デュエル・マスターズBLANK   作:佑ノ宮 末法

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第十四話 『ヴィーヤ・ドレッドノート』

光文明、ハイエスト・タワーにて

 

火文明のトニトゥルム、光文明のアルズ・エイブル、そして水文明の僕が今、席についている。

 

「今回の議題ですが……、まあ、外交代理のヴィーヤさん。どうぞ。」

 

僕は、これから水文明を裏切る。

 

「はい。『グラウンド・ゼロ』で発見された新生命体、『PlanA』についての処遇です。どの文明が引き取るか、ですが。」

 

火文明の長、トニトゥルムさんは切り出した。

「ああ、それだったらよ。お前さんが面倒見てくれや。話す前にアルズと俺ァ話したんだ。こういうのは、水文明が適任だろっつってな。」

 

「……!」

 

やけに話が速い。カナロアに感づかれているのか……?

 

「ああ、いえ……、そのことなんですが。我々、水文明としては、他の文明の引き取りを提案します。」

 

「!?」

 

アルズさん、とトニトゥルムさんが面食らった。そりゃあそうだ。

 

カナロアが根回しをしているならなおさらだし、何より、向こうも少なからず『アカシア』の存在は認知している。

 

―つくづく、むず痒い感覚だ。なんだろう。向こうの後だしジャンケンに負けろ。と言われているくらいに。

 

「お待ちください。ヴィーヤさん。……それは、あの結晶によるものなのです?」

 

次に話したのはアルズさんだ。

 

ここで気をつけなければいけないのが、僕はあくまで水文明の外交官であることと、今回の任務はあくまで『PlanAの引き取り拒否』だ。ここで弱腰の回答を、道を踏み外してしまえば立場的に弱くなるのは明らかだ。

 

そうなると、おそらくこの三文明の均衡は崩れ、どちらかが将来こちらに戦火を吹っかける可能性がある。

 

「ええ。アカシアの演算結果は時に不確かなのを起こします。前の結果は同盟国だけでなく、世界全体に大きな脅威をもたらすほどの結果でした。()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

アルズさんは納得したような顔をした。 ()()()()

 

やや戸惑ったような雰囲気でアルズさんは言った。

「ふむ……、正直に申しますと、我々は『PlanA』を引き取る予定はありません。共同管理……、と行きたいところですが……、やはりそれでも、ですか?」

 

しまった。完全に盲点だった。

 

共同管理はいいかもしれない。だが……、

 

「しかし、それでは後々に問題を起こす可能性があります。」

 

暗礁に乗りかけたその時に、またもや切り出したのはトニトゥルムさんだった。

 

「なんだ?どいつも『PlanA』を預からねえのか?じゃあ俺ン所で面倒見るぜ。隕石から降ってきた生命体、これ以上に『面白ェ』もんは無ェ!!」

 

ガッハッハ、と豪快に笑って見せたトニトゥルムさん。

 

そして、三文明間で条約を結ぶ運びとなり、僕は水文明に帰還することになった。

 

「……さて、カナロアにどうやって報告すればいいのか……。」

 

しかし、水文明に戻ると、大変なことが起きていた。

 

「た、……大変です!!ロゼッタ様に異変が!!」

 

「!!」

 

急いでロゼッタのいる部屋に向かった。

 

「ロゼッタ……!」

 

そこには、数人の臣下と、カナロアと、そして、結晶に同化されかけているロゼッタがいた。

 

 

「ヴぃー……Ya……。」

 

ロゼッタが最後の力を振り絞るように話しかけた。

 

「なんでこんなことに……!」

 

戸惑う僕に、ロゼッタが優しく、冷たく、そして辛そうに説明する。

 

「本来のアカシアが記すはずのルートを少し書き換えた。私たちの作戦が成功した後でも十分に水文明がやっていけるように……。だけど、その代償で、少し早くカナロアやお前とおさらばしなければ……いけなくなった。」

 

「僕、やったよ!『PlanA』を引き渡したよ!これでいいんだよな!」

 

「!!」

 

「ああ、これでいい……。これでいいんだ……。ヴィーヤ……。もうお前は、泣き虫のバミューダ・V・ヴィーヤじゃ……ない……!!」

 

そう言ってロゼッタは温かく微笑むと、今度は覚悟を決めた表情をした。

 

