クレヨンしんちゃんとモルカー、両作品とも好きな作品なのでコラボ小説を書きました。
2022年はアニメ「クレヨンしんちゃん」30周年かつアニメ「PUI PUI モルカー」1周年となる目出度い年なので元旦に投稿しました。
太陽の明るい日差しが春日部の町に降り注いでいる。白く美しい光が家々や道路・川を照らし、光の反射を生み出している。小鳥の囀りが町に響き、虫達も餌を探しに野や町に駆り出していく。
人達はどうだろうか。晴れている事から町では人の往来が盛んになっている。ある者は公園へ遊びに行き、ある者は買い物に行き、ある者は旅行に行こうとする。春日部の人々は各々の目的や娯楽のために外に出ている。
そして、ある一家では大黒柱はゴルフに行こうとしていた。
赤い屋根と白い壁・生垣が特徴の二階建ての家屋で、二階には布団が干されている。そして細長い庭には青い屋根と白い壁の犬小屋がある。車置き場には濃い緑色の車が置かれていた。
その家からある男性が顔を出した。
「さ~て、日曜日だし久々にゴルフでも行ってくるか!」
やや濃い髭を生やす男性、この男性はこの一家の大黒柱である“野原ひろし”。
35歳、双葉商事営業二課係長、靴下が猛烈に臭く、髭も硬い、安月給らしいサラリーマン。
彼はゴルフクラブを持っている事から分かる通り、これからゴルフをしに行くのだ。
「何か自分の事を語られた気がするけど、ま、気のせいか。さて、行くか!」
メタ発言のような台詞を言ったが、それを気のせいだと判断して彼は車のトランクを開けてゴルフキャリーを入れ、運転席に座った。そして鍵をかける。しかし、
「ん? 何かエンジンのかかりが悪いな……」
車のエンジンのかかりが悪い。キュルキュル、と空回りするような音が聞こえる。いつもなら特に問題無くかかるはずなのに……
すると、そこに愛する妻と息子が現れる。
「あら、あなた、どうしたの?」
「お? 父ちゃん。ゴルフに行かないの?」
野原ひろしの妻である専業主婦、野原みさえ。
そして、野原ひろしと野原みさえの息子で、ふたば幼稚園に通う五歳児で、幾度となく世界や宇宙の危機を救った、神の所業を幾度となく成し遂げた嵐を呼ぶ園児。野原しんのすけ。
彼らは車のエンジン音を聞きつけてやって来たのだ。
「何かエンジンのかかりが悪いんだよ……」
「そういえば最近エンジンがなかなかかからないのよね……」
「かーちゃんがお菓子を食べ過ぎた時に鳴るお腹の音を鳴らすよね」
「そうそう、この前なんかケーキを食べ過ぎた時はもう大変で……
……て、何言ってんのよー!!」
しんのすけの発言にみさえは怒る。顔の皮膚にはT字路の如く血管を浮かべており、炎のようなオーラがユラユラと蠢いている。その異様な様子にしんのすけは冷や汗を滝のようにかいていて、ひろしは相当この場から離れたい気持ちが出てきているが恐怖心から足が震えて動けない。
気を取り直して、車の不調について話し出す。
「みさえは何度か車で出かけているんだよな。どうやって直したんだ?」
ひろしがまず疑問に浮かんだのは、どうやって不調気味のエンジンを起動させているかだ。みさえは今まで何度も車を運転して買い物に行っている。ならば何らかの方法で起動させている筈。
「それは右のライトの辺りを蹴れば……」
「何いいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
みさえの発言にひろしは途轍も無い声を出す。その声は野原家どころか春日部中に広がりそうな大声で、その声には怒号とも困惑ともとれる声色を宿している。そんな声を聞いてかみさえは困惑してしまう。
「ど、どうしたの!?」
「俺の大事なアンジェリーナに何て事するんだあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ア…… アンジェリーナ……?」
みさえは聞いた事のない名前に困惑してしまう。人名のようだが、状況からしてひろしは車に「アンジェリーナ」と名前を付けてるようだ。車種の名前ではない。
「父ちゃん…… オラ達に黙って隠し子を作ってなんて……」
「隠し子じゃない! ていうか車が隠し子な訳無いだろ……」
息子のしんのすけは隠し子だと思ってしまうもののひろしはすぐに否定する。一体何処からそのような言葉を学ぶのかひろしやみさえは不思議に思う。
「そろそろ買い替えかしら……」
「そうだな…… 車検も近いし……」
「お、新しいお車を買うの?」
「そうなるかもしれん」
「おぉ! 買うなら空を飛んで、カンタムロボに変形できる車が欲しいゾ!」
「いや、ねぇよ。そんな車」
こんなやり取りもあって、野原家は車を買い替える事となった。
OSSAN 春日部店
翌日、しんのすけの妹であるひまわりも連れて野原家は近くのOSSAN*1車屋に来ていた。中は新品の車がズラリと並べてあり、まるで貴金属の如く輝いている。その様子に野原家は圧巻してしまう。
