強い日差し、うるさいセミの鳴き声、どうしよも出来ない暑さ
そして何より暑さのせいでダルくなる仕事
社畜はやっぱり夏が敵だよなー
「はぁ…暇だな…」
この夏は授業があまりない
訓練は熱中症対策としてどのクラスも週に1回
他は座学、実技は水泳
何が言いたいかと言うと
「暇だ(2回目)」
自室で書類を書き、今日の仕事を終わらせる
まだ午前というのにな…
せめて、僕も授業をしたいな…
でも座学は苦手だしな…それに免許も持ってないし
自主練でもしようかな…って言ってもサンドバッグ打つだけだけど
ま、まだ午前は見回りとかあるし暇は潰せるか…
いや、てか明日から長期休暇じゃん!
今思い出した
そうだ明日からは長〜い長〜い、夏休み!
今日は7月31日…8月からか
よっしゃ!やっと何も考えずに色んな事が出来る!
最近何かと忙しかったしな…
良い休暇になりそうだ!
僕はルンルン気分で見回りを開始した
「夏休みー♪夏休みー♪何も考えずに生きれるー♪」
らしくない謎の歌を口ずさみながら歩く
「楽しそうね、レン」
前からイロハが笑顔で歩いてくる
「夏休みだぞ?!明日から!何も考えずに生きれるんだぞ?!」
「ふふっ、なんか弟って感じがしたわ」
口を手のひらで隠しながら上品に笑うイロハ
「僕はあんたの弟だろ?」
「違う違う、なんかこういつもは私より頼もしくってカッコイイあんただけど、そんなにもルンルン気分だど可愛いって思っちゃって本当に私の弟なんだなーって」
「僕が可愛い…?」
こいつの目は節穴か?
「うん、いつもとは違って可愛く見えるわよ」
なるほど…いつもとの差、つまりギャップというやつか
「はあ…ギャップって」
僕は頭を押さえながらため息をつく
「あ、そういえばもう誕生日だったわね?」
「誕生日?…ああそうだったな」
またすっかり忘れていた
「今年はお祝いしてくれる人がいて良かったわね」
「誰が祝ってくれるんだ?お前なら遠慮しとくが」
「違うわよ!私とリリィ達って事よ!」
「何が言いたい?」
リリィ達が祝ってくれる?今年百合ヶ丘に来てばっかなのに?
「ま、楽しみにしといて」
「嘘なのは分かってるが楽しみにしてるよ」
「嘘じゃないわよ…?」
そういい、僕らは別の方向へと歩き出した…
夏休みが入ってから9日がたった、8月9日
暑すぎて動く気も起きない
外に出ようかと思ったがセミがうるさい
「誕生日は…嫌いだ」
こんな暑い日が誕生日だとわな
「とりあえずエアコンつけねぇと」
エアコンをつけようとリモコンがかかってある入口付近までのしのしと動く
そしてリモコンを手に取り冷房をつけようとする
僕の手はそこで止まった
「は、はは…」
苦笑いをし、これからどう生きていこうか考える
リモコンの表示は…
冷房
「なんでついててこんな暑さなんだょぉぉぉぉぉぉぉお!!!」
冷房がついているのにも関わらずとても部屋の温度は高い
百合ヶ丘の宿舎はこんなにも暑いとわな…
「暑い…暑すぎる…」
もう死んでまうのでは…?
