ポケモン世界に転生したからゲーム知識で無双しようと思ったのに全然役に立たない上になんかヒロインがおかしいんですが?   作:名無しのナナシ

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中ボスとか簡単に言うけど現実にいたらめちゃくちゃ強いよね

 ポケモンジムには色々な側面がある。

 それは例えばトレーナーを育成する場であったり、有事の際に駆け込む場所であったり──ポケモンリーグ挑戦を目指すトレーナーの壁であったり。

 ゲーム風に言ってみれば中ボスのような存在だ。特に最初のジム戦はチュートリアルとして認識される場合が多く、強敵であれどしっかりと準備をすれば負ける事は少ない。

 プレイヤーにしてみれば通過点でしかなく、一度過ぎれば思い返す事も少なくなる存在。

 

「来ましたね、ユウキさん」

 

 けれど今、俺はこれ以上なくドキドキしている。

 チュートリアル? 中ボス? 通過点? そんな考えを持つなど烏滸(おこ)がましいにも程がある。

 確かにジムリーダーである以上はそういう側面も持つだろう。ジムリーダーの仕事とは『勝つ事』ではなく『見極める事』なのだから。

 

「どもっす。約束通り挑戦しに来ました」

 

 しかしそれはあくまでも実力ある者の見方であり、初心者トレーナーでしかない俺が考慮する問題ではない。

 ただ全力でぶつかる。

 緊張も、不安も、焦りも、恐れも、喜びも、興奮も。全部をひっくるめてこのバトルに望む。

 

「緊張していますか?」

 

 ツツジが問う。

 

「そりゃもちろん。初めてのジム戦ですよ」

 

 俺は答える。

 意識せず敬語になってしまうのは相手に敬意を払っているからか、それともジムの雰囲気に呑まれているからか。

 

「ふふ、初めての人は皆そういう顔をします。でも緊張し過ぎはいけませんわ。さあ、深呼吸をして」

 

 言われるがまま深呼吸する。

 大きく息を吸って、ゆっくり肺の中の空気を吐き出す。それを数度繰り返した。

 

「どうですか? 緊張は解れましたか?」

 

「……どうだろ? でも普段の言葉遣いに戻す余裕は出来たかな」

 

「十分。本来ならジムトレーナーと数戦してもらって実力を計るところですが……今回は不要とします。──それでは、準備はいいですね?」

 

「──ああ」

 

 フィールドに立つ。

 お互いがボールに手をかける。

 胸の高鳴りが最高潮へと到達する。

 けれど不快感は無い。思考も回る。それなら全部を出し切るだけだ。

 大きく息を吸い込み、一気に吐き出すようにして告げる。

 

「──挑戦者ユウキ! ストーンバッジをかけてジムリーダーにバトルを申し込む!」

 

「いいでしょう! カナズミジム、ジムリーダーのツツジ! その挑戦を受けます!」

 

 宣誓と同時にボールを投げる。

 俺が出すのはもちろんキモリ(カイン)。そしてツツジのポケモンは──

 

「ラッシャイ!」

 

 頭部と一体化したゴツゴツとした丸い身体から直接腕を伸ばしたかのようなポケモン──イシツブテだ。

 洞窟に行けば大抵いるし、そこら辺を歩いてても転がっている事もあるポピュラーなポケモンだが、その実物理方面では侮れない力を持っている。代わりに特殊面は悲惨な事になってるけど。

 とりあえずダイノーズとか出されなかった事に内心安堵して。

 

「イシツブテ“まるくなる"!」

 

「あ、先手譲ってくれないんだ」

 

 何となくお約束として『先手は譲りますわ!』的な展開になるかと思ったけどそんな事は無いらしい。

 厳しくするとか言ってたしバトルの上では舐めプ無しって感じか。

 

「まあいいか。接近だカイン!」

 

 とにもかくにも近付かないと始まらない。『ぼうぎょ』を上げられたけどこっちのメイン攻撃手段は特殊だからあまり関係無いはずだ。

 でもそんな事はツツジも理解しているはず。防御面で意味が無い事を理解してなお“まるくなる"を選択する理由なんて一つだろう。

 

「“ころがる"!」

 

