燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード144

 

 

 

 

 

新入生が入学、新戦力が加入して間も無くのこと。

センバツ終了からまだ1週間程度しか経っていない中、春大が始まる。

 

ようやく落ち着いてきた頃、このタイミングの大会。

中々厳しいところはあるが、やるしかあるまい。

 

 

対戦相手は、永源高校。

最速140キロのストレートを投げるエース率いるチーム。

 

 

 

さて、そんな今日の試合で先発するのは、この男。

 

 

「ガンガン打たせていくんで、バックの皆さん、よろしくお願いします!」

 

 

本来というか、基本的に大会の初戦の先発は俺が任されることが多いのだが、今回はセンバツ決勝で俺が投げたこともあり登板回避をした。

 

沢村もセンバツで登板した際にかなり通用していたのもあり、安定感を評価されてこの試合を任されたのだろう。

 

 

というわけで、今日はセンターの守りに入った。

 

 

「らしくいけよ沢村!」

 

「気楽にいけよー!」

 

「ヒャッハー!打たせてこいよ沢村!」

 

 

守備の声を一身に背負い、沢村が深呼吸をする。

 

 

 

この起用に応えるように、沢村が快投を見せる。

 

初回からフォアボールでランナーを出してしまうが、最速138キロのストレートとムービングファストでテンポよくアウトを奪っていく。

 

 

打線も甲子園の経験からかつながりを見せる。

 

初回からいきなり御幸のホームランで4点を奪うと、その後もしっかり得点を重ねていく。

 

 

4回までに奪った得点は12点。

 

援護を受けた沢村はさらにギアを上げる。

 

 

チェンジアップとストレート、そして手元で動くムービングを巧みに操り。

そして最後は、カットボール改で決める。

 

決め球を上手く制球。

そしてインサイドアウトサイドに投げ分けて、相手にマトを絞らせない投球で4回をノーヒットに抑える。

 

 

この5回の表を抑えることができればコールドという場面。

 

ここで監督から、声をかけられる。

 

 

「最後はエースであるお前が締めてこい。」

 

 

抑えとして、俺がマウンドへと送られる。

 

センバツから戻ってきて初のマウンド。

調子の確認も兼ねて、きっと送り出してくれたのだろう。

 

 

「どうする、夏輝。」

 

「最優先は確認だ。とはいえ、相手に敬意を払わなくては失礼というものだ。全力で応えよう。」

 

「OK。ツーシームは使っていく。一回だけだ、出力上げていけよ。」

 

 

御幸の指示に、俺が頷く。

そうして差し出された左手に、自分の左手を当てた。

 

やるべきこと。

 

しっかり、やり切る。

 

 

疲れは、大丈夫。

だと思う。

 

だいぶ休ませながら使ってくれたから。

 

 

 

(まずは、アウトローのストレート。)

 

 

初球、要求されたコースは外角低め。

 

最も痛打されにくいコースであり、最も打者が目測を謝りやすいコース。

できるだけ勢いのあるボールを、このコースに。

 

ノーワインドアップから、全身を三塁ベース側に捻転。

そこからさらに腰を捻り込み、トルネード。

 

全身の捻転の力とバネ、限界地で静止し力を貯める。

 

 

下半身、腰、広背筋。

大きな筋肉をそれぞれ集約し、指先へ。

 

その力を込めた一球を、放った。

 

 

 

投げ込まれたボールは外角低め一杯。

御幸が構えたコースのドンピシャ、寸分違わず決まった。

 

審判の右手は、上がった。

 

 

(手は、出さないか。)

 

(ってよりは、手が出なかったかんじだな。)

 

 

2球目、同じコースで少し外れているボール。

しかしさっきのボールに手が出なかった為か、手を出してしまう。

 

見逃しとファールで追い込んだ。

 

 

(何で行こうか。)

 

(まずはストレートの調子が見たい。”決める真っ直ぐ”で来い。)

 

 

指定されたのは、ギアを上げた決め球として使うストレート。

コースはやはり、外角の低め。

 

目標としては、手を出させないこと。

 

 

反応させる間も無く、ストライクコールを聞く。

 

 

狙ったコースは、1球目と同じ場所。

ギリギリのコースに、キメに行く。

 

 

「っし!」

 

 

最後は空振りの三振。

外角低め、少しうちに入ったボールにだったがこれについてこれず、空振り三振に喫する。

 

 

(うーん、目論見とは少し外れたけど。)

 

(やっぱりまだ、ギアを入れると制御し切れないかな。)

 

 

調子がいい時に関しては、最大出力でもピンコースにコマンドできるのだが、普段はやはりずれてしまう。

 

それこそフォーム改造してからアーム投げを若干取り入れたため、力を入れた際の制球は若干落ちている。

まあ、御幸も気にするほどじゃないとは言っていたのだが。

 

 

 

