守銭奴ですが冒険者になれば金持ちになれますか?   作:土ノ子

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第十六話 二ツ星冒険者資格試験①

 さらに二週間が経った。

 休日を利用して遠出をしては、未踏破のFランク迷宮を攻略する日々が続く。

 そしてついに二つ星冒険者の資格試験への挑戦権、Fランク迷宮十個の踏破が完了した。ここまで一ヶ月とかかっていない。素人が一からこなしたとなるとかなりのスピードでの攻略速度だ。

 踏破報酬やドロップアイテムを入手し、ダンジョン攻略の要であるカードの成長も順調である。

 以下がその成果だ。

 

 まず現金収入やドロップアイテムについて説明しよう。

 最重要となる踏破報酬だが、この一ヶ月間で十種類のFランク迷宮を17回踏破。合計踏破階層数は91層。Fランク迷宮は踏破報酬の魔石を売却することで階層数×1万円の報酬が受け取れるため、91万円。更に魔石そのものの売却分で4万円だ。これとは別にモンスターからドロップした魔石が5万円分あるが、これは魔石払いのために保管している。

 これとは別に籠付からせしめた賠償金300万円。

 更に道中でドロップしたFランクカードが72枚。売却すれば約7万円程になるらしいが、響から別の使い道があるとのことで売却を止められているためこれも保管中。

 最後にガッカリ箱から出る魔道具だ。以下がその内訳となる。

 

・ミドルポーション×1本 10万円

・ローポーション×10本 10万円

・発火石×4個 2万円

・臭い袋×2個 2千円

 

 なお、F~Dランクに分類される魔道具の買取価格は一律市場価格の10%。

 売るよりも攻略に使用するべきと判断した。特にミドルポーションは全治数ヶ月以上の重傷もあっという間に治癒する効能を持ち、回復魔法の代用にもなる。回復役がいない守善のパーティには値段以上に重要だ。

 逆に支出だが、まずFランク十種の攻略情報で合計10万円。更に二ツ星への昇格試験に向けてミドルポーションを4本買い込み、40万円とお高く付いたが必要経費と判断した。

 つまり、収入と支出をまとめると下記のようになる。

 

 現金収入:335万円(うち300万円は賠償金による臨時収入。実質35万円を稼いだ計算)

 各種ドロップアイテム:攻略に使用

 魔石:約5万円分。魔石払いのため保管。

 Fランクモンスターカード:約7万円分。別途保管。

 

 一見大きな金額見えるが、その大半は籠付からせしめた賠償金が主。来月からはこうも行かないだろう。純粋な収入としては現金35万円ほどか。投資も込めた支出を差し引いた金額とは言え大した金額ではない。

 やはり早めに二ツ星に上がるべきだろう、と改めて認識する守善。

 そしてある意味では収入よりも重要なカードの成長は以下の通りだ。

 

【種族】ホムンクルス

【戦闘力】200(100UP!)

【先天技能】

 ・人造生命

 ・無垢

 ・アーキタイプ

 

【後天技能】

 ・零落せし存在

 ・短剣術

 ・投擲術(NEW!)

 ・忠誠(NEW!)

 ・奇襲(NEW!):敵に気付かれずに攻撃に成功した時与えるダメージにプラス補正。

 

 特に目覚ましいのはホムンクルスの戦闘力向上と新しいスキルの獲得だろうか。

 Dランク最弱級のCランクという汚名を晴らすかのように他のカードと比べても凄まじい成長だ。もしかしたらホムンクルスは初期戦闘力が低い分成長しやすく、伸びしろが大きい種族なのかもしれない。

 しかしそれも新たに獲得した技能のインパクトには比べれば霞む。

 一か月に満たない期間で三つの技能獲得。これはプロでも目を剥く成果だ。通常一つの技能を得るのにもはるかに長い時間がかかるのだから。

 とはいえこれは守善の功績というよりもホムンクルスの先天技能、技能習得効率を向上する『無垢』と響のシルキー、オルマが持つ『教導』スキルの合わせ技によるところが大きいだろう。腕のいい先生と出来のいい生徒がタッグを組んだ成果という訳だ。

 スキルの傾向がアサシンか辻斬り的な方向に偏っているが、これはもっぱら待ち伏せ・釣りからの奇襲という運用をしているからだろう。ホムンクルスの適正にも合っているので問題はないはずだ。

 脆いが速く、鋭い。さながらよく切れるナイフか。スピードアタッカーとして使っていく分には十分期待できそうな成長だ。

 

 

【種族】木の葉天狗

【戦闘力】100(30UP!)

