理由も無しにデボン周辺を彷徨(うろつ)くのはあまりにも不自然だ。

 まあ警察も巡回してるようだしそうそう派手に行動も起こせないだろう。何か起こればその時に対処する。ハルカが。今の俺が行ってもどうにもならん。

 そんなわけでポケモンセンターから手持ちを回収して、目指す場所はカナズミジム──ではなく、すぐ近くにあるトレーナーズスクールだ。

 トレーナーズスクールは各所にあるが、その中でも最大規模を誇るのがカナズミのスクールだ。

 スクール(学校)と名が付くものの、その実態はトレーナーを目指す者が集まる塾のようなもので、希望者のみがここに通う事になる。

 規模相応にレベルも高く、ここを卒業出来ればそれだけである程度の実力が保証されているようなものなんだとか。

 

 そんなエリート塾であるここに何の用があるのかといえば、もちろんツツジに会う為である。

 カナズミジムのジムリーダーであるツツジは基本的には昼以降でないと挑戦を受け付けていない。

 理由は朝はスクールで勉強しているからで、ジムリーダーとして活動するのは昼からというのが彼女の生活サイクルらしい。

 これは決して彼女の我儘ではなく、彼女がジムリーダーをやるにあたってリーグ側に出した条件でもある。

 歳若くしてバトルの才能に溢れた彼女であっても、まだまだスクールで学べる事は多いと思っての判断だろう。

 というか、(プレイヤー)視点だとツツジって強者ってより先導者ってイメージになるんだよな。

 実際に将来は先生もやるわけだし、そういう意味でもこの判断は納得出来る。

 で、どのツツジなんだという話だけど、調べてみた感じだとどうやら生徒(ORAS)のツツジっぽい。RSEが卒業生とかだったはずだから多分合ってると思う。

 

「さて、ここで待ってる……でいいんだよな?」

 

「うん。連絡しとくね」

 

 当初の予定では朝の内にジム戦を予約して、その間に街を散策するつもりだったんだけど、どうやらハルカがツツジの連絡先を知っていたらしく、先んじて会わせてくれる事となった。

 そうして外で待つ事暫し。

 ぱたぱたと足音が近付いてきた。

 

「あっ、ツツジさーん!」

 

「どうもハルカさん、お久しぶりです」

 

 手を繋いできゃいきゃいと騒ぐ女子二人。目の保養である。

 再会をひとしきり喜んだ後、ツツジが俺の方に視線を向けた。

 

「貴方がハルカさんの言っていた人ですね。初めまして。カナズミジムのジムリーダーをやっております、ツツジと申します」

 

 礼儀正しくぺこりと一礼するツツジ。流石は優等生。こういうところもしっかりしている。

 見た目上はツツジの方が歳上だし、ここは俺も丁寧に挨拶を返すべきだろう。

 

「ああ、これはどうもご丁寧に。俺はユウキです。カナズミジムに挑戦しに来ました」

 

 俺の言葉を聞いてふむ、とツツジ。

 

「『いわ』タイプに効果的なタイプは?」

 

「『みず』『くさ』『かくとう』『じめん』『はがね』。特に『かくとう』『じめん』『はがね』タイプは『いわ』技の通りも悪いから有利に戦える」

 

「……なるほど。基礎知識は十分ですね」

 

 まあこれくらいはポケモンやってりゃ嫌でも覚える。特別自慢出来るようなものでもない。

 

「わかりました。ジムリーダーツツジ、貴方の挑戦を受けましょう」

 

「ありがとうございます。……今のって試験か何かですか?」

 

「いいえ。けれど戦う上での指標にはしますわ」

 

 なるほど、理解してない人にはそれを教えながらバトルすると。親父が初心者向けのジムと言った理由がわかるな。

 

「ちなみに貴方は満点の解答を出したので少々厳しくする予定ですわ」

 

 適当に答えりゃよかったちくしょう。

 

「よかったね、ユウキくん!」

 

「何が?」

 

 ハードモードを希望した覚えは無いんだが? 

 

「……まあいいか。それより抜けて来てよかったんです? 授業中とかなんじゃ」

 

「普通の話し方で結構ですわよ。わたくし、基本的に授業は免除されてて自習の事が多いんです。ここに来る理由も色んな参考書等が揃ってて勉強しやすいからですし、そこら辺の自由は効くようにされてますわ」

 

「あー……流石はジムリーダー……」

 

 自習してまで勉強とか俺なら考えられない。なんなら授業サボる方法ばっかり考えてたなぁ。

 それはともかくお言葉に甘えて話し方は戻させてもらおう。体感歳下の相手に敬語を使うのはむず痒いものがある。

 

「それでは二時頃にジムに来ていただければお相手しますわ。それまでに準備を整えておいてくださいね」

 

「あっ、ちょっと待ってツツジさん!」

 

 ツツジがスクールに戻ろうとすると、ハルカがそれを呼び止める。

 そうしてハルカが何やら耳打ちして。

 

「──えっ? いいんですの?」

 

「大丈夫大丈夫。それくらいなら問題無いって!」

 

「うーん……? まあハルカさんが言うなら……」

 

 困惑したような表情をしながらも了承するツツジ。アイツ何言ったんだ。

 

「で、ではまた後ほど」

 

「うん! ばいばーい!」

 

 今度こそツツジがスクールに戻っていく姿を見送りながら、俺はハルカに問いかけた。

 

「お前何言った」

 

「別に? せっかくだから楽しいバトルにしてあげてねって」

 

「それであんな顔するわけないと思うんだが」

 

「大丈夫だって。勝てばいいんだよ」

 

「そりゃそうだけどさぁ……」

 

 何かハードルが追加された気がしてならない。まさかダイノーズ出してきたりとかしないだろうな。

 いや、ジム戦はあくまでも実力の査定所だ。言うなればテストなのだ。

 無理難題を押し付けるような事は無い……はず。

 

「……一応もう少しレベル上げとくか」

 

 今現在キモリ(カイン)のレベルは十八だ。

 ゲームでなら進化レベルに達しているんだけど『かわらずのいし』を持たせてるわけでもないのにその前兆は無い。

 どうやら進化条件も少し変わっている様子。まあバトルしてればそのうち進化するだろう。

 

「ハルカ、なんかお前のせいっぽいし手伝え」

 

「あたしのせいじゃないけどいいよー。じゃあ広いところ行こっか」

 

 そうしてカナズミシティの公園を目指して歩いて行く。

 経験値を得るなら強い相手との組み手が一番効率がいい。ハルカなら無意味に体力を削ってきたりしないだろうし、センターに使う時間も短縮出来て一石二鳥だ。

 とりあえずは“メガドレイン"を当てられるよう上手く立ち回らなければ。

 相手は鈍足がちな『いわ』タイプだから当てる事そのものに苦労はないと思うけど、代わりに耐久が高い。

 至近距離から反撃を受けると流石に辛くなってきそうだし、ヒットアンドアウェイを意識していきたいところだ。

 約束の時間まであと四時間程。その間に出来る事をしっかりやっていこう。

 




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あと更新サボってる間にお気に入りが500を超えてました。いえーい。
ジム戦やるつもりだったのになんか次回に持ち越しになった。何故。
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