何も考えれず床に倒れ込む
床が冷たくて気持ちとは思ったが次第に力が抜けていく
「これが、"死"か…」
意識が朦朧としてくる中1つの音が聞こえた
それは、ドアのノック音
「なんだ?埋葬業務者か?…」
ろくでもないことを言いながら、立ち上がり鍵をあける
「はい、なんですか?こんな暑い日………ん?!」
ドアを開けるとさっきの暑さが嘘かのように寒気がした
目の前にいたのは、ピンク髪のリリィ
亜羅椰、最近全然あってなかったからか、とても怒ってるように思える
ドス黒いオーラを纏い凄いよく無さそうな(?)笑顔でこっちをずーっと見つめてくるだけ
「あ、亜羅椰さん?きょ、今日はどういった…」
恐る恐る、質問を投げかける
「今日は、何日か知ってますの?」
ドス黒いオーラを瞬時に消して、問いかける亜羅椰
それに僕は即座に返事する
「今日は8月9日だな」
「分かってらっしゃったのね」
煽り気味な笑顔で一瞬で答える亜羅椰
「それで?何の用だ?」
少し間をあけ、質問を投げかける
「今日、というか今からですが…海に来てもらいます」
「へ?」
珍しく間抜けな声が出てしまった
亜羅椰の言う通り、海に行くための準備をした
「なんで海なんだろう…」
もう亜羅椰は行っていたので本音を漏らす
海…?何故なんだ?
まさかイロハの言う通り、何かあるのか?
いやそんなことは無いだろう、期待はせず海に向かおう
百合ヶ丘を出て、近くの海へと向かう
セミがミーンミーンと鳴く道から出て、浜辺の砂に足をつける
砂はとてもふかふかしていて、おかしな感覚だ
「あ!教官ー!!!」
砂を見つめていたが、呼ばれたので声がした方を向く
そこには大きく手を振る梨璃の姿があった
僕は一歩一歩踏みしめながら梨璃の元へ向かう
「1人なのか?」
「いえ他にも数人います!今は着替えているのかと」
そうか…ここって海だったな
「梨璃だけ着替え終わって待ってたんだな」
「はい!」
大きく頷き、少し顔を赤らめた
そして少し僕から目を逸らす
「なんだが…恥ずかしいです…///」
いつもは着ないもんなこんな露出の多い物
恥ずかしがって当然か
「教官は着替えてこないんですか?」
目を逸らしながら質問する
「んー…どうしよっかな…」
普通の人ならそく着替えるのだろうが
僕はあいにくそういうのが苦手な人でね
周りの人に体を見られるのは好きじゃない…
考えている内に更衣室のドアが開く音がした
僕は音の方へと向く
出てきたのは少なくとも10以上のリリィ
僕は人数に驚き、梨璃に問いかける
「な、なあこれ何人いんだ?」
「一柳隊とアールヴヘイムのメンバーですよ?」
こう見るとめちゃくちゃ人数いるな
てか人数というより、スタイルめちゃくちゃいいな
おっと取り乱してしまった
これ以上見てると何か言われそうなので海の方をみ、少し海へと近寄る
綺麗な海だ
青空と日光が反射し、一段と青く見え、とても眩しい
僕は海に見とれてしまっていた
海は初めてだが、こんなに綺麗とは思わなかった
美しい
ただその言葉だけが浮かぶ
「あれれー?もしかして私のスタイルが良すぎて興奮しちゃうから見ないようにしてるのー?レンったら男子〜」
僕の尊い気分を妨げたイロハ
後ろから抱きつき、僕の背中に自慢の胸を当ててくる
耳元で囁いてき、無駄にセンシティブ
だがそんなのにピクリとも反応しない自分が素晴らしい
いやこいつだから耐えられているのか…他のリリィにやられたら僕はこの世からいなくなるだろう
「あれれー?もしかしてレンって結構こういうの弱……」
