人は皆獣なんじゃないの?正体見たり!って感じだな   作:散髪どっこいしょ野郎

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ちんちん亭書籍

chin先生のchinの遺志を宿した遺物
使用により宇宙悪夢的なchinの遺志を得る
それは天啓にも似て、だが到底理解などできぬものだ






ヤーナム市街

あるところに、一人の狩人がいた。

 

彼は無慈悲で、血に酔い、数多の獣、そして上位者を屠ってきた。数多の秘匿を暴き倒し、冒涜的殺戮者だろうが眷属だろうがお構い無しに殺し尽くしてきた。

 

しかし正直なところ彼は疲れ切っていた。

 

なにせこの世界にはハッピーエンドが無い。

 

何度ヤーナムの街に夜明けをもたらそうが古き狩人の遺志を継ごうが上位者になろうが結局次に目覚めてしまえばあの血なまぐさい病室の中。

 

もううんざりだった。

 

聖杯ダンジョンに潜りめぼしい血晶石もあらかた掘り尽くしてしまった。クッソ低確率の理想値愚者やら貧者やら血質結晶やらも気が遠くなる程の年月をかけてその手に収めた。

 

外に智慧を求めたり(考察動画を見たり)フレーバーテキストを見返し、セリフを回収しながら周回プレイを試みたりもしてきた。

 

けれど、けれどね、

 

結局どういうことなのか全然分かんなかったのだ。

 

というか仮にストーリーが分かったところで『獣狩りの夜』は再び繰り返されるし幼女は死ぬ。みんな狂う。

 

ということで狩人様は完全にやけっぱちになっていた。完全に惰性で獣を狩っていた。

 

しかし、何周目かも分からない夜明けを迎え、狩人はついに新たな力を得る。

 

彼がヤーナム市街にて夜明けを迎えた際、傍に落ちていたのはなんと────

 

────ちんちん亭の新刊+その他諸々だった。

 

それは何かの間違いで連盟員、ヤマムラの故郷から流れ着いた本だった。

 

時代設定がとんでもないことになるが血の医療を施したあの男の言うとおりこれは夢だ。何があっても全て悪い夢のようなものなのだ。

 

狩人は半ば夢心地でそれを読み漁る。必死の思いでページを捲り、啓蒙をドバドバ消費した。

 

こうして狩人はこれまで蓄えてきた血の遺志と記憶を全て捨て去り、新たにchinの遺志を得たのだった。

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

《キン○マ温まってきたな》

 

そう独り言ち、薄汚い寝台から目覚めたのは一人の男。彼こそがこの世界の主人公、月の香りの狩人であった。

 

「何、君……もう目覚めたのか」

 

狩人に声をかけたのは血の医療を施した老人。本来であれば初めの誓約(プロローグ)以降どこかへ行方をくらましてしまうのだが、狩人の中にある強烈なchinの遺志が早急に覚醒を促した結果、老人が立ち去る前にこうしてあいまみえたというわけだ。

 

「クッ、もうこんなところまで来たのか」

 

「■■■……」

 

老人の言葉と同時に診察室内へ転がり込んできたのは『罹患者の獣』。

 

本来であれば未だに眠ったままの狩人を喰らおうと試みたものの謎の炎に身を焼かれてしまい、診療室に転がっている死体──それはこの老人の骸であるとかつて狩人は推察していた──を貪り食ってる筈なのだが、狩人のあまりにも早いお目覚めにより体力満タン状態でやってきている。

 

さて、このままでは両者共々目の前の獣に殺されてしまうだろう。狩人とて人間。獣の膂力にはどうしたって敵いっこないのだ。

 

それを打破するための手段、即ち『仕掛け武器』が彼の中にある筈なのだが……

 

《とんでもないことだよ》

 

彼はこれまで培ってきた全ての記憶を宇宙悪夢的chinの遺志により忘却させられてしまい、武器の取り出し方すら分からなかったのだ。

 

そんなにっちもさっちもエッチもいかない状況に置かれる中でも獣はジリジリと距離を詰め、そしてとうとう裂帛の雄叫びを挙げながら先ずは新鮮な肉(かりうど)の方へ飛びかかったのだった。