2人目の打者に対して。

ここでは、ストレートとツーシーム、そしてカットの投げ分け。

 

速いボールの投げ分けで、ストレートを視認させない。

 

 

初球、外からバックドアのツーシーム。

これが綺麗に決まるが、コールは鳴らずにボール判定。

 

 

(おっと。)

 

(沢村のカットボール改も、バックドアで取ってくれなかったからな。今日の審判は、入ってくるボールには結構厳しい。)

 

(ってことは、ゾーンから外れる球で行くか。)

 

 

外から入る球が厳しいとなれば、ゾーン内からボールに逃げる球。

 

見逃すボールから、空振りを誘うボールにシフトする。

 

 

次は高め、インハイのストレート。

これを振らせて1−1。

 

今度は同じ軸から、外に逃げるジャイロ回転のカットボール。

 

 

ほぼストレートと同じ軌道。

 

そこから吹き上がるように、スライダー方向に真横に変化する高速変化球で空振り。

 

 

(本当に思ったように振ってくれるなあ。)

 

(まあ、普通の選手じゃこうなるわな。)

 

 

 

カウントは1−2。

追い込んだのは、俺たちバッテリー側。

 

 

決め球は、低めから振らせるツーシーム。

 

ストライクからボールに逃げるこの変化球で投げ込みにいくも、これを見逃されて平行カウントとなる。

 

 

(見逃した、って感じではないな。)

 

(だな。)

 

 

これは見逃された、というよりは手が出なかったという感じか。

 

となれば、わざわざ捻りを加える必要はない。

 

 

 

最後はストレート。

インコース低め、膝下に決まるボールで見逃しの三振で終わった。

 

首を傾げて走るバッターを横目で見送り、俺は打席から一度背を向ける。

 

 

「ツーアウト!」

 

 

手を挙げて、アウトカウントを確認。

それに合わせて、バックも声をかける。

 

 

最後のバッターは、8番ピッチャー。

 

ここまで少しばかりの誤差はありながら、思惑通りにはなってくれている。

あとはそうだな、他の変化も試しておきたい。

 

 

チェンジアップと、カーブ。

さっきの打席で速い変化球で三振を奪ってきた。

 

この打席では、緩急。

 

速いボールと緩い変化でどこまでやれるか。

 

 

感触的にも甲子園でかなり通用したと思うこの二つの変化球を使っていく。

 

 

(さて、決め球はカーブで行くか。)

 

(了解。)

 

 

最初は、いきなりチェンジアップ。

速球狙いだったのか、完全に崩された打者は空振り。

 

 

(思っていたよりしっかりストレート狙いだな。)

 

 

本当はこういう打者にはツーシームとかで三振をとりに行きたいのだが。

 

まあ、試したいのはカーブとチェンジアップ。

となればそれを生かすストレートを一度見せておきたい。

 

 

2球目、高めストレート。

ボール球だが、バットが出てしまいファール。

 

 

3球目、前の一球よりギアを上げたストレート。

これが少し甘めのコースに入るが、前に飛ばずファールとなる。

 

 

(今のは打ち損じだな。またズレた、すまん。)

 

(許容範囲。まあこれで空振りが取れないあたり、正直疲れは取りきれてないかな。もしくは調子が上がり切っていないか。)

 

 

全開ではない、ということか。

たしかに感覚的にも、少し鈍い感じはしていた。

 

特に制球が安定していない。

 

 

まあ大荒れというわけではない。

コマンドでぴたりと決まらないだけで。

 

まあ確実に言えるのは、甲子園の時ほどの調子ではないということか。

 

 

(初戦でそれがわかっただけでも儲け物か。)

 

 

変化球が現状どれだけ通用するかは、正直このレベルだとあまり当てにならなかった。

だから現状の自分の状態を公式戦で実際に投げて確認できたのは良かったかな。

 

 

最後のサインに頷き、モーションに入る。

先ほどのストレートと同じようなコースから変化する縦のカーブ。

 

速球にタイミングが合っていた打者は完全に崩され、空振りの三振。

 

 

甲子園からの凱旋初登板は、三者連続三振で終え、同時に青道高校は春の東京都大会で4回戦目へと駒を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、また別の地点にて。

 

 

 

『ここはエースの真田、縦に落ちるツーシームでセカンドゴロ!薬師高校、甲子園からの凱旋初試合はなんと18得点で大量得点でその攻撃力を見せつけました!』

 

 

『空振り三振!最後は大きく曲がる縦のスライダーで切り捨てましたマウンド上の天久!』

 

 

『カーブ空振り三振!真木が最後まで投げ切り、仙泉3回戦進出!』

 

 

『最後は速いボールで三振!成宮鳴、最後は148キロ直球で捩じ伏せました!』

 

 

 

 

東京各所にて、それぞれのエースが躍動していた。

 

 

 

 

 

 

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