デュエル・マスターズBLANK   作:佑ノ宮 末法

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第十話 伝説の少女

「……じゃあこれで、取引は成立された。ということでよろしいかしら。」

マドンナが右手を差し出す。交渉成立。「握手」のサインである。

「ああ、先生よ。もう1回確認してもらっていいか?」

 

頷くヴィーヤ。

 

「ああ、『一:双方は、互い、及びブランカ・サンダーボルトを水文明滞在中は攻撃しない。』、『二:双方はブランカ・サンダーボルトとズァキェルの捜索に可能な限りの協力を惜しまない。』、『三:この密約は、水文明のレースが終了する、双方がゴールする、ブランカとズァキェルの捜索が完了される、のうちいずれかが達成されれば自動的に破棄される。』。これでよかったかい?」

 

無論だ。と、マドンナは首を縦に振る。

 

そして、ヴィーヤは差し出された右手を握る。

 

「では、何卒よろしくお願いします。短い期間ではありますが、貴方は我々と―」

 

ヴィーヤの言葉を、マドンナはつまらなさそうにヴィーヤの口元を人差し指を立てて噤ませる。そして何食わぬ、とバイクの方へ進んだ。

 

「御託は結構。早く走らせなさいな。」

 

拍子抜けの表情のヴィーヤを尻目に、アイリはマドンナに呆れながらバイクの方へ乗っていった。

 

〜〜〜〜〜

 

「ここが、水文明ね……。」

 

あらゆる事象が逆巻く魔境、その島に、一人の巫女は立っていた。

 

この痕跡(テンポ)的に、ポチはいると思うけど……。

 

そう佇んでいると、背後から誰かが忍び寄ってくる……。それは水文明の衛兵であった。

 

(カナロア様の『レース参加者(しんにゅうしゃ)は無力化せよ』との命だが……、このようなかよわい少女をやっていいのか……?)

 

そう衛兵が躊躇していると、彼の視界にはその少女の姿はなかった。

 

「!?」

 

「ん~、やっぱり……、ここの偉い人はレースを快く思ってないのかしら……。」

 

背後から少女の声が聞こえたのは、視界から消失してから間もないことであった。

 

「お、お前……いつのまに!?」

 

「あ、挨拶がまだだった……、こんにちは~!」

 

水文明はとっさの判断で、槍のつかで巫女の頭を横殴りにする……。

 

ごっ と鈍い音を立てた後、衛兵の目の前にいる少女は頭から血を垂らし、倒れてしまった。

 

「はぁ……、はぁ……、とりあえずこれで大丈夫……なのか……?」

 

そうして、衛兵は()()()()を担ぎながらどこかに行ってしまった。

 

…………、

 

「ふぅ……、いきなり襲い掛かってくるなんて!私の幻覚(うた)がなければどうなっていたのかしら。」

 

物陰に隠れていた巫女は、衛兵がいないのを確認してからさっと飛び出す。

 

「とにかく!ここじゃ探すのは無理そうだから、さっさと抜けて闇文明で探すとしますか……。」

 

「ポチ、絶対に、絶対に……。」

 

「許さないんだから。」

 

~~~~~

 

「――で、用件は何だ。アルズよ。」

 

火文明の王宮、ホットラインで光文明の長、アルズと火文明の長、トニトゥルムは会談していた。

 

『色々ありますとも、“ウートポスやオリン=ポチトリ氏、などの度重なる主要人物の失踪”、“水文明総バミューダ化”問題は山積みです。前者については水面下で動いてはいますが、後者に至っては――』

 

「ああ、バミューダ化による内外の連絡の遮断や水文明の密室化をお前は嘆いてるんだろ。中身が見えないんじゃあ、対処できねえしエンタメとして失敗だ。それによ、お前さん(しゅさいしゃ)にとっちゃあ、()()()()()()()()()()()()()()()()を見せられなくてご不満だろうな。」

 

『ははは。まあ、それだけが全てではないことはあなたもわかるでしょう。』

 

本気ではある、ということを改めて知り、冷や汗をかくトニトゥルム。

さらにアルズが続けた。

 

『それにあなたの“娘”の安否まで分からないとなってしまうと……、我々で紡いできた光、水、火の強固な体制は崩れるというのが大きいですね。』

 

「……。」

 

『“娘”さんにはまだ黙っておられるのですか?火文明の性質的に、聡い彼女はもう気づかれておられるはずです。』

 

火文明の者では―、と続ける前に、トニトゥルムは言った。

 

「あいつには、大事な役割があるんだ。」

 

『―。』

 

「知ろうが知るまいが、『俺から言えること』じゃねえ。」

 

『“言ってしまえば”ですか。確かに、この事実は公開されてしまえば、火文明どころか、超獣世界が混乱することでしょう。』

 

回顧するように、アルズは言った。

 

『グラウンド・ゼロで生まれた少女、外の世界の力を使うとされている我々の遠く及ばぬ存在……。』

 

~~~~~

 

「じゃあ、ここからは別行動だ。」

 

バイクから降り、海へと飛び込んだヴィーヤ。見上げながら、マドンナとアイリに手を振る。

 

「おう。何だか知らねえけど。生きてたらまた会おうや。」

 

興味がなさそうに、マドンナはそっぽを向いていた。

 

ヴィーヤは微笑みながら、海の向こうへ潜っていった。

 

「んじ、行きますか。マドンナ、さ、ま。」

 

わざとらしい言い口に、マドンナは少しむかっ腹をたてた。

 

()()するわよ。さっさと例の場所(としょかん)に行きなさい。」

 

へいへい。とアイリは発車した。

 

「つっても、せんせーのいう事にゃここらへんなんだけどよ……。」

 

辺りを見回しながら走らせていると、マドンナが指をさした。

 

「あれじゃないの? ほら、海の下にある大きい建物。」

 

「!」

 

アイリはそこに目をやる。間違いない。おそらくあれが()()()というやつだ。

 

「潜るぞ!つかまりな!」

 

アイリは激流の向こうへとバイクを向かわせる。大きいしぶきで体を持っていかれそうになるも、懸命に中へ入っていこうとした。

 

そして、

どぶん、と潜水に成功した。

 

しばらくして、視界と車体が安定すると、目の前にある建物を見てアイリは驚嘆した。

 

「すげ~~~~!」

 

前時代的な、原始的な島々の連なる水文明とは異なる、近未来的で左右対称なその建物の外観は、図書館という、叡智の結晶を象徴するかの建物であるという証拠に十分なものであった。

 

「っしゃあ!早速入るぞ!」

 

「……、あの子の真相……ねえ。」

 

期待を膨らませるアイリとは対照的に、マドンナは何か意味ありげに考えるのであった。

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