デュエル・マスターズBLANK   作:佑ノ宮 末法

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第十六話 レッド・ギラギラ

ブランカの危機に体がいち早く反応したのは、アイリだった。

 

「危ないッ!」

 

1秒でも早く身を呈し、ついには彼らの周りが閃光を包む。

 

数秒経ち、全員の視界が明白になる。

 

「怪我は無い?ブランカ。」

 

「え、えぇ。……ッ!?」

 

ブランカが目にしたものは、間違いなくアイリであった。しかし、その五体は欠けてしまっていた。

 

「アイリ……その、右腕……。」

 

「貴方が無事なら、右腕なんかどうでもいい。」

 

彼女はあらゆる恐怖で震えた。

「嘘……、私なんかのために……。」

 

ブランカがうろたえていると、マドンナがズァキェルの方に近付く。

 

「ここにいたのね。お前。」

 

「あぁ、ちょうど今そこの夢無しの腑抜けを殺そうとしていた所だぜ。」

 

「『アレ』はダメよ。殺しちゃ。」

マドンナは静かな怒りの気配を放つ。

 

「まさか、あいつが?」

 

「えぇ。そうよ。加減をしなさい、ズァキェル。」

 

「……了解だぜ。」

ふてぶてしくズァキェルは了承する。

 

ちぎれた腕から血がポタ、ポタと滴りながらも、アイリは立ち上がり、構えを取った。

 

(アタシが戦うからブランカは離れてるバイクに乗って。 )

 

(で、でも……。)

 

(今は時間が無い。それに、ヤツらの狙いは貴方だから。)

小声ながらも、アイリが凄む。

 

(わ、分かったわ。)

 

ブランカは10m先にあるバイクの方へ走った。

 

「させねぇぜ!」

 

先程と同じく、雷の矢が放たれる。が、明らかに殺害の意思があったさっきのものとは違う。

 

これなら……!

と、魔術を編もうとした瞬間。

 

バァン!!

 

アイリの銃が、弾丸が矢を相殺した。

 

「早く!」

ブランカが瞬間戸惑っているのに気づいたのか、アイリは叫ぶ。

 

すぐさま彼女は銃が届く距離まで潜り込み、マドンナとズァキェルに応戦する。

 

ブランカは走った。

 

ズァキェルの矢、マドンナの槍。それら全てをアイリは守ってくれた。

5m、3m、一瞬が彼女たちにとってとてもありがたく、

 

ブランカはバイクに辿り着いた。

 

「でかした!」

 

アイリは軽い身のこなしで近づこうとする。

しかし、彼らは攻撃の手を緩めない。

 

今度は、私の番!

そう咄嗟に思ったブランカは魔術で「壁」を作り、アイリを乗せる時間を作る。

 

彼女たちはすかさずバイクで、一時の安息を得た。

 

 

アイリの後ろで、ブランカはアイリの腕に手をかざす。

 

「止血するわ。それと、直ぐに消えてしまうけど義手をつけるわね。」

ぽわ、と光り、そこから魔力で生成された腕が生えてきた。

 

アイリは、若干やつれながら、ありがとうと息を漏らしつつ感謝した。

 

少しの静けさに包まれながら、当たり障りのない会話をする。

 

ここからどこへ? 先公ンとこだ。

 

腕、大丈夫? まぁな。……サンキューな。

 

それから少し話さなくなってから、口を開いたのはブランカだった。

「私ね。……嘘ついちゃった。」

 

アイリは何も言わなかった。

 

「それも1回だけじゃないの。お父様達と一緒にいた時も、レースに出る時も、さっきズァキェルさんとお話した時も。」

 

「アイリはもう知ってるかもしれないけれど……、私火文明じゃないの。でも、お父様は私を次の長にするって。……馬鹿だよね。余所者をリーダーにするって。」

 

ブランカは滔々と話す。

 

「アイリは、私の事好きなんだよね。『麗しき炎の知恵者』って……。アレ、全部嘘だよ。性格はクソだし、炎でもないし、生まれた時から知恵なんてない。いい所に拾われただけの運だけクリーチャー。 周りには『火文明が良くなればいい』って言ってるけど。正直どうでもいい。真っ白な空っぽなんだよ。私って。」

 

「……。」

アイリはバイクを止めた。

 

降りろ、と彼女の低い声。

 

