燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード105

 

 

 

 

 

「えぇ、まじで。」

 

 

薬師高校と仙泉高校の準決勝。

 

試合は、思いもしない結果に終わった。

 

 

仙泉のエース、真木を完璧に打ち崩した薬師。

そのスコアは、はっきり言って準決勝のそれでは無かった。

 

 

14-2、5回コールド。

先攻の薬師高校は、17安打14得点の暴力的な得点力でスコアボードに数字を刻んで行った。

 

 

全員がパンチ力のある、強力打線。

ファーストストライクからガンガン振ってくるし、外野まで運ぶ力もある。

 

去年から同じだが、質が上がっている気がする。

 

 

 

いや、違うな。

磨きが掛かっているのは、4番(あいつ)か。

 

今日の試合での結果は、2打数の2本塁打。

殆ど敬遠気味に勝負されたのにも関わらず、少ないそのチャンスを完璧にものにしている。

 

 

昨夏から凄まじい打撃能力だったが、経験値が上がってかかなり対応力も向上している。

 

あとは単純に、技術が上がっている。

 

外を如何に強く叩くか。

そして、速いボールへの対応にも、キレのある変化球への対応力も。

 

全ての水準が、上がっている。

 

 

「すげえ爆発力だな。あれで一年だもん。」

 

 

俺がそうやって呟くと、横にいる御幸が大きな、大きなため息をついた。

それはもう、誰かに何かをアピールするように。

 

何が言いたい。

そう言わんばかりに彼を見つめると、御幸は額に手を当てた。

 

 

「本当他人事だなーもう。誰のせいだって思ってんだよ。」

 

「誰のせいって、誰のせいでもないだろ。あいつがそれだけ練習してきただけのこと。」

 

「分かってねーなー。」

 

 

また、そう言う。

何が言いたいんだこいつは。

 

すると御幸は、頭を掻きながら俺にいった。

 

 

「お前を打倒するために決まってんだろ。」

 

「何だそりゃ。」

 

「あいつの目とかみてりゃわかんだろ。そういうとこ鈍いよな。」

 

 

わかんねーよ!

 

そう言いたかったが、またややこしいことになったら嫌だから何も言わなかった。

 

 

確かに、夏の大会でも3打数の無安打、3三振。

全くもって、寄せ付けなかった。

 

ただそれは、その日の俺が異常に調子が良かったと言うのも大きい。

それこそ、調子でいえば決勝の稲実戦に次いで良かったと思う。

 

夏休みは、俺途中降板してるし。

まあだけど、それまでは完全に抑えていたから…。

 

 

うーん。

俺を倒すために、か。

 

スイングは以前と比べ物にならないほど鋭く、力強い。

何より、1打席1打席に対する集中力がすごい。

 

と言うよりは、考え方が変わっているように見える。

 

 

ただ打席を楽しんでいただけの夏とは、少し違う。

今は、勝ちを求めることにも。

 

だからか、勝負強さも良くなっている気がする。

 

 

「大変だな、あいつを抑えるのも。」

 

「お前がいたらさぞ楽なんだがな。」

 

「買い被りすぎだ。それに、今はこいつらの方が、信頼できるだろ。」

 

 

さ、帰るぞ。

そう言って俺は、バッグを左肩にかけて歩き始めた。

 

 

轟雷市、か。

夏もかなり意識はしていたが、何となく独りよがりというか、個人軍としてのイメージが強かった。

 

だからこそ、怖い打者というイメージしかなかった。

 

 

しかし、こうして見ると。

俺を倒すために練習してきたのかも、そう思ってしまう節もある。

 

 

彼の過去は知らないが、あの時の打席での反応を見るかぎり、完全に抑えられたことはあまり多い経験ではなかったのだろう。

 

だから、試合を通してねじ伏せたあの日。

きっと、何か思うところはあったのだろうな。

 

 

外の球への対応。

そして、キレもあり大きい変化球への対応力。

 

自意識過剰かもしれないが、多分俺対策だ。

 

 

俺の外角低めへの対応と、ツーシームの対応。

そして、速い球への対応力か。

 

 

(最後のは違うだろうけど。)

 

 

しかし、きっと、

彼は、俺を意識してきた。

 

そしてそれは多分、最高の形で成長を遂げた。

 

 

俺たちにとっては最悪だけどな。

んでもって、肝心の俺は投げられないと。

 

 

本当に、苦労をかけるな。

御幸にも、沢村や降谷、それに東条とノリにも。

 

 

 

最後にもう一度、グラウンドに目を向ける。

一瞬轟と目が合うが、俺はすぐにその視線を逸らした。

 

悪いが轟、期待には応えられない。

まだその権利も、力もない。

 

だから今はまだ、お前と戦うことはできない。

 

 

だがそれでも、俺たちも負けるつもりはない。

今は、勝つことだけ考える。

 

 

監督とまだ野球がしたいから。

最後まで、監督が監督で、一緒に甲子園に行きたいから。

 

今は、ただ。

勝つことだけを。

 

 

そうして俺は、投げることのできない右手を握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ 各選手の選手能力(秋大決勝時点)

 

尺というか、少し文字数が足りませんがキリが良かったのでかさましします。

 

 

 

 

 

大野夏輝 2年

 

【野手能力】

弾道 2

ミート B72

パワー D56

走力 C60

肩力 A82

守備力 B70

捕球 D51

 

【守備位置】

中堅手 投手

 

【特殊能力】

アベレージヒッター/流し打ち/粘り打ち/ラインドライブ/チャンスメーカー

 

 

 

 

 

 

御幸一也 2年

 

【野手能力】

 

弾道4

ミート B72

パワー A81

走力 D52

肩力 A80

守備力 B78

捕球 B70

 

【守備位置】

捕手

 

【特殊能力】

チャンスA/キャッチャーA/送球A

ホーム死守/対エース/バズーカ送球/決勝打/逆境

 

 

 

 

 

 

白州健二郎 2年

 

【野手能力】

弾道 3

ミート B76

パワー C68

走力 B71

肩力 C64

守備力 B75

捕球 B71

 

【守備位置】

右翼手

 

【特殊能力】

チャンスB/走塁B/送球B

アベレージヒッター/流し打ち/カット打ち/バント○/守備職人/粘り打ち/いぶし銀/選球眼

 

 

 

オリキャラの大野くん。

そして、原作から少し能力改変を入れている2人です。

 

白州はまあ、本当にもっと評価されていいと思う。

 

 

 

 

 

 

 


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