「いきますよ~~!」
「おっしぇええーーいっ!」
マチカネフクキタルとゴールドシップが練習場で併走トレーニングを行っている。
2人とも楽しそうに競い合っていて、モチベーションの高さが見て分かるな。
今日はトレーニングを午前中だけ行い、午後は自由時間にする予定だ。
もっと走りたいなら午後も自主トレしてもいいし、休んでゆっくりしてもいい。
チームとしては放任だが、個人的にはリフレッシュも兼ねて少し遊んでほしいところ。
そろそろトレーニングも終わりということでドリンクとタオルを用意していると、ゴールドシップたちが帰ってきた。
「今日も一日生き延びることができたぜ」
「ゴールドシップさんは大吉の日ですからね!」
はいどうぞとタオル等を手渡すと、汗を拭いてドリンクを飲み出す。
トレーニングはこれで終わりだ。午後からは自由にしていいよ。
「なんとっ! 太っ腹ですねぇ~!」
「フリーダムを満喫だ! かき揚げ展覧会を開始するぜ!」
「どういうことなの……?」
ゴールドシップたちと同じように走っていたサイレンススズカも帰ってきた。
後ろには笑顔ではあるが息を切らせているタイキシャトルも。
スズカのペースで併走していいよとは言っていたが、タイキが疲弊するレベルでずーーーっと走っていたからなぁ。
「ス、スズカ……ずっと走ってマス……」
「よ、ようやく終わったよぉ」
タイキに続いてソーラーレイも帰ってきた。
いやぁ、ウッドチップとはいえダートウマ娘である彼女にはスズカとの併走は流石にきつかったか。
「フゥ! 何を話してたんデスカ?」
「今日は午後のトレーニングが無しだそうです!」
「そうなんですか? 私、もう少し走りたかったんですけど……」
自由時間にするから、走りたいなら走ってもいいよ。
オーバーワークにならないようにしてくれればね。
「わかりました。それじゃあ、ご飯を食べたら走ってきますね」
「スズカさんは変わらないなぁ」
相変わらずの走り屋な回答に、ソーラーレイが苦笑いしている。
事前に色々言っておかないと走り出しちゃうからな、この先頭民族ウマ娘は。
「そんじゃ、飯食いに行こうぜ。トレーナーも来いよな。ちゃっちゃと着替えっからよ」
ゴールドシップがそう話しながら、自分の荷物を片付けて去っていった。
みんなで昼食を食べに行く予定だったんだな。
「あの、初耳です」
知らなかったらしい。
まあいつものことだ、うん。
「みんなでランチ! 楽しみデス!」
「そうと決まればうかうかしていられません! 早速着替えてきましょう!」
やいのやいのと盛り上がりながら、タイキとフクキタルは走り去っていく。
うそでしょ……勝手に決まってる……と俯くスズカとぼんやり背中を見つめるソーラーレイ。
着替えてくるということは、思いきり遊ぶつもりなんだろう。
残念だが、今日走る時間はなくなりそうだ。
「そんな……」
しょんぼりするスズカを見て、走るのが本当に好きなんだなぁと思うのだった。
◆ ◆ ◆
「ワオ! これがグランピングなんデスネ!」
「おお~! たくさんテントがありますよ~!」
みんなが着替えてからやってきたのはグランピング施設。
山や川のような自然の中でなくても自然を楽しめるという半キャンプ半宿泊施設のようなものだ。
最初から全て用意してあって、食器や設備なども揃っている。だから、着の身着のままでBBQを楽しめるというわけだな。
「ええと、その……無限軌道艦船ゴール・D・シップ様でよろしいですか?」
「おう、そうだぜ」
「どゆことぉ?」
あんまりな予約の名前にソーラーレイが困惑している。
ゴールドシップがお店を予約すると大抵こうなるから慣れたものだ。
マダガスカルツアー御一行とかもあったし。日本のラーメン屋なのに。
案内された先には、既にBBQ台が用意されていて、お皿などもテーブルにセット済み。
なるほど、至れり尽くせりだな。
「では食材をお持ちしますね」
「お願いしマス!」
「タイキのBBQとは違うわ。全部準備してくれるのね」
店員さんが食材の用意を持ってきてくれるらしい。準備なしでBBQはスゴい楽だな。
というかもうBBQ台の中にある炭に火が通ってるし。
面倒だと思う部分が全てやってもらえるのは面白いな。その面倒さがイイという部分もあるけど。
「ちょっぴり物足りないデス」
「たまにはいいんじゃないですか? BBQやるとタイキさんはいつもホスト側ですからね~」
少し眉尻を下げてもじもじしている。色々やりたくて仕方がないのだろうが、今回は焼く以外にやることはない。
今日ばかりはゆっくり楽しんでいいんじゃないかな。
「そうデスネ。いっぱい焼いて食べマス!」
「たくさん食べるよぉ!」
ムンと気合をいれるタイキとソーラーレイ。
わくわくしながら待っていると、店員さんが食材を持ってきてくれた。
「お待たせしました。魚介コースのセットです」
大皿で持ってきてくれたのは、なんと魚介類!
