燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

137 / 283
エピソード134

 

 

 

 

 

 

準決勝。

センバツもいよいよ終盤戦、トーナメントを勝ち上がった各チームが戦い、決勝の舞台に上がるチームを決定する。

 

 

カードとしては、下馬評通り…とは行かず。

 

まさかの西東京地区から、2校がベスト4まで上がるという、珍しい顔ぶれとなった。

 

 

Aブロックでは、優勝候補筆頭であった巨摩大藤巻を破った俺たち青道高校。

 

そして、熊本の強豪校である好永高校を、持ち前の機動力野球で破った白龍高校。

 

 

Bブロックでは、昨秋大阪桐生を破った勢いそのまま勝ち上がってきた清正社高校。

 

 

 

もう1校は、これまたダークホース。

 

 

都大会では、接戦の末に青道高校に惜敗。

しかし今大会では自慢の強打が大爆発し、ここまで大量得点で勝ち上がってきた、薬師高校がベスト4に肩を並べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、その初回。

俺たち青道高校と白龍高校の1戦は、いきなり動き始めた。

 

 

『狙い撃ちー!四番の一振で早速先制攻撃!白龍高校、今大会1番出場の美馬からのチャンスメイクで、颯爽と一点を奪いました!』

 

 

 

先頭からクリーンナップによる目まぐるしい攻撃で、初回からいきなり先制点を奪ったのは、白龍サイド。

 

ここまでクリーンナップである3番で起用されていた美馬を思い切って1番へ。

 

 

この采配がジャストフィットし、立ち上がりが不安な降谷をいきなり攻撃。

 

高めに浮いた149km/hのストレートを弾き返し、右中間を破るヒット。

そのまま快速飛ばして三塁を落し入れる。

 

続く2番はフォアボールを出してしまったものの、3番は空振りの三振。

 

 

しかし四番にヒットを打たれ、美馬はホームイン。

 

その姿は、正に速攻。

圧倒的なスピード感で、降谷はいきなり失点をしてしまう。

 

 

「あの速さは流石だな、美馬総一郎。」

 

「ああ。全く減速せずに三塁まで行ったからな。走塁意識もそうだが、打球判断もいい。」

 

 

横に並ぶ白州とそんなことを話す。

やはり、チームの柱はどこに入っても確実に存在感を放つ。

 

そしてこのチームの、白龍の柱は間違いなく、今日1番起用の美馬である。

 

 

さて、あっという間に失点を許してしまった降谷。

このあと5番にもヒットを浴びてしまい、なおも1アウトランナー、一三塁。

 

6番の犠牲フライで早々に2失点目を献上。

 

なんとか後続の7番を抑えて3アウト。

しかし、降谷にとっては厳しい初回の立ち上がりになった。

 

 

「やられたな、上手く。」

 

「ああ。さすが全国レベル、降谷の隙を完全につかれた。」

 

 

初回からしっかり力入れている。

しかし彼の元来の性格というか、性質というべきか。

 

試合開始直後は試合に入りきれていないからか、立ち上がりが悪い。

 

球が浮いたところを狙われて、失点。

修正しようとしたところで厳しいコースを単打で上手く繋がれてのもう一失点。

 

 

 

(流石は全国常連だな。詰めの甘さがまるでない。)

 

主軸のチャンスメイクから、クリーンナップで仕事。

そして、投手が、持ち直そうとしたところでダメ押し。

 

普段なら降谷も開き直って立ち直れるところを、一気に詰められた。

 

 

 

 

 

「やるな、白龍。大丈夫か、降谷。」

 

 

無言で頷く。

疲労感は見て取れないが、彼にとってもここまで上手く打たれたのは少しばかり意外だったのだろう。

 

制球は荒れてはいるが、球は悪くない。

 

むしろ冬を乗り越えて、前よりも安定感と最大出力は底上げされている。

その上で打たれているのだから、白龍のレベルの高さが窺える。

 

 

「すみません、先制点取られちゃいました。」

 

「いや、むしろよく2点で抑えたと思うぞ。それだけ完璧な速攻だった。」

 

 

それに。

 

 

「まだ初回だ。点は取り返す。」

 

 

