ゴルシのグルメ   作:あぬびすびすこ

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 2話目にして自分で作ります


ゴルシと年越しそば

 今日は12/31。

 大みそかである。

 

 年末年始はトレセン学園の業務も学生たちもお休みだ。

 俺もいつも通りに家でゆっくりしていたのだが。

 

「じんぐっべーる、じんぐっべーる」

 

 過ぎ去った時と共に窓から侵入してきたのは芦毛の美少女サンタクロースウマ娘。

 

「ふぉっふぉっふぉ。サンタゴルーシじゃ」

 

 ゴールドシップだ。

 いや普通に玄関から入っておいでよ。別に拒否してないのに。

 

「あぁん!? サンタつったら不法侵入だろ!」

 

 世界中に存在するサンタが驚愕する発言をかましてくる。

 いやはやこいつは穏やかじゃないぞ。

 

「こまけーことはいいんだよ! ほら、プレゼントやるぜ」

 

 持っていた袋から色々なものが取り出される。

 白ネギ、鶏肉、昆布、かつおぶし、そしてそば。

 ああ、はいはい。なるほどね。

 

「アタシ着替えてくっから用意しとけよな」

 

 そう言ってそそくさと寝室へ行ってしまった。

 勝手知ったる人の家……というやつか。まあ着替えは袋の中に入ってるんだろうから大丈夫のはず。

 とりあえず準備するとしよう。

 年越しそばを作るために。

 

 

 

 

 

「遠洋漁業ん時の匂いがするな」

 

 着替えた後にゆっくりしていたゴールドシップが鍋を見て香りを嗅ぐ。

 だし汁を作るために、昆布を入れた水を沸騰させない程度に暖める。沸騰はさせない。

 昆布が入っている時に沸騰させるとぬめりが出るから……とゴールドシップに言われた。

 そしてこの昆布だしをとるのに1時間かかっている!

 

 しっかりだし汁が取れたら、昆布を取り出して1度強火に。ぷつぷつ泡が出てきたらかつおぶしをドバっと投入! そしてすぐ火を弱める。

 かつおぶしは熱い湯に入れると雑味が出てくるんだとか。気泡が出てくるのがそのぐらいの温度だと教わった。

 

 あとは火を止めて、かつおぶしが沈むまで放置だ。

 長かった仕込みは終わっており、コンロからどけて置いてある。

 

「トレーナーも中々料理できるようになったじゃねーか」

 

 そりゃあねと同意する。

 ゴールドシップと学園でも家でも一緒に料理を作らせてくるから、ある程度覚えてしまった。

 そもそも作る料理が料亭みたいなマジのやつだからな。料理人みたいに基礎を叩きこまれて、俺はなんの仕事をしているんだと思ったことは何度もある。

 

「これでゴルシちゃんラーメン店を開いたときに助手出来んだろ! アタシは横でラーメン食うからトレーナー作る係な」

 

 それはもう俺しか働いていないのでは? 俺は訝しんだ。

 ともあれそんな話をしながらゴールドシップはネギをザクザク切っている。

 薬味ではなく具材として食べるので、かなり大きめだ。それと一緒に鶏肉も一口サイズに細かくしていく。

 

 炒める準備をするため、フライパンを取り出してコンロに乗せる。

 火をつけてある程度温めたら油を投入。

 

「いれっぞー」

 

 おーう。声掛けと共に白ネギと鶏肉が投入される。

 一緒に入れていいのかという意見もあるだろうが、この後汁と一緒に煮込むからいいのだ。

 表面を焼くぐらいにして香ばしさを出す程度にしておけばオッケー。

 

「だし汁は……ん、こんぐらいで大丈夫だろ」

 

 ゴールドシップが鍋をのぞき、かつおぶしが沈んでいるのを確認する。

 ボウルにざるを重ね、キッチンペーパーを乗せる。そこへだし汁を投入して、こしながらだしをとっていく。

 

「やっぱこのだしの匂いと色でやる気が出るぜ!」

 

 楽しそうに笑みを浮かべながら、かつおぶしを取り出したキッチンペーパーを優しくおさえて絞る。

 きつめにぎゅっと絞ると雑味が出るから、時間をかけてゆっくりとこすらしい。

 が、ゴールドシップはそれだと時間かかりすぎるしめんどくせーだろということで軽ーくだが絞って使うことが多い。

 

「うっし、一番だしだな! 料亭のおばちゃんに見せてやりてーぜ、この黄金色のだし汁をよ……」

 

 切なそうにしているが、そもそも料亭では毎回作っていると思う。

 そろそろ焼けるぞと話すと、ゴールドシップは鍋に一番だしを入れ、かえしを注ぐ。

 

「これがかえしのさしすせそだぜ! 砂糖! しょうゆ! みりん!」

 

 さとせしか合ってないしみは存在しない!