「んっっっ!!」
「ぐはっー!!!」
僕はこいつのお腹に肘打ちをし、後ろに思いっきり飛ばす
イロハは梨璃達の方まで吹っ飛び心配されている
「言っとくがお前なんかでは俺の心は動かせんぞ?」
「ぐっ…ぐぬぬ…恐ろしく早い肘打ち、私じゃなきゃ見逃しちゃうね!」
「もう一度してやろうか?頑丈ババア」
リリィ達は苦笑いを浮かべこの場を濁そうとしている
流石に気を遣わせる訳にもいかないと思いもうそれ以上は手を出さなかった
「て、てかレンは着替えないの?」
立ち上がり、着いていた砂を払いながら言うイロハ
「お前忘れたのか?僕は人前で体なんか晒したくないし…」
こういうのが俗にいう、陰キャというやつだ
だがそれは事実なため、僕はなんとも思ってない
「ええー?みんなレンの腹筋みたいと思ってるよー絶対!」
「黙れ」
これだから姉貴は嫌いなんだよな
姉貴は、腐女子という類になる
昔は、いつも僕の部屋に入ってきては何かゴソゴソしていた
気持ち悪い
でも、こいつは世間一般的にいえば美人である
金髪に、整った顔立ち
そしてどんな男の人でも見てしまうスタイル
締まっているところはしっかりしまって
出るところは、しっかり出ている
美人だから嫌なんだ
もっとブサイクだったら縁を切っていただろうな
僕は今も昔もこう思っている
清く美しい心を持って欲しいと
少し僕は集中を切らし、周りに耳をかすと
リリィ達のクスクスとした笑い声が聞こえた
僕は腹あたりに違和感を感じたので下を向く
「ん?イロハ何をして…」
そこには膝をつきながら、僕に何かをしているイロハの姿
次第に僕と同じ目線までに立ち上がった
そして、僕が着ていたYシャツの襟を掴んだ
直後にリリィ達の「うぉー」という関心の声が聞こえた
僕はここで初めて気づいた
いつの間にか脱がされていると
「ほー流石我が弟ね!ふつくしい腹筋!浮き出ている血管!硬そうな肩甲骨!そしていい形のむ…」
「死ね餓鬼!」
僕はイロハの顔に蹴りを繰り出す
そのせいでYシャツが完全に下へと落ちる
「ほー!!やはりふつくしい…」
倒れているのにも関わらず見た気になり言葉を発する
「っ!ちょっとみんな、今のは見なかった事に…」
Yシャツを拾おうとし、少し縮こまった瞬間に亜羅椰にシャツを取られた
「ま、まて!亜羅椰!それは本当に…」
「いいえ返しません!私はあなたの上裸をみたいから!」
「お前もかよぉぉぉぉぉ!!!!」
結局、僕は水着に着替えた
上に着れるものがなく、上は何もなし
とても恥ずかしい…
「教官、凄い腹筋…」
「ゆ、ユージアさんは、じゅ、純粋でいてくれ…」
「あら?ユージアさんもこういうのに興味あるのー?!」
僕の切実な願いを潰そうとする腐女子(イロハ)
「よ、よせ!ユージアさんは純粋なスナイパーだ!やめろ!やめてくれ!」
まるで命がかかってるかのように叫ぶ僕
それをものともせずにユージアに話を続けるイロハ
「ユージアさん、男性っていうのは凄いいいポーズをしたら興奮するのよ、やってみて、こういう感じ!」
イロハは前かがみになり胸を強調するようなポーズをとる
「お前のは本当になんも思わん」
辛辣に反応する
しかし、数秒後に…
「こ、こうですか?…」
「なっ!」
なんとユージアもそのポーズをしてしまった
やばい、可愛い
くっ、やはり他の人にやられたら何も感じないは嘘になってしまう…
ずるいだろ…!顔を赤らめてちょっと恥ずかしさ隠せてない顔は!
くっそ!耐えれる自信がねぇ!
どうにか話をそらしてこの場をくぐり抜けねぇと…!