 

《そんなせっつくな獣畜生!》

 

──しかし腐っても歴戦の狩人。記憶こそ失えどその肉体には飽きる程繰り返された悪夢(たたかい)の記憶が残っていた。

 

即座に背後へ回り、力を込めた渾身の一撃をそのケツへと叩きつける。

 

「■■■■■!?」

 

驚嘆の息を上げ体幹を崩した獣に、狩人はおぞましく姿を変えた右腕を抉りこませ振り抜き────

 

《催眠!》

 

────はしなかった。

 

彼は内臓攻撃の体制のまま、あろうことか催眠をかけ始めたのだ。傍で見守っている老人は息を呑んだ。

 

「■■■■■!?■■、■■■■♡」

 

《こんなんで感じてるの?こりゃ素質しかないな》

 

これからが本当の悪夢だ。獣は理性を失った身でありながらもどこかそう確信していた。

 

「■■ア゛っ?♡ォ゛■ッ♡、ォ゛おオッ♡」

 

不明瞭な唸り声が次第に嬌声へと変貌を遂げる。狩人はあくまで容赦せず、無慈悲に、『攻撃』を続ける。

 

《うわ……一度入れただけでこの糸の引きよう……クモかな?》

 

糸と言っているが別にいやらしい意味ではない。ただの血である。別にR18的何かではない。

 

《獣狩りだ!死ね!》

《だんだん『獣性』が高まってまいりましたよ》

《ケツ○見せろ!見せながら○クメしろ!ケ○肉邪魔なんだよ!死ね!》

《オラ!催眠!》

《今からエグってやるからな》

《逐一○め……ッ!》

 

「お゛おおぉっ♡ヤバイ♡ヤバイ♡ヤベぇって♡!!」

 

さて、現在喋っているのは狩人と罹患者の獣二名である。()()()()()()()()()()()()()

 

言葉すら失った筈の罹患者がヤバイヤバイと喘ぎ狂う姿をまざまざと見せつけられている老人。果たして何を思っているのか。

 

「お、おお……!これが、これこそが、真なる救い……!」

 

やっぱり頭が沸いていた。

 

「ん゛にゃあっ♡助けっ♡ん゛ん゛ん゛〜〜っ♡」

 

喚き散らかしながらなんとか出口へ這いずる獣。だがしかし、狩人はそれでも手を緩めない。

 

《急ぐでない慌てん坊さん

犬も歩けば棒に当たる》

 

逃げる獣を無理やり掴んで引き戻す。本来なら彼の拘束程度余裕で振り解ける筈の獣も催眠と快楽の前では稚児にも等しかった。

 

《お茶の間の皆さんが困惑してるぞ

ほら○ケ!もっと下品にイ○と言っておろうが!

変態ポメラニアン

血統書付きドーベルマン》

 

「はにゃあっ♡ぴょぴょんぴょん♡ぴょん♡へぇっ♡お゛っ♡お゛っ♡お゛ぉ〜っ♡」

 

喘ぎ声だけ無駄にやらしいのが腹立つが、とにかく負けイベントだった筈の『罹患者の獣』戦は狩人に軍配が上がったのだった。

 

 

 

 

 

《そろそろ同意アク○かな?》

 

「…………♡」

 

第二回戦が始まった。

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

その後、懐柔した罹患者くんちゃんさんに旅立つ老人のお守りを任せ、彼はヤーナム市街へ繰り出した。

 

ホワイ(失せろ)ホワイ(失せろ)」と襲いかかる民衆も、彼の催眠の前では皆等しく無力。難関とされるヤーナムキャンプファイヤーもなんなく乗り越え、彼はその場にいた『獣狩りの群衆』をまとめて調伏してみせた。

 

《めぐまれねぇ村人に愛の手を!》

 

味方をぞろぞろと引き連れ喚きながら自由気ままに市街を彷徨う。ぶっちゃけ彼は何処に行けばいいか全く分かっていなかった。

 

