ウルトラマンオーブ THE MISSION SSSS.GRIDMAN 作:火野ミライ
奇妙な青年と遭遇してから一夜明け、翌日のお昼時。リサイクルショップ【JUNKSHOP絢】の奥にある喫茶スペースの座っていた。足をプラプラさせ、店の中を見渡して最終的にある一点を見つめる。
そこに置かれていたのは、電子部品が乱雑に組み合せられ、内部構造がむき出しになっている昔の自作パソコン。あと何故かパトランプが付いている。
「最近の子はみんな、昔のパソコンが気になるのかい?」
なんとも表現できない気持ちでパソコンを見つめていたらカウンターの向こう側から話しかけられるユーリ。視線を向けると、赤みを帯びたショートヘアーに黄色い目玉の耳飾りが特徴の女性が完成した料理を彼女の前に並べていた。
「ほい、気まぐれランチセットお待ち。暖かいうちに食べな!」
女性の名は【
「美味しいです」
見た目相応の表情を浮かべるユーリを優しく見守る織江。そんな愛娘を見守る母の様な瞳を向けられているとも知らず、ユーリは無心に食事を続けるのだった。
一方、【ツツジ台高校】の1年E組のクラス。周りの生徒が昼食を食べる中、上の空な生徒が一人。彼の名は【
「外で食おうぜ」
響に話しかけるのは同じクラスの眼鏡をかけた男子生徒【
「いやー、ご飯無くて…」
「飯忘れたの?」
「いや、学校のことでいっぱいいっぱいで」
「これ上げる」
隣の席に座っていた女子生徒から、スペシャルドックと呼ばれるパンが響の机の上に置かれる。
「響君、武士は食わねど高笑いってやつ?」
「え~と…………」
響が視線を向けるとそこには薄紫色の髪を肩辺りで切りそろえ、制服の上にパーカーを重ね着し胸元まで開けるという特徴的な服装をしていた。
「【
「いや、ホントに何も思い出せなくて……」
何を隠そう響も昨日の夕方、目が覚めたの時にはすでに記憶を失っていた。自分の置かれた状況をどこか他人事のように感じていながらも、内海とある女子生徒のおかげでなんとか日常を過ごせてる現状。そんな彼にアカネは手に持つスペシャルドックをすすめるのだったが……………
「あ!ヤッバイ!!」
誰かがこぼした言葉。キャッチ損ねたボールは宙を舞い、何かに導かれるかのようにスペシャルドックを持つアカネの手に当たる。その瞬間、教室は不気味なほどの静寂が訪れ、誰一人として動くことができなかった。ただ形が崩れたスペシャルドッグが転がる……
これはありふれた日常_____だった…
時間は立ち、太陽の光が沈むころ………
「ここにありましたか…」
不気味なほど静かな空を飛ぶ一つの人影。ショートヘアの少女はゆっくりと高度を下げビルの屋上へ降り立つ。そのまま雨水のを逃がすための溝へと歩みを進める。あまり掃除されてないのが一目で丸わかりな溝に日の光を反射する手のひらサイズのナニかが落ちていた。
それを手に取り軽く汚れを払う少女。その瞳に映るのは黒を基調し、前面のほとんどが光るを反射する明るい銀色に赤いライン、特徴的な青色の輪。指をひっかける突起があり、そこから横にスライドする事で展開。引き出されたパーツにはカードを収納する溝があり既に何枚か入っていた。
「初代ウルトラマンとこれだけですか…………」
入っていたカードを手に取り扇状に広げを1枚1枚確認する。一番上、少女に【初代ウルトラマン】と呼ばれたのカードには銀と赤の身体、胸には円形の発行体を持つ人型が描かれていた。1枚の白紙のカードを挟み、黒い身体に黄色の角を持つ獣、背中の水晶体が特徴的白い身体の獣、青い体に3つの角を持つサイバーチックなロボットが描かれているカード計5枚。
それらの名称を示すと思われる文字は、地球上に存在するものには当てはまらない不思議な文字。カードをもとの位置の戻し、展開していたパーツを押し戻して小さく呟く。表情こそ変化してないがその声には落胆を隠しきれてはいなかった。屋上のフェンスへと腕を乗せて背中を預け、その青い眼差しで星々が顔を出し始めた空を見上げる。
「ッ!」
それから10秒も経たずして後方へと振り返る。その頬には汗が一滴ながれ、表情には焦りや緊張がわずかに浮かんでいる。その水色の瞳には燃える町と巨大な影が映し出されていた。
アスファルトが砕けるほどの大きな揺れ。電線の上で休んでいた鳥たちが身に迫る危機から遠ざかるため、その場から飛び去って行く。火の手が上がる町中、道路を走る車がミニカーと思えるほど巨大な影が悠々と足を進める。
