モルカーを飼うゾ   作:青色好き

5 / 9
誰を出そうか迷って厳選して3組出しました。


第5話 アンジェリーナと散歩するゾ

 今日はふたば幼稚園が休みの日。

 

 太陽は青い空の上に鎮座し、白い雲は川の如く流れていき、無色の風は木々や草木を揺らす。赤い屋根の野原家ではみさえとひろしとひまわりはぐっすりと寝ており、しんのすけもゴロゴロしている。

 

「おー、平和だゾ~」

 

「あ~、日曜日は気を休めるぜ~」

 

「たいや~」

 

「何もしない日って癒される~」

 

 皆だらけ切っているように見える。実際にだらけているのだが。

 皆この調子…… と思いきや、この時間帯になるとそうは言ってられなくなる。

 

「そうだ、しんのすけ。そろそろシロのとアンジェリーナのお散歩の時間よ」

 

 そう、散歩だ。犬を飼う場合、散歩は必要となる。しんのすけの場合は時々サボったりする(その場合ひろしが散歩に連れてったり、シロのみ散歩する)が……

 

プイ~

 

 アンジェリーナ2世が「連れてって~」と言いたいのか、野原家のガラスに顔を押し付けるのだ。さすがにその様子だとしんのすけも連れて行かざるを得ないし、万が一ガラスが割れる可能性もある(アンジェリーナ2世が力を抑えているが)のだ。

 

「いや~、この年だときついゾ~」

 

「おめぇまだ5歳だろうが……」

 

 軽い腰を上げてしんのすけはシロとアンジェリーナ2世を連れて散歩に行く事にした。

 

 

 


 

 

 

 春日部にある商店街。多くの人が行き交い賑わいを生み出している。大人の人は買い物で今晩のおかずを購入し、子供達はお菓子やおもちゃを購入している。道を通る人達の表情は皆笑顔だ。この商店街は「楽しい」という感情で満たされている。

 

 しんのすけはシロとアンジェリーナ2世を連れて商店街を散歩していた。商店街の人々は最近発見されたモルカーに人々は興味津々な視線を向けている。

 

「お、しんちゃん!」

 

「お! おじさん!」

 

 声をかけられた方向を見ると、八百屋*1のおじさんがいた。彼は妻と一緒にこの八百屋を経営している。

 おじさんとおばさんは初めて見るアンジェリーナ2世を見て、「おぉ」と小さく呟く。

 

「へぇ、その子がモルカーって生き物か! 結構かわいいなぁ!」

 

「確かに! 毛並みがモフモフしてるわね~」

 

「それじゃあ、触ってみる? オラのあ・た・ま」

 

「いや、しんちゃんのことじゃねぇって……」

 

プイ?

 

 しんのすけのボケに八百屋のおじさんは汗を流す。そうしている間におばさんはアンジェリーナ2世の肌を触っている。かなりモフモフしているのか、おばさんの表情は気が抜けたような表情をしている。

 

「あぁ~、気持ち良いねぇ……」

 

「シロと良い勝負だゾ!」

 

「クゥン?」

 

 シロはしんのすけを見ながら「え、そうなの?」と言いたげな表情をしている。確かにシロの毛並みもわたあめの如く素晴らしいがモルカーであるアンジェリーナ2世の毛並みも対等と言って言い位には素晴らしい。

 

「シロみたいにわたあめも出来るゾ! シロ、アンジェリーナ、わたあめ!」

 

「キャン!」

 

プイ!

 

 しんのすけがわたあめと言うとシロは体を丸めてほぼ球形となり、アンジェリーナ2世は前足と後ろ足を体の下部に隠して目を瞑った。両者はこれをわたあめと表現しているようだ。すると、周りにいる人々は芸達者な白い犬(シロ)最近話題の車みたいな生物(アンジェリーナ2世)を見にやって来た。八百屋の前は人だかりが形成された。

 

「あら、美味しそうな野菜だわ。買っていこうかしら?」

 

「確かに、新鮮だわ!」

 

「この店で野菜を買いましょう!」

 

 多くの主婦が食事のためにこの店で野菜を買おうと野菜を手にする。八百屋のおじさんとおばさんはその様子を見て、更に「安いよ! 新鮮だよ!」と野菜をアピール。それにより更に野菜を買う人が増えた。しんのすけとシロとアンジェリーナ2世の芸はしばらく続いた。

 

「ありがとよ! おかげで野菜が完売だ!」

 

「お礼にこれをサービスするわ!」

 

「おぉ! どういたまして~」

 

「キャン!」

 

プイ!

