燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード156

 

 

 

 

 

「しゃあ!」

 

 

グローブを叩き、声を上げる。

 

ホームベースからこちらに向かってくる御幸も右拳を握り込み、喜びをあらわにした。

 

 

タフな試合になった。

 

たかが練習試合。

しかし、この緊張感でしっかり勝ち切れたことが、まずは嬉しかった。

 

 

「ナイスピッチ。」

 

「らしくなく、はしゃいじまった。」

 

 

少し、気恥ずかしい。

しかし御幸は、そんな俺に茶化しながらも、笑って言った。

 

 

「俺としては、それくらい感情出してくれた方が見ていて気持ちいいぜ。嬉しい時は嬉しいって目に見えた方が、他のやつはわかりやすい。」

 

「そんなものか。」

 

「そんなもんだよ。」

 

 

そんなやり取りをしていると、遠くから近づいてくる影。

 

やけに、大きい。

青道にはいない、巨漢がこちらへやってきた。

 

 

「やられたよ。凄いな、君は。」

 

 

対戦相手の、志麻だ。

今日の成績は、5打数の無安打、3三振。

 

元々三振かホームランの打者だけに、当たらない日があるのは仕方ない。

 

その一発があるからこそ、攻めている側は怖いものだ。

 

 

今日抑えても、次はどうか。

甲子園で当たったとき、もしかしたら爆発するかもしれない。

 

 

「プレッシャーは感じていたからな。第一打席も最後の打席も、すごい緊張感だった。一発貰ってりゃ、分からなかった。」

 

「よく言う。完膚なきまでにやられた。また出直しだ。」

 

 

正直、この志麻はかなり警戒していたからな。

俺も力を入れていたし、打たれないように厳しく攻めていた。

 

 

「だが、面白かった。また会おう。」

 

「ああ。甲子園で会おう。次も打たせん。」

 

 

そう言って志麻は笑うと、踵を返してこちらに背を向ける。

 

気持ちのいい選手だ。

プレーも、人柄も。

 

サッパリしているその様は、どこか東さんを連想させる。

 

 

甲子園、か。

また、負けられない理由が出来たな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

この連戦の目玉である、もう一つの対戦相手が、やってくる。

 

相手は、帝王実業高校。

 

漫画のような名前のチームだが、その実力もまた甲子園常連の強豪校。

 

 

野手は3番ショートの友沢を中心とした、強力打線。

それぞれが各々の役目を全うする、まさに打線。

 

投手もエースである久遠。

キレのある横滑りのスライダーとストレートを組み合わせる、本格派右腕。

 

最速148km/hの直球と、ある程度コースを纏めることできる制球力もある。

 

 

 

強いて言えば、ピンチになると制球を乱すことがある、というくらいか。

 

いや、投手としてはかなり致命傷なのだが。

それを補う打力があるから、あまり気にならない。

 

 

 

しかし、やはり警戒しなくてはならないのは友沢。

チャンスメイクからスイープ、そして一発も狙えると、この打者を起点に攻撃も始まることが多い。

 

スイッチヒッターで左右を苦にせず、守備も上手く、走塁も上手い。

 

天才型ショートで、走攻守全て揃った5ツールプレイヤー。

 

 

なんだろう、うん。

 

 

「倉持さん。君より松井っぽい人来たよ。」

 

「っるせ!俺も自覚あるっつーの!」

 

 

冗談はさておき、とにかくこの友沢に打たせないこと。

 

あとは他の打者たちも厄介だからこそ、警戒しなくてはならない。

 

 

2番の蛇島は、ミートが上手く、去年の亮さんに近いタイプ。

打率も高く、カットやバントなど幅広いプレイに対応できる、器用な打者だ。

 

あとは、4番の猛田。

チャンスの場面は勿論、サヨナラの場面や一打逆転の場面など、勝負どころに強い打撃がウリのバッター。

 

 

ここ3人は、特に注意して投げたいところだ。

 

 

 

 

こちらの先発は、沢村。

入学してから最も成長著しいこの男が、全国屈指の強豪校に挑む。

 

