燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード151

 

 

 

 

季節は、春が過ぎて大型連休が始まる直前。

 

4月中は少し追い込むメニューに切り替えていたが、ここにきて少し調整に入る。

 

 

理由は簡単。

大会前の最後の長期休みには、練習試合が立て続けに計画されているからだ。

 

 

5日間で、8試合。

 

遠征と迎え入れてのもので4試合ずつと、かなりのハードスケジュールで試合を行う。

 

 

 

特に今回の目玉で言えば、この2校。

甲子園出場校である帝王実業高校と、同じく好永高校。

 

共にドラフト候補の強打者がいる打のチームであり、攻撃力が非常に高い。

 

 

帝王実業は、3番の友沢。

打って守って走れる、総合力に長けた選手であり、その全てが高い水準で纏まっている大型ショートだ。

 

ミート力、長打力、走力、守備力、送球力。

全てを兼ね備えた5ツールプレイヤーと、ドラフトでも期待の選手となっている。

 

 

好永高校は、4番の志麻。

天性のホームランアーティストであり、内外問わず高い弾道でスタンドへと運ぶ強打者。

 

高校通算60本越えの実績に加え、選抜でも4本塁打と状態も非常に仕上がっている。

 

 

恐らくどちらかは俺が、どちらかは降谷or沢村が先発するだろう。

 

状態的には、やはり沢村かな。

降谷も調子を取り戻してきているが、安定感に関しては沢村が上だから。

 

 

 

何にせよ、甲子園常連の2校と実戦ができるのは大きな経験だ。

 

強いチームと試合をして、勝ち切る。

それが夏に向けて、今最も重要な所になってくるはずだ。

 

 

「夏輝、ミーティング後監督室な。」

 

 

そんなことを考えていると、本当に呼ばれた。

 

まあ恐らくは、監督室でこのゴールデンウィークの試合での先発予定を知らされる形だろうな。

 

 

 

 

 

 

 

そして、練習が終わり、食事を済ませた俺。

御幸から言われた通り、俺は寮の奥に設置された監督室へと足を運んだ。

 

一度息を吐き、戸を叩く。

 

 

「三年の大野夏輝です。」

 

「入れ。」

 

「失礼します。」

 

 

簡潔に挨拶を済ませ、その部屋に入る。

 

数々の賞状と、トロフィー。

これまでの青道高校が歩んできた、軌跡。

 

 

横目でそれを見ながら、椅子に座る監督と相対した。

 

 

 

「最近調子はどうだ。」

 

「ええ、問題ないですね。肘のコンディションも悪くないです。」

 

「そうか。」

 

 

以前怪我をしてから、少し神経質になっている。

 

とはいえ今の話に関しては、本題に入る前の軽い前置きのようなもの。

そこで俺は、他に来るべく人物を待ちながら、首脳陣と軽く話をした。

 

 

 

「まあ、ここからハードスケジュールだからな。お前は心配いらないんだが、降谷と沢村は突っ走り過ぎない程度に見ておいてやれ。」

 

「はい。でも彼ら、結構考えてるみたいですよ。投げ過ぎないように自分で制御できてはいますね、前に比べたら。」

 

 

最近は、自分なりに考えている姿も見受けられる。

 

率先して一年生と組んだり、リードの意図を考えていたり。

引っ張ってもらう側から、引っ張る側になる自覚が芽生えてきたようには、感じる。

 

 

「どうだ、後輩の成長は。」

 

「どうだって。長期離脱していた俺なんか言える立場じゃないっすから。」

 

 

でも、まあ。

 

 

「嬉しい反面、負けられないですよね。」

 

「よく言うな。あれだけ圧倒的なもの見せておきながら。」

 

「彼らはあれでまだ発展途上ですから。いつ追い抜かれるか、怖いもんですよ。」

 

 

そう言って話をしていると、再びノックの音。

 

俺も音に釣られて目を向ける。

 

 

「沢村、入ります!」

 

「失礼します。」

 

 

ノリと沢村、そして東条が入る。

少し遅れて、降谷も程なくしてやってきた。

 

 

集まった理由は、他でもない。

 

ゴールデンウィークの、連戦。

これの先発スケジュールの確認だ。

 

 

 

