燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード108

 

 

 

 

 

 

10月某日。

秋も真っ盛り、夏の残暑すらとうに過ぎ去った今日この頃。

 

高校球児たちは、一種のターニングポイントを迎えていた。

 

 

「いくぞオオオオ!」「いくぞオオオオ!」

 

 

2人の主将から放たれた掛け声と共に、選手たちがグラウンドへと集結する。

 

試合を構築する数十人がグラウンドに集結し、試合開始を告げる。

 

 

礼を重んじる日本人として、野球人として。

そして、これから闘う相手に敬意を払って。

 

互いに、顔を合わせた。

 

 

 

秋季東京都野球選手権大会。

東西東京の頂点を決める大会であり、選抜高校野球選手権大会への切符を手にすることができる大一番。

 

今、この大会で最も強い2校が、相対する。

 

 

先攻は、Aブロックから勝ち上がってきた薬師高校。

今夏からいきなり頭角を表した超攻撃的なチームであり、今大会でも圧倒的な得点力で相手をねじ伏せてきた。

 

 

Bブロックを勝ち上がったのは、後攻の青道高校。

抜群の安定感を誇る投手陣と強力打線を誇り、強豪犇くBブロックを這い上がってきた。

 

 

試合前評判は、6−4で青道有利。

しかし、ほとんど五分である。

 

薬師が勢いに乗るか。

青道が、王者の貫禄を見せるか。

 

 

互いのプライドをかけた大一番が今、始まる。

 

 

 

「まずは、1人な。秋葉も良いバッターだぞ。」

 

 

後攻めの青道が、まずは守りに入る。

 

今日の先発は、降谷暁。

昨日からの連投になるが、大野が投げられない以上、彼の他に薬師戦で先発を任せられる投手はいない。

 

小さく頷き、マウンド横に置かれた小さな袋に手を当てる。

そして指先に息を吹きかけた。

 

 

左のバッターボックスからそれを見た秋葉は、合わせるように左手に息を吹きかける。

 

 

(ここまでスピードボールはたくさん見てきた。今更、驚かねー。)

 

 

もう一度小さく息を吐き、バットを掲げる。

 

練習試合から、大会を通じて、速いボールの投手とは何回も当たってきた。

 

降谷の速球でもきっと対応できる。

そう思った刹那。

 

彼の目の前に走ったのは、まるで生命を感じるかのような勢いのある何かであった。

 

 

轟音と共に、噴き上がる直球。

バットを出すことすらできずに、秋葉はその初球を見逃した。

 

 

「うわ、まじかよ。」

 

 

思わず、口に出てしまう。

それほどまでに、豪速球。

 

2球目は振りに行くものの、これもバットに当たらず空振り。

 

 

(速い、それに強い。軌道もあんまり見たことない軌道だ。)

 

 

ストレートが、浮き上がって見える。

手元で加速するような、それでいて唸りを上げて昇ってくる。

 

間違いなく、ここまで見てきたストレートで「2番目」に凄まじいボールだと、思った。

 

 

3球目。

御幸は、低めのストレートを要求。

 

投げ込まれたボールはわずかに外れてボール。

 

 

1−2で、バッテリーが追い込んだカウント。

しかし秋葉は、リラックスしていた。

 

 

(確かにすごいボールだ。だけど…)

 

 

投げ込まれたのは、真ん中付近のストレート。

これに対して、秋葉は完璧にコンタクトした。

 

金属バット特有の、甲高い音。

それと共に、鋭い打球は右中間を破った。

 

 

『弾き返したー!降谷の150キロのストレートを完璧に捉え、先頭の秋葉、チャンスを作ります。』

 

秋葉は俊足を生かして二塁へ。

いきなり食らった鮮烈なパンチに、降谷は目を見開く。

 

マスク越しにそれを見ながら、女房役である御幸も、苦虫を噛み締めるような表情を浮かべた。

 

 

(やっぱ、連投の影響は出ちまってるな。)

 

 

確かにストレートに勢いはある。

しかし、いつもほどではない。

 

追い込んで勝負しに行けば無意識にギアが上がると思ったが、それでも三振を取れる力はなかった。

 

 

いや、寧ろ。

連投の影響というよりは、この舞台か。

 

決勝という大舞台で任された、先発。

しかもそれが、初めての二連投。

 

