燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード124

 

 

 

 

やあ、大野イン甲子園だよ。

今日はオフだから、ホテルからお送りするよ。

 

俺が先発した初戦、宝明高校との試合は、いい流れのまま勝利。

 

中盤の連打と終盤のダメ押しで打線は6得点と好調。

 

 

登板した俺も、9回最後まで投げ切って被安打2の無失点、15個の三振を奪い完封勝ちを収めた。

 

 

 

 

続く2回戦目も、勢いのまま勝利。

先発降谷が、試合を作り5回を無失点投球。

 

その後を投げた沢村は、登板初回こそバタついたものの、そのあとは安定感のある投球を披露。

最速130キロ後半の直球と動くボールを巧みに操り、相手に的を絞らせない。

 

 

最終的には4−1で3回戦目に駒を進めた。

 

 

 

 

「なるほど、これが甲子園の王者か。」

 

「巨摩大藤巻。去年の夏、稲実を倒した高校、か。」

 

 

しかし、安息する間も無く次の試合がやってくる。

 

3回戦目の対戦相手は、巨摩大藤巻高校。

前回の夏の甲子園、エース成宮を擁する稲実との接戦を制し、春夏連覇を成し遂げた北の雄。

 

今大会も、文句なしの優勝候補筆頭である。

 

 

 

高い守備力と、バランスの良い打撃が持ち味の野手。

充実した投手による、継投での安定感抜群の守り。

 

監督の新田さんの攻撃的采配は「新田マジック」と呼ばれるほど的確で、稲実との試合で見せた連続代打や4継投は衝撃的であった。

 

 

 

そして、このチームを象徴する、絶対的エース。

 

それが。

 

 

「本郷正宗、か。こいつが難敵だな。」

 

 

本郷正宗、2年生ながらこの強豪校でエースを張る本格派右腕。

 

最速151キロの威力のあるストレートに、高速で沈むSFF。

特にこのSFFが厄介で、打者が変化球と判断することのできるポイントを超えてから沈む。

 

ストレートとスピード差も小さい為、判別するのが難しい。

 

SFFの他にも、キレのある斜めに曲がるスライダー、緩く変化するカーブもある。

このスライダーも奪三振率が高い為、おいこんでから良く投げられる。

 

 

コントロールも良く、ピンチになると一気にギアを上げ、そうなると手がつけられない。

 

あとは、継投で勝っているチームでありながら、本郷自身は一試合投げ切るスタミナもある。

 

 

明らかに、世代を代表する右腕。

既にドラフトの話題になるほどの、逸材だ。

 

 

 

「低めは思い切って捨てる。甘いコース、高めに狙いを定めて少ないチャンスをモノにする。相手が好投手なだけに、我慢が必要な試合になるぞ。」

 

 

低めのストレートとSFFは、見分けはほぼ無理。

となれば、やはり狙いは浮いたボールか。

 

攻略法は、成宮のときと殆ど同じ。

 

しかし、恐らく彼よりも、低めの見極めは難しくなりそうだ。

 

 

「守りも同じだ。下位までしぶといバッターが並んでいるから、集中力を切らさず守る。こちらもしつこく、我慢強くだ。」

 

 

監督の言葉に、俺達も頷く。

 

 

本郷か。

確かに、能力は世代を代表するのは間違いない。

 

それに、闘志も。

 

 

「いいピッチャーだな、ほんと。」

 

横に座っていた御幸の言葉。

それに同意の意志を表すように、頷いた。

 

 

「良い瞳をしてる。全てを捩じ伏せる、ベンチすら敵視している瞳だ。」

 

 

背負っていると同時に、追われる立場という自覚もある。

あれもまた、エースか。

 

 

投手としての完成度、それに潜在能力。

現状の能力ですら、俺より確実に上だ。

 

 

これが、全国。

 

立ち塞がるか、俺の前に。

 

 

「大丈夫か、夏輝。疲れてんのか。」

 

 

横目で俺を見る、御幸。

構わず俺は、呟いた。

 

 

「面白い。」

 

「は?」

 

 

見れば見るほど、凄い。

だからこそ、燃える。

 

目の前の相手が、投げ合う相手が。

 

すごい投手なら、尚更。

 

 

「何でもない、大丈夫だ。」

 

 

