Equal Navy   作:一・一

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二〇〇五年七月一八日、油槽船「フォスト・ブリッツ」はサウジアラビアと日本との定期運行の為、石油を満載し航行していた。しかしフォスト・ブリッツは突如謎の武装集団に襲撃を受け炎上、救難信号を発令した。


油槽船 フォスト・ブリッツ襲撃事件

 七月一八日深夜、機関士も既に就寝し、甲板員である私は夜間の当直にあたっている。油槽船『フォスト・ブリッツ』は、サウジアラビアから日本への定期運行中であり、かつこの航海が六ヶ月勤務中の最後の航海である。

 船外の見回りを行いながら、今度の三ヶ月の休暇は何をして過ごそうか、とわざと照明の届かない船尾を歩き、夜空に浮かぶ満点の恒星達を見渡しながら、一年前の出来事を思い出してみる。

 二〇〇三年にイラク戦争が勃発し、その翌年である去年も世界各地でテロが頻発。幸い日本国内での発生は無かったが、現地であるイラクでは滞在していた何人もの邦人が被害を受けている。

 昭和のコメディアンであり大スターであったドリフターズのリーダー、いかりや長介や、アドリブの天才と呼ばれた盲目のミュージシャン、レイ・チャールズが逝去した年でもある。

 しかし毎年、海へ出ていた間の日本の変化に期待をしながら休暇に戻っても、近所のボロ屋が建て壊されていたりだとか、商店街のシャッターが増えていたりだとか大きな変化を感じられないのが実情である。

 今年は敢えて家へ閉じこもり、日本の変化を来年の休暇に懸けてみるのも悪くないと思いながら、柵に両腕を載せ東の水平線に浮かぶ名も知らぬ星を眺める。

 その時、その水平線がパッと明るく光った。連続して赤い光を放つそれは、何かの爆発に見えて、月明かりに照らされた黒い煙が立ち込めるのを見ればそれが爆発であることを確信した。

 海難事故であるかの疑いを持つ前に幾つもの赤い玉が空へと上っていくのが見えて、それは真っ直ぐフォスト・ブリッツへと向かってくる。元々ミリタリーに興味があって船乗りになった俺は、訳も分からずしかしそれが砲弾だと認識し、甲板上に伏せ大きく口を開ける。

 その発砲音が聴こえてからすぐさまそれは弾着、予想した通り砲弾であったようで爆発音が聴こえ、すぐに立ち上がれば柵へと身を乗り出して船首の方向へ顔を向ける。船橋が障害となり詳細を確認することは出来ないが、恐らく船首へと被弾したようだ。その弾着は非常に早くミサイル攻撃を受けたようにも思えたが、その割には爆発の規模が小さいようだった。

 船内へは機関士含め休息中の乗組員の起床を促すアラームが鳴り響き、取り敢えず俺は直ぐ側の艦橋、操舵室へと向かい状況を確認することにした。

 操舵室に向かう途中も未確認の目標は再び砲撃を行ったようで、二度目の爆発音が聴こえたが、今度は位置は分からない。既に浸水で傾斜が生じていて、階段が登りにくい。それでも急いで操舵室へと向かう。

「消火急げ、早く救難信号を出せ!」

 操舵室へと飛び込むと、西田二等航海士が混乱をした様子で通信長や他の甲板員へと指示を飛ばしていた。

「馬鹿っ。民間船を呼び寄せたら被害が増えるだけだろう、イーパブの発令だけだ。甲板員には消火を止めさせろ、攻撃されてるんだぞ」

 ここは軍艦じゃない、と西田航海士を叱咤する岡崎一等航海士。ブザーの鳴り響く中声を荒げて会話をするその様は、まさに修羅場そのものだ。

 困惑したようにそのやり取りを見ていた太田通信長は、岡崎一等航海士の指示に従うことにしたようで、言われた通りイーパブを発令する。そうこうしているうちに、思えば未確認の目標からの砲撃が止んでいた。

「おい、お前は甲板員だろ」

 船橋の窓から水平線を見ていれば、岡崎航海士に声をかけられた。

「あっ。はい、松山と申します」

 この混乱に俺も相当やられていたようで、相手の言葉の意図を引き出せずに見当違いな返答をしてしまったと言葉を発してから気づき、自責する。

 しかし岡崎航海士は叱る様子は無く口を開いた。

「消火作業中の甲板員を船内へ入るよう伝えてくれ、なるべく急いで。」

 声はデカいが冷静な口調で指示を下す岡崎航海士に、俺は「はい」と大きく返事をすれば踵を返して開け放たれた扉から船橋の外へと飛び出し、傾斜に気を付けながら階段を駆け下りる。見れば火は大きく広がっていて、甲板員達は既に消火を諦めているようだった。

「おい、見ろ」

 彼らに指示を伝えようと甲板を駆けていれば、消火用のホースを投げ出した一人が海を指差し、声を上げた。釣られて俺も少し足を緩めてそちらを見て、驚愕した。

 目の赤く光る、極端に肌の白い少女が海を駆けている。

 何人もの少女が海の上を直立しこちらへ向かって来ていて、その一人が何かをこちらへ向けたと思えば発砲、至近距離で放たれたその凶弾は着弾すれば再び爆発を起こし、俺は側に腰を抜かしたように転んでしまう。先刻まで海を指していた甲板員の居た場所は火の海になっている。

 そこに居た甲板員達は爆風に吹き飛ばされたものだと思っていたが、いや、実際吹き飛ばされはしていたのだが、それは既にヒトの一部となって、尻もちをついた俺の側に佇んでいた。

 頭が真っ白になってしまって、何が起きているのかが本格的に、さっぱり分からなくなってしまった。




どうも、一・一と書いて「にのまえはじめ」と読みます。本当に書き始めで、まだ詳細な方針も定まっていない有様。更に小説を書くのはほぼ初めてに近いので、手探りで文を書いています。
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