そこで辿り着いたのは大橋。

 

「■■■■■■──────!」

 

どこかから聞こえた叫び声。そして彼らの前に現れたのは、『聖職者の獣』であった。

 

彼は慢心していた。たとえどんな敵であってもこの催眠能力さえあればどうとでもなるだろうと。今回も呆気なく服従するだろうと。

 

《催眠!》

 

だが、効かず。目の前の(ボス)は悠々と歩み寄ってくる。彼の後ろで待機している群衆がざわめき出した。

 

《催眠!》

 

尚も止まらぬ『敵』に、狩人は数瞬の間迷った。

 

このまま催眠を続けていいのか、戦うべきなのか。

 

 

 

 

 

遠い東の国に、こんな言葉がある。

 

 

────迷えば、敗れる。

 

 

一瞬の油断が判断を鈍らせ、命を落とす要因となる。

 

無造作に振るわれた剛腕。鉤爪。

 

彼の胸元は無様に裂かれ、肉が抉られ、骨が顕になる。

 

冷たい石畳の上に臓物を撒き散らし、背後から民衆の「何故だ(Why)何故だ(Why)」という声を聞きながら、彼は優しい夢へと帰った。

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

《この狂気に満ちた世界観……驚異的ワオの一言

ちょっと怖くなってきた

○ンポ持ってかれないように注意》

 

鮮明な死の記憶がこびりついたまま男は身を起こす。ここは『狩人の夢』。一時的な休憩所のようなものであり、このイカれた世界で唯一と言ってもいい安息の地である。

 

空に浮かぶ巨大な満月と仄かに香る淡色の月明かり。まさしく『幻想的』と称するべき空間。

 

《お……っ家内に異常存在を検知……

ポリネシアンアク○来るか……?》

 

家の中に入った彼が見たのは車椅子に座る老人。またしても老人である。右足が義足になっているようだ。

 

「やあ、君が新しい狩人かね

ようこそ、狩人の夢に。ただ一時とて、ここが君の「家」になる

私は……ゲールマン。君たち狩人の、助言者だ

今は何も分からないだろうが、難しく考えることはない

君は、ただ、獣を狩ればよい。それが、結局は君の目的にかなう

狩人とはそういうものだよ。直に慣れる……」

 

《説明しろ!おら、ちゃんと説明しろ

狩りさせたいなら狩りさせたいなりの説明しろ!》

 

どうにも的を得ないゲールマンの言葉に詳しい解説を求める狩人。それもそうだろう。記憶を失った状態で訳の分からん場所にやってきたかと思えば市民や畜生共に襲われ、挙句の果てにはただ狩れと言われる。いくらなんでもむちゃくちゃだ。

 

「この場所は、元々狩人の隠れ家だった

血によって、狩人の武器と、肉体を変質させる。狩人の業の工房だよ。

もっとも、今は幾つかの器具は失われているがね。

残っているものは、すべて自由に使うとよい。

……君さえよければ、あの人形もね……」

 

《お、反応が違うな

このボケボケ爺が!!何が狩れッだ!!》

 

あくまで温和に、それでも要領を得ない言葉しか吐かないゲールマンに嫌気がさしたのか、彼は通ってきた階段を駆け下りた。一応言っておくと、失われた器具の全ては狩人が所有しているのだが記憶を失っているため如何せん取り出すことも使用することもできない。

 

そういえば先程は気づかなかったが何故か見麗しい人形がそこに打ち捨てられている。ゲールマンはこれを自由に使えと言ったが、果たして何に使えと言うのか。

 

もうすっかり疲れてしまった狩人は人形を家の中へと運び、暖炉の前でその膝を枕として眠った。ちなみにそんな姿を見られるのは彼とて少し嫌だったのでゲールマンをどかそうと少しはたいたところ霞となって消え去ってしまった。

 

《オラッ!!助言者のくせに何逝ってんだオラッ謝れ!!説明してから死ね!》

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

「おはようございます。狩人様」

 

《うお……急にすげぇ多幸感……!

