燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード132

 

 

 

 

『最後はバックドアの高速スライダーでしょうか!外角に決まる高速変化球で見逃しの三振!沢村、最後は全く寄せつけずに試合を締めくくりました!』

 

 

両手を広げ、咆哮を上げる沢村。

同時に、捕球した御幸が沢村に駆け寄る。

 

内野も集結し、少し遅れてエースと外野がマウンドへと集まった。

 

 

マウンド上は忽ち歓喜の渦。

優勝決定戦と勘違いするほどの状況だが、それほどまでの激闘であった。

 

 

 

 

前年夏の優勝校である巨摩大藤巻を、息を飲む投手戦の末に破った青道高校。

 

御幸と白州による速攻で決めた1点を守りきり、最後は抑えの沢村が完璧に締めて激闘に終止符を打った。

 

 

『互いに世代を代表する投手、激闘の末に勝利を手にしたのは青道高校です!』

 

 

互いに奪った三振は、2桁。

被安打も、同じく2つ。

 

そのタイミングが噛み合った青道と、そうでなかった巨摩大。

 

ほんの僅かな差であった。

 

 

両エースは共に絶好調。

 

大野も復帰後まだ2試合ながら、完璧なピッチング。

それに呼応するように投げた本郷も、ココ最近でのベストピッチであった。

 

 

 

「よく投げきったな沢村。」

 

「いえ!夏輝さんに負けたくねえっすから!」

 

 

ベンチ前で試合を終えた選手たちが、互いを労う。

 

強力巨摩大藤巻打線を完璧に押さえ込んだ大野と、その後を継いでパーフェクトリリーフを見せた沢村。

 

そして、一攫千金のタイムリーを放った白州。

 

 

 

多くの記者がカメラを回す中、もう1人のエースがそこへと近づいていった。

 

 

「本郷、か。」

 

 

試合を終えれば、また同じ野球人。

案外、こういうこともある。

 

 

向かい合う、エース2人。

 

鬼の形相、というほどではないが渋い表情を浮かべる本郷。

対して、ある程度愛想というか、弁えている大野は朗らかな表情である。

 

 

先に口を開いたのは、大野の方であった。

 

 

「不服か。俺が最後まで投げなかったことが。」

 

 

大野がそう言うと、表情を崩さなかった本郷が眉を動かす。

 

その直後、今度は返すように本郷がいった。

 

 

「試合後半、あんたの出力が明らかに落ちたのはわかった。」

 

「ほう。」

 

 

見抜いていたか。

実際、久しぶりの登板で出力の調整が上手く出来なかった為か、後半はスタミナが少し切れかけていた。

 

それも踏まえて、御幸と片岡は大野を替える選択肢を取ったのだ。

 

 

「まだ本調子じゃないのは、わかってます。それでも、凄いピッチングでしたけど。」

 

「そりゃ、評価されていると取っていいのか。」

 

 

小さく、本郷が頷く。

それを確認して、大野もまた小さく笑った。

 

 

「今度は、最後まで投げ合おう。お互い全開でな。」

 

「…負けません。」

 

 

大野が右手を差し出す。

 

しかし本郷は、その手を握らず背を向けて離れていった。

 

 

「手ぇ出てたぞ、政宗。」

 

「知らん。まだそれに、その時期じゃない。」

 

 

まだ敵わない。

そう、本郷自身は痛感していた。

 

無論投手としての能力で言えば、本郷の方が上だろう。

 

しかしそれでも、彼自身の中で「負けた」という事実上、自分の方が劣っていると感じていたのだ。

 

 

拳を握る本郷。

が、その表情をみて円城は少し目を見開いた。

 

 

「随分饒舌だな、あの人と話す時は。」

 

 

円城がいつもとは異なる本郷の姿に思わずそう聞く。

すると本郷は、顔を背けて鼻を鳴らした。

 

 

「久しぶりに、勝ちたいと思った。」

 

「いつも思っているだろ。」

 

