デュエル・マスターズBLANK   作:佑ノ宮 末法

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第十一話 豪快‼ チャレンジャーズGo Fight‼

「ふぅん……。」

 

図書館の扉に触れるマドンナ。それは何かしらの合金のようなものでできており、生半可な力で開けようとしてもびくともしない。

 

「こりゃあ……、別のところから入るしかなさそうさね」

 

「……。」

マドンナは黙って歩きながら扉に触れる。

 

「アイリ、だったかしら。」

 

「お、おう。」

 

マドンナはバイクの方に戻ると、それをポンと触って言った。

 

「『これ』で行くわよ。」

アイリにはマドンナの言っていることがすぐに分かった。

 

魔が差したようなにやけ顔でアイリは言う。

「やっちゃっていいんだな?」

 

慈愛のあるかのようなアルカイックスマイルでマドンナは言う。

「ええ。やっちゃいなさいな。」

 

~~~~~

 

派手な音を立て、合金の厚い板が爆発し四散する。

 

それまで扉だったものはすぐにがれきに変わり、粉塵でしばらく見えなかった本の館の内側はやがて見えるようになった。

 

「これが……、アイツの言ってた……。」

 

宙には無数の石板、本が規律よく浮かんでおり、その列は遥か向こうまで続いていた。

 

「これだけ長いと……、」

ため息をつきそうなマドンナだったが、アイリが言い始める。

 

「ああ、それだったらよ。アイツから『場所』を聞いておいたから大丈夫。」

 

それに、これがあるし、と、バイクをポンと叩いた。

 

そうしていると、何やら大きな怒号が聞こえる。

 

「総員に告ぐ!図書館に侵入せしレース参加者を発見!直ちに応援を!!」

 

それまで本しか無かった空間に、突如として水の衛兵が現れた。

 

十、二十と、どんどん増えていく。

 

「ありゃあ……。こりゃ流石に固いか。」

 

四方を囲まれ、あぐねているアイリ。

 

マドンナはカツ、カツ、と、前へ進んだ。

 

「『(コンフォデーレ)』。」

 

マドンナはおぞましい言を述べると、衛兵達の足元から槍が生え、貫くと同時に、それらはあっという間に石になっていた。

 

「……さ、行くわよ。」

 

アイリは、この光景を見た途端に思い出した。

 

今自分が行動を共にしているのは、一人の対等なクリーチャーではなく、一つの文明の、その頭なのだと。

 

「お、おう……。」

 

背中から放たれる禍々しいプレッシャーに圧され、アイリはその返事しか返せなかった。

 

 

 

 

静寂が包む中、二輪駆動の轟音を鳴らせしばらく経つと、『目的地』に着いた。

 

何ということも無い、普通の本の羅列の、その一箇所であった。

 

「……なんだか、あっけねえな。」

 

「こういう所は呆気ないものよ。」

 

アイリは、これだったか……。と呟きながら目当ての本を取り出そうとすると、マドンナが横取りをし、不意に本を開く。

 

「あっ!ちょっ……!」

 

「ふぅん……。ほう、ほう……。」

 

耽っていると、アイリが横槍を刺す。

 

「だぁ~っ!アタシにも読ませろ!アタシが一番行きたかったとこだぞ!」

 

少しイラッとしたのか、マドンナはやや投げやり気味に言った。

 

「じゃあ、お前が読んでみなさいな。」

 

強く突き出すと、返すように強くぶんどって読み始めた。

 

「う~~~~~ん……。なるほど!」

 

「分かったの?」

 

「分からん!」

 

二秒後にはたんこぶが二つ出来ていた。

 

「だから言ったでしょうに……。」

 

しばらくその本を読むと、マドンナは本をパタン 、と閉じた。

 

「どうだった?」

目をキラキラ輝かせるアイリ。先程のたんこぶはまだ消えていない。

 

「……まあ、予想通りね。犬っころがわざわざこの本を寄越したって事は、おそらくそういう事……。」

 

「どういう事なんだよ」

さっぱり訳が分からないアイリ。

 

「ええ、せっかくだから教えてあげましょう。水の犬に入れ知恵されてる所もあるでしょうけど、その答え合わせよ。」

マドンナは本を戻すと、バイクに腰かけ足を組んだ。

 

「簡単に言うと、あの子は、この世界のクリーチャーじゃない。」

 

「!!」

(僕の仮説が正しければ……。)

やはりか。とヴィーヤの言葉を思い浮かべたアイリに対し、マドンナは構わず続ける。

 

