燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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今回はかなり短いです。
そしてオフは、今回までです。

次回以降、選抜大会編に入っていきます。





エピソード121

 

 

 

 

 

 

 

「くああ。おはよ、金丸。」

 

「おはようございます、大野先輩。」

 

 

部屋の中でも漂う、冷たい冷たい風。

乾き切ったこの風にため息が出そうになるも、部屋の後輩にゼリー飲料を渡した。

 

 

「あざっす。珍しいすね、大野先輩と同じ時間ってのも。」

 

「今日から冬合宿が始まるからな。流石に俺も、この期間は走る余裕がない。」

 

 

時期は、年の瀬が近づいてきた12月後半。

この季節、俺たち青道高校が伝統的に行なっている地獄の冬季合宿がある。

 

試合形式ができないオフシーズンということもあり、基本的には体力づくりが中心。

技術練習もあるが、それでも個人練習が主となる。

 

 

 

そのため、精神的にも肉体的にも鍛えられる合宿なのだ。

 

 

 

「そんなにきついんですか。」

 

「まあな。トレーニング自体はそうでもないんだが、やはり連日やるとな。筋肉痛と疲労で体が動かなくなるから、日が経てば経つほどきつい。」

 

 

さて、待っていても仕方ない。

軽く準備して、金丸と共に外に出ていく。

 

まず朝からランニング。

 

身体を起こす意味も込めて、そして調子を確認するように。

 

 

 

「おっはようございます夏輝さん!」

 

「おはよう、相変わらずうるさいね。」

 

 

耳に指を突っ込みながらそう答える。

この男、本当に朝から元気である。

 

しかしこの明るさがどこまで持つのか。

 

 

 

 

早朝は、個人でのバッティング練習。

ティーバッティングや素振りなど、それぞれが行う。

 

あくまでメニューは、個人の能力を鍛えるもの。

 

見つめ直し、身体に染み込ませる。

 

 

 

朝の練習が終わると、朝食。

 

まあみっちり練習して消耗したエネルギーを回復。

そしてこれから消費するエネルギーを蓄える為に、とにかく量を食べなければならない。

 

いつも以上にしっかり入れる。

 

 

去年は後半ガス欠だったからな。

しっかりエネルギーは、入れられる時に蓄えておこう。

 

 

 

日中は、サーキット中心。

 

跳躍や自重、無酸素運動なども入れながら全身運動。

効率よく身体に負荷をかけ、尚且つ強度も高い。

 

 

 

そして、夜。

日が落ちてからは、地獄のランメニューが待っている。

 

長距離ランからインターバルのような高強度のダッシュトレーニングまで幅広く行う。

 

 

まあ、これが本当にきつい。

何がきついって、日中散々下半身をいじめ抜いているから、体がついてこない。

 

 

「頭を上げろ、背中を丸めるな!」

 

 

監督からの檄が、度々とぶ。

 

この人も良くやるもんだ。

朝早くから夜遅くまで、最後までずっと付き合ってくれる。

 

まあこのクソきつい中だと鬱陶しいと思うのが、学生の本音だと思う。

 

 

 

 

 

 

これが、約1週間続く。

夏合宿とよく比較されるのだが、これは比にならないほどきつい。

 

追い込み時期というのもあり、体力的にも精神的にも追い込まれていくのだ。

 

 

「大丈夫か、沢村。」

 

 

絶賛足元で死んでいる沢村。

 

まあ一年なんかは、初めてだもんな。

俺も最初はかなりきつかったのを覚えている。

 

 

というか、俺も実際クソきつい。

立っているのがやっとだ。

 

 

だが後輩が倒れている反面、エースである自分は意地でも立っていないといけないと思っていた。

 

 

「エースになるんだろ。なら辛い時でも突っぱねろ。エースは背中を汚さない。」

 

「余裕です、夏輝さん!」

 

 

そうして、慌てて立ち上がる沢村。

足は震えているが、よくやっている。

 

 

「宜しい。さ、飯行くぞ。」

 

「うっす。」

 

 

そんなこんなで、冬の合宿もどんどん進んでく。

下半身も上半身もバキバキになり、各所が悲鳴をあげているのを感じてきた。

 

そんな合宿も気がつけば最終日。

 

年明けも間近に迫っている中、最後の夜を迎える。

 

 

 

 

棒のように硬く、鉛のように重くなった脚を最後まで動かす。

 

 

倒れ込みそうになる降谷を抑え、立ち上がらせる。

 

無理もない。

夏合宿もある程度余力の残っていた俺ですらギリギリなのだ。

 

体力のない降谷はとうに、限界を超えている。

 

 

しかし、俺はあえて強い口調で言った。

 

 

「俺に勝つんだろ。ここで折れてどうする。」

 

「はい。」

 

 

すぐに降谷が立ち上がり、走る。

 

夏に誓いを立てたのは、俺だけではない。

あいつもまた、悔しい地獄のような思いをしてきたんだ。

 

 

そして秋大の決勝。

彼は志半ばで力尽きた。

 

 

エースになる。

そんな男は、こんなところで折れていてはいけないのだ。

 

 

 

 

最後のランメニューを終えた時、少し空が明るくなり始めていることに気がつく。

 

日が登ってきたか。

そう思い、今年の練習も終わったのだなと実感が湧いてきた。

 

 

今年も長かった。

できなかった期間があったからこそか、とても長く感じた。

 

来年で、とりあえず節目を迎える。

 

高校球児として、当たり前に野球ができていた時期は、夏までだ。

 

 

 

そこから先は、未知の世界だ。

 

 

まあ、今はそんなこと考えることはないか。

今はただ、このメンバーで甲子園に行く。

 

それだけを考えて。

 

 

 

チームのメンバーが並び、登る日に向けて一つ礼をした。

明くる年の、その新たな日に。

 

一つの誓いを、込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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