デュエル・マスターズBLANK   作:佑ノ宮 末法

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第九話 クロス・ジェネレーション

~V・バミューダ突入前~

 

「……で、なんでV・バミューダに行くんだよ。」

素朴に突っ込むアイリに、ヴィーヤが答える。

 

「大きく分けて、二つあるんだ。一つは、問題の根本的な解決。二つ目は、ブランカ君の能力についての調査だ。」

 

「ゲンジョ……、あーもうわかりやすく言ってくれ。」

 

「―そうだね。『今起こってる“やばい”現象を何とかしてブランカ君とも合流する。』これでいいかい?」

 

「最初からそう言え。」

 

アイリは海を駆けながらぼやいた。

 

「ごめんね。時間がないから手短に詳細を言おう。」

 

ヴィーヤが説明する。

 

「水文明の専門家である僕からの見解を言うと、現在の水文明は全域が『V・バミューダ』になってる。そしてその首謀者は()()()()()()()()()()()()だ。おそらく……水文明を一旦ぐちゃぐちゃにして参加者諸共レースを止めさせよう。というのが魂胆だろう。」

 

「それって……水文明のクリーチャーたちはどうなんだよ!?」

 

あまりのいびつさに、アイリは驚愕してしまった。

 

「開催前に、長であるカナロアからレースに出ないよう勧告が水文明全域に出された。まああくまで『勧告』だから出てる水文明のクリーチャーもいるっちゃいる……。今水文明に住んでるクリーチャー達はおそらくカナロアの事だからなんらかの処置をしているだろうね。」

 

「だろう、って……。」

 

「レジスタンスに言われちゃ面目丸つぶれだね……。実際カナロアとはそりが合わないんだ……。僕のせいでもある……。」

 

少しの静寂が訪れ、ヴィーヤがそれを破ろうと話をかける。

 

「とりあえず、だ。そのV・バミューダを何とかするために、まずはオリジナルのV・バミューダへ突入する。あらかじめ君のバイクにも改造を施しておいた。」

 

「改造ってどういうことだよ。」

 

その時、ヴィーヤのスイッチが入ってしまったのか―。

 

「『次元固定装置』さ。バミューダにいる間はあらゆる事象や生き物に『時間の組み換え』現象が起こる。これは存在するだけで30秒前の世界や1時間後、100年後など、色んな時間軸の世界に飛ばされ続ける現象なんだ。当然時間軸の跳躍なんてそのまま起こってしまえばタイムパラドックスで体は消滅する。バミューダにはもう一つ、『並行世界の発生』もそこで起きているんだ。ある一定の場所が、自分たちがこれまで生きていた前提条件や法則が異なる空間へと変貌する。水の入ったコップの向こうに指を入れても見えない状況。要は『異なる時間軸の並行空間が存在するが、そこで起きる異常な現象のみしか見えず、中に入っているクリーチャーや物体はこちら側だと視認するのがほぼ難しい』状態になってる。ブランカ君もこの現象にはまってはぐれたんだろう。つまり今回のいきさつは、何者かが水文明をバミューダへの上書き、元居た時間軸とは……。」

 

「わぁ~ッ!!ちょっと待ってちょっと待って!……とりあえず、バイクの改造でバミューダの中でも乗れるようになったってことでいいか?」

 

 

「む、ごめんね。まあそういうことだ。バミューダに突入すると、途中で僕は別行動になるからアイリ君は図書館に行ってくれ。手がかりとなる文献の場所もメモに書いておいたからそれに目を通すように。」

 

「お、おう……、ってどこ行くんだよ。」

 

少し振り返り気味に質問するアイリに、ヴィーヤが返す。

 

「ああ、とてもとても、大事なところさ。」

 

~~~~~

 

一方そのころ、

 

ズァキェルとブランカは、漂着してしまった島で情報交換をしていた。

「闇文明……、あの『怖いの』が長って聞いたのですけれど……。」

 

「ああ、『あれ』か?アレぁ俺のダチだぜ。」

 

さらっと言ってしまった割にはすごい事実を聞いてしまい、ブランカは少し戸惑った。

 

「すごいですわね。……あの調子だと、お付き合いするのも、―その、大変でしょう?」

 

「別に、あいつァあいつで大丈夫ぜ。」

 

あの『マドンナ』と隣にいてどう生きてきたのか、現時点では現状の問題解決の次に気になってしまうほど、『大丈夫』という情報が信じがたかった。

 

しばらくして、ブランカはズァキェルにV・バミューダのことについて教えた。

V・バミューダの性質、そして自分たちがおそらく()()にいること。一からブランカは知っている情報を開示した。

 

「ほえ~……『V・バミューダ』ねぇ……。」

 

「はい。ズァキェルさんは何らかの拍子でバミューダに漂着。私は知らない間に波にもまれて島に上陸……。現時点ではそう考えるのが妥当です。……私の衣服と身辺が一つも荒れていなかったのが唯一の矛盾ですが……。」

 

「よく考えるもんだぜ。さすがは『麗しき炎の知恵者』!」

 

「それって……。」

 

「おう?気ぃ悪くしたか?まあわかるぜ。人に勝手に―。」

 

「いえ……、その二つ名は火文明でしか知られていないはず……。」

 

何か図星だったのか、ズァキェルは少し言葉を濁した。

 

「……昔に、縁があったんだぜ。火文明に。」

 

少ししてから、ズァキェルがブランカに訊いた。

 

「ああ、そうだ。お前にどうしても聞きたいことがあんだけどよ。」

 

 