ピンクと青のパステル系色の皮膚を持つ70メートルほどの巨体。身体に対して直角に伸びた長い首、竜の様な顔、頭部から生える角や手足の爪は模型などで使用する針金を想起させる。足元で逃げる人々など気にも留めずに口から放たれたボール状の火球。山なりの軌道で放たれたそれは、一つを除き着弾と同時に爆発する。
【怪獣】、誰しもがこの二文字を浮かび上がらせながら恐怖と絶望に包まれた表情に染まり、この惨劇から助かろうと悲鳴を上げながら逃げるのだった。放たれた火球が不自然にバウンドし、響達が通う学校を襲う。
その様子を人通りの少なくなった大通りで見つめるは金色の髪を靡かせるユーリ。やがて視線を自身が手に握りしめる不思議な形をした剣へと向ける。
(……なんだろうこの気持ち)
心の奥底から湧き上がるは未知なる感情にして、懐かしいく感じる物。風に流れてくる聞こえるはずのない悲鳴。そして記憶を持たない少女は自身の内から湧き出てくる衝動に任せて騒動の中心地へと走る。その最中、同じ感情を胸にした響とすれ違った事など互いに気にも留めずに。
一方その頃、暴れる怪獣に向けて青い瞳の少女もまた向う。柴に染まる空の下、彼女が身にまとう紫を基調とした赤いラインに黒いアーマーの鎧は溶け込んでいるのか、飛翔する彼女を気にする者はだれ一人としていなかった。
「……っ!」
そして少女と怪獣の距離が数キロメートルまで迫ったその時、新たな異変が起きるのだった。突如として眼前に広がる夜の暗がりを照らす閃光。光の中から姿を現すは電光の輝きを放つ巨人。彼が大地に降り立ったその瞬間、大地が大きく揺れる。
グレーやブルーを中心とした色合い、瞳は黄色に輝く。身にまとったメカニカルアーマー、背中や足裏にはがり、全体的にロボットの様な50メートルの巨体が怪獣とにらみ合う。やがて巨人は駆け抜け、雄たけび上げる怪獣へと跳びかかる。
「【グリッドマン】……」
その雄姿を……いや巨人の姿を目にした少女の口からこぼれる単語。小さく呟かれたその言葉は彼らがぶつかり合う音によってかき消された。
少女にグリッドマンと呼ばれ巨人は怪獣の頭部を捕まえエルボーから膝蹴りと打撃を続ける。その反動をうまく利用した頭突きと言うより、その特徴的な首を鞭のように振るった一撃によりグリッドマンはビルに巻き込んで倒れこんだ。
起き上がる暇を与えず放たれた火球をもろに受け、額に輝くランプを点滅させる。ランプの点滅と共に周囲に鳴り響く音色。それはグリッドマン自身のピンチを示しいるかのようだった。その様子が良く見える道にユーリがやってきた。
滑るようにブレーキをかけた為かわずかに土煙が舞い上がる中、ユーリは自然な動作で剣を夜空に。すると刃先を中心に広がる光。それはやがて光の柱となり天へと延びる。光の柱の中でユーリはその姿を超人へと変えた。
「ジギェーーーーッ!」
警戒の声を上げ怪獣の視線は新たな光へと向けられる。光が収まるとそこに立っていたのはグリッドマンと同じく50メートルの巨人。その姿グリッドマンと比べると簡素と感じられる赤と銀のシンプルなカラー、胸部にはOの字の発行体が青く輝く。
「ずいぶん懐かしい姿だなぁ~ ………【ウルトラマンオーブ】」
車が突っ込み穴の開いたビルにある喫茶店のテラス席。昨夜ユーリに声をかけた紳士服に身を包む男性がどこか遠くを見つめるように呟く。その脳裏に浮かび上がるのは巨大な木を背に戦うウルトラマンオーブと呼ばれた巨人の姿だった。
目がぐるしく変わる現実。人々はただ約歳を過ぎることを願うばかり。木に引っかかていた赤い風船が風に押されて空を泳ぎ始めた。浮かび上がる風船を背に怪獣の懐へと迫ったオーブは先のグリッドマン同様、接近線へと持ち込む。
「ショッワ!」
(なんで、私は戦える?)
振るわれる首の下を潜り抜け側面に転がり込むとそのまま尻尾を掴みジャイアントスイングの要領で振り回す。そのままグリッドマンと引きはがすように既に瓦礫の山と化したビル群へと投げ飛ばす。白色に輝く瞳をグリッドマンに一度向けた後、すぐさま瓦礫を押しつぶし横たわる怪獣の背中へと飛び乗る。
オーブを振り下ろそうともがく怪獣の背中に伸びる突起物につかまりバランスを取りながら幾度も拳を叩き突け周囲に火花を散らす。やがて振り下ろされたオーブは受け身を取りながら着地。
(この姿での戦い方を知っている…!)