「そうだよな! 横に飛んで躱せカイン! そのまま──」

 

 イシツブテが身体を丸めて猛回転し、その勢いのまま突進してくるのを避けさせる。

 ゲーム時代から存在するいわゆる『まるころコンボ』。“まるくなる"の後に“ころがる"を使うと威力が二倍になるというあれだ。

 ゲームだとぶっちゃけネタでしかないコンボだが、現実にあっては普通に脅威と化す。何せ転がった時の速度が凄まじいのだ。

 この世界だと『すばやさ』の能力値って単純な速度だけじゃなくて反射神経とか小回りが効くかとかも含めて基準にしてるから、直線距離だと鈍足と言われてるポケモンでも信じられないくらい速かったりする。

 でなければサイホーンレースなんて競技は存在しない。

 尤も、いくら速かろうと来るとわかってれば避ける事自体は難しくない。

 一度転がればしばらく威力が上がり続ける代わりにその行動しか取れないのはゲームと同じ。故にその隙を突こうとして。

 

「はぁ!?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()イシツブテに面食らってしまう。

 そうか、そうだよな! 地形利用くらい当然あるよな! 

 

「くっそ、攻撃やめ! 回避に専念!」

 

 既のところでカインが回避に成功する。彼の俊敏性に感謝だ。

 さて、転がってる最中にすれ違いざまに“メガドレイン"で少しずつ削ろうと思ってたのにアテが外れた。

 ああも縦横無尽に動き回られては狙いをつけるどころではない。反射角を読んで正確に技を当てるなんて技術は今の俺には無いのだから。

 

「ふむ。ちゃんとこの戦法を知っていたのは素晴らしいですわ。さあ、どうやって突破しますか?」

 

「完っ全にテストだなこれ……! ちょっとハードル高くないですかねぇ!」

 

「もちろん普段ならここまでやりませんわ。特別待遇だと思ってくださいませ」

 

「そりゃありがとよ! 全然嬉しくねぇ!」

 

 文句を言いながらも頭を回転させる。

 “はたく"で軌道変更──は無理。初撃ならともかく勢いづいた今のイシツブテにまともにぶつかっても撥ね飛ばされるのがオチだ。遠距離攻撃を覚えていないのがここで響いている。

 なら“ころがる"が終わるまで待つのがいいか。幸い跳ね返る度に岩が破壊されて数は減っている。このままいけばピンボール戦法も使えなくなるだろう。

 が、しかし。

 

「そんな甘いわけないと思うんだよな……」

 

 ここまでやって『待つのが答えです』なんてガバガバ戦法を使うかという疑問。『いわ』タイプジムだから忍耐力を鍛えるという意味では正解なんだろうけど、まだ何かある気がする。

 

「『いわ』タイプ……地形利用……序盤の技……あっ」

 

 思考を回して一つの答えに辿り着く。

 だとすると待ったところで状況は好転しない。やはり攻めに転じる必要がある。

 でも俺の予想が正しければこの後の行動は──

 

「……ふむ。では答え合わせといきましょうか。イシツブテ!」

 

 カウント三十秒(五ターン)。その直前でイシツブテが大きく距離を取るように転がっていき、“ころがる"状態が解除される。

 そう。()()()()()

 

「“がんせきふうじ"!」

 

 イシツブテが岩を生み出して投げつけてくる。

 対戦でも非常にお世話になる“がんせきふうじ"は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 つまりどれだけ岩を壊してもその場で再生成・再配置が行えるという事だ。

 けれど“がんせきふうじ"の発生は決して早くはない。距離を取ったのはその時間を稼ぐ為。

 だから。

 

「“でんこうせっか"!」

 

 カインが俊敏な動きでイシツブテに肉薄する。イシツブテは技の硬直で動けない。捉えた! 