「そ、それよりお、泳がねぇのか?ほらせっかく水着に着替えてるし…」
そう問いかけるとユージアは顔を赤らめながら普通の姿勢へと戻った
「ふぅ」と息を吐きひとまず安心する
それ以上されていたら僕の気はどこかに行っていただろう…
「そうね〜せっかくの休暇だし、遊ばないとね!」
まっさきに反応したイロハは拳を振り上げ、楽しむ気満々
他のリリィ達も「そうですね」という笑顔でイロハを見ていた
「じゃ!遊ぼー!!!」
青い海、雲ひとつ無い綺麗な空、海ではしゃぐ若者達
これが夏、なかなかいいものだな
防衛軍にいた頃はこんな夏らしいことなんかしてなかったな…
というかこういう事をしていたと思うが僕は参加はしなかったな
人の集まりは好きじゃなかったからな…
でもこういうのもたまには良いな
「教官も泳ぎましょーよー!!」
浜辺でゆっくりしていると梨璃が誘ってくる
「ああ!今そっち行くよ!」
久々に泳いでみるのもありか…
と思い返事をする
僕は立ち上がり小走りをし、梨璃の元へと向かう
海ではもう泳いでいるリリィ達がいるなか、梨璃は待っていてくれたようだ
人がいいな
「すまん待たせたな」
「いえ!大丈夫です!それより早く泳ぎましょう!」
「そうだな」
元気がいいなー
準備体操をしていると横で同じことをしている梨璃から質問がくる
「教官って海とか泳げるんですか?」
遠慮気味にいう
僕は瞬時に答える
「僕は泳げるけど、ちょっとトラウマがあってね」
「トラウマですか?」
「ああ」
忘れもしない、あんな日々が続いてたのによくも僕は耐えれたよ
「じゃ入りましょうか!」
準備体操を終えた梨璃が急にいう
僕はそれに反応し
海に浸かる
冷たい
それが最初の率直な感想であった
「これが海か…」
先程も言ったが僕は海が初めてだ
このようなうつくしい物が、地球上には腐るほどある
素晴らしいものだ
海軍とかはこんな美しいものを毎日見ているのか
入る組織間違えたか?
「教官、海初めてなんですね!」
「ああ、そうだ」
海より綺麗な笑顔で覗き込む梨璃
僕はその笑顔に見とれてしまっていた
「?教官?」
梨璃の言葉で目が覚める
「ああいや」
なんと言い訳しようか
見とれているとでも言ってみろ、キモがられるだけだ
「えっーと…きょ、今日結構天気いいなーって」
「あ、そうですね!今日は雲ひとつありませんね!」
あー純粋で良かったー
ほんとにいい女性になるよ、君は
僕は体全体を海に浸からせる
「うっ〜冷た〜い」
僕が浸かったあとに梨璃も浸かる
「ちょっと泳いでもいいか?」
後ろにいた梨璃に許可をとる
「はい!私は遊びながら見ときます!」
「どっちかにしろよ」
互いに笑いながら僕は背を向ける
そして僕は久々に泳ぐ
まさか僕がまた泳ぐとはな
僕は雑にクロールをする
久々に泳いで思ったが
やはり、陸の防衛軍で良かったと思う
泳ぎのセンスがねぇ
それにしても海の中はとても綺麗だ
まるで本当の現実ではないようだ
本当に海というのは美しいものだな
「はぁ、疲れた」
少し泳ぐと、すぐに疲労が溜まった
久々の水泳だ、当たり前か
その後は誰とも話さずなんとなく泳いでいた
そうただ黙々とな
体力の限界というところまで泳いでいたら、陸から名前を呼ばれた
「レーン!!!おひるー!!!」
イロハが僕に向かって叫んでいた
僕はそれに反応し、「分かったー」と伝える
陸に上がり屋根がある建物に駆け寄る
こんな暑い日の地面は熱すぎる
裸足ではもう歩きたくないな
屋根の下ではBBQをしていた
一柳隊のみんなが焼いているようだ
そして最年長であるイロハは…
「何してる?」
「本読んでる!やー昨日新巻が出ちゃって」
「動けよ、最年長なんだから」
「そんな理由では動きたくなーい!」
「はぁ…」
まあいいか
まずまずこういうのを用意してくれたのはあいつだし
「それで僕は何したらいいの?」
リリィ達に手伝いを申し出る
「あ、教官は座っておいてください!私たちがしますので!」
梨璃が胸を張って言う
