ウルトラマンオーブ THE MISSION SSSS.GRIDMAN 作:火野ミライ
「え~~ なんでなんで、どうなっての?」
セミの声が響く青空の下、響と内海は狐につままれたか様に視界に映るそれを見つめていた。
「昨日学校、燃えてたよね………」
「なにしてんの?」
そこにやって来たのは一人の女子生徒。制服に身を包み、肩元まで伸びた黒髪に青い瞳を持つ彼女の名は【
「いや、ほら」
「あ __嘘、学校治ってるじゃん…………」
「流石におかしいでしょ」
その質問に対し響は言葉でなく視線で答える。二人の視線が向く先、そこに堂々と建つ校舎。それを見て六花もまた声を失った。彼らがここまで驚いているの理由、それは昨夜まで遡る…………
街を蹂躙する怪獣に背に胸を焦がす思いに身を任せ、自身を呼ぶ声に導かれ走る響。彼の目指した場所は六花の実家でもあるジャンクショップだった。息を乱しながらもたどり着いた響は店内に置かれたジャンクPCへと語り掛ける。
「グリッドマン、俺を呼んだよな!」
彼の言葉に呼応するかのように独りでに電源が付きモニターに映されるグリッドマンの姿。響を追いかけて来た内海と六花が目にしたのは、ジャンクに吸い込まれた彼の姿だった。それから間もなくしてモニターにはグリッドマンへと変身した響が怪獣と戦う姿。
まるでヒーロー番組のような出来事に内海が一人盛り上がる中、苦戦を強いられるグリッドマン。地面へと倒れこんだ彼を守るかのように出現した赤い巨人の出現に先程以上にテンションが上がった内海を他所に、六花は画面に不安の視線を向ける。
「ウ、ウルトラマンオーブ!? 本物!しかもファーストじゃん……ッ!」
「___響君」
巨人・オーブが火球を受け止める中、グリッドマンが目にする景色がモニターに映される。それは怪獣の一撃により無残にも崩れ燃える学校だった。その光景に息を詰まらせる六花、嘆く響。一方の内海は己の知恵を引き絞り、怪獣の弱点を導き出す。しかし響の声は聞こえても、彼らの声は響には届かない。
そんな中で彼らが取ったのはキーボードのタイピングによるメッセージの送信。ジャンクを通して変身したからこそ取れる手段であった。六花の早打ちにより内海の声を受け取ったグリッドマンはオーブと共に怪獣を撃破。それから夜が明け、冒頭へとつながる………
「うーん……」
木造の屋根の下、窓から入ってくる日の光を受けユーリは目を覚ました。眠たげな瞼に溜まる雫を手の甲で拭い、布団から畳半を起こしてゆっくりっと辺りを見つめる。少し傷んだ壁は建物の歴史を感じさせ、布団が敷かれている畳床は壁や天井と違い、青々と輝き真新しさを強調していた。
部屋の隅には丁寧に畳まれた3人分の布団。そして窓の反対側には部屋の出入り口の襖。昨日の疲れからかふらつく体を動かし襖を開くユーリ。視線の先に広がるの景色は先程とは違って洋風の部屋。その中でユーリに背を向けるように一人用のソファに座り机へと向かい合っている少女の姿。
「よく眠れましたか?」
ユーリの存在に気が付いた少女は振り返る。眼鏡越しに見つめる瞳は優し気にユーリを見つめていた。小学5・6年生ぐらいの少女を目に頭の中に浮かび上がる何か。
「___昨日の人?」
考えを巡らせた末に出てきた疑問に頷くことで肯定する目の前の少女に心の奥底で何か引っかかる感覚を覚えたユーリ。その答えを引き出そうと再び思考の海に沈もうとしたところを少女自身に遮られた。
「考えるのは後にして先ずは風呂に入りましょう」
「え?」
「風呂上がりのラムネは別格ですよ」
静かに立ち上がり眼鏡を机の上に置いた少女はユーリの手を握り歩き出す。その力に引っ張られユーリも歩き出した。ここまで大して表情が変わらず語りかけてくる少女に向けてユーリは尋ねる。
「あ、あの! あなたは?」
「___そうですね。いろんな呼び名がありますが今はシュテル、シュテル・スタークス」
数秒の沈黙の後に【シュテル・スタークス】と名乗った彼女の瞳は表情に出ることない感情が浮かび上がっていた。シュテルの背中を見つめるユーリにそれを知る事は出来い。
昨日の戦闘、それどころか被害者であるクラスメイトが最初からいない事になっている。響達がそれに気づいたのはすぐだった。朝のHR前にクラスメイトとの会話、一晩で元通りになった事に対し内海はグリッドマンへ尋ねてみる事を提案、響もまたそれに同意する。
