ゴールドシップに昼ご飯を食べようと拉致、学園の外に連行されてとあるお店へとやってきた。
「おっす! 来たぜ、おっちゃん!」
「いらっしゃい嬢ちゃん! 空いてるところにどうぞ!」
2人でやってきたのはラーメン屋だ。彼女の行きつけであり、2人でよく通っているところ。これで何度目の来店だろうか。
店に入る前から香ってくる独特な香りで急にお腹がすいてくる。煮込んでいるスープの香りなんだろうか。
いつも座るカウンター席に並んで座り、早速注文する。
「アタシいつものやつな! トレーナーはどーすんだ?」
俺もいつものやつ。
「はいよ! いつもの2つね!」
常連にのみ許される魔法の言葉「イツモノヤツ」を唱えてコップに水を注ぐ。ラーメン店は水のお替りがセルフか、最初からセルフかどちらかだ。
ここはカウンターにいくつかポットが置いてあるタイプ。ラーメン店のポットとコップってどこも似てるよなとなんとなく思う。
「ん」
隣から差し出された透明なコップに水を注ぐ。ポットの中で氷がぶつかりガラガラと音が鳴る。
この音もラーメン店あるあるというかなんというか。細かい氷が入ってるんだよなぁ。
「ありがとな。礼には及ばねーぜ」
それ俺のセリフだから。
「こまけーこたぁいいんだよ!」
したたかに腕を引っぱたかれてしまった。
ウマ娘のパワーだとシャレにならない……!
腕をさすっていると、何故か鼻の下を指でこすっている。
「安心しな……本気だぜ」
みねうちにしろ!
「いでっ! やったなトレーナーよぉ!」
デコピンで仕返しをしてやると暴れて俺をビシバシひっぱたき始めた。
カウンター席ではしゃぐのはやめ……やめろぉー!
「はいお待ち! いつも仲が良いねぇ」
大将が苦笑いしながらラーメンを出してくれる。
それを見て目を輝かせたゴールドシップは、嬉しそうに自分のどんぶりを目の前に動かした。
「お! きたきた! トレーナー箸とってくんね?」
ラーメンが出てきてゴールドシップはいそいそと髪を結ぶ。髪が長いから、頭からも尻尾が垂れているみたい。
俺も改めて居ずまいを正し、箸を手渡す。よし準備完了!
「いただきます!」
いただきます。
手を合わせ、早速食事を開始だ。
まずはゴールドシップと共にいつもの儀式。
レンゲでスープを1口だ。うん、やっぱりこの豚骨しょうゆスープが美味しいんだよな。
かなりしょうゆの色が出ているのに、かなりさっぱりしているというか。舌に残りすぎず、サラリと喉を通ってしまう。
「ん! うまいな! このしつこくねーのがクセになんだよ。見た目は濃い味っぽいんだけどな」
うんうんと頷きつつ麺をすする。
ストレートな細麺で、スッキリした味わいのスープと合わさって抜群の美味しさだ。
固すぎず柔らかすぎず、丁度いい塩梅。俺は硬めがそんなに好きじゃないから、噛んだ時に少し弾力があってもちっとしている麺の方が好きだな。
「……ん。なんつーか丁度いいよな。スルスル飲めるっつーかさ」
確かに、口当たりもいいしさらっと食べていけるから飲み物みたいだ。でもさらに細い極細麺とは違ってしっかり麺を食べているという食感もあるのがイイ。
じっくりスープと麺を堪能しつつ、半分ほど食べたところでトッピングにも手を出す。
このお店のネギ、チャーシュー、メンマ、そしてかまぼこ。チャーシューが結構厚切りで大きいのが特徴。まんまるのもも肉だが、チャーシュー1枚でどんぶりの半分ぐらいを占めると言えばわかるだろうか。
俺とゴールドシップはいつもチャーシューを2枚追加で頼む。この店はチャーシューメンがないからね。
「アタシはこのチャーシューを食いにきたと言っても過言じゃねーぜ」
ゴールドシップは箸でつまみあげた大きいチャーシューを見てニヤリと笑い、そのままかぶりついた。
1口食べてもまだ半分以上残るチャーシューを噛みしめゆっくり、満足気に飲み込む。
「ふぃー、やっぱチャーシューとレースはデカいほうがいいな! 食い応えあるぜ」