~~~~~

 

久しくして、ヤツが来た。

 

「やあ、■■■■■■。久しぶりだね。調子はどうだい?」

 

今度は何か()()を持ってきている。嫌な予感がする。

 

「お前に用はないと、ずいぶん前に行ったはずだ。」

 

「失礼だなぁ。私が君に用があるんだ。とはいっても、手ぶらで来るのは()()()()では失礼にあたるらしい。ので、いくつか手土産を持ってきた。」

 

そういうと、サジェスは()()からまた別の()()を三つ持ってきた。

 

「『ギュウジン丸の海幻』、『ファイブ・オリジン・ドラゴン』、『「戦慄」の頂 ベートーベン』……のそれぞれ1/10模型だ。そこ等辺に置いておくので、気に入ったときに愛でるといい。」

 

予感は的中した。こんな利にもならん物体は私の部屋に入れる余裕もない。

 

「邪魔だ。すぐに持っていけ。」

 

「なんと!心外だなぁ。これだけの模型。十分に苦労したんだよ?情報を取ってくるために君のところの『V・バミューダ』の現象を応用するのにどれだけの時間を要したか……。」

 

クリーチャーを相手にするとろくなことがないとは、私がこれまで生きてきた中での教訓だが、今日この時間でそれをまた一度肌で感じている。一度知らん奴を入れてしまったら体を見られてました。なんてどういったふざけた真似をしてくれる……。

 

「馬鹿にするのも大概に……、」

 

「ああ、問題ない。体を覗いた対価として、君に『薬』を打っておいた。」

 

この野郎。人が眠っている間に、要らんことを。

 

「薬?」

 

「有体に言えば『安定剤』だ。君の計画に、いずれおおいに役に立ってくれる。もうそろそろ効き目を発揮するんじゃないかな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()からね。」

 

前言撤回……、というべきか?間違いなくこいつは私の現状の問題を正確に認識している。

 

いい機会だ。せっかく土足で入り込んでもらっている。いいように利用させてもらおう。

 

「ほう……、『あれ』か。しかし『あれ』は好きにのぞかせてやればいいものを」

 

「■■■■は君にとってのアキレス健だ。矛盾に気づいてしまえば、君がどうなるかわからないだろ?」

 

「ふん……。過ぎたものは仕方ないが……、その薬とやらで、私がどうにかなって見ろ。一発で殺してやる。」

 

「大丈夫さ。」

 

そのクリーチャーは振り向きながら感情の無い、見えない微笑みを私に見せた。

 

~~~~~

 

準備を万端にしたアイリ、ヴィーヤ組は、いよいよ目的地へ突入しようとしていた。

 

「じゃあ、カチ込むぞ!」

 

「ああ、よろしく頼む!」

 

そうして、アイリのバイクはしぶきを上げて島を出て行った。

大荒れの海原を、予測不能の波を、アイリは難なくかわして進んでいく。

 

そして、ヴィーヤがとんでもないことを言い始めた。

 

「申し訳ない……。言い忘れてたことがあるんだけど。」

 

「おう。」

 

「この海域の性質上、当然過去からも迷いこんでくるものたちもいる。…クリーチャーとまでは行かないが、この海域で起こった現象はストックされ、過去にも影響してくる。……つまりだ。」

 

空から鈍い音が聞こえた。空気を重くこするような、何かとんでもないことが起きるようなそんな音であった。

 

「四方から隕石が降ってきてる!」

 

アイリはふいに見上げると、それは巨大な岩石が無数にこちらへ大きくなっていく光景を、見てしまった。

 

「!?」

 

ヴィーヤが後ろで『魔素行使』の魔術を使う。応戦のつもりなのか、魔力弾が隕石めがけて飛んでいくが、焼け石に水であった。

 

「解析完了!―1万年前の『災厄』のものだ!ドルマゲドンの瘴気はかすっただけでもやばいぞ!」

 

アイリはあらゆる方法で隕石を回避しようとハンドルを切るが、隕石はそれに合わせて近づいてきていることも瞬時に気づいた。間違いない。これは()()()()()()()だ。と直感で理解してしまった。

 

「嘘だろ!?ダメだこれ!回避不能だ!」

 

万事休すの事態に、どこからか、何者かが声をかけるのを、アイリ達は聞き逃さなかった。

 

「お久しぶりね。」

 

「!?」

 

二人は振り返った。聞き覚えのある声だったからだ。そしてその声の主は、見覚えのある姿だった。

 

間違いない、その禍々しくも悲しい声、おぞましくも麗しい姿。1stレースの時の、()()()だ。

 

「アンタは!」

 

そういいつつも、二人とひとりのもとへ隕石は迫りくる。

 

「……ふん。『(ディミティス)』」

 

それは、つまらなさそうに足で空を一閃すると、周りの隕石はばらばらになり、死んだかのように、ごろごろと海に落ちていった。

 

「すごい……。ていうかあんた……。」

 

息をのむヴィーヤ。アイリは、連続する目の前の衝撃的状況には、語彙力が薄れていく。

 

「はぁ……、自己紹介が必要かしら。」

 

二人を助けた恩人は、ふわふわとおりつつ、さりげなくバイクの一番後ろに足を組んで載る。

 

「あたしはマドンナ。闇文明の長よ。」

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