球が浮つくのも、頷ける。

 

 

続く、増田。

このバッターに対しては、初球からフォーク。

 

先ほどまでとは打って変わって、これは良いところに決まって空振り。

 

 

(調子は悪くない。ただ、いつもより出力が出ないって感じか。)

 

 

こればかりは、仕方ない。

連投の疲労でマックスの力が出ないのは、御幸も想定してのことだった。

 

(そうなっと、秘密兵器がどうか、だな。)

 

(手先の感覚は悪くない。多分カーブも、上手くいく。)

 

 

御幸の言う秘密兵器というのは、カーブのこと。

丹波直伝の縦に大きい割れる緩いカーブは、試合でも少ししか投げていないため、薬師の頭の中にもないはず。

 

何より、勢いが足りないとはいえ、この緩急差。

150キロの浮き上がる球と120キロ以下で落ちるボールでは、スイングも崩れる。

 

 

増田に対して、2球目はストレートで空振り。

このストレートは、やはり並の打者では捉えることができない。

 

 

3球目は、そのカーブ。

ど真ん中から低いコースに決まったこのボールに増田は空振り三振。

 

 

やはり調子自体は、悪くない。

寧ろ無駄な力が抜けて、安定感はいつも以上だ。

 

ミットに収められた白球を掴み取り、マウンド上にいる降谷に投げ返す。

 

 

 

そして、続く打者に目を向けた。

 

3番打者の三島は、典型的なパワーヒッター。

しかし、当てるのも上手い。

 

轟の前にランナーは、貯めたくない。

最悪この男を抑えることができれば、轟を歩かせるという選択肢も出てくる。

 

 

何としても、抑えたいバッテリー。

しかしその考えも、三島は何となく感じ取っていた。

 

 

(俺を抑えて、雷市との勝負を安全にする魂胆だろうがな。)

 

 

しかし、三島は初球攻撃。

降谷の低めのストレートを完全に狙い撃ち、打球を上げた。

 

 

(雷市に回すまでもねえ!俺が決めんだよ!)

 

 

高々と上がった打球は、セカンド後方。

少し詰まっているが、打球はライトとセンターの間に落ちるテキサスヒットで、出塁した。

 

 

意気込みの割にしょぼい当たりだが、あえて誰も突っ込まない。

何故なら、出塁することに大きな大きな意味があるから。

 

 

次に打席に入るのは、4番。

チームを象徴する選手であり、最も信用のおける打者。

 

そしてこの薬師高校で座るその男は。

 

 

『4番、サード、轟くん。』

 

 

都内で今、最も打っているバッターである。

 

 

今大会、文句なしの三冠王。

打率は8割越えであり、本塁打7本と打点15は悠々一位。

 

 

(ほんと、勝負したくねーな。)

 

 

バッターボックスに入る轟にチラリと視線を送り、戻す。

やはり、打ちそうというか、強打者特有のオーラのようなものがある。

 

初球のフォーク。

これがワンバウンド、外れて1ボール。

 

 

2球目、同じようなボールも見逃してボールが先行してしまう。

 

 

 

カウントとしては、歩かせたい思いもある。

 

しかし、状況が状況。

この一、三塁という状況で歩かせるわけにはいかない。

 

 

何より、5番打者は勝負所に強い真田。

そんな男を、満塁で迎えるわけにはいかない。

 

ここで簡単に歩かせるわけにはいかない。

 

 

しかし、無理に攻めて轟に一発をもらうのは、最悪。

 

 

 

ほんの少しの迷い。

そして、躊躇。

 

捕手のそれは、投手にも伝染する。

 

 

 

 

迷いがあって、抑えられる打者ではない。

だからか、御幸は少し。

 

 

焦りすぎた。

 

 

 

 

『高めのストレート狙ったー!何という男だ轟、全く打球の方向を見ません!意気揚々と一塁へと走っていきます!』

 

 

高高度まで舞い上がった打球は、最後まで見送る必要がない。

そう思わせるほど完璧な当たりは、神宮球場の高い高いバックスクリーンを超えて。

 

誰の目にも届かない場所まで、放り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







今作の轟はとんでもないバッターにするつもりです。
原作でも猛威を振るっていた彼にさらに強化バフをかけるので、多分環境壊れます。



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