燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

136 / 282
エピソード133

 

 

 

 

 

 

春の甲子園も遂に終盤。

 

準々決勝の巨摩大藤巻との試合を終えて、遂にベスト4へと駒を進めた俺たち青道高校。

 

 

先の激闘もあり、疲労も溜まっているチームだが、それ以上にこの舞台で戦えているという充実感がチーム内の雰囲気をよくしていた。

 

 

「流石に次の試合は登板なしか。」

 

「まあ、お前の疲労蓄積に関しては未知数だからな。」

 

 

確かに。

フォームを変えてから、投手としてこなした公式戦はまだたったの2試合。

 

怪我のリスクが減り、肘にかかる負担が減ったのは確かだが。

先の巨摩大との試合でもわかったが、まだ力の加減や細かいところの制御ができていない。

 

その分疲労度も読めないところがある。

 

 

それは見ている周囲の人間もそうだが、俺自身もまだわかっていなかった。

 

 

あまり無理もできない。

 

それに今のところは、2年生2人の調子がとにかくいい。

沢村降谷が他のチームのエース級と遜色がないことから、任せることもそんなに抵抗がないのだ。

 

 

唯一の心配といえば、2人の投手か。

 

ノリと東条に関しては、まだ登板がない。

初戦の余裕がある時に投げさせておけばある程度の物差しになったのだが、こればかりは試合展開の都合上仕方ないだろう。

 

一つ負ければ終わりのサバイバル。

負けていい試合など一つもない。

 

しかし、彼らの力は必要不可欠だ。

 

 

どうしたものか。

 

 

「明日の先発は降谷。初回から全力で抑えに行き、展開に関わらず川上か東条への継投でいく。」

 

 

ほう、監督は完全にそう行くか。

 

確かに降谷としても、終わりが見える方が全力で行きやすい。

彼としては恐らく最後まで投げたいと思っているのだろうが、実際スタミナないしな。

 

多分、短期集中で一気に捩じ伏せて、あとは任せる。

 

降谷もそうだが、リリーフ2人も心構えができる分、準備をしやすい。

だからこそ、先に公表したのだろう。

 

 

「大野はセンター。投げさせるつもりはないが、念のため準備を怠らないように。」

 

「わかりました。」

 

 

エースだからな。

最後の最後で、支柱でなければいけない。

 

投げない予定だろうか、確実に準備はしておく。

 

 

続けて監督は、沢村にも目を向けた。

 

 

「沢村。」

 

「はい!」

 

「巨摩大との試合ではよく準備をしてくれた。次の試合でも同じように準備しておいてくれ。お前のその姿が、チームにとってもプラスになってくれる。」

 

 

確かに。

後ろの投手が準備してくれていると、先発としてもやりやすい。

 

それこそ沢村のように、いつでもいける準備をしてくれていると。

 

 

「YESボス!この沢村、いかなる時でも投げる準備は出来ています!」

 

「うむ。」

 

「なんなら次の試合の先発も!」

 

「それはない。」

 

 

コントか。

目の前で繰り広げられるやりとりに内心1人でツッコミを入れながら、俺は小さく溜め息をついた。

 

 

「頼りになるっても、あいつも変わんねーな。」

 

「まあ、性格的なところだからな。急に大人しくなっても、それはそれで不気味だぞ。」

 

 

隣の御幸の言葉に、俺も思わずそう返した。

 

 

 

 

 

次の対戦相手。

所謂、準決勝の相手は、白龍高校。

 

足を巧みに使い、積極的な走盗塁でかき回す走力野球で得点を奪ってくるチームだ。

 

 

隙を見せれば走り、前の塁を狙う。

そして、本塁を落としめるという、かなり尖ったチームだな。

 

 

要注意人物は、3番の美馬総一郎。

高い走力を誇りながら打撃能力も高く、とにかく得点に絡むことが多い。

 

これは塁に出てからホームに帰るというのもそうだが、チャンスでの集中力が高いことから自ら打点を上げることも多いのだ。

 

 