天国かな?》

 

今、この夢には彼と人形以外、誰一人として存在しない。となれば彼に声をかけたのは人形以外の誰でも無い。

 

先程までは物言わぬヒトガタだったにも関わらず彼が一度眠りについて、まあ要するに入り直したことで起動したというわけだ。

 

本来、人形ちゃんは狩人に啓蒙*1が無ければ動くことは無い。しかし彼は元々周回廃人プレイヤー。啓蒙なんぞとっくにカンストしているのである。

 

「はじめまして。狩人様。

私は人形。この夢で、あなたのお世話をするものです。

狩人様。血の遺志を求めてください。

私がそれを、普く遺志を、あなたの力といたしましょう。

獣を狩り…そして何よりも、あなたの意志のために

どうか私をお使いください」

 

「ゲールマン様にお会いしましたか?

あの方は古い狩人、そして狩人の助言者です。

今はもう曖昧で、お姿が見えることもありませんが……

それでも、この夢にいらっしゃるでしょう。

……それが、あの方のお役目ですから……」

 

「ああ、小さな彼らは、この夢の住人です。

あなたのような狩人様を見つけ、慕い、従う……

言葉は分かりませんが、かわいらしいものですね」

 

彼女の膝に寝かされた状態のまま漣のように清らかで心地よい声を聞いていると、またしても狩人は眠くなってしまった。

 

「……狩人様?」

 

《いや、素晴らしいです……女性らしさの魅力と機能美で見とれるほどで……科学的に大丈夫なのか心配ですね……大きさとかいった面で》

 

彼女──人形ちゃんは、一般的狩人の身長を大きく超えている。その実なんと210cm。加えて超スレンダー体型。偶然にもちんちん亭本編(?)に出てきたムチムチのマゾ○スとは遥かに異なっていた。

 

「……?」

 

褒められたことに思考がおっつかないのか小首を傾げる人形ちゃん。かわいいね♡

 

《俺達本当は夫婦なのでは……?

不安になってきた》

 

「ふうふ……?」

 

《────あのエロ聖職者思い出したらまた○起して参りましたよ》

 

「あ……」

 

そういえばあの獣のことを忘れていた。こうしてはいられないと立ち上がる狩人に、どこか名残惜しそうな視線を送る人形ちゃん。

 

「ウゥゥウゥウウウ……」

 

《中がウネって……!さてはイってるな!イくな!》

 

階段の中から湧いてきた『小さな彼ら』から『仕込み杖』と『獣狩りの散弾銃』を受け取る狩人。

 

小さな彼らとは、『使者』のことである。地面からひょっこり顔を出してメッセージを示してくれたりショップを開いてくれたりする狩人の可愛い味方なのである。かわいいね♡

 

彼は既に最大まで強化した上に強力な血晶石を埋め込んである『仕込み杖』を持っている。各派生。それどころかこの世界で使用可能な全ての武器、そしてアイテムを所有している。記憶の欠落により現在は使用不可能だが、()()()()()()()狩人の、そして獣の本性を思い出しさえすれば、自ずとその手に舞い戻ってくるだろう。

 

そして彼は、夢の抱擁を振り払い再びヤーナム市街へと踏み出したのだった。

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

さて、狩人はあのにっくき『せいけも』にリベンジしに行くわけではなく。

 

なんとなく思い立ってあの血なまぐさい診療所へと顔を出しに行っていた。

 

「……あなた、どなた?獣狩りの方、かしら?

だとしたらごめんなさい。この扉を開けることはできないわ」

 

《お、なんだ。いっちょまえに焦らすのか。

その意気やよし》

 

「……」

 

扉の向こうにいる女医は早くも狩人の正気を疑い始めていた。実際頭はおかしい。

 

「……私はヨセフカ。この診療所をあずかる者として、大事な患者さん達を、感染の危険にさらすことはできないの。

だから、街のために狩りに出る、あなたには申し訳ないのだけど

今、私にできることはこれくらい」

 

そう言って手渡したのはヨセフカの輸血液。従来の輸血液よりも体力を回復させリジェネ効果もつけてくれるスグレモノだ。

 