僕はそうかと思い、近くにあった椅子に座る
座ると隣にいた天葉が話しかけてくる
「さっきの話し合いで疑問に思ったけど最年長ってイロハさんなの?!」
「あ、ああそうだが?」
「何年離れてるの?!」
「2年だけど…」
「へ、へぇ…」
ま、普通僕の方が年上って思っちゃうよな
でも本当はイロハの方が上
「良く間違えられるんだよなー」
「は、初耳だなー…」
しばらくすると材料全てが焼き終わり、僕らの前に並べられた
いい焼きかげんだ
すごく上手だ
「一柳隊、流石だな」
「えへへ」
僕が隊長である梨璃に向かって隊を褒める
でも本当に凄い部隊だ
戦闘面、生活面全てにおいて80点だ
「あ、教官!イロハさんにこれ渡してきてください!」
梨璃が差し出してきたのはみんなと同じ料理
僕はそれを受け取り立ち上がる
一柳は僕の扱い方を分かってきたのかな?
と思いながら慎重に向かう
「おい、昼飯だぞ」
「お、てんきゅー」
本を読んでいるイロハの腹に皿を置く
「そ、そんなとこに置かなくても…」
「どこに置けって言うんだよ、お前が座ってる斜めの椅子しかないだろ?」
「そうだけどお腹はないでしょ?」
「うるせぇ、黙って食え」
「なんか冷たーい」
イロハは体制を変えながら、かまちょしてくる
僕はそれに呆れ目をそらす
と、ここで僕は不思議に思った
「なんだ?この本?」
イロハが読んでいた本が目に入る
見たことのない本だ…
表紙は真っ黒
何の話か、表紙じゃ分からない
「あーそれ?おもしろいわよー」
「どんな話なんだ?」
珍しく僕はイロハの本に興味津々だった
普段こいつはセンシティブな本しか読んでないので興味はなかった
が、こういう本には興味がある
「レンは死神っていうのを信じる?」
「死神?」
本をペラペラと見ていると唐突な不思議な質問が耳に入る
どうやらこの本は"死神"というものにスポットライトを当てた本ならしい
「死神って不思議よねー」
「どこが?」
「え?!不思議じゃないの?!」
「別にそうでもない…だってもう死神について語られてるんだろ?不思議でもなんでもないだろ」
「確かにねー…ん!このお肉おいしっ!」
肉を頬張りながら率直な感想を言っている
死神か…
「そうそう、この本には死神って案外近くにいるって書いてあったの」
「だからなんだ?」
「あんたが死神かもね」
イロハが僕の頭を掴み、耳元で変な事を言ってきた
正直少しヒヤヒヤした
だが僕は動じないような態度を取る
「死神?俺が?」
「…ううん、なんでもない」
なんだこいつ
俺が死神?意味が分からない
俺は俺だ
「レン?どうしたの?」
「あ、いやなんでもない」
そう、僕は僕だ
ちょっと違う人間だ
たとえ僕が死神だったとしたら、イロハもそうなる
こいつは僕と同じ性質を持っている
僕だけではないだろ
「教官ー!冷めちゃいますよーー?」
「了解だー!すぐ食うよー!」
「あんたもモテ期かしら?私だけの者だったのに」
「誰もお前の物にはなった覚えがない、じゃあな食ってくるよ」
「うん、行ってらっしゃい」
あれから数時間が経った
僕は何もしないままぼっーとしたり
リリィ達と遊んだりした
だがあのイロハの言葉だけがどうしても、モヤモヤしている
なんで僕が死神って思ったんだろうな
夕日が辺りを照らしいている中
僕らは片付けをしていた
水平線に沈みゆく夕日
僕らは黄昏ている
という言葉が最適だろ
とてもいい景色だ
夕日を見ていると誰かが座っている影がほんの少しだけ目に入った
どこか切なさそうな影だ
僕はそのリリィの元へと歩き始める
「なんだ亜羅椰か、どうしたんだ?どこか切なそうだけど」
「え?そうかしら?」
とぼけているのか本気なのかは分からないがどこか悲しそうなのは確かだ
「今日は楽しかったか?」
「もちろんよ」
「そうか…なら良かったよ」
「教官は?」
「僕は楽しかった」
「ふーん」
素っ気ないな…
「…後でまた話しかける」
そういい、片付けに参加しにいく亜羅椰
どういう事だ?