「……?」

 

バヂン、とアイリは平手打ちした。

 

「!?」

 

すぐさまアイリはブランカの胸ぐらを掴む。

 

「ふざけんなッ!」

 

一瞬戸惑ったが、ブランカは安堵の表情を浮かべた。

 

「そうだよね―。」

 

続けようとしたが、アイリが言葉を遮る。

 

「そうじゃねぇ!」

 

少し驚く。

 

「アタシが貴方に惚れたのはよ……、貴方が綺麗事言ってたからでも、『知恵者』だったからでも無ェ!『一目惚れ』だよ!アタシが貴方を初めて見て、可愛くて、カッコよくて、顔がいいと思ったからだよ!!」

 

ブランカはキョトンとした。

 

「嘘をついてたのはいい。お前んとこの親父や取り巻き共にいい顔してたのも、アタシにとっちゃよ、どうでもいい事なんだわ。」

 

「取り巻き共って……!」

 

彼女の琴線に触れたのか、掴んでた手を振り払う。

 

「じゃあなんだよ。貴方にとっても、ソイツらは適当なことほざく位どうでもいい連中なんだろ?」

 

「違う……!違うの!」

 

アイリは叫んだ。

「嘘ついたままかよ!嘘ついたンなら、本当の事言えよ!」

 

ブランカは少し狼狽しながら、言い始めた。

「私の『家族』達は、私を育ててくれた人達は……、とてもいい人達で、こんな私に色々くれて、でも色々くれすぎて私には返せなくて……。」

 

「まだ言えてないだろ。」

 

ブランカはぽろぽろと落としていた涙が引っ込んだ。

 

「もっとあるだろ。なあ、ブランカ、貴方はなんで、このレースに出たんだよ。貴方の『夢』を教えてくれ。」

 

「ダメよ。私にはわがまますぎる。」

 

もう1回胸ぐらを掴まれる。そしてアイリはもう1回大きな声で―。

「『夢』くらいわがままでいいだろッ!生きてる内はッ!」

 

止まっていた涙がまた出始めた。

 

「う゛ん……。私、もっと解放されて生きていたい。『自由』になりたいッ!」

 

ブランカが心の底から叫んだその時、体の内側から光り始めた。

 

「これは……?」

 

「あの時と同じだ……。空を飛んだ時と!」

 

眩い光が大きくなり、それで当たりが全て白くなり、

 

光が戻った後はバイクがそこに無く

代わりにブランカの姿が変わっていた。

 

「あら、そこにいたのね。探したわよ、『レッドゾーン』。」

 

撒いたはずのマドンナ、そしてズァキェルが彼女たちの元に追いついた。 二人はそれぞれ虚空から武器を取り出すと、獲物を仕留めるかのような目へと変わっていく。

 

「悪ぃ、長話しすぎたな。」

 

ブランカは考えた。光文明の時でも、この状況から抜け出せる方法があった。

 

それに、彼女の言っている通り、この力が『レッドゾーン』であるなら―。

 

やってみるしかない。

 

「さっきまで、アイリが私を助けてくれたから、今度は、私が助ける番ッ!」

 

そう言うと、彼女はアイリを両腕で抱え、後ろへ踏み出した。

 

すると――。

 

~~~~~

 

こりゃあ、万事休すか。

 

ヴィーヤは大の字に倒れながら、頭の中でそう結論付けた。

 

「最後まで、お前は何も言わないのですね。ヴィーヤ。」

 

「負けた者は何も言わず、静かに去るべきさ。仕方ない、君の勝ちだ。カナロア。」

 

カナロアは、歯ぎしりをしながら生成した剣でヴィーヤの胸を貫こうとした。

 

「どわぁ~~~~っ!」

 

その声が聞こえた瞬間、二人ともその声の方に気が向いてしまった。

 

声の主は飛び蹴りでカナロアを吹っ飛ばしながら、着地に失敗し、抱いている少女と一緒に転ぶ。

 

「かぁ~~っ……。どこだここ。」

 

「どうやら、変な所に――、先生?」

 

そこに居たのは、色彩のある鎧を纏いながらも、赤くギラギラに光る1人の戦士だった。

 

「あぁ……、君は?」

 

彼女はキョトンとした顔で答えた。

 

「誰って……、先生、私です。ブランカ・サンダーボルトです。」

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