「おぉ、まるでオラのお尻みたいに輝いているゾ!」
「たやい……」
「その例えはやめい……」
「う~む、見た所高そうな車が多いな……」
ひろしは車を見るが、どれも何百万円もする高級車が多い。家のローンが32年残っている自分達に払えるのだろうかと疑問に思ってしまう。それ以前に稼ぎ頭のひろしは安月給なので、お察しである。
「お困りですか? ならドコダのメーカーの車はどうでしょう? 価格が安く機能が充実しておりますのでお客様のご期待に添えられると思います」
迷っていると店員が野原一家に話しかけてきた。
「う~む、他の車より安いが、それでも……」
「そうですか。これより安い物は当店には無いですね……」
「おじさん、半額シールを貼ればいいんだゾ!」
「ここはスーパーじゃないの!」
「ハ、ハハハハ……」
しんのすけとみさえのやり取りで店員は苦笑いする。もし車に半額シールを貼ったら剥がすのが大変だろう。
「う~む、別の店に行ってみるか……」
ひろしは買えそうな車が無いため別の店に行く事を考え始めた。自身の月給やローンを考えるとこれらの車を買うのは厳しい。諦めかけていたその時、
「やぁ、しんちゃん!」
自身達を呼ぶ声がした。老人の声色をしている。そして自身達も聞いた事が何度かある。その声の主は直ぐに分かった。野原家が何度か会った事のある人物。
「北与野博士!」
その名は北与野博士。発明家で、今まで様々な道具や物を作ってきた。それが様々な騒動を起こしてしまったものの、技術は確かである。
「お、博士! お店で何やってんの?」
「実は新しい車を持って来てたところなんだよ!」
「「新しい車?」」
「たや?」
「新しい車」に野原家は反応する。今まで奇妙な発明品を作ってきた人物なので、彼が持って来たという車も発明品なのではないか? それこそ空を飛んだりタイムトラベルする車なのではと想像してしまう。
「あ、北与野博士、もしや“あれ”を……?」
「うむ、野原さんならきっと気に入ってくれると思うんだ」
博士と店員は何かを話している。店員は少し戸惑っている事から曰く付きのようにも感じる。ひろしとみさえは少し不安になっていく。今までの発明品による騒動は全て野原家を巻き込んでいるからだ。
「さぁ、野原さん! 是非見に行って下さい!」
「大丈夫かしら?」
「う~む…… 何だか不安だ……」
「しゅっぱつおしんこ~!」
「たや~い!」
親二人は不安気味だが息子と娘は対照的に期待感が高い。ワクワクしている。子供達の目がキラキラと光り輝いている。この輝きを消したくない…… その思いから両親は北与野博士の下に行く事にした。
野原一家と北与野博士は一緒に車屋の車庫に向かっている。通路の扉や壁には「関係者以外立ち入り禁止」の張り紙が貼られている事から、客である自分達には無縁な所であると強く感じる。
「あの、どんな車なんですか?」
その発言主はみさえだ。野原家がこれから見る車がどんな物なのか。どうしても気になるのだ。
その質問に北与野博士ははっきりと答えた。
「うむ。ややこしいかもしれないが、車であるとも言えるし、車ではないとも言える」
「え、それ、どういう意味ですか?」
北与野博士の矛盾しているような、或いはなぞなぞのような返答にみさえは混乱してしまう。車であって車ではない。これが何を意味しているのだろうか?
「実はな、これから紹介する車は人類の歴史で初めての、全く新しい車なんだ」
「全く…… 新しい……?」
「おぉ~! やっぱりカンタムロボに変形出来るお車なの!?」
「それは見てのお楽しみ!」
一体どんな車なのだろうか。ひろしとみさえは益々不安になってきてしまう。正直今のしんのすけの今まで北与野博士はとんでもない発明をしてきた。
平面の物を立体の物体に変えてしまう「平面画像実物立体変換機」*2
対象を数十メートル級の大きさにしてしまう「デカウォーター」*3
病気の特効薬だが焼いてしまうと大爆発して地球すら破壊してしまう「ミラクルきゅうり」*4
これらはほんの一例である。実際にはもっと多い。
博士がこれから紹介しようとしている車も、大きな騒動の引き金になるのでは。どうもそういう不安がひろしとみさえの心に思い浮かんでくる。
しばらくすると、何やら大きな扉が設置されている。簡単には開けられなさそうな扉だ。どうやらこの先に博士の車があるそうだ。
「さぁ、紹介します!
「「…………えぇ!?」」
「お~!」
「たや~」
扉が開かれて、室内の様子が明らかとなった。
そこにいたのは……
フロントには円らな瞳があり、
前部には車ナンバーではなく可愛らしい口があり、
サイドミラーではなく、耳があり、
車輪は回転する事無く足のように動いている、
「プイ?」
巨大なモルモットだった。
次回は2022年1月8日12時00分に投稿予定です。