デュエル・マスターズBLANK   作:佑ノ宮 末法

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第十七話 『ガイアール・ビクトリー』

「ん……、ありゃあまた『ここいら』の仕業ぜ?」

二人組がいなくなり、空虚となったその場に立ち尽くしながらズァキェルは言った。

 

「いや、そんなんじゃないわね。あれは。」

 

マドンナの言葉に、ズァキェルは片眉を上げる。

 

「じゃあ、なんなんだぜ。まさか魔法でもあるめぇし、『ワープ』でもしたんぜ?」

 

「そうね……。そのまさかね。」

 

踵を返し、マドンナはカツ、カツと歩く。

 

「行くわよ。私達は私達で、やるべきことがあるもの。」

にやりと笑い、ズァキェルは俺ァ行くぜ、と消えた。

 

 

「疲れるまで踊りあかしましょう。貴方(レッドゾーン)。」

 

雲の間に指す薄い光は、妖しい月のような明るさだった。

 

~~~~~

 

「そうか……ブランカ君か。」

 

ヴィーヤは、ふとこぼした。

笑いながらブランカは返す。

 

「なんですかそれ」

 

「いやぁ、ぱっと見だけど、変わったね。」

 

ヴィーヤから見た彼女は、己の心の夜も飲み込み、それまでの火文明の王女でも、留学の際に学んでいたころの学生でもなく、覚悟を決めた者の顔つきだった。

 

ブランカは、ヴィーヤに言われた一言にハッとさせられ、一瞬時が止まった。

 

「だろォ~~?」

 

後ろからアイリがわしっ、と肩と頭をつかみながら力強くなでてくる。

しかし、不思議とブランカはそれほど疎ましく感じなかった。

 

「思ったより『援軍』はちゃちなものですね。ヴィーヤ。」

 

「数だけが全てではないよ。」

 

突拍子の無い対立を目にしたブランカは、戸惑う。

「ちょ……、何やってるんです?どういう風の吹き回しで……。」

 

ヴィーヤは、振り返らずに答え、とびかかっていった。

 

「彼女が水文明をバミューダへと作り変えたって事さ。すまないが、今は僕に協力してくれ。」

 

「ちょ、ちょっと!ヴィーヤ先生!」

 

「どうする?ブランカ。アタシは戦うけど。」

銃を取り出したアイリを、ブランカは一瞥する。

 

ブランカは深く息を吸って吐いた。

 

ヴィーヤ先生は、いつも何を考えているかわからない。

から、正直何も考えずに協力するのは少し怖い。

 

けど、水文明がこのままバミューダになって、私達がここから抜け出せなくなったら?

 

私が、このまま水文明にとらわれてしまったら?

 

そんなのは嫌だ。私は、駆け回りたい。

 

「うん。行くよ。アイリ。」

 

そう言うと、ブランカは敵めがけて走り始めた。アイリも呼吸を合わせるようにそれに続く。

 

~~~~~

 

「じれったいのですね……。」

 

命運の天秤は、彼らの方に少しだけ傾いた。

 

しかし、見たところ『PlanA』と火文明の国家転覆主義者のみ。

 

彼らが手を組んだ経緯は不明だが、連中のみであれば、いずれは―。

 

彼女のその思考は、鍔迫り合いの集中力を切らしてしまう結果になった。

 

「呆けている暇があるのかい?」

 

死角から小さい魔力弾が飛んでくる。カナロアは気配を察知したが、防げずに後退してしまった。

 

好機とばかりにヴィーヤは追い打ちを仕掛けようとするが、

 

「ッ!」

 

カナロアは咄嗟に、即席の爆発をお見舞いさせる。

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

数秒、止まっているヴィーヤをかばうかのように、ブランカが飛び出してきた。

 

馬鹿正直に、別の何かを隠すように

 

「……。」

 

愚直なその正拳を、カナロアは何気もなく防御し、

 

「ふん。」

 

ガキン、と音を立て死角の銃弾を魔力盾で防ぐ。

 

「クソっ!」

 

舌の根も乾かぬうちに、カナロアはブランカを拘束する。

 

「『レッドゾーン』の力を手に入れたとは聞きましたが……やはり未熟なようですね。このまま寿命まで時を飛ばしてしまうのです。」

 

ブランカはもがき、アイリは叫ぶ。

 

このまま、ブランカは脱落してしまう。

 

かと思われた。

 

「「なぁんてね!」」

 

ブランカとアイリの、その声の合図でカナロアが掴んでた体は岩へと変わっている。

 

はっと気が付くと、ブランカ、ヴィーヤ、そしてアイリの銃弾が、カナロアのもとへかかってきた。

 

「!」

 

カナロアは咄嗟に、掴んでいた岩を振り払い、先ほどののように盾を展開するが、

 

「もらった!」

 

防いだはずのブランカは、またもや岩に変わり、今度こそ攻撃を当てることに成功した。

 

「…カハッ!」

 

一撃をもらい、よろめきながら頭の中で疑問符を浮かべる。

 

彼女が手に入れたのは……、まさか。

 

「『レッドギラゾーン』……!」

 

赤々と輝くその鎧に、肩にある拳の紋章は、水の長に不吉な二文字を頭の中でよぎらせる

 

逆転。

 

こうなれば、アレをするしか……。

 

カナロアは覚悟を決め。右手を、天を穿つように掲げる。

 

「時間歪曲制限解除。鋼海嶺魔素吸収。『ラプラスの魔よ、来たれ(私に、すべてよこすのです!)』。」

 

すると、今までの暗い光景が、

ブランカがかつて見た、ヴィーヤがいつも見ているような水文明の姿へと戻っていく。いや、正確には()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「これは……。」

 