「では、これで……

狩りの成就を、祈っています」

 

《準備は万端のようですね♡このスケベ女医め》

 

「あの、もし……」

 

不意に呼び止められ彼は振り返った。ヨセフカ女医は何を言うのだろうか。

 

「その、貴方……頭は大丈夫?」

 

彼女なりに気を遣った上での発言だったのだがそれでも彼にはかなり堪えたようで、無慈悲な筈の狩人様は目尻に涙を浮かべてその場を立ち去った。

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

なんと、彼が従えてきた『獣狩りの群衆』は彼のことを忘れていなかった。

 

通常彼ら……敵モブは、どれだけ殺そうが一度目覚めをやり直すか死ぬかしてしまえば再び蘇ってしまう。しかし現にこうして彼らは狩人のことを覚えていた。

 

そう、たとえ血の遺志をロストすることがあろうとも────受け継がれたchinの遺志は決して消えない。

 

狩人は意気揚々と市街を回った。その際重病人でありヤーナムの住人であるギルバートと出会ったが、今の彼にはどうすることもできなかった。それ以外のヤーナム市民はみな排他的で、一人の幼女とギルバートを除き誰も彼もそっけなかった。

 

「────これは驚いたね。まさか獣を従える狩人がいるとは……まあいいさね。あんた、外から来たんだろう?」

 

彷徨う内に遭遇したのは烏羽の狩人、アイリーン。特定の狩人(プレイヤー)からはババアと呼ばれ慕われている。彼女も昔、夢を見る狩人だったのだが特に重要な話ではないので気にすることはない。

 

《かわいいな……この全身烏羽女!

キュートだよ♡》

 

「口説き文句のつもりかい?10年早いよ若造。

……クククッ、ほら餞別だ。受け取りな」

 

そして受け取ったのは『狩人の確かな徴』。中々に便利なアイテムだが初見だとその有用性に気づきにくかったり別にそうでもなかったりもする。結局道具は使う人によって重要性を変えるものなのだ。

 

狩人といえばアイリーンにすっかりメロメロになっていた。こんなかっこいいババアがいるとは、ヤーナムも捨てたものでは無い。調子に乗るなよ小僧。

 

「……しっかりするんだよ」

 

《オフコースでございます》

 

「……クククク……」

 

手をブンブン振りながら別れを告げる彼を、アイリーンは心から愉しそうに見送った。

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

《クソ……誰の手も借りたくねぇ……

他のやつは入ってくんな!

来るぐらいなら死ね!

ア○メしてから死ね!》

 

大橋にかかる白い霧。その眼前で、狩人は高らかに告げる。

 

この霧を抜ければすぐさま『せいけも』戦だ。しかしここは誰の手も借りず、一人の力で戦いたい。彼がそういうと群衆はどよめき出した。しかし、我らを導いた狩人がそう言うのだ。これを信じずとしてなんとする。

 

群衆は何も言わず、ただ黙って見送ることに決め込んだ。

 

《不用意に笑顔になりそうで困っちまうぜオラッ!》

 

そして、彼は霧をくぐり抜けた。

 

「■■■■■■■■■!!!」

 

耳を劈く金切り声。圧倒的威圧感を発する巨体。

 

《────聖職者の風上にも置けないわ

獣性の化身がよ》

 

狩人はその諸手に、受け取った仕込み杖──ではなく、『エヴェリン』と呼称される銃、そして『獣狩りの斧』を携えていた。

 

「■■■■!!■■■■■■■!!」

 

《聖職者してたらこんなケダモノに育つのか……

責任の所在を明らかにせよ

なんか言え

絵画のようだよ》

 

今までとは遥かに見違えた俊敏な動きで獣の猛攻をかわし退ける。彼にとってはマジで初見の相手だが、その肉体は完全に敵の行動パターンを熟知していた。

 

そしてのらりくらりとかわしながら隙を見て斧を振り上げる。

 

「■■■■■■■■■■!!!!」

 