BBQはタイキのおかげで肉のイメージが強かったから、みんな驚いている。
お皿を受け取ってみんなで覗き込むとほんのり香る磯の匂い。
「うわぁ~! おっきい海老ですよ~!」
「タコとイカもあるよぉ!」
「ハマグリとホタテもあるわ。おいしそう」
「サーモンもありマス! ビッグサイズ!」
より取り見取りだなぁ。
こんなコースよく見つけたな、ゴールドシップ。
「鯛釣りに行ってたらよ、船に乗ってたおっちゃんが教えてくれたんだよな」
「ここにお魚を渡してたんですかね?」
「そのおっちゃんは間違って乗ってただけの登山家だぜ」
「うそでしょ……全く関係がない」
何はともあれ、いいところを見つけたものだ。
早速焼いてみようか。
「ハイ! たくさん焼きマス!」
やる気満々のタイキがトングを持ってカチカチ鳴らす。
とりあえず具材を一通り置いていき、焼けていくのをじっと見守る。
大きなコンロの上にある殻つきの大きな海老が赤くなり、貝類がふつふつと熱が入る。
うーん……これはね、興奮してくるね!
「ずびび……お、思わずよだれが。はしたないですが、どうにも」
「気持ちはわかるぜ! 金銀財宝が目の前にあるって感じだからな」
「うんうん。これすごいよぉ」
真っ赤になった海老をひっくり返すと、ほんのりこげが見えるような火の通り。
あとはじゅわじゅわと出汁がでている貝類にお醤油を少し垂らせば……。
「ワオ! おしょうゆの香りがすごいデス!」
「いい匂い……ただ焼いているだけなのに和を感じるわね」
うん、確かにそうだ。
貝に醤油を垂らしただけで日本を感じるというかなんというか。
海が身近だからこそだなぁと思うところがある。
「うーん……トレーナーさん。どのぐらい焼けばいいんデスカ?」
真っ赤になった海老をツンツンして様子を見ている。
このぐらいならしっかり火が通ってるかな。
1つ自分の皿にとって殻をとる。
ぶりんとした大きな身と、ホカホカ天に昇る湯気!
「おお~! こ、これはとんでもないですよ!」
目をキラキラさせて海老を見ているので、フクキタルの口元にもっていく。
嬉しそうにバクりと食いつき、咀嚼。なんか犬の餌付けしてる気分だな。
「んまっ! とってもぷりっぷりですよ!」
「食えるみてーだしどんどん食ってこうぜ! いただきます!」
『いただきます!』
「あれ、私もしかして毒見役でした!?」
あんぐりと口を開けているフクキタルをスルーしてそれぞれ好きな魚介をとっていく。
「丸々としたホタテね……うん、お肉みたいにしっかり噛めるわ」
「つるんと取れるの楽しいねぇ! とっても美味しいよぉ」
スズカとソーラーレイはホタテとサザエを食べていた。
今焼いているハマグリもそうだが、身が凄く大きい。肉厚でジューシーなようだ。
サザエはいつ見ても、爪楊枝でつるんと取り出す瞬間がたまらない。ソーラーレイはニコニコして楽しそうに食べている。
「ワオ! タコにバターしょうゆ! とっても美味しいデス!」
「イカの串焼きもいいですね~! あ、トレーナーさんマヨネーズ欲しいです」
タイキはぷりっぷりのタコの足にバター醤油を塗った至極の一品を丸かじりしている。傍から見てもすんごい美味しそう。
フクキタルは渡したマヨネーズをイカの串焼きにかけてこちらも丸かじり。イカは匂いがいいね。あとタコと違って丸焼きでいいサイズだから見た目もイカ! という感じもするし。
俺は先ほどフクキタルに食べさせた海老の殻を剥く。
ほどよい赤さと白いぷりぷりの身がなんともいえないな。
「いただきっ!」
美味しそうだなと眺めていたらゴールドシップが食いついてきた!
あ、こら! 行儀が悪いぞ!
「え、そこなんですか?」
「いやー! やっぱ焼きたての海老は最高だぜ! トレぴっぴにはこれやるよ」
そう言って手渡されたのは大きな炙りサーモン。
おお、これはこれでイイ。
軽く塩をつまむぐらいだけふって一口……うん!
この炭火の炙り焼き凄いな! 脂の感じとか柔らかさとか最高!