ヴィーヤが答える。

「……僕のせいではあるが、第一の目的は果たされた。ブランカ君、アイリ君、申し訳ないけど、カナロアを止めて(まだ付き合ってほしい)。」

 

大量の魔素を吸い上げ、暴走していくカナロアを、二人の少女が見上げる。

 

それまで独特な魔素漂う大気だった水文明は完全に元に戻る。

澄んだ青空に浮かぶ、あふれんばかりの魔力。水の長は、一海域の膨大なる魔素を一身に背負う。

 

「蹂躙を繰り返し、星を駆け貪った禁断の使徒、数多なる『レッドゾーン』の顔の一つ、革命の『レッドゾーン』……。やはりPlanAはこの世界において脅威となる存在。」

 

「脅威だからなんなのですか!!」

 

ロックオンするカナロアに対し、ヴィーヤは啖呵を切る。

 

「故に、無力化するほかにないのです。」

 

「そんなもの、ぶっちぎってやりますわ。」

 

この掛け合いが始まりの合図になるやいなや、()()()()カナロアはブランカの目の前に。

 

「『クエスチョン』。」

 

突如、ブランカの脳内を『自分が死ぬか』、『味方を殺すか』の、二択の思考に襲われる。

 

「ぐっ……、」

 

もだえるブランカ、手を駆けようとした直前。

 

「ブランカ君。バックアップだ。」

 

ヴィーヤがブランカに触れると、その残酷な脅迫はいつのまにか、頭から消え去っていった。

 

「ヴィーヤ……、お前……!」

 

カナロアがうろたえていると、気が付けばブランカが懐に入り込んでいた。

 

「まずは、一撃ッ!」

 

すかさずカナロアは防御するが、

 

「ッ!!」

 

ブランカはなぜか石ころ三つをあらぬ方向に投げ、そして

 

「いいや、三発だ!」

 

石はアイリへと置き換わり、それぞれのアイリが、三つの銃声を重ねた。

 

魔力のこもった弾丸は、カナロアが纏う魔素を少しずつはがしていく。

 

「これが……『レッドギラゾーン』の……、『革命チェンジ』……!」

 

「どんどん行くよ!ブランカ君、アイリ君!」

 

「はい!」「おうッ!」

 

~~~~~

 

ブランカの『革命チェンジ』、ヴィーヤの『時間操作』、アイリの銃撃による『奇襲』―。

 

怒涛の攻撃の連続は、時を操るカナロアでも到底太刀打ちはできず、成すすべもなく集めた魔力がたちまち引きはがされていった。

 

しかし、お互いの魔力、体力、銃弾もなくなり……。

 

「これで終わりましょう。カナロアさん。」

 

「PlanAに向けられる哀れみなど、吐いて捨ててやるのです」

 

ブランカは拳を奥に引っ込め、溜める構えをとった。

 

力が集約されていく拳の周りに、ぱちん、ぱちんと小さな花火が手をたたくような音が立ち、やがて燃えていく。

 

「クッ……。私も、これでおしまいにするのです。」

 

カナロアも呪文を詠唱すると、手のひらから美しくもおぞましい剣が現れる。

それはまさしく、かの革命軍の一派の、水文明のある一つの極致であった。

 

「PlanA、お前は、どこまでいっても厄介な余所者なのです。『ぶっちぎる』?それは、うしろめたい過去と現状を引きずりながら逃げていくだけなのです。」

 

「引きずっててもいい……。私はどこまでも駆け抜ける……!」

 

「つくづく、火文明の者どもは答えになっていない返事をするのです。」

 

そう言い残すと、カナロアは携えている魔剣をブランカめがけて投げる。

 

「これが魔素の前身なる『龍素』のもう一つの選択の形!!食らうのです!『完璧問題(ラストクエスチョン)』ッ!」

 

死に至る選択を迫るその宝剣が、ブランカに来る。

 

ブランカはつぶやいた。

「ええ、そうよ。私が答えちゃだめだもの。この問題は―。答えるべき人は―。」

 

その刹那、勝ちを確信したカナロアの前には、ヴィーヤが。

 

「!?」

 

「そう!この僕が!僕が解決すべきだから!」

 

瞬間、ヴィーヤの右足に魔素が集結する。そして

 

「カナロア。僕はこの時を待っていた。ジリ貧になって、最後の一撃をくらわせるその時を。この一瞬なら、君を止められる。」

 

終結した魔素は、ヴィーヤのあらゆる過去、未来の攻撃を収束させ、やがて一つの大きな車輪ができ始める。

 

「早く、防御術式を……。」

 

カナロアがヴィーヤに意識を向けると、またもや意識外の攻撃によって妨害される。

 

「『ギラギラ・レヴォリュート』!!」

 

「PlanAッ!よもやここで……!」

 

咄嗟にカナロアは、ヴィーヤに使うはずだった防御をブランカに使ってしまう。

 

「これで、やっと隙ができた……!」

 

ありがとう、とヴィーヤ。そして、彼は溜めていた魔素を解き放つべく、呪文を詠唱する。

 

「無限の蹴断、『永久』の禁断、これを以て我が永久機関は証明される。(きみをとめる)――『A=Q ∴KICK END(えいきゅうきかん)』。」

 

二連撃の蹴りがさく裂した。

 

車輪のように円を描いて魔素を削り続けるそのさまは、まさにヴィーヤが蹴りによって描いた『∞』の字のごとくであった。

 

「アアァ……。アアアアアアアッッ!!」

 

果てなく、カナロアは攻撃を食らい続ける。

 

そして、全ての魔素が散り散りになるように爆散した後、

 

うつろな表情をカナロアは浮かべ、虚空からゆっくりと沈んでいった。

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