一撃。たった一撃のみで獣は右腕を損傷した。それも当然、彼の斧に込められた石は理想値の貧者結晶。体力が瀕死の際に攻撃力を上げる諸刃の剣。予めエヴェリンの弾補充の為に体力を消費していたのだ。

 

《おお……ッ、血の温もり……っ

愛を感じて嬉しすぎッ

弱点を探そう》

 

彼はどこまで行っても狩人。血に酔い、狩りに酔い、獲物を殺し尽くす生き物なのだ。

 

「■■■■■■……!」

 

なんとか反撃を試みるせいけもだが呆気なく避けられ、その頭に骨髄の灰を込めた銃撃を喰らわされる。

 

《本気血液のぬめり度が段違いだよママ

内臓攻撃(なか○し)』許可って理解でいい?

応えよ!》

 

応える(いとま)も与えずにせいけもの頭へ右腕をぶち込む。そしてそのまま間髪入れずに抉りとった。これぞ狩人の必殺技と言ってもいいアクション、『内臓攻撃』である*2

 

思わずたたらを踏むせいけも。たったこれだけの攻撃で既に満身創痍となっていた。

 

後はその銃を撃つなり斧を振り下ろすなりすれば簡単に決着がつく。しかし、それは竿役としての矜恃が許さない。捨てちまえそんな矜恃。

 

ともあれ、彼はもう一度あのアクションを繰り返す。

 

《────────催眠!》

 

「■■…っ?♡?♡」

 

せいけもは他のモブとは違い体力バーのあるボスキャラ。そう簡単に落とされはしない。だが、それも生気に満ち溢れていればの話。

 

体力を削り、抵抗力を薄めてから催眠を行えば効果はてきめん。つまりはポ○ットモン○ター方式である。

 

《催眠!催眠解除!催眠!》

 

「ア゛っ?♡■ぁ゛♡■お゛ぉ■■■■ッ♡♡」

 

生き物は誰しも生命の危機に瀕した際、恐怖を覚える。殺される。誰か。殺されてしまう。

 

その恐怖からの解放。快楽のカタルシスには、さしものボスとて耐えられはしない。ここからはただの蹂躙だ。

 

《おい無闇矢鱈と暴れるな!

ちょっとは我慢できないの?お里が知れるよ淫乱ビューティー》

 

「あぉァぁっ♡ホッ♡むえッ♡ひゃっ♡あっ♡あぁあぁあああ〜〜〜〜っ♡♡♡♡♡♡♡」

 

『聖職者の獣』は、完全に『生殖者の獣』へと堕ちたのだった。

 

 

YOU HUNTED

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

「お願い!思い出して!あなた!」

 

「ハハハ……ハハハハハッ!」

 

狩人がせいけもを群衆の味方となるよう調教し、ヤーナム市民と別れた少し後のこと。

 

聖堂街へと繋がるオドンの地下墓にて、鬼ごっこと呼ぶには些か殺伐としすぎる追走劇が行われていた。

 

斧と散弾銃を構えている男はガスコイン。妻と娘を持つ一人の神父である。しかし度重なる獣狩りによって自身が獣へと堕ちてしまい、こうして目の前で必死の訴えを行う妻すらも思い出せなくなってしまった。

 

「あ────キャッ!」

 

とうとう転んでしまったガスコイン夫人。その背中に、重厚な斧が振り下ろされる───────

 

《おお……自分がどんな冒涜的な行為で家族を傷つけようとしてるのかわかる?

よっぽど妻子のことが好きなんだね。かわいい♡

お下劣神父め!悪霊退散!》

 

間一髪で間に合った、我らが催眠狩人様。無強化仕込み杖でギリギリ攻撃を逸らし、奥さんを庇ったのだ。

 

「……どこもかしこも獣ばかりだ……。どうせ、貴様もそうなるのだろう?」

 

「お、お願い狩人さん。どうか夫を……楽にし──」

 

《やかましい!ママ!ここだよ正念場は!》

 

かくして、戦いは始まった。

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

「……匂い立つなぁ……。堪らぬ血で誘うものだ。

えずくじゃあないか……

ハッハッハ……ハッ、ハハハッ」

 