【先天技能】

 ・天狗風

 ・初等状態異常魔法

 

【後天技能】

 ・閉じられた心

 ・飛翔

 ・風読み

 

 続いて木の葉天狗だが、戦闘力の伸びはそこそこ。

 とはいえ彼女が務める役割は索敵と釣り。敵モンスターと戦う機会が釣るための初撃に限られていることを考えれば伸びている方だろう。

 ステータス上は貧弱だが索敵という技能によってパーティの攻略を支える屋台骨だ。

 気がかりなのはマイナススキル・閉じられた心だろうか。木の葉天狗から最早隔意は感じ取れないが、未だに残り続けている。

 

 

【種族】バーサーカー

【戦闘力】210(30UP!)

【先天技能】

 ・武術

 ・狂化:戦闘を終了するまで暴走状態となり、徐々に生命力が減っていく代わりに全ステータスが三倍となる。

 ・物理強化:物理的な攻撃の威力を強化する。

 

【後天技能】

 ・恵体豪打:恵まれた肉体から繰り出される豪快な打撃。同族の中でも肉体的に優れている証。

 ・強振 (フルスイング):武器攻撃の威力向上、精密操作性低下

 ・選球眼:遠距離攻撃を見切る眼力。防御技能に+補正。

 ・ピッチャー返し (NEW!):非接触型の投射攻撃を敵に向かって打ち返すことが出来る。実体の有無を問わない。

 

 最後、バーサーカー。独特すぎる雰囲気に守善が使いたがらないため、ボス相手くらいしか召喚しない。それでも戦闘力がしっかりと伸び、新規技能を一つ獲得している辺り天才の部類に入るのかもしれない。

 なお新規技能のネーミングについては突っ込まないこととする。有用な技能であることは間違いないのだし。

 

 これら癖が強いが能力だけは優秀な三枚。とはいえこの三枚だけではEランク迷宮攻略には戦力的に不安が残る。

 おおまかな目安としてボスまでの道中にDランクが一枚、ボスを相手にDランク二枚は最低でも必要と言われている。欲を言えば更にもう一枚欲しい。

 なので戦力を拡充することにした。

 籠付から示談金ついでにせしめたDランクカード、狛犬が一枚。

 さらに響と交渉し、狛犬と強力なシナジーがあるDランクカードをもう一枚レンタルすることにした。

 これらに加え、冒険者ギルドで大枚を叩いて密かに手に入れたDランクの()()()()()()()()()が一枚。ちなみに示談金含めてこの三週間ほどで貯めた資金と貯金の大半を吹っ飛ばす高値となった。

 

(戦力拡充のために必要な措置だ。それ以外の意図は一切ない)

 

 と、心のうちだけで誰に伝えるわけでもなく言い訳をする守善。

 ともあれこれで主力となるDランクカード五枚、索敵用のEランクカードが一枚。一般的なEランク迷宮なら余裕で蹴散らせる戦力だ。とはいえ昇格試験に使われる迷宮は通常よりも難易度が高いという話だが。

 

(念には念をだ。保険を掛けるに越したことは無い)

 

 さらに試験対策として響への聞き込みをはじめとして情報収集を欠かさない。

 試験場となるEランク迷宮は冒険者ギルド占有の非公開迷宮だが、漏れ出てくる情報から傾向と対策は練れる。加えて多忙な響が時間を取り、わざわざ迷宮で『特訓』に付き合ってくれたのは望外の幸運だった。現役の三ツ星冒険者から実地で体験談を交えながら受ける教えを守善は嬉々として吸収し、血肉とした。