「ま、結論に至ったのはこれだけじゃないわ。さっきまでのはあくまであの子の『能力』の本。」

 

マドンナは懐から一冊の、別の本を取り出す。

 

「この本の、ここのページ。声に出して読んでみなさいな。」

 

アイリは差し出された箇所に目を通した 。

「……『世界の中心地、グラウンド・ゼロにて謎の物体が墜落』……。」

 

 

入り際に少し気になったものがあったから、取っておいたの。とマドンナ。

「十何年前、だったかしら。ドルマゲドンの隕石の落下地点である『グラウンド・ゼロ』。そこにまた『何か』が降ってきたの。――真っ先に調査したのは光、水、火の三文明。それから有耶無耶にされて、その後にその三文明は何故かお互いに友好宣言を表明。」

 

マドンナがつまらなさそうに喋る。

 

「それと、僕ね、闇文明に代々伝わるこんな預言を聞いたことがあるの。」

 

「『この世界には星が三つ。一つはなきっつら。一つはサイコロ。さいごの一つは黙示録。』―。」

 

「ほぉ……。」

 

マドンナは続ける。

 

「一回目の『星』がドルマゲドンによるものだとしたら、もう一つはブランカ・サンダーボルト。振ってみるまで何が起こるかわからない。そんな未知数の力を持った正しくサイコロなのでしょうね。」

 

「じゃ……、じゃあ……。」

 

「えぇ。その三文明は思惑が色々あれど、こんなジョーカーを最悪な所に渡してはいけない。そう判断したのでしょう。……もしくはそいつらの内の誰か、……いや、三文明全員が、それを古いかざしておきかったのではないのかしら……?知らないけど。」

 

言葉を失うアイリ。少し面白かったのか、にやけ顔がおさまらないマドンナはしばしの沈黙を破った。

 

「辛気臭い話でごめんなさい。肝心なのは、この子の能力の話よね。」

 

「この子は、『レッドゾーン』なの。」

 

急にとんでもない事を言われ、ポカンとするアイリ。

 

「オイオイ……。レッドゾーンはこの『バイク』だぜ?」

 

はっとするマドンナ。 すぐさまアイリの胸ぐらを掴む。

 

「あなた馬鹿なの!?なんでそれを先に言わないの!?」

 

つってもよ~……。と微妙な顔をするアイリ。 一瞬のやるせなさにマドンナゆっくりとアイリを離した。

 

「『レッドゾーン』っつったら……。あれだろ?火文明でかの有名なドギラゴン王と熾烈な戦いを繰り広げたって言われている……。なんかグレンモルトとも戦ったとか戦っていないとか……、そのレッドゾーンのパーツは王族のほとんどが持ってるけど、アタシらブルージェットの一族が大事に残りの1割のパーツを持っててさ。このバイクには大事なエンジン部分を担ってもらってるってワケ。」

 

確信が付いたように、マドンナは言う。

 

「―だとすると話は早いわ。 元々この子の能力が『別のクリーチャーの力を借りる』だったのだと仮定して……。―『何かしら』によってブランカとソレの縁が結ばれ、アイリのバイクを呼び水に、平行世界でのレッドゾーン。時空の壁を乗り越え、その空に一閃の光をもたらすとされている……。『レッドゾーンバスター』に、ある種の『進化』を光文明で起こした、という事ね。」

 

「『何かしら』ってなんだよ。」

 

「クリーチャーと『縁』を結ぶ何かよ。火文明はほら、アレでしょう?内側に『怪物』が潜んでいるとか。先天的にそういったクリーチャーと結び付けられていない限り、他のクリーチャーの力を使うのはあの子でも無理よ。だから、少なくとも、レースに参加する前に、レッドゾーンと紐づく何かがあったってことなの。」

 

「じゃあ、って事は……。」

 

やっと分かったのか。という顔をする。

 

「ええ。あの子の力と、『何かしら』と、バイク……。それらが合わさることによって、どこまでも何があっても駆け抜ける。邪魔する奴はその車輪を轟かせてぶっ飛ばす『轟く侵略』……正真正銘の()()()()()()になったのよ。」

 

では、次の疑問が浮かぶ。

 

「じゃあよ、光文明で出せたのになんでここで『レッドゾーンバスター』の力が出ないんだ?」

 

アイリの素朴な疑問に、ブランカはキリっと、即答で答えた。

 

「興味が無いわ。」

 

あっさりと一蹴された、とアイリ。

 

「そこが知りてぇんだけどよ……。」

 

途方もなく、頭をかくアイリ。

不意に、マドンナからなにか思いついたかのように提案される。

 

「そうね……。おそらく……、こうして見たらどうかしら。」

 