「炙り焼きうめーよな。アタシにもちょっとくれ」
「あ! 私も食べたいです!」
「ワタシにもくだサイ!」
いやまだまだあるからね。
苦笑いしながらサーモンを取り分ける。大きいから分割してもまだまだあるな。
自分の分にはまた塩と、ちょっぴりレモンをかけて食べる。うん、爽やかになって美味い。
「はふ、はふっ! あ、アツいぃ~!」
「フクちゃん勢いよく食べすぎだよぉ」
「でもでも、とっても美味しいデスヨ! 炭火で焼くお魚も美味しいデスネ!」
「美味しそうね。次に焼けたサーモン、少しもらおうかしら」
全員でサーモンに舌鼓を打つ。
第一陣が終わったところで、どんどん追加だ!
まだまだたくさんあるからな。
「ガンガン焼いていこうぜ!」
「はい! スズカさんも焼いてみます?」
「ええ。少しだけやってみるわ」
みんなで楽しく焼きながらどんどん食べていく。
全部の具材がボリューミーで、全種を1つずつ食べただけで結構な量だ。
全種食べ終え、水を飲んで一息ついていると店員さんがやってきた。
「お待たせしました。こちらアワビです」
「ほぎゃあ!? あ、アワビですか~!?」
渡されたお皿を手に取ると、大きなアワビが6つ。しかもまだうねうねしていて生きている。
こんな大きなアワビを見たのはゴールドシップと岩手まで行った時以来だな。
急に地方レースが見たいと駄々をこねたから見に行ったんだよな、盛岡レース場。
「早速焼こうぜ! バターの準備は完璧だからな!」
「おしょうゆもありマス!」
謎のポージングをするバター醤油ウーマンが2人。
とりあえず食べたいし、早速網の上に6つ置く。
うーん! すごい磯の香りがする! いやぁもうすでに美味しそうだな。
「私、アワビ食べたことないですね~。すっごい楽しみですよ!」
「そうね。私も食べたことはないかも」
まあ結構高かったりするからね。
みんなの年ではあまり食べる機会もないだろう。ゴールドシップに感謝。
「センキュー! ゴールドシップ!」
「ありがとぉー!」
「おう! 奉れ奉れ! ゴルゴル星まで信心を届けるようにな!」
タイキとソーラーレイに拝まれて愉快そうにしている。
いつでも楽しそうだなこのチーム。
少ししてある程度焼けたので、貝から取り出してひっくり返して戻す。
こうすることでしっかり両面が焼けるという寸法だ。ゴールドシップに教えてもらった。
あとは熱が通り始めたらバターを置いて。溶けだしたら醤油をちょろりと。
「うわぁ~! いいですね~!」
「焼けたかなぁ? 焼けたよね?」
「そろそろいいんじゃねーか」
しっかり火が通っているのを確認して1つずつ分けていく。
それじゃあ食べようか。
「はい! お、おお~! これがアワビ……!」
「とっても大きいデスネ!」
箸でつまんだアワビの大きいこと大きいこと。
もうぷるっぷるのぷりっぷりだ。語彙力が低下しているのが如実に表れている気がするが気にしないしできない。
よし、では1口。
「あむ」
「んむ」
……こいつぁ、美味しいな!
「すごい歯ごたえ……とても美味しいわ」
「ん~! こんなに歯ごたえがあるんですね~!」
「かたいぐらいデス! でも、このかたさが美味しいデス!」
コリッコリで弾力がある。普通の貝類とかでは味わえないな。
海鮮の味がぎゅっと詰まったような美味しさがある。
いやぁ、こんだけ食べてもあと2口分ぐらい残ってるよ!
「うめーなぁ、アワビ! サザエもいいけど、これはまた別のうまさだよな」
「うん。アワビの方が上品? な感じがするねぇ」
みんなうんうんと頷きながら食べていく。
大きいと思っていたが夢中になるとそうでもないようで。
気づけば全員ぺろりと食べてしまった。
「いや~、美味しかったです!」
「大満足だよぉ」
フクキタルもソーラーレイもうきうきして終わりに向かいそうなところ悪いけれども。
まだあるよ。
俺が指さす先には、最初にもらったお皿に乗っているハマグリやらサザエやらの残りが。
「そうでした! よーし、ではもっと食べていきますよ~!」
「おう! 食って食って食いまくれ! 目指せフードファイイター磯丸!」
「誰なの……?」
まだまだグランピングのBBQは続く。
いそいそと網に魚介を乗せながら、みんなとの食事を楽しむのだった。
魚介BBQってやったことないからやってみたいんですよね。
サザエにお醤油垂らして食べてみたいなーってずっと思ってます。
魚介系大好きなのでね!