 

 八百屋のおじさんおばさんはしんちゃん達にお礼として野菜を無料でプレゼントした。しんのすけが嫌いなピーマンは無いためおじさんとおばさんの心使いが見て取れる。しんのすけ達は喜び、シロは尻尾を元気に降り、アンジェリーナ2世は美味な食べ物を見つけたと言いたいような表情で野菜を食べたがっていた。

 

 

 

 

 

 しばらく歩いて行くと商店街を出て住宅街に入る。しんのすけとシロにとっては見知った道だが、初めてこの道を歩くアンジェリーナ2世にとっては新鮮味のある景色だ。周りをきょろきょろ見て目を輝かせている。

 

「ここはオラとシロがよく通っている道だゾ!」

 

「キャン!」

 

プイ!

 

 しんのすけとシロは周りの景色に興味を持つアンジェリーナ2世に周りの景色の事をざっくり説明する。郵便局まで行くのに通った道、公園までの道、おつかいに行く時の近道(狭いためアンジェリーナ2世は通れない)。

 しんのすけとシロにとっては有り触れた景色。だが、アンジェリーナ2世から見れば初めて見る景色だ。しんのすけと暮らす内に見慣れた景色になるだろうが、アンジェリーナ2世が大好きな景色になるというのを、しんのすけとシロは内心感じていた。

 

 歩いていると、道の向こう側から人影が見える。3人だ。近づいていく内に姿が徐々に見えてくる。1人はスリムな女性、1人は大柄な女性、1人は眼鏡をかけた男性だ。彼らはしんのすけが良く知る人物であり、特にスリムな女性は最も好きな女性である……

 

「あら、しんちゃん!」

 

「おぉ! ななこおねいさん!」

 

「あ、こんな所で出会うなんて!」

 

「む! 君は……」

 

 大原ななこだ。そして一緒に来たのは大原ななこの父である大原四十郎、そして親友の神田鳥忍だ。

 

「シロと…… その子がモルカーかしら?」

 

「そうだゾ! アンジェリーナ2世だゾ!」

 

プイ!

 

 ななこ達は初めて見るモルカー(アンジェリーナ2世)に少しばかり驚く。実際に見てみるとかなり大きいので無理もないだろう。

 

「あら! 凄いじゃない! 力持ちに見えるわ~!」

 

「何と言う大きさだ…… 車と同じくらいの大きさだ」

 

「オラとななこの新しい愛車です、お父様!」

 

「君にお父様と呼ばれる筋合いはな~い!」

 

 よく行われるやり取りが繰り広げられ、シロはジト目で、アンジェリーナ2世は不思議そうな表情でその様子を見守る。

 

「全く、ネタが無くて困っている時に君と話している暇は無いと言うのに……」

 

「お、植物園でも始めるのですか、お父様?」

 

「タネじゃなくてネタよ。お父さん、最近小説の新作がなかなか思いつかないのよ」

 

「それで散歩してればネタが思い浮かぶと思ってな」

 

「私は偶々会ったから一緒に付いて行ってるのよ」

 

 大原親子と忍が一緒に歩いている理由、それは四十郎の小説のネタを探すためだった。彼は小説家で、豪快な主人公の活躍を描く作品を多く執筆している事で有名な人物なのだ。だが四十郎本人は娘のななこの事をあまりにも心配する事が多いので執筆が大して進まないのだ。

 今日はネタ探しのために散歩しているのだが、全然思い浮かんでいないのである。

 

「う~む、どんな主人公にするべきか……」

 

「お父さん、まだ思い浮かばないの?」

 

「編集さん*2、今日も急かすなぁ……」

 

 今日のネタ作りは苦戦している。このままでは編集長から色々と言われるに違い無い。

 

「ほほう。それなら、アンジェリーナ2世をモデルとした小説を書くんだゾ!」

 

プイ~

 

「何? モルカーをか?」

 

 アンジェリーナ2世(モルカー)をモデルとする案に四十郎は首を傾げる。今まで動物を主人公とする小説何て描いた事が無いため、その発想が無かったからだ。

 

「うぅむ、確かにそれはグッドアイデアだ! 豪快なモルカーが時代を突き進む話! これはいけるぞ! 忘れぬ内に家に帰って執筆だ!」

 

「あ、もう。お父さんったら……」

 

「やる気になったねぇ~」

 

 四十郎は鼻から蒸気を吹き出す勢いでやる気が出てきて執筆意欲がどんどん湧いてきたようだ。猛ダッシュで家に向かって走って行き、ななこはややため息を出しながら後を追い、忍も後を追った。

 

「ななこおねいさん! 今度会った時はアンジェリーナ2世と一緒に散歩してねー!」

 

「えぇ、勿論よ!」

 

「キャン!」

 

プイ~!