それは百理ぐらいある。完璧な理論に納得しつつ俺も頬張った。
スープを作る際に豚骨と一緒に炊きこんだ醤油を使ってチャーシューを煮込むと聞いた。スープがすっきりしている分、チャーシューは大きいし味もしっかりガツンとくる。しかし舌に残るほどの濃い味というわけでもなく、いくつでも食べてしまえるのだ。
チャーシューを1枚堪能し、後はここからどう食べるか自由だ。
俺は卓上に置いてある缶を手に取り、ラーメンに軽く振りかける。
「あ、それアタシにもくれよ」
はいよ。ゴールドシップにも手渡すと、缶を振ってラーメンへ粉を振りかける。
これはコショウだ。普通に思えるかもしれないが、このラーメンにはコショウをかけるのが一般的だったりするらしいと大将が言っていた。
そして俺はこれも入れるぞ。ゴールドシップに見せるのはカウンターに置いてある白いヤツ。
そう、こいつはゆで卵。
殻がついたままの、普通のゆで卵がトッピング用に置いてあるのだ。
殻を割ってちょっとずつ剥いていると、ゴールドシップがずいっと体をこちらに寄せてくる。
「トレーナーその早寿司とってくれ」
手を伸ばしているので、ゆで卵の隣にある寿司を渡す。
この早寿司という小ぶりな鯖寿司が美味しいのだ。
これも大将の地域ではサイドメニューで鉄板らしい。だからいつも1つ頼んでいる。
「最初に食うとなんとなくヘンな感じすっからな」
関西圏ではうどんがおかずという文化がある。それに近いものなんだろう。
ラーメンにご飯というのはよくやることだが、如何せん寿司はこう、物珍しい。
酢飯と鯖がふんわりとした甘みとさっぱりした酢の味が、ラーメンのしょうゆスープにこれまた合うのだ。
ゴールドシップが嬉しそうに包み紙を取っているの間にゆで卵が剥き終わる。
白くツヤっとしたこの見た目が何ともゆで卵だ。ゴールドシップのラーメンに入れ、もう1つ手に取って剥き始める。
「ありがとな。ほらよ」
取り出した早寿司を口元に持ってこられるのでそのまま食べる。
うん、このさっぱりした味が最高にイイ。手を止めてスープを1口。うーん、合う。
「ん、うまいよな。口ん中アロマになるんじゃねーかってまろやかな味わいだぜ」
例え方が非常に悪いが言いたいことはわかる。
うんうんと頷いて食べていると、ハッハッハと大将が笑う。
「いつも美味しそうに食べてくれるねぇ2人とも」
「すげーウマいからな! ゴルゴル星の国宝認定を可決してもいいぐれーだ!」
「国宝たぁ嬉しいねぇ」
みんなでカラカラ笑い合う。周りのお客さんもニコニコしていた。
この穏やかな雰囲気もたまらないから、いつもここに来ちゃうんだよな。
改めて寿司を1つ取り、剥き終えたゆで卵も投入。
後は各々好きなように食べるだけだ。麺をすする音と、ラーメンを作る音だけが店内を支配する。そう、ここはラーメンが全て。ラーメンこそ王なのだ。
ズルズル、ムグムグ、ゴクゴク、ングング――。
「ふぃー、ごちそうさまでした」
ごちそうさまでした。カランと箸がどんぶりの底に当たる。
両手を合わせて感謝の完食。いやぁ、大満足。
「んで、この後どーすんだ? ゴルシちゃん的トレンドは鰹の一本釣りだぜ!」
水で口の中を潤しながら次の予定を確認しているが。
今日はマックイーンと併走トレーニングの予定を持ってきたんじゃなかったのか?
そう話すと、ハッとして耳と尻尾をピンとはね上げる。
「そういやそうだった。さっさと行かねーとな! 待ってろよバミューダトライアングル!」
水をぐびっと飲み干して、そのまま走り去ってしまった。次に拉致されるのはマックイーンかな。
相変わらずだなぁ。大将と目を合わせ、思わず苦笑しながらお会計を頼むのであった。
今回のラーメンはいわゆる「和歌山ラーメン」と呼ばれるものです
種類が色々あるので言及はしませんでしたが、和歌山で一般的に食べられる中華そばを書きました
よければ調べてみてください
お寿司も美味しそうですよ!