「ああ、ああ、あなた……なんてことなの……!」

 

《血に震える姿が美しすぎる……顔もいいスタイルもいい。欠点なしか?いやそのお下劣すぎる本性だ》

 

狩人はなんとカンスト周回ガスコインを無強化仕込み杖一本でいなしてみせていた。だが油断は禁物。

 

彼は体力に全く振っていない(体力以外のステは全ての秘術と武器を楽しむ為にバランスよく育っているので正直に言えば器用貧乏)超玄人向け育成をした狩人であり、一かすりしただけで夢送りは避けられない。

 

だがここで倒れてしまえばガスコインの奥さんがどうなるか分からない。もしかすれば時間が戻って無事なのかもしれないが、そんな危ない可能性には賭けられない。

 

ガスコインには帰りを待つ家族がいる。殺すわけにはいかない。だがこのまま体力を減らしてしまえば獣へ姿を変えてしまう。

 

ガスコインは体力を一定の値まで減らされると完全な獣になってしまうのだ。ギリギリの所まで見極めてから催眠を使う他ない。

 

《……オラッ!受け取れ!》

 

「え、え?」

 

隙を伺い狩人が奥さんに投げ渡したのは小さなオルゴール。ここに来る途中でガスコインの娘から借入れた品物である。これを流せばガスコインは暫く苦しみ動きを止めるが三回以上使ってしまえば早々に獣へと成り果ててしまう。

 

故に、これは使いどころが重要。程よく体力を減らし、尚且つ一発で決めなければならない。

 

《私の指示通りやらんか。

上司の命令だぞ》

 

「え、えっと……これを流せばいいの?」

 

《せっかくだから気持ちよく死なせてあげたいじゃん》

 

「────────分かり、ました」

 

《………………ちげーだろ》

 

「え?」

 

《ちげーだろもっと本音を言え

旦那がどうなっても知らんぞ》

 

「……ッ、お願い、狩人さん!夫を……ガスコインを助けて!」

 

《──とんでもねぇ良妻賢母だな。

ヤーナムの未来に期待するわ》

 

そして、優しいメロディーが奏でられる。

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

「ァ、あああぁ……!」

 

《催眠!催眠!!催眠!!!催眠!!!!》

 

完全な獣とは違い、ガスコインはなんとか人の形を留めている。催眠によって理性を新たに作り上げる方法では元の彼が消えてしまうのだ。

 

これにより狩人が行っていたのはガスコインの奥深くに眠る理性の欠片を集めて再び統合させる催眠だった。

 

しかしこれは至難の業。獣に堕ちかけたものを引き戻す術など元は無いにも等しい。いくらchinの遺志が強大であろうとこればかりは狩人の技術に左右される。

 

「お願いあなた!戻ってきて!」

 

《亭主関白にも限度ってものがあるだろ。

オラッゴリラの真似しろ!》

 

「う……ウ……!ウ■オ■ォオオ■オッっ■■!!!!!!!!」

 

現実は非情である。健闘虚しくガスコインは獣にその身を変えてしまった。

 

「■■■■■■■■■!!」

 

吹き飛ばされた狩人。彼は連戦により疲弊しきっていたため、躱すことすら難しかった。

 

飛びかかる『獣』。もう無理だ。殺すしかない。狩人は銃を構えようとし、

 

《────催眠結界!》

 

辺りが淫乱な空気に包まれた。

 

「ガ、ぁ、ア……?」

 

それは如何なる秘儀か。いや違う。これは、これは────ちんちん亭の本に出てきた業だ。

 

「お、オ、オ?♡」

 

「はァ……っ♡なにっ♡これぇっ♡」

 

夫妻二人してよがり狂う。この期を逃す手は無い!