どこか夜空を思わせる不思議な空間。精神世界とも呼ばれる現実世界とはわずかに時間の流れが異なる【インナースペース】でユーリは一進一退の戦いの最中、自身に対しての疑問を強めていた。その疑問が晴れるまま突進を繰り出す怪獣の姿。
頭の中で浮かべた通りに受け流し、怪獣の胴体に向けて炎を纏った蹴り【オーブファイヤーキック】が突き刺さる。悲鳴を上げながら後退する怪獣。終点が合わぬその瞳をオーブに向け火球を連射。
「……ッ!」
大きく回避しようとして視界に映る。自身の後方、回避した火球が命中するであろう場所には、避難した人達が集まっている事に。すぐさま正面へと向き直り腕を左右に広げ円状の障壁を展開し防御に徹する。次々と絶え間なく放たれる火球に障壁にヒビが入り、押され後退していく。
胸のランプが赤く点滅を始め、グリッドマンと同じく自身の危機を周囲に知らせる音色が周囲に鳴り響く。
「まだ…… 終われない……」
自分自身を鼓舞するかのように無意識に音場を絞り出したユーリ。障壁が砕け散っても両腕を大きく広げその巨体で火球を受け止め続ける。
(体が重い…… 学校が燃えている……ッ!)
一方そのころグリッドマンは鉛の様に重たい体でツツジ台高校を見つめていた。グリッドマン中で響く声は彼自身の物ではなく、現座同化している響裕太の物。響が朦朧とする意識の中、今もなお一方的に火球を受け続けているオーブに視線を向ける。
『……聞こえる』
そして脳裏に届いた言葉にグリッドマンが反応し、身体に力が戻る。
「聞こえる…… 六花と内海の声が!」
記憶を失ってからも支えてくれる友の声に響は立ち上がる!
立ち上がったグリッドマンは大地を轟かせ、怪獣とオーブの間に立つと迫りくる火球に向けて拳を振るう。破裂した火球が上げる黒煙を背にグリッドマンとオーブの視線が交わった。
グリッドマンが差し出した右手を掴み立ち上がったオーブ。言葉を交わすことなく2体の巨人は並び、燃える街の中で雄たけびを上げる怪獣をにらみつける。
『あの怪獣の弱点は首の付け根だ!』
グリッドマンの声。それが戦いの再開を知らせるコングとなった。オーブもグリッドマンも消耗した体に鞭を打ち一気に距離を詰め拳を振るう。怯んだ怪獣の頭部をグリッドマンが掴み取ると側面に回り込んだオーブが赤色の回転刃【オリジウム光輪】を一寸の狂いもなく首の付け根に向け放つ。
投げられた光輪は風を切り裂きく怪獣の首を切断。グリッドマンが投げ捨てた頭部が学校の方へと転がるのを他所に宙へと跳び上がったグリッドマンは【超電導キック】を放ち、残った胴体を蹴り飛ばす。頭部を失ってもなお活動を続ける怪獣に対し2体の巨人が考えた事は一つ!
『グリッドォォーーーー』
胸のクリスタルの前で両手で円を作り光を生み出すオーブ。
両腕を大きく内側に回し、腕をクロス。左腕に装着されたブレスにエネルギーを溜めるグリッドマン。
「ショッワ!」
『ビィーーーーム!』
オーブはそのまま腕を十字に組み、グリッドマンは左腕のブレスを怪獣に向ける。そして放たれる閃光は必殺光線。【オリジウム光線】と【グリッドビーム】は螺旋状にかみ合わさり怪獣へ。両者の必殺の一撃を正面から受け呆気なく爆発すのだった。
少しの間、怪獣だった焔の輝きを見つめる。その後二人の巨人はその姿を光にして夜空へと消えた……
人知れず光の玉となり地上に戻ってきたユーリ。その額には雨粒の様な汗をかいている。いまだ混乱が収まらぬビル街を背に膝から崩れ落ちた。
「はぁ… はぁ… はぁ…」
手に持つ黒の持ち手に銀の刃、金色輝くリングを持つ赤い装飾のされた特殊な形をした剣を杖代わりに何とか立ち上がるものの肩で荒く呼吸を繰り返す。
「やっと見つけましたよ、ユーリ」
そんな彼女に語り掛ける影。声の聞こえて方に視線を向けるとそこに立っていたのは水色の瞳をした少女。彼女はユーリへと優し気な笑みを向け、安堵したかのように溜息を吐く。親し気に語り掛けてきた少女にユーリは語りける。
「…だれ?」
その言葉を呟いてすぐ、疲労で気絶するユーリ。その身体を慌てて受け止めた少女は起こさぬよう小さく呟いた。
「また記憶損失ですか……」
苦言をこぼしたその表情は手のかかる妹の世話をする姉のようだった。
ー次回予告ー
ツツジ台で起きた激戦。しかし翌日には戦いの爪痕はどこにも無かった。そう文字通り。そのことに疑問を覚えた一組の学生が調査を始める。
一方、自身の力、自身の記憶、自分自身。そのすべてに疑問を掲げるユーリ。事態の解決が見込めない中『因果応報怪獣デバダダン』が街で暴れる。
内に秘める激情に今は身を任せる時。ユーリ、そして響裕太の選択は?
次回、ウルトラマンオーブ THE MISSION
電光雷轟、闇を撃つ!