~~~~~

 

V・バミューダ最深部。『鋼海嶺の心(マリアナのこころ)』にて。

 

大探検者は、これまでにない緊張感を持って、そこに臨んだ。

 

詰めたい水に包まれながら、ヴィーヤは最奥部にある大結晶(『アカシア』)の方へと近づいた。

 

「これで……。」

 

と、結晶に触れようとしたその時、

 

「ッ!!」

 

すんでの所で『罠』に気が付く。

 

丁寧に編みこまれたであろう罠魔法は、結晶の前でバチッ!と音を立て、空間を爆発させた。

 

「やはり、しぶといのですね。」

 

「勘が良いと言ってくれ。」

昏い黒から段々と、その姿が見える。

 

水文明の現時点での長、カナロアだ。

 

「光の差し金ですか?それとも火文明なのです?いずれにせよ。馬鹿げた真似は辞めるのです。」

 

「こっちのセリフだよ。いい加減馬鹿げた焦土戦術は辞めてくれ。――五文明会談でアルズさんを止められなかった君にも非があるだろう。」

 

カナロアは眉間に皺を寄せる。

「口の減らない蝙蝠男です。―あの『PlanA』も!あなたの介入が無ければ私達の『開拓』に貢献したでしょうに!」

 

「カナロア。ロゼッタも言っていたじゃないか。水文明で起きている問題は、もう僕達で解決するには時間がかかりすぎる。」

 

「そうした結果が今のこれでしょう!神託では良からぬ事が連続しているというのに!」

 

ヴィーヤは、息を整えて言う。

「カナロア。これが最後の忠告だ。そこを退いて欲しい。」

 

カナロアは顔色一つ変えずに返した。

「あなたが、邪魔をしているのです。退いてください。」

 

短いため息をつき、少しつぶやく。

 

「ロゼッタ……。ごめん。少し喧嘩するよ。」

 

カナロアは杖を立て、呪文を詠唱した。その魔素の作用ゆえか、周りの水は取り除かれ、深海の海底に空気だけの空間が出来ていた。あまりの現象の凄さに、音によって詠唱はかき消されているが、しっかりと術式は編み込まれている。

 

詠唱は果たされ、高濃度の魔力弾が放たれる。

 

「食らうのです!ヴィーヤ・ドレッドノート!海の底で、姉と一緒に眠るのです!!」

 

ヴィーヤは、この状況でも、なお笑っていた。

 

「!?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ヴィーヤがそれをすると同時に、彼の周りを物凄い衝撃波が連続して発せられる。

それは、とてつもなく凄まじい『何か』が始まるかのように。

 

そして、彼は呪文を詠唱する。

「―禁断魔素行使(イニシャルスペリング)『VV』……。これより、永久戦闘(エターナルファイト)を開始する!!」

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