どことなく雰囲気は白州に近いところはあるが、走力は倉持並みと予想できる。

 

打撃のミート力で言えば、白州と同等か。

もしくはそれ以上だと思う。

 

 

「いい選手だな、俺はあまり相手にしたくないタイプだ。」

 

「クイックできねーもんな、お前。確実に走られる。」

 

 

俺はフォームの都合上、クイックがあまり早くない。

腰を捻る分、その時間差が発生するから。

 

案外、このチームであれば俺よりも沢村とか降谷の方が相性はいいかもしれない。

 

降谷も俺よりクイックが早い。

それに、クイックの時の方が力が抜けていいコースに決まりやすいため、うまく丸め込めるか。

 

 

あとは、御幸の肩による抑止力。

それがあるだけで、相手にかかるプレッシャーも増すはずだ。

 

 

打順は変えず、安定の布陣で。

ただ降谷を投手に持っていくことで、レフト守備の上手い麻生が入れる為、外野の守備力は相対的に上がりやすい。

 

この麻生も、打撃こそ物足りないが、守備の面で言えばこのチームでもトップクラスの技術を持つ。

 

一つ上の門田さんのような感じだ。

彼がいるだけで、守備の厚みはかなり良くなる。

 

 

上位打線はほぼ変わらず。

倉持、大野、小湊、御幸、白州、降谷。

 

ここの並びに関しては、監督も意図的に変えていない。

 

奇策もありだが、ここは甲子園。

安定感のある慣れた戦い方が、いいと思う。

 

一発勝負。

危ない橋を渡るベストではなく、安定感のあるベターを選ぶ方がいい。

 

 

特に、実力が拮抗している相手なら尚更だ。

 

 

 

「相手の白龍は、かなり動いてくるはずだ。塁上での揺さぶりは勿論、積極的な盗塁や走塁でこちらの守備の隙をついてくる。投手に関しては、まずはバッターとしっかり向き合うこと。そして内外野は連携をしっかりとること。少しの隙を見せれば付け入ることのできるクレバーなチームだけに、しっかり切らさずにいくぞ。」

 

 

まずは投手。

しっかりとバッターと向き合い、抑えること。

 

確かにランナーの動向は気になるが、それでは思う壺だ。

 

できるだけシンプルに、目の前からアウトを一つずつ奪っていく。

だからある程度割り切ってランナーを切り離すのも悪くないだろう。

 

 

白龍の常套手段といえば、上位打線が出塁してから揺さぶり、それで甘く入れば痛打。

守備の乱れや連携ミスを突いて一気に得点へと結びつけてくる。

 

だからこそ、バッター集中でいいのかもしれない。

 

 

特に降谷の豪速球と御幸の肩だ。

そう簡単には、走られまい。

 

 

あくまでシンプルに。

 

降谷自身も、難しく考えるよりもそういう感じの方がうまくいくと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、気になる相手の先発は、恐らくエースの王野。

 

高い制球力と左右の変化球でバンバンストライク勝負をしてくる投手。

 

タイプ的には若干真田に近いか。

変化球自体は大きい変化だが、投げ分けと攻め方に関してはかなり近しいものを感じる。

 

 

「今どき珍しいよな、シュートピッチャー。」

 

「ああ。シュートとスライダーの組み合わせ、最近はあんまし見ない。」

 

 

近年はそもそも主流が小さく高速変化するムービングボール。

それに加えて落ちる変化球が好まれる傾向にある。

 

それだけに左右の変化球で、それも大きい変化球を使うオールドスタイルは結構少なかったりする。

 

 

でも、ロマンはある。

 

 

 

 

できるだけ我慢。

こういう投手は、ポンポン打たされるとリズムに乗りやすい。

 

なので、追い込まれるまではしっかり見る。

 

多分、インコースで結構外してくれる。

 

 

まあ実際試合になって見ないとわからないけど。

これで絶好調でバンバンストライク先行でってなったら話は別だ。

 

 

ここまできたらあとはやるべきことをしっかりやることだ。

難しく考えず、できることをやる。

 

それが、勝利への近道かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。