「違う、そうじゃない。」

 

 

立ち止まる本郷。

そして再び、青い装いのベンチに目を向けた。

 

 

「あの人に、勝ちたいと思った。俺は。」

 

 

チームとしてではなく。

1人の投手として、投げ勝ちたいと思った。

 

それはある種、独りよがりなところでもあるが。

 

 

「そうか。」

 

 

しかしそれでも。

こうして本郷が追い越したいという相手に出会えたこと自体が、相方である円城としては嬉しくて仕方がなかった。

 

 

「夏、また出直しだな。」

 

「あぁ。」

 

 

次こそは。

最後まで投げ合い、その上で勝つ。

 

今度こそ、あの真っ赤な優勝旗を持ち帰るために。

 

 

そして、大野夏輝に勝つために。

新たな誓いを立て、怪童は北の大地へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーーー疲れた。」

 

右肩と肘に大きな氷嚢を携え、俺は大きく伸びをした。

 

 

今日はとにかく疲れた。

 

投げている時はそうでも無かったのだが。

こうして終わって落ち着いた状態になると、思い出したかのように疲れが来る。

 

 

本郷との投げ合いではずっと気を張っていたからな。

 

1点でも取られたら負ける覚悟だったから。

それだけに、力を入れて投げ続けていた。

 

 

でも、楽しかった。

あのピリピリとした空気感というか、本郷のような凄い投手と投げ合うという充実感。

 

それが、俺の力に変わっていたような気がした。

 

 

相手の打線も強いということもあり、かなり力を入れて投げざるを得ない。

だから、正直途中で変えてもらえて助かったところはあった。

 

そのために準備してもらってた沢村には感謝だな。

 

 

 

しかし、欲を言えば投げ切りたかったが。

こればかりはスタミナ管理ができなかった俺に落ち度がある。

 

まあこれは、夏までの課題だな。

 

 

新フォームに変えてから、やはり力の調整が難しくはなった気がする。

 

以前までのフォームよりも体を大きく使う、というよりは大きい筋肉を意識的に使うためか、以前までの力配分が難しくなった感覚はある。

それに加えて、今日のような試合展開になると中々。

 

トップギアで投げるといのもそうだが、やはりあの緊張感や圧力による精神的な面での疲労蓄積がある。

だから、今後はよりギアの調整も考えていかなければならないな。

 

 

特に夏になれば、今以上に気温という敵が現れる。

 

成宮や市大三校の天久。

仙泉の真木や薬師の真田などのような好投手との対戦でガス欠で投げれませんでは話にならない。

 

何よりそれでは、面白くない。

 

 

 

話が逸れたが。課題は見つかった。

 

こればかりは試合を重ねていく他ない。

特に強いチーム、全国レベルとの試合でなくては。

 

 

戻った後もやることばかりだな。

 

 

 

「なんかやりきった感出してるけどさ。」

 

「なんだ。」

 

 

横にいた御幸に声をかけられ、現世に意識を戻す。

そんなに呆けて見えていたか。

 

 

「まだ準々決勝だからな。巨摩大倒したからって終わりじゃないぞ。」

 

「わかってる。」

 

 

別に忘れてなどいない。

ただ、なんだろうな。

 

甲子園での一勝ってよりは、本郷に投げ勝ったっていう印象の方が強いから、次の試合に向けてというよりもまだ課題の方が先に来た気がする。

 

 

決して忘れてなどいない。

そしてやりきった感が出るのは仕方ないと思うのだが。

 

実際やりきった感出てるし。

 

 

しかし目指すべきは甲子園優勝だ。

全国制覇が悲願なのだから。

 

 

まずはしっかり休むこと。

来るべき決勝のために、この疲れた体をしっかり回復しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







更新頻度が落ちまくっていますが、一応元気です。
モチベーションも悪くないのですが、如何せん終盤にかけて話を練っているのもあり更新が遅くなっています。

ご了承下さい。

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