まあ、簡単にまとめると以下の通りだ。

 

まず、先発は俺と沢村、そして降谷の3人。

あとはリリーフとしてノリと東条がフル回転する予定だ。

 

 

先述した通り、このゴールデンウィークに待ち構える大きな試合が2試合。

 

徳島県の好永高校は、3日目。

兵庫県の帝王実業は、4日目。

 

 

ちなみに俺は、好永高校で先発予定。

そして帝王実業は、沢村が先発をする予定だ。

 

まあ順番的には、俺、沢村、降谷で回していく。

 

 

連日で投げることもあるため、かなり負担もかかりやすい。

 

だからこそ、今回の俺の課題を克服するのにはもってこいだろう。

 

 

 

俺が選抜の時に感じた課題といえば、やはり力加減。

 

要所で力をいれ、余計なところではある程度力を抜きながら調整する。

ピンチや大事な局面ではギアを入れる、などなど。

 

 

夏大や甲子園の連戦を想定したこのスケジュール。

 

この機会にしか経験できないこともあるからこそ。

やはり、有意義な週間には、しなきゃダメだよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴールデンウィーク初日。

対戦相手は、神奈川の強豪チームである紅海大相良が相手だ。

 

この5日間の連戦の初陣を任されたのは俺、大野夏輝。

 

 

調子も悪くない。

 

身体もキレてるし、ここ最近は投げていても球が走っている感じがする。

 

 

相手は強打者の集団というよりは、シャープなスイングでヒットを繋いでいく打線だ。

 

そして、いやらしい打者が多い。

バットコントロールがよく、厳しいボールをファールで粘る技術もある。

 

 

 

「まあ、そういう指導をされているからな。」

 

 

落合コーチが、顎に蓄えられた小さな髭の山に手を当てながらそう呟く。

 

 

「指導していた側でしょう、あなたは。」

 

 

俺がツッコミを入れるように、そう言う。

何を隠そう、この人はこの紅海大相良で約20年コーチとして指導してきたのだ。

 

 

「俺は主にブルペンだったからな。」

 

 

あっ、そうですか。

 

まあ、関係ないか。

俺はただ、目の前の打者を抑えるだけだ。

 

 

とにかく今日の課題は、ギアチェンジ。

脱力と全力を使い分ける。

 

 

 

「あんまり飛ばしすぎんなよ。」

 

「わかっている。今日だけじゃないからな。」

 

 

ベンチを飛び出し、ゆっくりとマウンドへと向かう。

 

歩きながら、深呼吸。

帽子の鍔に手をかけ、情報整理をする。

 

 

一度帽子を外して、深く被り直すと、俺はその小さな山に足を踏み入れた。

 

 

 

最大出力の出し方は、もう掴めてきた。

あとは、それを調整する力。

 

なにも、打者によって変えるだけが方法ではない。

 

 

 

(少し大袈裟にやってもいいぞ。この手のチームの打者は、初球から手を出すことはまずない。)

 

(OK。)

 

 

打たれても経験だ。

今回は、お試しも兼ねてやる。

 

 

初球、ここはいつも通り。

俺の原点であり、俺の最大の武器であるアウトロー。

 

120キロのストレートをしっかり決め切り、まずは1ストライク。

 

 

同じようなボールを続ける。

後半から粘る打者というのもあり、わざわざ厳しいところを打ちに行くはずもない。

 

 

(まあ、今日はそっちの方が好都合。)

 

 

そう思い、俺は一息はく。

 

さて、ここが勝負。

コントロール重視から、一気にギアを入れる。

 

 

わざわざ遊び球を使う必要はない。

 

むしろ相手に隙を見せることなく、ねじ伏せる。

 

 

 

(今までは多少荒れてもいいって言ってきたけど。)

 

(ああ。これもまた、成長しなきゃいけないところだ。)

 

 

 

ギアを入れたからといって、アバウトなコースに投げるわけにはいかない。

しっかりと決め切る。

 

コマンドに決めてこそ、大野夏輝だ。

 

 

 

「っシ!」

 

 

投げ込んだボールは、同じく外角低め。

最後は132キロの直球で、当てにきたバットを掻い潜る。

 

空振りの三振で、先頭打者を切り捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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