 

(……途中、わざわざ木の葉天狗と二人きりで話し合っていたのが少し気になるが。まあいい、気にするほどのことでもないか)

 

 重要なのは出来る限りの準備を済ませたと自信を持って言える事実だ。

 二ツ星冒険者への昇格資格試験では半分が落第し、さらにその半分が二ツ星への昇格を諦めるという。それだけFランク迷宮とは一線を画す難易度であるのだが、守善が目指すのは一発合格だ。冒険者としての高みを目指すため、最短ルートを駆け抜ける。こんなところで足踏みをするつもりはない。

 

「Eランク迷宮ならオーバーキルの戦力だろう。油断だけはしそうにないので、決して無理はしないように。それでも苦戦するようなら……私が初めて迷宮に潜ったときに言ったことを思い出してくれ」

 

 なお響は執拗なまでに傾向と対策を練り上げる守善を見てそう評し、最後に一言だけ忠告を投げた。

 それでも守善は油断せずに準備を続け、やがて冒険者ギルドから昇格試験の通知が届き――生涯初めてのEランク迷宮へと足を踏み入れた。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇ 

 

 

 

 Fランク迷宮とEランク迷宮の難易度を分ける最大の理由は何だろうか。

 出現するモンスターの凶悪化? 複雑化する迷宮の構造? Eランク迷宮から出現する罠の存在?

 結論を先に言えば階層の深化と罠の出現による攻略時間の激増である。

 概ねの目安としてFランク迷宮は精々十階層まで。日帰りも十分可能な浅い迷宮ばかりだ。対し、Eランク迷宮では最大で倍の二十階層。

 加えてEランク迷宮からはダンジョンに罠というギミックが出現する。誰が仕掛けているのか一切原理不明のギミックだが、ともかく冒険者はそれがあると警戒して進まねばならない。

 ギミックの起点に引っかかると落とし穴、仕掛け矢、落石などなどバリエーション豊かなトラップがお出迎えだ。Eランク迷宮程度のトラップではカードのバリア機能で致命傷になることは考えづらいとはいえ、油断はできない。

 これらの障害に阻まれ、一階層の攻略に数時間かかると計算すれば、日帰りは絶対に不可能。泊りがけの遠征となる。

 さらにダンジョンという異質な空間に身を置き続ける精神的負担。モンスターに囲まれ、いつ襲われるかわからないというプレッシャーもまた精神を削る。

 それらの要素全てが冒険者に向けて絶大な負担と成って襲いかかってくるのだ。いわゆるエンジョイ勢の冒険者が二ツ星昇格を諦めるのも無理はない。

 

「……長期戦を見込んでGW(ゴールデン・ウィーク)に挑んで良かったな。想像以上に負担が大きい」

 

 約一ヵ月。大学に入学してからそれだけの時が過ぎた。

 守善がまとまった時間が得られるGW(ゴールデン・ウィーク)の時期に二ツ星冒険者資格の昇格試験に挑んだのも必然だろう。

 今回、昇格試験で挑む迷宮はギルド指定の非公開迷宮であり、これまでのようなマップ情報やモンスターに関する情報をギルドからから購入することが出来ない。

 未知への対応力も冒険者に必要な資質であり、それを試すための二ツ星冒険者資格試験だ。

 守善にとってはまさに未知の挑戦とでも言うべきダンジョン攻略であった。

 

「が、いまのところ全て想定の範囲内だな」

 

 そしてもちろんその程度で音を上げるような可愛げは守善にはない。徹底した事前準備と対策で想定される障害を潰しにかかっていた。

 

「鴉、マップ作成の調子はどうだ?」

「はいはい、順調ですよ。それにしても最近のカラクリは便利ですねえ。このアプリとかいうのを起動しておけばある程度は勝手に地図を作り上げてくれるんですから」

「ウェアラブルカメラが捉えた範囲までだがな。あとは手作業でやるしかないのは今も昔も変わらん」

「骨組みが出来ればあとは肉付けするだけですからねー。私に言わせれば楽なもんですよ。ちょっと大きさ的に扱いにくいのが玉に瑕ですが」

 

