燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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早々に冬へと入っていきますよー。







エピソード115

 

 

 

 

 

歓喜の渦に包まれた、長い長い秋が終わり。

青道高校は、春の甲子園への切符を手に入れた。

 

エース不在ながらも、1年生投手の大活躍。

そして何より、個性の強い打者が並んでいる、強力打線。

 

何だかんだで、完成度が高かった気がする。

 

 

しかし、楽な試合は無かった。

 

 

初戦からほぼ厳しい試合展開。

強豪揃いのリーグを、それこそナイン皆の力で勝ち上がってきた。

 

完成度がある程度高かったからこそ、粘り勝つ試合が多かった。

 

 

しかし裏を返せば。

他の高校は、その粗を削ってよりまとまりを帯びてくる。

 

確実に春、夏と一気に強くなる可能性が高いのだ。

 

 

 

ならば、ある程度バランスの整ったチームは、どうか。

新たに突出したものを伸ばしていくか、或いは満遍なく伸ばしていくか。

 

 

青道高校は、後者を選んだ。

 

打線は、個々の能力をそれぞれ上げていく。

そしてより強く濃い線に、そして抜け目のない打線を作る。

 

守備は、より強固に。

各々の身体能力向上は勿論のこと、連携をより綿密に行い、鉄壁を形成する。

 

投手は、より我儘に。

個性の強さをより強く出しながら、それでいて弱点も最低限まで持っていくことで、層の厚さを。

 

 

 

そして。

この大きな一角を担う男が。

 

今、動き始めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「投球練習はどうかな。」

 

「えぇ、徐々に力を入れてやってます。もう全力近くで投げても問題無いです。」

 

 

とある大型病院の一角。

ただ検診するには、些か大袈裟すぎるような部屋。

 

そこで俺は、肘の定期検診に赴いていた。

 

 

 

夏の終わりに怪我をした、肘。

勤続疲労というか、要は投げすぎで肘が休まる前に投げてしまったのが原因の、肘部管症候群と呼ばれるもの。

 

 

肘の炎症が収まるまでの3ヶ月間の猶予を言い渡された。

 

 

 

さて、今日はその3ヶ月。

経過としては、予定より早めに回復をしていた。

 

まあ、定期的に見に来てる時も言われたのだが、どうやら俺は怪我の回復がかなり早いらしい。

疲労も他の人に比べて溜まりにくいはずなのだが…

 

そこは、俺のフォームと投げる球種が原因らしい。

まあそこに関しては、後で話そう。

 

 

 

とりあえず、登板禁止は解除。

試合自体でも投げることはOK、そして様子を見ながらとのことだ。

 

 

「これからも大会前や調整の時に来なさい。マッサージとかできる所はサポートさせてもらうからね。」

 

「ありがとうございます、是非。」

 

「実は、僕は担当医であって、青道高校エースの大野夏輝選手のファンでもあるんだ。やれることはやるよ。」

 

そう言って、先生が笑う。

俺もそれを見て、笑顔で返した。

 

 

2人の1年生は、本当に頼もしい先発になってくれた。

それぞれが、いい形で試合を作れるようになった。

 

負けられない。

秋大では投げられなかったが、だからこそ。

 

今まで持っていたのは、あくまで暫定的なものでしかない。

 

だからこそ、この冬。

さらに鍛え上げて、本当の意味で。

 

 

エースの座を、取り戻す。

 

 

 

そして俺は、足早に学校へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、夏輝さん!どうでしたか!?」

 

 

戻って早々、いつも通り沢村の声が聞こえてくる。

その横に、落合コーチと御幸、そして控え捕手の小野がいた。

 

 

「うん、とりあえず投げて良いって。というより、投球練習自体はしてたろ。」

 

「なんかあるじゃないですか、そういう雰囲気!」

 

「知らねーよ。」

 

 

軽くあしらいながらも、こうして喜んで貰えるのは嬉しい。

 