まだ抑えろ。

 

明日になれば、どちらにせよ解放するんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青道高校がミーティングしている最中。

また別の場所で、相対する王者がその試合模様を見ていた。

 

 

「なるほど、いいチームだ。」

 

 

試合のビデオを流し終え、監督である新田がそう呟く。

 

 

攻撃面では、それぞれが個性のある打者集団。

しかしそれでも、纏まりがあり打線となっている。

 

そして、全員が走塁意識が高い。

 

 

クリーンナップは要注意。

 

3番の小湊は率が高いアベレージヒッター。

4番の御幸は、得点圏打率が高いクラッチヒッター。

そして主将であり5番の白州は、万能な何でも屋。

 

この3人が、打者の要注意人物。

 

ランナーがいる状態で回したくない、クリーンナップだ。

 

 

 

守備は堅牢で、特にセンターラインは守備範囲も広く連携も取れているため、失点を多く防いでいる。

 

あとは投手陣。

先発回数が多いのは二年生2人と、三年生エース。

 

 

左腕の沢村は、最速137キロのフォーシームと高速変化するムービングファスト。

あとはチェンジアップ、このボールを両サイドに広く使う、変速フォームの技巧派サウスポーである。

 

右の本格派の降谷は、最速154キロのストレートと大きく落ちるフォーク、スローカーブを投げる。

コントロールは粗く調子も両極端だが、爆発力は非常に高い。

 

 

しかし、彼らより優先的に警戒しなくてはいけない投手がいる。

 

 

それが背番号1、エースである大野夏輝だ。

 

 

 

針の穴を通すコントロールとキレのあるストレート。

そして高速変化するツーシームと、今春から投げ始めたカットボール。

 

あとは縦に割れるカーブと球速の遅いチェンジアップ。

 

 

トルネード投法で極端なほどのオーバースローから繰り出すボールは、他の投手と軌道が違う。

 

 

 

 

「簡単に投げ勝てる相手じゃない。完成度もコントロールも、貴様より数段上だぞ。」

 

 

新田がそう言うと、この巨摩大藤巻のエースである本郷は、噛み付く勢いで睨みつけた。

その反応に、新田もすぐに言い返す。

 

 

「なんだその目は。自分があれよりも上だと。自惚れるのも大概にせい。」

 

 

無論、新田自身も本郷の方が最大出力は高いと自負している。

本郷という投手はそれほどまでの逸材であり、確実に世代を代表する投手になると確信していた。

 

だからこそ、対抗の相手が自分より上だと。

その反骨精神で、高めてほしいのだ。

 

 

怒りは、エネルギーだ。

そのエネルギーを投球に向けることができれば、それは大きな武器となる。

 

 

「スタートは前回と同じ。先発は正宗でいく。」

 

 

そこからミーティングを行い、数十分後。

大まかな戦略や試合運びの話も終え、各々が席を離れる中。

 

 

最後に残ったのは、次の試合でバッテリーを組む、二年生2人であった。

 

捕手でありながら、打撃でもクリーンアップを務める円城は、ぶっきらぼうな本郷にとって良い相談相手である。

 

 

 

「どうした、正宗。」

 

 

自分の投球に集中しがちな彼にしては珍しく、相手投手の大野の試合をまた見ていた。

 

それも、今大会ではなく、夏の予選の決勝戦である。

 

 

「同じだ。」

 

「何が。」

 

「あの時の成宮さんと、同じ目だ。」

 

 

夏の甲子園決勝。

継投による全員野球で勝ったこちらに対して、稲実はただ1人のエースが最後まで投げきった。

 

 

味方の援護がなくとも。

最後の最後まで投げぬく様は、正にエースそのものであり、負けても尚絵になった。

 

 

それと同時に。

本郷は、その成宮の方が自分より上だと、確信した。

 

だからこそ、そんな成宮と同等の実力を持った大野には、珍しく好奇心のような感情を抱いていた。

 

 

「明日になれば、わかるか。」

 

 

今の自分が、どの位置にいるのか。

何よりこの大野という男が、どれ程の投手か。

 

 

「明日が楽しみだ。」

 

「…そうだな。」

 

 

相方の思わぬ発言に少し戸惑ったが、捕手である円城は同意するように頷いた。

 

 

 

 

 

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