燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード106

 

市大三校との試合を終えた俺たち。

しかし、うかうかしていられない。

 

何故なら、次の試合は明日に迫っているのだから。

 

 

明日は、決勝。

対戦相手は、準決勝でも圧倒的な攻撃力を見せた薬師高校に決まった。

 

 

 

「で、どうよ。」

 

「どうよと言われましても。俺はエスパーじゃないですよ、純さん。」

 

 

試合を明日に控えているということで、今日は最後の調整。

チーム全体の確認練習と調整を行うということで、今日は三年生の先輩方もきていただいた。

 

打撃練習の番を待ちながら、俺は三年の伊佐敷純さんと軽く談笑しながら待っていた。

 

 

「調子だよ、チームの。」

 

「いいと思いますよ。打順も固定されてきて、何より一年生たちの伸び代がすごいです。」

 

 

沢村と降谷は勿論、東条や金丸。

それに、小湊も体力がついて守備やプレーに安定感が出てきた。

 

金丸は、思い切りの良い打撃に勝負強さ。

東条は、足りなくなった中継ぎの枚数を補ってくれた。

 

 

みんな、すごく成長してくれた。

それにきっと、これからもどんどん成長してくれるはずだ。

 

 

「俺の目から見たら、お前らも随分変わったように見えるけどな。」

 

「え?」

 

純さんの言葉に、思わず俺は聞き返してしまう。

 

 

「俺たちが引退したばっかの時は、皆がそれぞれが全部やろうとしてたように見えたからな。俺たちの時もそうだったんだけどよ。今はお前ら、いい意味で役割分担できてるっていうか、それぞれができることを集中してやってるからか。ともかく、前よりもお前ら、雰囲気良くなってるぜ。」

 

 

お、おお。

あまり実感はなかったけど、そう言って貰えると嬉しい。

 

確かに、役割分担。

個の力というよりは、それぞれができることを全うして、強いチームを作るのを目標にしてきた。

 

 

それは俺たちがここまで掲げてきたテーマ。

監督と共に言った、「全員で勝つ」。

 

 

「でもお前、良いバッティングするようになったじゃねえか。」

 

「そうですかね、長打はないもんですから。」

 

「お前だってブンブン丸よりもミート上手い方が嫌だろ?」

 

 

確かに、それはそう。

にしても俺も、そこまで率が高いわけじゃないし。

 

そんなことを話していると、俺の出番が回ってきた。

 

 

バッティングピッチャーは、東条。

タイプこそ真田と真逆だが、使っている変化球は近しいものがある。

 

特に東条はコントロールがいい為、俺が苦手なコースもガンガン放ってくれる。

 

 

「インコースのカットとツーシーム多めで頼むわ。あとはお前の裁量で。」

 

「わかりました。」

 

テンポよく投げ込まれるボールを、弾き返していく。

真田はインコースにドンドン攻めてくるから、後手に回ったら完全にやられる。

 

強気に、こちらも応えていくしかない。

 

 

内に来たボールを、引っ張り方向と流し方向にそれぞれ打ち込んでいく。

 

この大会、俺は投手として闘うことができなかった。

だからこそ、最後まで。

 

この大会は、打者として。

チームの勝ちに、貢献してみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通り練習を終えると、俺たちは決勝前最後のミーティングへ。

 

研究のスペシャリストである渡辺が分析結果の報告を終えて、大体の試合の流れを掴んだ。

 

 

 

スタメンと、先発投手。

そして、試合運びや流れの確認。

 

あとは、対戦相手の薬師について。

 

 

今更、こうしろああしろと、細かい話はない。

最後の確認作業のような、そんなもの。

 

 

 

「明日の先発は、降谷。早い回から沢村も行けるように準備しておけ。」

 

監督の発表に、降谷が小さく返事。

それに続くように、今度は喧しいくらいの声で沢村が返事をした。

 

 

薬師のようにガンガン振ってくるチームに、沢村や東条は分が悪い。

ミートポイントの広い金属バットに対して、動くボールは木製よりも有効打になりにくい。

 

振り抜かれてポテンヒットというのが、かなりあるのだ。

 

 

降谷のような豪速球で捩じ伏せるのが、多分1番効果的だ。

特にフォークを投げる降谷にとっては、速球に対して合わせてくる薬師とはかなり相性はいいハズ。

 

まあ、甘く入ったらやられるのだが。

 

 

しかし次点では恐らく、沢村が投げるのがいい。

ストレートと手元で沈む高速チェンジアップ、そしてカットボールを左右にしっかり投げ切れる。

 

あとはチェンジアップで崩すことができれば、一番。

 

 

昨日6回を投げきった降谷は、恐らく早い回で替わる。

そこから沢村、イニング次第で東条を挟みつつ最後はノリでいくのがベストか。

 

 

 

 

にしても。

 

 

「轟だな、問題は。」

 

 

横にいる御幸も、俺の言葉に頷く。

 

今大会の打率は何と8割越え。

本塁打は7本と打点15はトップであり、今大会文句なしの三冠王である。

 

 

昨夏も怪物っぷりを発揮していたが、今大会はそれ以上。

間違いなく現段階では、この都内で最も良いバッターである。

 

 