 

「組み付いて“メガドレイン"!」

 

 カインがイシツブテに組み付いて思いっきり生命力を吸い上げる。

 “メガドレイン"は威力の高い技ではないが、四倍弱点の特殊技を受ければイシツブテでは耐えられない。

 

「頑張りなさいイシツブテ! “たいあたり"!」

 

「ラッ……シャ──イ!!」

 

 “がんじょう"

 

 しかしそれはあくまでも特性が無い場合の話であり、イシツブテと見ればまあだいたいはこの特性になるだろう。

 体力が全快ならどんな攻撃でも気力で耐える。そんな『いわ』らしい特性を持つイシツブテが“メガドレイン"を受けながら自分諸共カインを地面に叩きつけようとして。

 

「離れて“はたく"!」

 

 捨て身の攻撃でも想定出来れば動きは読める。

 カインがイシツブテを離して“たいあたり"を回避。同時に“はたく"で勢いをブースト。

 地面に大激突したイシツブテは当然──

 

「──お見事」

 

 ──目を回して『ひんし』になっていた。

 

「特性もしっかり理解しているようですわね。大抵の初心者トレーナーは倒し切れると判断して攻めに傾倒するものですが」

 

「知識だけはちょっと自信あるんだよ。身に染みつく程にな」

 

 などと口では言っておくが内心ヒヤヒヤだ。

 体力も正確に把握出来るわけじゃないし、刻一刻と変化する状況に追いつくので精一杯なのだ。

 よくこれで相手をテストする余裕があるなと思う。齢十四でジムリーダーを務めるその才能は伊達じゃない。

 ……さて、イシツブテはまあいいんだ。ぶっちゃけこっちが有利すぎる相手だし、ほぼノーダメージで倒せたのも上々の成果。

 問題はここからだ。

 今回のバトルルールは二対二のシングルバトルだが、俺は現状カイン以外に手持ちがいない。

 それは食事代等といった金銭面や複数同時育成に自信が無かったからという理由がある。

 故に二匹目を使えるのはツツジのみであり、おそらくそのポケモンは。

 

「お疲れ様、イシツブテ。──いきますわよ、ノズパス!」

 

 予想通り、青みがかったモアイのような顔に真っ赤な鼻が特徴のポケモン──ツツジを象徴する一匹であるノズパスだった。

 

「こちらだけ二匹目を使うのは心苦しいですが──複数のポケモンを育てられるかもトレーナーの資質。ユウキさんには悪いですが手は抜きません」

 

「構わない。俺が選んだ事だからな」

 

 どちらにせよイシツブテ戦をダメージ無しで乗り切れた時点で実質一対一だ。ツツジの言う事は尤もだし不満は無い。

 

「ではいきます──“がんせきふうじ"!」

 

「“でんこうせっか"で回避! 距離を詰めろ!」

 

 ノズパスの周囲に岩が三つ生成され磁力によって勢いよく射出されるのを、“でんこうせっか"による瞬間的な脚力上昇で回避させる。

 基本的には攻撃技だが、状況次第で防御にも使えるから使い勝手のいい技だと思う。

 ただあくまでも瞬間的なものであって持続力が無いから“こうそくいどう"に比べるとやはり弱いと言わざるをえない。緊急回避程度に留めておくべきだろう。

 さて、ノズパスの生態といえば『常に北を向いている』という事で有名である。

 それはあの赤い鼻が強力な磁石になっているのが理由であり、当然この世界ではその生態がバトル中にも適用される。

 

「後ろに回り込んで“メガドレイン"!」

 

 もちろん絶対に北しか向けないわけではないだろうが、それでも必ず隙は生まれる。

 カインがノズパスに張り付いて緑の光と共に体力を吸い取っていく。

 

「なるほど、有効な手です! ならば足を奪わせていただきましょう! “でんじは"!」

 

「ズ──!」

 

「っ! 避けろカイン!」

 

 ノズパスがカインの攻撃を無視して振り向き、放射状に“でんじは"を放つ。

 攻撃技ではないがその効果は非常に強力であり、受けたポケモンの動きを制限する『まひ』状態にしてくる補助技だ。

 ある程度『でんき』にも適性があるノズパスなので持っている可能性はあったものの、まさかノーガードで技を受けて無理やり当ててくるとは思わなかったので判断が遅れた。

 必死に避けようとしてくれたカインだったが、少し及ばずそれに触れる。

 

「キャモっ!?」

 

「……しゃーない、すまんカイン! 切り替えていくぞ!」

 

「き、キャモ!」

 

 カインもまだまだといったところで戦意は衰えず、元気に声を返してくれる。

 ……とは言っても苦しい展開だ。カインの最大の武器である『すばやさ』を封じられたとなると、ここから攻撃を回避するのも難しくなる。

 つーか“でんじは"とか容赦無さすぎじゃないですかねツツジさん。これホントに初心者向けに調整してるんです? 