白州がそう言うと、降谷もまた頷いた。

 

 

「はい、信じてます。」

 

 

まだ初回。

俺たちの攻撃は、これから始まる。

 

まずは、一点。

しっかり繋いで、俺たちらしい攻撃。

 

これで、少しずつ点をとる。

 

 

「だってよ、倉持。主将が啖呵切っちゃたから、俺たち出ざるを得ない。」

 

「ヒャッハー、言われなくてもだろ大野。」

 

 

屈伸をして、軽くバットを振る。

うちの1番バッター、リードオフマンの彼が打席に向かう。

 

 

「お前が出てくれないと始まらないぞ、通算二割五分。」

 

「うるせえ!公式記録はもっとたけえだろ!」

 

 

具体的にいえば、公式戦の記録でいえば.278。

決して悪い数字ではない。

 

が、不調の期間の印象が強すぎて打ってないイメージが先制している。

練習試合も含めて、夏場から秋口は本当に打撃不振だったからな。

 

打撃復調してからは、選球眼もよくなり打率も良くなってきた。

 

 

うちの誇るリードオフマンとして、完成してきたのだ。

 

 

 

 

初球、三塁方向。

叩きつけた打球は高々と上がる。

 

サードの猛チャージ。

左打席の倉持が一塁方向に向けて一気に加速する。

 

三塁手との競走。

 

一塁を踏むのが先か、グローブが音を鳴らすのが先か。

 

 

 

(さあ、見せつけてやれ。お前の。)

 

 

見せてやれ。

青道高校の、トップスピード。

 

 

「セーフ!」

 

 

審判が両手を横に広げ、倉持の足が勝ったことを明かす。

その瞬間、青一色のベンチは一気に盛り上がる。

 

 

「ナイスチー!」

 

「ナイスチーター!」

 

 

沢村が定着させた、このチーター呼び。

本人は悪態ついているが、まんざらでもなさそうである。

 

トップスピードは、白龍にだって負けない。

 

これがうちの、切込隊長だ。

 

 

 

 

さて、と。

せっかく出てもらったんだ。

 

俺も、なんとか返さないとね。

 

 

『2番、センター、大野くん。』

 

 

右手のバットを左手に添え、息をはく。

折角上位を任されているのだから、尽力させてもらう。

 

秋大で打者専念してから、打撃でも貢献したいと感じるようになった。

 

より強くなった、と言うべきか。

 

降谷が投げやすいように、ここは俺たちで一点返しておきたい。

 

 

 

ベンチサイドをチラリ。

まずは一球待てのサイン。

 

まあ、わかる。

 

初球、インコースのストレートを見逃してボール。

 

 

そして、倉持に目を向ける。

仕掛けるか。

 

あまり大きくないリード。

帰塁を考えなくても済むからこそ、思い切ってスタートを切ることができる。

 

 

恐らく、向こうは警戒している。

 

 

(そんなの気にする球じゃねーか。)

 

 

王野がモーションに入った瞬間、スタートを切る倉持。

速球、空振りでアシストをする。

 

二塁に悠々到達。

 

これで、チャンスを広げた。

 

 

カウントは1−1。

甘く入れば、狙う。

 

難しく考えるな。

反応できない球じゃない。

 

比較的シンプルなフォーム。

ノーワインドアップからスリークォーター気味に放る。

 

 

「おっ。」

 

 

3球目、外角から入ってくるスライダー。

低めに落ちるこのボールを、拾い上げた。

 

 

打球はセンター前。

 

合わせた打球が落ち、倉持が一気にホームへ帰る。

 

 

一塁ベース上、右腕を掲げる。

また、声援が届く。

 

 

「速いな、そちらの1番も。」

 

「打撃はからっきしだけどな。でも、足は負けてねーだろ、うちのもさ。」

 

 

一塁手と軽く挨拶を交わし、リードをとる。

 

さて、ここからクリーンナップ。

追加点を奪って同点、ないしは逆転したいところ。

 

 

しかし、ここはギアを上げた王野に抑え込まれる。

そのため、俺たちの初回の攻撃は一点止まりで終わってしまう。

 

 

とはいえ、点差は縮めた。

降谷の好投に期待をしつつ、2回へと向かう。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。