 

 しんのすけ達はななこ達と別れた。

 

 

 


 

 

 

 しばらく歩くと家に近い道に出た。車がたまに通る、しんのすけがよく歩く道だ。此処を真っすぐ通れば家に着く。シロとアンジェリーナ2世はしんのすけと共に歩いていく。

 すると、途中で見知った人物と出会った。

 

「あら、しんちゃん!」

 

 紫色の服を着ている高齢の女性、隣のおばさんこと北本だ。噂話が好きで、「歩くワイドショー」の異名を持つ。

 

「その子がモルカーってやつね!」

 

「アンジェリーナ2世だゾ!」

 

「なんだか外国人の名前みたいね~! ロベルトやエマ*3みたい!」

 

 お隣に住んでいるという事もあり、睦まじい会話をしている。しんのすけ、もとい野原一家と北本さんとは随分長い付き合いだ。みさえもよく北本さんとお喋りする事が多い。

 

「最近美味しい羊羹を買ったのよ! 良かったら食べに来ない?」

 

「おぉ! 薄くない味の羊羹なら食べるゾ~」

 

「アハハ、しんちゃんらしいね~! シロとアンジェリーナちゃんもおいで~」

 

「キャン♪」

 

プイ!

 

 北本さんからのお誘いを受けて、この先にある北本さんの家に向かう事になった。アンジェリーナ2世から見れば、他人の家に行くのは初めての事。かなりワクワクしている。

 しんのすけとシロとアンジェリーナ2世は嬉しそうな表情で北本さんと一緒に歩いて行った。

 

 青空が広がる中、しばらく一緒に歩いて野原家…… のお隣である北本さんの家に着いた。

 すると、野原家の玄関から誰かが出てきた。あれは、野原みさえだ。

 

「あら、しんちゃんとおばさん!」

 

「よ! みさえ~」

 

「キャン!」

 

プイ!

 

「あら、野原さん! さっきしんちゃん達と出会ってね、うちでおやつを食べようとしてたのよ!」

 

 親を呼び捨てにしない、と軽く言った後、みさえは北本さんに回覧板を渡した。どうやら回覧板を渡すために外出したようだ。

 

「そういえば野原さん、最近聞いた? あの芸能人が結婚するって話!」

 

「え、本当ですか!?」

 

 北本さんとみさえが会話を始めた。会話の内容は井戸端会議でありそうな雑談。近所の主婦達なら興味を持って耳を傾けるだろう。だが、しんのすけやシロは興味が無いし、アンジェリーナ2世に至っては何が何だかよく分からない。

 

「お~、こうなったら3時間はあのままだゾ……」

 

「クゥ~ン……」

 

プイ?

 

 みさえの井戸端会議は数時間にも及ぶ事が多い。ずっと立って喋っていて疲れたりしないのだろうか? そう思う時が多い。アンジェリーナ2世はその事を初めて知り、驚きのあまり口が楕円形の形を形成する。

 

「こうなったら母ちゃんは止められないゾ…… オラんちでアクション仮面を見るゾ~」

 

「キャン」

 

プイ!

 

 結局しんのすけ達は家に帰る事にした。

 しんのすけはアクション仮面のDVDを見る事にして、シロとアンジェリーナ2世は小屋とガレージに帰る事にした。

 こうして、今日の散歩は終わった。

 

 ついでに、みさえと北本さんの井戸端会議だが、近所の主婦も参加した事から5時間程かかったという。

 北本さんは翌日にしんのすけ達に羊羹を御馳走させる事にしたという。

*1
野原家が時々行っている八百屋さん。

*2
鈴木けんすけの事。元テニスインストラクターで、テニスボールを箱の中に戻す癖がある。

*3
ロベルトは北本の甥、エマは北本の姪。




次回は2022年2月5日12時00分に投稿予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。