 

「さあ、ここからどう戦いますか!? “がんせきふうじ"!」

 

 当然ながら『まひなおし』を使う余裕なんてものは存在しない。息吐く間も無くツツジの苛烈な攻めが飛んでくる。

 回避を指示。ギリギリのところでカインが動く。けどこのラッキーも何度続くか。

 一度痺れたら一気に窮地に立たされるだろう。それにまだノズパスは余裕がある感じだ。

 おそらく後一発か二発は“メガドレイン"を当てる必要がありそうだ。こちらが『まひ』している以上あまり時間をかけたくない。狙うなら短期決戦。

 一発くらいなら“がんせきふうじ"も耐えるはずだ。無茶な攻めはさせたくないけどこれしかない。

 

「カイン、いけるか!?」

 

「キャモッ!」

 

「よしっ! “でんこうせっか"で突っ込んで“メガドレイン"だ!」

 

 半ばヤケクソな指示だがカインも俺の意志を汲んでくれたのか素直に従ってくれる。すまん! 終わったらすぐにセンターに連れていくからな! 

 カインが高速を発揮してノズパスに突っ込み、みるみるうちに距離が縮まっていく。目に見えて速度は落ちてるけど、それでもノズパスを逃がすほどじゃない。ここで決められれば──! 

 

「──ふむ……及第点。ですが──」

 

 ツツジの呟き。同時にカインの身体が雷に撃たれたかのように止まる。

 

「──運は味方しなかったようですね」

 

 カインは痺れて動けない。『まひ』状態になると時々強制的に動きを止められてしまうのだ。

 走っていたところに痺れがきたせいで地面を転がる。そしてノズパスの頭上には大量の岩石。

 攻撃が、来る。

 

「カイン、逃げ──っ!」

 

「いいえ、逃がしません(“がんせきふうじ")

 

 “ロックロック"

 

 カインの周囲に岩が落とされる。逃げ場を塞がれた。これはマズイ──! 

 

「“いわなだれ"!」

 

「っ!? ふざけ──っ!」

 

 最初のジム戦で使っていい技じゃないだろ、なんて叫びを出す間もなくカインに大量の岩が降り注いでいき、砂煙が撒き上がる。

 連続する落下音が鳴り止み、茶色の煙が晴れてカインがいた場所にあったのは岩で出来た小さな山だった。

 それはまるで墓を連想させるようで、俺の背中に嫌な汗が流れる。

 

「カイン! おい、大丈夫か! カイン!」

 

 必死に呼びかけるが返事が無い。

 ほんの一瞬、嫌な想像が浮かんだ。

 いや、流石にそれは無い。まさか公式のジム戦でそんな事件が起これば権利剥奪じゃ済まないのだから。手加減くらいは弁えてるはずだ。

 ……けど、これはどうあっても重症だ。悪ければ『ひんし』で、そうでなくとも体力赤ゲージ間近といったところだろう。

 

「……勝負あり、ですかね」

 

 ツツジが告げる。

 ……多分、戦おうと思えば続行は出来る。でも『まひ』を受けてて残り体力も少ない状態で無理をする必要があるのか? 

 勝ち筋も見つからない。運に任せた結果がこれだ。だったらここは素直に引いて明日に備えるのが賢い選択だ。

 戦うのは俺じゃない。だからここで無理をさせるのは俺のエゴでしかなく。

 拳をキツく握り締めて、ツツジに降参を告げようとして。

 

 ガラッと、山が動いた。

 

「っ! カイン!?」

 

 反射的に相棒の名を叫ぶ。

 返事は無い。たまたま岩のバランスが崩れただけのようだ。

 何故俺は『まだ戦える』なんて一瞬でも思ってしまったのだろうか。それはエゴだとついさっき自分で結論を出したじゃないか。

 ああ、それでも。

 

「なあ、カイン。まだ戦えるのか……?」

 