一体何があったんだろ…
僕達は片付けを終わらせ、百合ヶ丘へと戻った
道中は話声が絶えなかったが僕は亜羅椰やイロハの事を考えていた
特別な感情的な物ではなく、ただ単純に不思議に思った事があったからだ
「よし、とーちゃーく」
イロハの声で考えることをやめた
考えているうちに着いた
時間って速いな
「あ、レン話したいことあるから休憩所きて」
「話したいこと?ま、まあ分かった」
僕らは自分達の自室へと向かった
僕は荷物を置き、指定された場所へと移動する
部屋の前まで来たところで、僕はあたりを見渡す
見渡すとイロハは居なくおそらくもう中に入っている
というかなぜ広い部屋で話すのだろう
自室でもいいのではないか?
不思議に思いながらドアノブに触れる
そして恐る恐るドアをあける
ドアを開けると、「パァンッ!」というクラッカーの音がした
なんだこれは
というのが率直な感想
でも僕は後の言葉で悟った
「誕生日おめでとうー!」
そうか僕は誕生日だったのか…
でもわざわざこんな事しなくても…
「教官!改めてお誕生日おめでとうございます!」
「happy birthday!」
「おめでとうございますっ!」
様々な声があげられているがどれも祝いの言葉だ
「お前ら、いくらなんでも…」
「レーン?!そこあんたの悪い癖!」
僕があたりを見渡しながら言うと、軽くお叱りの声が
「しっかり貰ったものは、しっかり受け取る!常識よ!」
「って言われてもな…」
「素直に喜びなさい!」
おかんみたいだ
ほんとこいつは良い奴なんだが悪い奴なんだか
「…なんか言い難いけど、祝ってくれてありがとうなお前ら」
「よく出来ましたー!」
「うわめっちゃ恥ずい」
「えー?!可愛いー!!」
「うるせぇよ!」
自然と笑みがこぼれる
これが嬉しい、楽しいという感情
今まであまり感じたことの無いものだ
本当に僕はいい暮らしを今している
ありがとう
自室に戻り、僕は仕事をしようとするとドアがノックされた
「きょ、教官!私です」
「ああ、今あける」
ドアの向こうにいたのは亜羅椰
手を後ろで組んで、何か隠しいている
「どうしたんだ?良い子はもうねんねの時間だそ?」
「私良い子ではないので」
「訓練の評価を1下げるか」
「何故です?!!」
「はは、冗談だよ」
少し間が空いた後、亜羅椰から口を開く
「あの、お誕生日おめでとう…ございます…!」
使い慣れてない敬語
少し声が小さくなっている
「良かったらこれを、受け取ってください」
そう言って渡されたのは
「ジャケット?」
「はい!」
黒色のフード付きの長いジャケット
ざっと見で僕がきたら、膝くらいまである
「これ、僕のために?」
「は、はい!もちろん!さっきまでこれでいいのか分からなくて私もよく分からない感情でしたが、イロハさんの言葉で渡そうと思って」
「へー亜羅椰も案外考えるんだな、でもありがとう!僕こういうの持ってないから助かるよ!」
「喜んでもらって良かったです!」
僕は心の中で呟いた
ありがとう