 

《オラッ催眠!クソスケベ人類になれ!》

 

「オッ♡○ギます〜〜〜っ♡ッグゥゥゥゥゥゥ♡」

 

そして、眩い光が世界を覆った。

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

「あ、ああ……?ここ、は?」

 

「……あっ!お母さん!お父さん起きたよ!」

 

「……よかった……本当に……本当によかった……!」

 

「なん、だ?おれ、俺は、獣を狩って、それで、」

 

ベッドに寝かされ混乱している様子のガスコイン。彼の妻は涙を拭い微笑みかけ、娘と一緒に彼を抱きしめた。

 

「もういい……もういいの、あなた。獣のことは忘れましょう」

 

「でも本当によかったねお母さん。あの狩人さんのおかげだね!」

 

「ええ……そうね」

 

「………………」

 

そこでガスコインは考えるのをやめた。

 

そうだ。俺は何か悪い夢を見ていたんだ。少しの間休もう。しばらく会えなかった妻と娘との時間を、今度こそ取り戻すんだ。

 

「わ──きゃっ!」

 

娘と妻を強く抱きしめ返す。もう二度と家族を置いて逝きはしない。彼は己の魂にそう刻みつけた。

 

「…………ただいま」

 

「……おかえりなさい」「おかえり!」

 

ガスコインの頭の中から例の狩人のことはすっかり抜け落ちていた。

 

しかし彼は確かに存在していた。獣臭いヤーナム市街を調和し、赤いブローチを胸に光らせ此度は聖堂街へと歩を進める。

 

彼は催眠おじさん。神よりア○メを信じる男。

 

 

YOU HUNTED

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

 

 

 

 

 

聖堂街に入る寸前、狩人はふと気になって診療所へ戻ることにした。

 

予感は的中だった。そこには二人のヨセフカがいたのだ。

 

「ああ、助けて獣狩りの方!これは、誰なの?私?私じゃない……!」

 

ヨセフカの当惑も仕方の無いこと。何せ自分と瓜二つの別人が目の前に現れあろうことか襲いかかってきたのだから。

 

「ねえ、いい子だから…

おとなしくしなさい…

なんにも恐くないのよ…

すぐに気持ちよくなるから…

さあ、死ねっ!

おとなしく、しろっ!

するんだっ!」

 

なんだかちんちん亭の語録みてぇなセリフを吐きながら襲いかかるヨセフカ擬き、通称『ニセフカ』。

 

さて、どう調理しようか。

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

「何、これぇっ♡私、こんなのっ♡知らない♡ヒッ♡ヒギィィィィッ♡♡」

 

《今啓蒙中なんだから。アク○しろッ!

そのまま○クメしろ!

そんで気絶するほどア○メしろッ!》

 

現在狩人が行っているのは『内臓攻撃』。誰がなんと言おうと『内臓攻撃』なのである。

 

ニセフカの中で『ステップ』を踏み、『変形攻撃』を繰り出す。そう、これは『狩り』以外の何物でもない。

 

《○ンコはまだ若いな!オラッオラッ死ね!

しっかり○んでいってくださいね♡》

 

「ん゛ん゛ん゛〜っ♡ぉお゛ぉっ♡んほぉ〜〜ッ♡」

 

さて、宴もたけなわとなってきたところだがひとまずはこれで『啓蒙』完了。

 

ニセフカにはめんどくさいのでそのまま診療所の門番を任せ、狩人は本物ヨセフカを聖堂街、オドン教会へと連れていくことに決め込んだ。

 

「その……ありがとう。

……今度の夜は長いけれど、明けない夜もないはずよ。まして、あなたのような方が、頑張っているのだから。狩りの夜が終われば、こんな風に、殺伐とした中で話すこともない。もしかして、あなたの笑顔も見られるのかしら。不謹慎かもしれないけれど、フフッ、なんだか楽しみ……どうか、ご無事でいてくださいね……」

 

オドン教会へ送り届けた際、ヨセフカ女医はそんなことを狩人に伝えた。彼女は元々ヤーナムでは珍しく優しい人間なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

《ヨセフカさん大好きだよ♡アク○して♡》

 

 

 

 

 

 

 

……やっぱりこの狩人はおかしいのかもしれない。

 

ヨセフカは改めて考えた。

 

*1
世界の真実を見通す力

*2
ステ振りによっては溜め攻撃の方がいい場合もある

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