特に今大会は、得点圏での打率が高い。

 

まあ恐らくは、薬師の他の打者の出塁率が高いからこそ、チャンスの場面で多く轟の打席が回ってきているのであろうが。

 

 

 

まずは、先頭打者の秋葉。

出塁率が高く、尚且つ足もそこそこ速い。

 

イメージとしては、小湊が先頭を打ってる時と同じような感じか。

尚且つパンチ力もあり、今大会でも2本の本塁打を放っている。

 

 

2番は、小技のうまい増田。

 

どちらかというと、守備の人。

だが、足は速い。

 

 

そして、ここからクリーンナップ。

 

 

3番は、強打者の三島。

典型的なパワーヒッターでありながら、打率も意外と高い。

 

難しいボールでもきちんと拾う技術があるからこそ、轟の前を任されているのだろう。

 

 

4番の轟は、先述通り。

このチームで一番気をつけなくてはいけない打者であり、最悪歩かせても良いと思う。

 

のだが、そう簡単にいかないのは、この後に控えている打者もまた怖い。

 

 

それが、5番に座る真田俊平。

投手でありながら薬師のクリーンナップを務めるのには、理由がある。

 

それが、得点圏打率の高さ。

 

というより、ビハインド時や勝負所でヒットを打つ確率が、高い。

逆境での集中力は、チームトップクラスになる。

 

今大会でも勝負を決める一打や、逆転、決勝タイムリーを放っている。

 

だから、迂闊に轟との勝負を避けることもできない。

 

 

下位打線も一発を狙う打者が多く、下位からもチャンスメイクができるのだ。

 

 

 

積極的なプレーは健在。

 

バントは今大会でもまだなし。

盗塁数も多く、走塁死も多い。

 

しかしその分、流れに乗ると怖い。

 

 

守備はまだまだ荒さはあるものの、昨夏に比べてもかなり安定感が出てきている。

しかし連携は、まだ甘いところはある。

 

そこの隙をつけば、上手く撹乱できるはずだ。

 

 

攻撃から守備まで、強気で攻め手。

荒いからこそ、流れに乗ったら止められない。

 

 

 

投手は、主に3人で回している。

 

 

先発の可能性が最も高いのは、三島。

恐らく彼は本業投手であり、チーム内で2番目の投球回を投げている。

 

130キロ台の真っ直ぐに加えて、キレのあるフォークとカウント球のカーブとスライダーで試合を作るスターターだ。

 

ピンチでも物怖じしない度胸もあり、むしろギアを上げる。

 

 

 

あとは、準決勝で先発した秋葉。

サイドスロー気味のスリークォーターからテンポ良く投げていく。

 

恐らくは、明日は投げないはず。

 

 

 

あとは、エースの真田。

今大会先発はまだなしだが、チームトップの登板数である。

 

先発で試合を作るというよりは、ピンチの場面やこれ以上失点したくない場面で出てくる。

 

理由は多分、スタミナに不安があるから。

単純な体力面もあるが、彼も足に怪我を抱えている。

 

だから先発完投はまずないだろう。

 

最速140キロの球威のある真っ直ぐに、カットボールとシュート。

そして今大会から投げ始めた、縦変化のツーシーム。

 

インコース攻めはかなり強力であり、とにかく内で詰まらせてくる。

 

 

 

恐らくは、先発で三島。

中盤の勝負所で真田が出てくると思う。

 

先制点は取りたい。

できれば、真田が出てくる前に点差を開きたいかな。

 

 

 

「明日の先発は今日と同じ。打順もこのままいくぞ。」

 

 

いま、一番安定している。

何より、相手もかなり嫌なはずだ。

 

変に変える必要はない。

今一番良い状態で向かっていくのが、一番いい。

 

 

あくまで、やることは変えない。

今はただ、真っ直ぐに。

 

自分たちの野球で、勝つ。

 

 

 

あらかた話終わり、少し静寂が訪れる。

すると監督は、息をふっと吐いた。

 

ゆっくりと、俺たちの顔を見渡す。

そして、髭の蓄えられた口を少し開いた。

 

 

「お前らも目の前で見た通り、相手の薬師高校は強い。今、都内で一番強い対戦相手だってことはわかっているな?」

 

 

当然だ。

だから、この決勝という舞台に立っているのだ。

 

強いから、ここまできた。

決してまぐれで勝ち上がれるような、甘い場所ではない。

 

 

「だが、それはお前たちも同じだ。」

 

 

ここまで一切楽な試合はなかった。

それでもここまで、勝ち上がってきた。

 

これも、まぐれではない。

 

 

「あえて言うぞ。お前たちが、都内で一番強い。だからここまで来た。」

 

 

監督がそういうと、俺たち全員が頷く。

もう迷いなんて、ない。

 

 

「最後まで俺たちの野球で、勝とう。強い青道の野球で、自信を持っていこう。」

 

 

 

最後の監督の言葉。

一拍開けて、噛み締めるように俺たちは声を張り上げた。

 

 

勝っても負けても、明日が最後の試合だ。

この試合が終わったら、長い冬がやってくるんだ。

 

 

 

だから。

ベストを尽くそう、俺たちの野球で。

 

 

そう、胸に秘めた。

 

 

 

 

 

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