 例えば冒険者御用達のアイテムとしてスマホにインストールしたマップ自動作製アプリ。カメラと連動したそれでマップの骨組みを作り上げる。

 そこに風読みスキルによって読み込んだ広範囲の情報を木の葉天狗に書き込ませることでさらに作成速度と完成度を上げていた。

 幸い今回の迷宮はスタンダートタイプ。野良敵が出ない枝分かれする石造りの道がひたすら続き、通路の途中に存在する小部屋に足を踏み入れると中のモンスター達が襲い掛かってくる形式だ。索敵をほとんど必要とせず、木の葉天狗はマップ作成に専念させることが出来た。

 

「主」

「また罠か?」

「はい」

「詳細を」

 

 そして罠解除は何事も呑み込みがよく、器用なホムンクルスに一任し、いまのところよく応えている。もちろん素質が有るからと丸投げするほど守善も考えなしではない。

 試験前に特訓期間を作り、響のシルキー・オルマから罠解除のイロハを教わったのだ。家事やサポートはもちろん戦闘に罠解除までこなすあたりオルマ……万能(オールマイティー)の名は伊達ではなかった。

 そんな万能メイドの薫陶を受けたホムンクルスは手際よく罠を見破り、無効化していく。まだスキルとして昇華されてはいないが、それも時間の問題だろう。そう思わせる成長だ。

 

「壁面及び床面の一部が通常と異なる配色になっています。これまでの傾向から該当部との接触を起点にした罠の発動が予測されます」

「対処は?」

「私が先行し、発動条件を確認します。確認後、マスター達も続いてください」

「そうか。いまのところオルマの教えで対処しきれない罠はないようだな」

「はい。オルマ先生は優れた教師です」

「本業はメイドだがな。……いや、迷宮攻略のためのモンスターだが」

 

 いつの間にかシルキー・オルマを先生と敬称で呼ぶようになったホムンクルス。誰が促したわけでもなく自然と師弟関係を結んでいたのだ。スキルだけではなく、性格的にも相性は良かったようだ。

 これ以上影響を受けてそのうちメイドになるなどととんちんかんなことを言い出さねばいいのだが……と、守善がおかしな方向の心配をするほどに二人の相性は良かった。

 

(最初は数合わせの肉盾のつもりだったが……)

 

 それこそ使い捨てもやむなしの不良品と判断していたが、想像をはるかに超えて成長率が著しい。特にスキルの習得速度は一種の天才と評してもいいレベルだ。もちろんオルマの教導スキルも忘れてはならないが。

 

(アサシンかシーフじみた方向での運用なら十二分に使える。腐ってもCランクモンスター。最終的な伸びしろはこいつが一番上だ。案外こいつがうちのエースになるかもしれんな)

 

 Cランクモンスター、ホムンクルス。

 その初期戦闘力は通常200から始まり最終的には600。零落せし存在によりマイナス100されるがそれでも500。通常モンスターの戦闘力の成長限界は初期戦闘力の2倍が限度。だがホムンクルスについてはそれが当てはまらない。不遇な基礎スペックを補うような高い成長率だ。

 とはいえ最大値まで成長してもBランク最弱クラスの初期戦闘力程度でしかない。Cランクの区分では下から数えたほうが早い弱小種族なのも事実だ。その脆さも相まって運用には慎重を要するだろう。

 

「……安全の確認を完了。推測通り、トラップの起点は変色した床との接触のようです。気を付けてお通りください」

「分かった。いつも助かる」

「主の従者ならば当然のことです」

 

 スルスルと気取りのない足取りで罠が設置された通路を通り、安全を確認したホムンクルスが声をかけてくる。労いの言葉に何でもないことのように返す様は気品すら感じられた。師匠のオルマに似つつあるようだ。