「えっ! ちょっと、今日お店休みなんですけど」
それに苦言を申すのは六花だった。グリッドマンが宿るジャンクはお店の商品。彼の元に尋ねるのであれば自然とお店の中へと入らればならないのだ。
「え~、じゃあ開けてよ」
「今日、予定あるんだけど………」
「この状況で危機感無さすぎでしょ。おかしいと思わないんですか~?」
「いや思いますけど~……」
次の授業に向けての移動の最中に行われる会話。そんな男女の会話にちゃちゃを入れる二つの影。
「おぉ~~! 仲いいじゃん」
「ごめん、今日お店開けなきゃいけなくなった」
「まぁ、いいよ~いいよ~ 気にすんなし」
「また今度~」
こげ茶色の髪に猫目・猫口が特徴の【上月奈美子】こと【なみこ】、六花と比べ緑みがかった黒髪に口元覆う大きなマスクが特徴の【野村蓮】こと【はっす】。どちらも六花の友人であり、異性と会話を繰り広げる六花をからかうように笑いながら去って行く。その様子に嫌味などは無く、その中の良さがうかがえる。
「ちょっと待って、毎日家来る気?」
そんな友人達の背中を見ながらふと頭によぎった疑問を内海に尋ねる六花。
「おう、グリッドマン同盟の秘密基地だしな」
「なにグリッドマン同盟って? 気持ちわる」
そんな彼らのやり取りを後方を歩くアカネが静かに聞いていた。
「______グリッドマン」
それから少し時間は進みお昼時、薄汚れた路地裏には縁のなさそうな清潔な紳士服を身に纏う男性が一人歩いていた。不意に男性が歩みを止めると乱雑に積まれた廃材へと視線を向ける。少しの合間思考すると男性は廃材の山を蹴散らしてその下に埋まっていた物を手に取った。
「___フフッ」
黒い手持ちに赤と銀の装飾、なにより目立つのは輪っか状になったクリアパーツ。大の大人が持っても大きなアイテムを見つめ男性は心の底から思わず奇妙な笑い声がこぼれる。そのままアイテムをスーツの内側へとしまおうとしたその時、後ろから声をかけられた。
「それボク達のなんだけど」
「やぁ、ムルナウの事件以来かぁ?」
水色の髪に青いリボンでツインテールにし、水色のパーカーと青色のハーフパンツと言うラフな格好をした少女が赤紫の瞳で彼を背中を睨みつける。そんな彼女に向け久方に会った知り合いへの軽いノリで振り返りざまに言葉を返す。
「オマエと仲良く喋る気は無いよジャグラー!」
「釣れないな~、レヴィ?」
どこからともなく取り出した水色に光輝く刃を振り下ろす【レヴィ】と呼ばれた少女。対する【ジャグラー】と呼ばれた男は同じくどこからか取り出した刀で受け止めた。刃と刃がぶつかった瞬間、足元のアスファルトはひび割れ、周囲に転がっていた様々なゴミが遠くへと吹き飛ばされる。
バク宙の要領で距離を取ったレヴィは地面を蹴り再び距離を詰めて刃を振るう。力任せに振るわれる連撃を受け流し、立ち位置を変え的確に技で裁くジャグラー。刃を振るった後隙を狙い、レヴィの腹部目掛けて迷いなく蹴りを入れる。
「っぐ!」
「どうした?取り返してみろよ。これも、ユーリの記憶も、アイツも全部」
「オマエに言われなくたって!」
刀を持てとは反対の手で持つソレを見せびらかしながら挑発するジャグラー。それに対し得物を剣から鎌へと変化させ立ち上がるとその場で大きく振るう。すると光の刃が放たれ高速で回転、掠った壁に切り傷を刻みながらジャグラーへと迫る。
その一撃を人間とは思えない程の跳躍力で回避。そんな彼の姿を目にしながらポケットの中から胸部にYの様な赤いクリスタルが特徴的の戦士が描かれたカードを取り出し、着地した直後のジャグラーへと向ける。するとカードから一筋の光の鞭が伸び、左手に持つアイテムに巻き付くと一気に手元へと引き寄せた。
「忘れてたぜ、お前がアホだけどバカじゃないって事を……」
「なにを~~!」
「特等席で観戦しているから、精々がんばれよ」
怒りで声を震わすレヴィに背を向け闇の中へ消えたジャグラー。その後を追おうと一歩踏み込んだものの直ぐに振り返り、彼とは反対方向へ歩み出したレヴィ。強風が土埃を上げた直後、路地裏には先の戦いの爪痕は残っていなかった……