 返事は無い。けれどどこかで何かが繋がる感覚。

 悔しい、と。

 このままでは終われないと、そう叫ぶ声が聞こえた気がした。

 

「なら……まだ一緒に戦ってくれるのなら、俺は──!」

 

 山の隙間から光が漏れ出す。

 暖かく、そして力強い光だ。

 

「まさか……これは……!」

 

 ツツジが何かに気付いたように声をあげる。きっとそれは正しいと、確信にも似た予感があった。

 光はどんどん明るさを増していき、最後に一際大きく輝いて岩山にいくつものラインを奔らせる。

 数瞬遅れて岩山が粉々に吹き飛んだ。瓦礫の中、その中心に立つのは緑の影。

 体長は元の二倍程に伸び、頭や腕、尻尾からは鋭い葉を生やしている二足歩行の爬虫類といった風貌のポケモン。

 

 キモリの進化系。密林の狩人。その名は──

 

「──ジュプトル……!」

 

「──ジュアアアアアアアアア──ッ!!」

 

 ジュプトル(カイン)が咆哮する。

 まだまだ自分は戦えると誇示するように。自分に任せろと強く大地に立つ。

 

「いけるか、カイン!」

 

「ジュッ!」

 

 はっきりと頷くカインからは『まひ』の気配が消え去っている。ポケモンの進化は細胞単位で変化するから、その過程で治療が行われたのだろうか。

 ……いや、今はそんな理屈はどうでもいい。カインが闘志を見せている。なら俺はそれに応えなければならない。

 

「……なるほど、いいものを見せてもらいました。では最後の勝負といきましょう!」

 

 ツツジが吠える。そうしてノズパスが腕を掲げた。

 

「“いわなだれ"!」

 

 先程よりも大量の岩石が生み出される。

 気丈に振舞っているがカインの体力だって限界のはずだ。あれを受ければ間違いなく倒れてしまうだろう。

 けれどどうしてか負ける気がしない。負けるイメージが綺麗さっぱり消えて無くなってしまった。

 カインがフィールドを疾走する。真っ直ぐ、最短距離でノズパスの元へと突き進む。

 その道を阻むように“いわなだれ"が降り注いだ。

 元より回避する気は無い。きっと今のカインはそんな事を望まない。

 だから俺はその意を汲み取る。

 

ぶった切れ(“リーフブレード")!」

 

 カインの両腕の葉が鋭い刃へと変じ、降り注ぐ岩石を切り裂いていく。

 障害など無いと言わんばかりに自らの道を切り開いて突き進む。

 やがて“いわなだれ"を全て捌き切り、緑の燐光を迸らせながらノズパスの足元へと踏み込んで。

 

 “しんりょく"

 

 “リーフブレード"

 

 すれ違うように一閃した。

 

「ズ……」

 

 どさり、とノズパスが重い音を立てて崩れ落ちる。

 立ち上がる気配は無い。完全に目を回している。だから。

 

「……勝負あり、ですわね」

 

 ツツジが苦笑する。

 

「おめでとうございます。貴方の勝ちですわ」

 

「あ……」

 

 告げられた言葉をゆっくりと反芻する。

 俺の、勝ち。

 俺が、勝った……? 

 

「おめでとー! ユウキくーん!」

 

 観客席からの声に振り返る。

 そこには手を大きく振って俺の勝利を喜ぶハルカの姿があった。

 

「は……はは……」

 

 気の抜けた笑いが出る。

 同時に何だか力も抜けてその場に座り込んでしまった。

 

「あら、大丈夫ですか?」

 

「ああ、うん。ちょっと力抜けただけで……」

 

 ツツジが心配そうに声をかけてくるのを手で制する。

 未だ実感が湧かないが。

 とりあえず、ハルカの方に笑みを作ってピースサインを向けておく事にした。




評価や感想お待ちしておりマース。
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この作品(ほぼ)初のバトル回だけどテンションが普段と違いすぎて温度差で風邪引きそう。
あとお気に入りが1000行きました。やったー。




ひっそりアンケートするんだけど多分後で消すから暇で物好きな人だけ投票してください。

今回の進化ちょっと突然じゃなかった?

  • 別に感じなかった
  • ちょっと思った
  • 事前にキモリとの描写がもう少し欲しかった
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