 ホムンクルスは弱点の多いカードだ。だがそれが問題にならないほど頼りになるのは間違いなかった。

 そんな事を考えながらも攻略は続いていく。

 モンスターの溜まり場となっている小部屋での戦闘は問題に成らなかった。十階層以下で出現するモンスターはFランクが大半。しかも殆どが一度は戦ったことのある相手。戦いすら成立せずに一方的な虐殺を淡々とこなしていく。

 最大の敵はやはり否応なく警戒を強いてくる罠と複雑に枝分かれした迷宮そのものだった。

 そして常に緊張感を張り巡らせた攻略が更に二時間ほど続き……。

 

「……時間だな。そろそろ大休憩を取る。二時間後に出発だ。全員、よく体を休めておけ」

 

 ある階層の安全地帯にたどり着いた守善は、一行にそう宣言した。

 響曰く、迷宮攻略の秘訣と言い切っていいほどに重要な技能があるという。

 すなわち休憩だ。

 Eランク以上の迷宮攻略は最低でも数日間に渡る長丁場。その中でどのように休憩を取り、疲労を抜くかは地味だが重要なスキルである。慣れない内は疲労の深さを見誤り、不覚を取る冒険者はかなり多いのだとか。

 

(慣れないうちは時間か踏破階数を決めて定期的に休め、か。金言だったな)

 

 三ツ星冒険者である響から受けたアドバイスを思い出す。

 絶え間ないプレッシャーは緊張を生み、疲労を忘れさせる。しかし忘れるだけで消えはせず、確実に体の奥底に蓄積し続ける。そして最悪のタイミングで爆発するのだ。

 それを避けるための響からの忠告だった。

 まず長い道のりと絶え間ないプレッシャーによる疲労は適切なタイミングで休憩を取り、リラックスすることで改善できる。

 いまのところ目安として二時間から四時間で一階層が踏破出来ている。言い換えれば約二~四時間間隔で各階層に存在する安全地帯でモンスターに襲われる心配なく休憩する機会が得られるのだ。

 そのアドバンテージを最大限有効に使う。

 重要なのは緊張と弛緩のバランス、力の入れどころと抜きどころだ。 

 人間は機械ではない。集中力は脳の働きで、脳の働きは物理的な限界がある以上四六時中気を張り続けることなど出来ない。

 それを踏まえて心と体を休めるスキルが重要になる。

 

「幸いここはクローズドダンジョンだ。モンスター以外の襲撃に気を配らなくていいのは助かる」

「……モンスターじゃなくて冒険者の襲撃を警戒するのはひねくれすぎじゃありません?」

「いいか、あの籠付(アホ)を思い出せ。そしてアホはこの世にアレ以外にもいる」

「困りました。ちょっと反論が思いつかない」

 

 雑談を交わしながらも身に纏った装備を脱ぎ、軽くストレッチをこなす。筋肉にたまった疲労物質を抜いて血行を促進。軽食を取り、リラックスしてストレスの緩和に努める。

 行住坐臥戦いという言葉が幻想に過ぎない以上、重要なのは()()()()()()()()()()()()()()()

 もちろんいつでもそこでも気を抜けばいいということではない。

 長期戦の基本は安全圏(ベースキャンプ)の確保。その原則に従ったうえで思い切りリラックスする。いっそ無防備なほどに。

 それが出来るか出来ないかで次の行動でとれるパフォーマンスがまるで変わってくる。

 

「……そろそろ進むぞ」

 

 その号令を合図に、休んでいたモンスター達も立ち上がってその背中に続く。

 淡々と、しかし確実に攻略を進めていく。

 そして外界では日が暮れる時間帯になった頃。タイミング良くたどり着いた安全地帯で早めにキャンプの設営を開始した。

 設営地点はクローズドダンジョン全十七階層、その七階層。守善達が昇格試験に挑戦した一日目の成果である。

 続く二日目も若干の疲労を感じながらもそれを感じさせないパフォーマンスを発揮し、十五階層まで順調に攻略を進め……。

 三日目、最下層の下から二番目の階層へと一行は挑んだ。

 


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