 ゴールドシップが入れたかえしは、以前から家にあるものだ。

 砂糖としょうゆ、みりんを弱火でじっくりと煮込み灰汁をとって1週間熟成させた本当にそば屋さんや料亭で作るやつである。

 料亭で修業した時に教わったらしいが、これがもう本当に美味しい。ゴールドシップが厳選した調味料で作っているから、本当に味わい深いものになっているわけで。

 

 普通に店を出せる美味しさだと思っている。それと今作った黄金色のだし汁と合わせるわけで。

 完璧なつゆができあがる。

 

「トレーナー! 今だ! その爆弾をぶちこめ!」

 

 ゴールドシップの叫びに思わずオウ! と反応して、フライパンの中身をつゆの中に入れる。

 これで少し煮込めば完成だ。思わずおお……と感動してしまう。

 

「うっし、準備できたな。そば茹でようぜ」

 

 大きい鍋を取り出し、水を入れて沸騰させる。

 あとはゴールドシップの持ってきたこの生めんそばをさっと茹でる!

 

「見とけよトレぴっぴ! この指さばきをよぉおー!」

 

 サラサラと指を動かし、生めんをほぐしながらお湯に投入している。

 後は茹で時間を見ながら箸でほぐす。ゴールドシップの体内時計がほぼ完ぺきなのでタイマーはセットしない。

 

「やっぱよー、大みそかつったらアレだろ。笑ってはいけないヤツ。あとはまろやか羅刹ご飯のスペシャルとかな!」

 

 他愛もない会話をしながら、ほぼシームレスにゴールドシップがそばを取り出してざるへすくい上げる。普通に会話しているのに体内時計で行動するのは流石というかなんというか。

 水を出してそばを洗いぬめりを取る。きっちり取り終え、ゆでていたお湯に軽く通して麺を暖める。

 

「アァーーーイ!」

 

 そばを取り出し、奇声を上げながらシンクに向けて湯切りをする。

 それはね、ラーメン屋の湯切りなんだわ。

 

「まあいいじゃねーか。ほら、つゆかけてくれ」

 

 器に盛ったそばを渡され、つゆをかける。

 ごろっとした香ばしい白ネギと鶏肉に、素晴らしい香りのだしが存分に聞いたつゆ。

 美しい……。

 

 ゴールドシップと2人で満足しながらこたつへと持っていき、両手を合わせる。

 

「いただきます」

 

 いただきます。まずは1口、つゆから。

 ……お、美味しすぎるッ!

 

「くは~、やっぱこれだな! 美味い!」

 

 年末という寒いこの時期に暖かくやさしいつゆが染みわたる……。

 しかもだしが本当にきいていて、なんともいえない味わいだ。

 

 次はそばだ。箸で少しつかみ、一気にすする。

 うん! 美味しい!

 

「生めんはコシと香りがいいよな。これも料亭のおばちゃんオススメのやつだぜ」

 

 なるほど、道理で香りがいい。

 手が止まらずスルスルと食べてしまう。

 

 さて、そろそろ具材も食べよう。

 まずは白ネギ。どれどれ……こ、これは!

 

「ん! 甘っ! すげー甘いなこれ!」

 

 品種なのだろうが、この白ネギはとんでもなく甘い!

 ビックリする甘さだ。アクセントとしては最高だな。大きめに切っているから大満足のボリュームだし。

 

 鶏肉も一口。

 

「あ、鶏肉は普通のやつだぜ」

 

 ここだけこだわらないんかい! 思わずツッコんでしまった。

 でも焼き色を付けたおかげで香ばしいし、煮込んでいるから口当たりもいい。

 

「結構うまくできたな」

 

 へへっと笑う彼女に、最高に美味しいなと話す。

 後はもうズルズルと無言でそばを食べていく。

 

 ゴールドシップが作ってくれたかえしと香り高いだし汁によりどんどん食べ進んでしまう。

 あっという間に完食してしまった。やはりだし。だしは全てを包み込んでくれる。

 

「ふぃー、ごちそうさまでした」

 

 生きとし生ける全ての生物へと万物への感謝をしながら2人で手を合わせた。

 

「んじゃ、さっさと片付けて特番みよーぜ」

 

 器を持ってキッチンへと歩いていく。

 シンクの前に並んでカチャカチャと洗い物をしながら、ふと呟く。

 

 ――今年もお世話になりました。

 

「おう。来年もゴルシちゃん劇場についてこいよな」

 

 ニッと笑うのを見て、来年も暇しない年になりそうだなと思うのであった。




 お出汁の取り方やつゆのかえしはご家庭でもできますよ!
 しこたま時間がかかるので大変ですけどね

 何かご当地の美味しいものを知っている方は感想にでも書いてもらえると嬉しいです
 食べたことのあるものしか書けませぬ故……
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