デュエル・マスターズBLANK   作:佑ノ宮 末法

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第十二話 『バミューダ・V・ヴィーヤ』

歌が、聞こえた。

 

透き通るもの。一番きれいなもの。

 

でも、これよりももっともっときれいなものがあって……、

 

僕は、僕たちはそれが放つキラキラを、確かめたくて――。

 

~~~~~

 

僕には、親はいなかった。

 

いや、いたのかもしれない。分からない。少なくとも、一緒にいてくれて、喜んでくれたり、泣いてくれたり、怒ってくれたりする―、面倒を見てくれる大人はいなかった。

 

怖くて暗い海の底で生まれ、わけのわからない怪物から逃げる毎日だった。

 

どこかへ行ってしまおうにも、いつもおなじ景色で、出ているかもわからず、あきらめてずっとここにいることに決めていた。

 

そう、ロゼッタが来るまでは。

 

「お前、こんなところで何しているんだ……!」

 

僕と同じくらいの大きさの生き物がやってきた。

 

初めて会ったときは、いつも襲われてた怪物と同じかと思っていた。

 

その時はいつものように泣きながら逃げていたら、

 

「ちょこまかと動きやがるな。」

 

と、あっさりと捕まっちゃった。

 

それからは、「地上」ってところに連れていかれて、そこからは、安心や恐怖、色々な感情が沸き上がって、ずっと泣いていた。

 

「お前……、泣くなよ。」

 

「うぅ、あぁ……、びぃぃぃぃぃやああああ!!!」

 

「おい!落ち着け!」

 

やっと落ち着いて、その子からいろいろ聞かされた。

 

「まずはお互いの自己紹介だ。わたしはロゼッタ。お前、名前はなんて言うんだ?」

 

「……?」

 

その時は名前という概念すらわからなかった。ずっと一人だったから。

 

「もしかして、『名前』……。ないのか?」

 

返事の仕方が分からなかったので、黙った。

 

「じゃあ……、お前の名前は……、そうだな。よく大声でびぃびぃ泣くから、ヴィーヤ。『バミューダ・V・ヴィーヤ』だ!」

 

「びー、……や?」

 

「ああ、V・バミューダにいて、よく泣くから、バミューダ・V・ヴィーヤだ。Vはピースサインのブイ!」

 

ロゼッタは指を二つ立てて明るく笑った。

 

僕も、その時はなんだかすごくうれしかった。

 

~~~~~

 

僕がちゃんと物心ついたころ、僕はロゼッタと一緒によく探検をしていた。

 

「うっし!ヴィーヤ、行くか!」

 

「……大丈夫だけど、大臣たちとは大丈夫なの?」

 

そう言って間もないうちに、遠い方から声が聞こえた。

 

「いけませんお姉様!『座学』を受けなくては!」

 

必至に止めるロゼッタの妹、カナロアを、彼女は邪険に扱う。

 

「あーそれ……、明日受けるから!」

 

「ああ、お姉様……、真面目になさって欲しいのです……。そろそろお姉様も……。」

 

「……。」

 

ロゼッタは僕をつかむと、一目散にヨットに飛び出した。

 

「あっ!お姉様!」

 

そうして、僕達はいつものように探検へ出かけた。

 

「なあ、聞いた?『グラウンド・ゼロ』でクリーチャーが降ってきたって!」

 

いつものように、最近起こった話題をロゼッタは話す。

 

「ロゼッタ……、カナロアの言っていた『座学』って何?」

 

先程だけだけでは無い。ずっとロゼッタは必死に止めるカナロアを無視して僕と一緒に外で探検をしている。

 

僕はそれが気になった。なぜ、ここまで敬遠するのだろうと。

 

「……石に、されんだ。」

 

「!?」

 

「水文明には、龍素が変質した『魔素』がある。それで二人のクリーチャーを生み出して、一人は次代の長に。もう一人はソイツが長になるまでの間ずっと水文明の面倒を見て……、石になるんだ 。」

 

初耳故か、言ってることの意味が分からなかった。

 

「なんで石にされるの?」

 

「『アカシア』ってあるだろ?あのでっかい石。」

 

僕はそれを見たことがあった。ロゼッタと一緒に暮らしているときに見つけた、あの巨大な結晶だ。詳しいことは分からなかったが、それはとても透き通っていてきれいだった。

 

「うん……。それがどうかしたの?」

 

「あの結晶はいわば『大百科事典』だ。この世界の始まりから終わりまで、全てを知ることができる。」

 

「へぇ……!すごいや!……で、それがどうしたの?」

 

「あの結晶には二つの弱点がある。一つは『アカシアは選ばれたクリーチャーしか使えないこと』並大抵のクリーチャーが使えば、アカシアの出す情報量の多さに頭がパンクして廃人になっちまう。」

 

僕はヒヤッとした。

 

「そして、二つ目は『アカシアの維持にはクリーチャー一人分の魔素リソースが必要なこと』だ。……お前には黙ってて悪かったけど、水文明は代々二人のクリーチャーをアカシアから産む。一人は次代の長として、もう一人は……アカシアの十分なリソースとして……。」

 

「!?」

 

「先代の長はV・バミューダに失踪してしまったから、カナロアがまともに水文明をまとめられるまで、私が長の代理をやってるわけだけどさ。その時になったら私はあの結晶の中に入らなくちゃいけないんだ。」

 

「じゃあ……、『座学』は……。」

 

「ああ、アカシアの与える情報に耐えうるほどのキャパを作るために行われる実験の隠語さ。」

 

ヴィーヤは言葉を失った。目の前のクリーチャーが、いつかはいなくなってしまう。突然突き出された現実を受け入れるのには、戸惑うほどの時間がかかった。

 

「まあ……、嫌ってわけでもない。たださ、生きてるうちに、ちょっと見ておきたいんだ。」

「見ておきたい……って?」

 

まあ、ちょっと待っててね~。とロゼッタ。

 

長い時間が経ち、空は暗くなった。

ロゼッタは僕をちょっと高い丘のある小島に連れて行った。

 

「ほら。見てみなよ!」

 

ロゼッタは上を指さした。

 

黒い空には、白、黄、赤、青の粒々が輝いていた。

 

探検の終わりに、標として星を見たことは何度もあるが、こんなにきれいだと思ったことは生まれて初めてだった。

 

「辛くなった時、うれしくなった時、ここにきて星を見るんだ。水文明の奴らには内緒だぜ?」

 

その言葉がすぐ忘れそうになっちゃうほど、本当にキラキラしてた。

 

「私さ。本当はさ。」

 

ロゼッタが呟いた。

 

「ん?どうしたの?」

 

「あ……、いや!なんでもない!ほら、帰ろ?早くしないとカナロアにまた怒られちゃうし……。」

 

そういうと、ロゼッタは慌てて浜の方へ走っていった。

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