デュエル・マスターズBLANK   作:佑ノ宮 末法

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第三話 バランスの調整

「ハハハッ!なんと素晴らしき装備なんでしょう!」

 

浮島の混乱に参加者達がうろたえる中、ウートポスは支給されていた人口翼を装備してゴールへと向かっていた。

 

「エイブル様の考案したこの『SR-MN(ソロモン)』は使いやすいな…。あの人、『どんな環境でも適応できる。』っていってたけど。本当なんだろうな。」

 

上昇していく大地、落ちていくクリーチャー、それらをよそに光文明の参戦者たちは余裕綽々と空を走り、水文明へと向かっていく。

 

しかし、ウートポスの第一目標は、水文明(ゴール)ではなかった。

 

「どこにいるんだか……。」

 

事が起きたのは、レースが始まる三日前のことであった。

 

特殊な筋から、水文明がこちらの『計画』を嗅ぎまわっているとの情報が入ったのだ。

 

液体の体に刺青のような鎧を着ている、文明とはかけ離れた原始的な姿とは聞くが。

 

そしてもう一つ、聞いた特徴といえば、首に透明な水晶をつけている――、

 

「そんなヤツ、探すのはキリがないだろうなぁ…。」

 

 

ふと、空を駆け回っていると、浮島に男が一人と女が二人いるのが見えた。

 

男は少女一人を水の縄で縛っており、その前にいる女と一触即発、といったところだ。

 

「こんな時にいがみ合いか……。やはり光文明でないものはこうやって醜く争い合うものなのだな…。」

 

そう思ったとき、彼はふいに、その男の首元がキランと、光ったのを視界に入れた。

 

気づかれないように彼らの見えないところまで遠のき、…双眼鏡で覗くと、間違いない。

―それは証言通りの『透明な水晶』であった。

 

~~~~~

 

馬鹿らしい。

 

全て私にかえってくると言うのに、

この■■■は何をやっているのだか。

 

まあ、私のせいでもあるのだろう。記憶を得てしまったのは他でもない私によるものなのだから。

24889回の試行の■■■■、うち5780回は水文明による■■■■■。 6395回は闇の■■■■■■、7840回は■■■■■■、残りの4874回がこのしょうもないレースによる■■。

 

本当に、本当に、無意味なことをするものだ。せめて、前回よりは価値のある■■になってくれるよう、培養槽に浸かりながら祈るのみである。

 

何しろ、どう転んでも■■■■がいれば良いのだ。

 

 

~~~~~

 

まずい。と、アイリは冷や汗をかいた。

 

ブランカをあの大探検家が縛っている以上、どう動いても最悪の結果に動きかねない。

 

 

愚直に? いや、倒される。

回り込んで? いや、逃げられる。

 

 

少しの沈黙の後、啖呵を切ったのはヴィーヤの方だった。

 

「―お友達かな?」

 

「それより早くブランカを下ろしやがれ。クソ野郎。」

 

「『信用できない。』と言ったら?」

 

「ぶん殴って引きずり下ろす」

 

「僕はもう一仕事を終えているのに、わざわざ相手にする必要があるとでも?」

 

「じゃあなんでわざわざアタシとくっちゃべってんだよ。」

 

修羅場に一時の沈黙の後、ヴィーヤがまた口を開ける。

 

「悪いが、君にはブランカをあきらめてほしい。」

 

その一言が許せなかった、のか、

 

「ッ!」

 

ヴィーヤは流石に完全には避けられず、一つ傷を負った。

だが、

 

「ブランカ君は 、取り戻せなかったみたいだね。」

 

「ヤロォーッ!」

 

透かした顔の男は、表情と態勢を変えない。

 

アイリは、血が昇ったまま、怒りのままにヴィーヤを襲う。

 

ヴィーヤは考える。

(この攻撃頻度、息遣い…、怒りの補正(バフ)もあるのだろうが…やはり彼女に宿る『()()』の影響によるものなのだろうか…。いずれにせよ、早く無力化せねば…。)

 

クリスタルが僅かに光った。こちらも怒っているようだ。

 

「ロゼッタ…。わかってるよ。でも、別れは話さなくちゃあ、理解っていなくちゃあ行けないだろ?」

 

憤怒の間隙に、ヴィーヤはアイリの息切れを見る。

 

「ハッ!」

 

突如、アイリの周りを『水』が囲み、ブランカと同じように縛った。

 

「ガ……ッ!」

 

「勝負あったようだね。」

 

まだ身動きが取れないアイリは、去っていくヴィーヤをにらんでいく。

 

「(クソぉッ!このままじゃ…このままじゃあ…ッ!)」

 

「じゃあ、帰るよ。ブランカ君。」

 

そのときであった。

 

“水二縛ラレテモナオ、ソノ『思イ』、燃エテ消エヌカ。気ニ入ッタゾ!”

「(!?)」

アイリの心のうちから何か『別の生き物』の声が聞こえると、アイリが縛っていた水が燃え、蒸発していった。

 

「シャアッ!!」

 

「ッ!?」

 

不意を突かれたヴィーヤは鬼気迫るアイリの一転攻勢に圧されたのか、防御の態勢を取る。

 

が、彼女の狙いはそこではない。

 

「ブランカッ!」

 

アイリは縛られているブランカに触れると、先ほどと同じく縛っていた水縄が蒸発した。

 

すぐさまブランカを抱き、バイクに乗って振り切ろうとする。

 

が、しかし、ヴィーヤは水のサーフボードに乗って追いかける。

 

「っプハァ!」

ブランカがやっと本調子に戻る。

 

「ッ!ブランカ、大丈夫か!?」

「大丈夫だけど、……追ってきてるよ!ヴィーヤ先生。」

追うヴィーヤ、逃げるアイリ達。

 

しかし、逃げた先には、浮島の終わりが見えていた。

「…ッ!!突っ込むぞ!歯ぁ食いしばれ!」

ブランカはすかさずアイリの支援をせんとなにやら呪文を詠唱した。

向こうの浮島まで、大気のようなものの『橋』がすぐさま出来上がった。

「付け焼刃の魔術だけど…この上を走って!」

 

「そうはいかないよ。」

建てかけた『橋』がバチィッ!と音を立てると、それはだんだんと消えていく。

 

「あのクソヤロォ……!」

「もう終わりだよ。おとなしくそこで止まってくれないか…。」

 

ブランカは、アイリがエンジングリップを強く握りしめるのを見る。

離れずに背中をつかんでいるブランカにとって、それは後ろ姿でも表情が手に取るように分かった。

 

「……。アイリ、そのまま進んで頂戴。」

「いいんだな?ブランカ。」

「止まったら。先生につかまっちゃうもん。」

 

アイリに見えるはずもないのに半ば強がりで笑って見せたが、

彼女は黙ってアクセルを全開にする。

 

「ダリャアアアアアアアアアアアッッッ!!!」

 

必死にもがくように、それでも―『橋』は―。

 

その時、ブランカは、「願ってしまった」

ブランカを光が包み、爆ぜるようなエンジン音が辺り一面に轟く。

あまりの眩しさに、追っていたヴィーヤも目を塞ぐ

 

刹那の後、塞いだ先にあったのは、ヴィーヤが見た事ない光景。

「…なんだ?これは……!」

 

気がつくと、ブランカは空を飛んで、アイリを抱えていた。

 

彼女の体は白銀の鎧で覆われ、背中には大きな翼。そして、腰には橙色に輝く刀剣を携えていた。

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