すると、僕の頭に直接『声』が届いた。

 

『水文明の皆さん。聞こえますか。私はロゼッタ。水文明の長、カナロアの姉です。もうじきアカシアとして、皆さんを導くものです。』

 

僕以外にも声が聞こえるらしく、カナロアや周りの臣下たちは動揺していた。

 

「なんだこれは!」

 

「これがロゼッタ様の……!」

 

はっとして、僕はロゼッタの方を見た。

 

彼女はだんだんと結晶になりながらも、僕の方に気が付くとニコッと笑っていた。

 

『アカシアとして任されて初めての仕事で、実はある神託の間違いを犯してしまいました。しかし、その間違いに気づき、水文明、いや、世界の未曽有の危機を救ってくれた勇者がいます。』

 

(アカシアの演算結果は時に不確かなのを起こします。前の結果は同盟国だけでなく、世界全体に大きな脅威をもたらすほどの結果でした。)

 

生れて始めて自分の発言を呪った。

 

ロゼッタ……。まさか僕の様子を……!

 

『その名は、“バミューダ・V・ヴィーヤ”。あのV・バミューダで生まれ、つい先日そのV・バミューダを踏破して生還した水文明屈指の大探検者です。』

 

カナロアは叫ぶ。

 

「ちょっ……!それ、どういうことなのです!」

 

『私はこのまま結晶になって水文明の皆さんを見守ります。皆さん、どうか、カナロアとヴィーヤを温かい目で、見守ってあげてくださいね。』

 

『それから、カナロア……、間違いを犯した私を、どうか許してください。そして、危機を救ってくれた勇者たる“バミューダ・V・ヴィーヤ”……、いいえ、本来神にも等しいアカシアに挑戦した恐れを知らないもの、“ヴィーヤ・ドレッドノート”よ。どうか、貴方と、貴方の選んだ選択に幸の有らんことを。』

 

気が付くと、テレパシーは終了していた。

 

ロゼッタはほぼ石化しているが、まだ喋れるようであった。

 

「ヴィーヤ……。カナロア……、私の、指を……、砕いて……!それが、私がいつも、そばにいるって、証だから……!」

 

ロゼッタは最後の搾りかすのような声で話して、それから、それから、どんどん、石になって、石になっていった。

 

最後に何か話していたような気がするが、あまりのショックで聞き取ることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、僕は『バミューダ・V・ヴィーヤ』ではなく、『ヴィーヤ・ドレッドノート』として名乗ることにした。

 

僕は勇者なんかじゃない。一人の友人のわがままを聞いてあげただけの詐欺師だ。

 

でも、ここだけは、水文明はまだここにある。 それに、ロゼッタとまだ一回しか星を見ていない。

 

きっと、ロゼッタは星が何なのかをずっと調べたかったんだと思う。

 

結晶のように透明なものより、きれいな空にあるあの輝きをもっと調べたかったんだと思う。

 

だったら、僕が代わりに調べてやる。 

 

どうやって? そもそもできるのか? 空が怖くないのか?

 

いいや、僕は恐れ知らず(ドレッドノート)だから大丈夫さ。

 

今日も僕は結晶の飾りを見つめる。

 

「あの……。」

 

ふと、誰かに話しかけられた。

 

「おおっと! ごめんよ。少し考え事をしていて――。」

 

振り向くと、そこは見慣れない姿が。 火文明によくみられる特徴の服を着ているが、かなり高貴な身分の少女だ。

 

「ブランカ・サンダーボルトです。……お父様からの紹介で留学に参りました。」

 

あの時の『PlanA』だ。そうか、もう成長したのか……。

 

「よろしく。早速案内するよ。」

 

「あ……。」

 

『PlanA』……いや、ブランカが怪訝そうな顔でこちらを見る。

 

「どうした?」

 

「先生のお名前をお聞かせしてもよろしいですか?」

 

しまった!僕としたことが、自己紹介を忘れてしまった。

 

「ああ、ごめんよ。僕の名前は―。」

 

これは、呪いであって祝福の名前、詐欺師にふさわしいレッテルであり、そんなろくでなしを鼓舞する、かっこいいけど少し意地悪な名前。

 

だけど、僕は死ぬまでこの名前を名乗り続ける。

 

「僕の名前は『ヴィーヤ・ドレッドノート』だ。改めて、よろしくね。」

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