最近は確かに投球練習も徐々に再開していたが、実際に全力で投げていいと言われると、確かに思うところはあるかもな。

あながち、沢村が言うことも間違いでは無い。

 

 

「降谷と沢村は、川上と東条と合流してトレーニングだ。」

 

「YES、コーチ!」「また体力づくり…」

 

 

敬礼をする沢村。

そして、明らかに項垂れる降谷に苦笑しつつ、俺はグローブに手をかけた。

 

 

「身体は温まってるな、大野。」

 

「ええ、アップは終わらせてから合流しましたから。」

 

 

コーチが頷くと、御幸に視線で訴えかける。

すると彼も頷き、俺に白球を投げてきた。

 

 

「ほら、さっさと肩作るぞ。」

 

「おう。」

 

 

渡された白球を、軽く投げる。

徐々に距離を離していき、力を加えていく。

 

指のかかりも、気にしながら。

センターを守っているときには余り意識していなかったからこそ、しっかり感覚を研ぎ澄ます。

 

 

正直、少し鈍くなってはいる。

指先で切る感覚も、何となくズレている。

 

 

少しずつ力を入れていき、マウンドへ。

そこからさらに、力を入れていく。

 

 

 

にしても…

 

「抜けてんな、ちょっと。」

 

「久しぶりで感覚が戻ってきてないんだろ。とにかくコントロールは気にせず、ドンドン切る感覚を思い出せ。」

 

 

やはり、感覚が鈍くなっている。

 

少し力を入れて、投げてみる。

うん、力が入ると何となく感覚も鮮明になってくるな。

 

 

投げていく内に、ボヤけていた感覚が、戻っていく。

まるで先端の丸くなってしまった鉛筆を、徐々に徐々に削って尖らせていくように。

 

 

 

今のうちは、とにかく意識しろ。

コンマ1秒の調整をして、あの時を思い出せ。

 

少しずつ、指にかかるストレート。

だいぶ感覚も、慣れてきた。

 

 

これならば。

グローブで御幸を指し、しゃがむようにジェスチャーをする。

 

 

「一也、座って。」

 

「…わかった。」

 

 

キャッチャーが、試合と同じように座る蹲踞のような姿勢。

そして、グローブを前に出した。

 

構えられたコースは、右打者のアウトロー。

 

 

腰を大きく捻り、投げ込んだ。

 

少しミットこそ動いたものの、ほぼ完璧に近いコース。

それを見て、俺は少しばかり感動した。

 

 

投げられる。

 

ただそれだけだが、俺は。

その事実だけで、心が動いた。

 

 

「OK、ナイスボール。コースは完璧。」

 

 

こうして御幸から返球されるのも、いつぶりか。

涙目になりながら、受け取る。

 

 

投げていく。

自分の感覚を研ぎ澄まして、研ぎ澄まして。

 

夏の感触を、思い出すために。

 

 

ストレートがかなり、指に掛かってきた。

3ヶ月丸々ピッチングが出来ていなかったとはいえ、シャドーピッチ等のフォーム固め自体はやっていた。

 

何より、何年も続けてきたこの動作。

そう簡単に、忘れられるものでも無い。

 

 

 

幾度か続けた後。

俺が、ストレートから少し握りを変える。

 

 

「一也、次は…」

 

「ここまでだ。」

 

 

俺が言いかけると、それを静止するように落合コーチが言った。

 

まあ、今日が本格的に投げ始めて初日だもんな。

変化球いきなり投げようとするのも、よくないか。

 

 

「明日以降、ちょっとずつツーシームとかも混ぜていく。」

 

 

そう言うと、何故か少し気まずい雰囲気。

え、俺不味いこといいました?

 

御幸が俯くと、落合コーチが重い口を開いた。

 

 

「お前、ツーシームを捨てろ。」

 

 

投手として本格的に復帰した、その日。

突如伝えられたその宣告に、俺は唖然とすることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

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