 

初回からストレートを軸に攻める沢村。

 

今日は制球が冴えており、フォーシーム以外にもカットボール改とチェンジアップでもカウントが取れていた為か、かなり優位に進める。

 

友沢に対しても、アウトロー2球とインコースカットボール改で3球勝負で三振を奪うなど、この日の好調ぶりを表していた。

 

 

この日も打線は好調。

初回から倉持が出塁すると、いきなりチャンスを作って満塁。

 

そこから御幸が走者一掃のタイムリーを放って一気に先制をする。

 

 

さらに白州が追い討ち。

犠牲フライで追加点をとり、初回だけで一気に4得点を奪った。

 

 

しかし中盤、帝王実業の強力打線が沢村に牙を向く。

 

 

6回、ここまで被安打1のほぼ完璧な投球をしている沢村に対し、2番の蛇島が打席に入る。

ここは彼の特徴的ないやらしい打撃を見せる。

 

12球粘ったのちに、フォアボールで出塁。

 

嫌な形でランナーを許すと、ここからクリーンナップ。

 

 

友沢。

ここで彼が、決め球のカットボール改を弾き返し、チャンスを広げる。

 

ノーアウトランナー1、3塁。

 

 

さらにチャンスに強い、猛田。

できれば迎えたくなかった場面で、迎えてしまう。

 

 

しかしここは、相手も強豪校。

 

初回のお返しと言わんばかりに、猛田が見せる。

 

 

沢村の外のストレートを捉え、フェンスオーバー。

ここで勝負強さが出た猛田の3ランホームランで、点差を一点に縮められる。

 

 

 

しかし沢村、しっかりと立ち直って6回3失点で投げ切った。

 

そこから先はノリにスイッチ。

が、ここで変わったノリが誤算だった。

 

 

先頭打者にフォアボールで出塁を許すと、連打で一気に失点。

 

下位打線から繋がれて、逆転を許してしまう。

 

 

なんか、迷いがあるんだよな。

制球は安定しているのだが、球に力が乗っていない気がする。

 

 

9回時点で、6−4。

なんとか逆転したい俺たち青道の攻撃は、9番の川上から。

 

ここで監督は、代打に由井を送り込む。

 

 

現在のベンチ内でも屈指の打撃能力を誇る、今年の夏の代打の切り札候補。

 

身体は大きくないが確かな技術があり、高い出塁率を誇る。

かつ、下半身が強いから、長打も放てる。

 

 

ここは由井がしっかりとチャンスを広げ、ツーベースヒットでアピールをする。

 

 

上位打線、チャンスの場面で倉持。

なんとなく、対戦相手の友沢に対抗意識を持っている彼が、今日はバットで見せる。

 

珍しく長打を放った彼が打点をつけ、1点差に詰め寄る。

 

 

0アウトランナー二塁。

 

続く俺が進塁打を打ち、1アウト三塁。

ここからクリーンナップに入る。

 

 

 

しかしここは、小湊が空振りの三振。

抑えの石井の外のスライダーに手が出てしまい、やられてしまった。

 

 

追い込まれた、俺たち青道。

 

ここで打席に入るのは、信頼できる男御幸。

 

 

一発出れば逆転。

一打出れば、同点のチャンス。

 

打席に立つのは、チャンスに強い我らが主砲。

 

 

甲子園から帰ってきてから、一皮剥けた。

チャンス以外にも、ここで打って欲しいという場面で、打てるようになってきた。

 

確実に成長している。

 

 

そして何より。

昨年の4番と、姿が重なるようになってきた。

 

 

(俺が全幅の信頼を置いていたバッターは、ここで決めていたぞ。)

 

 

左の打席で、バットを掲げる御幸。

 

相手もまた、好投手。

ピンチで割り切り、完全に切り替えている。

 

 

失点しても、最後に締めればいい。

それくらいの心意気で、きている。

 

 

初球、インコースに威力のあるストレート。

少しシュートしながらゾーンに入ってくるボールを見送り、1ストライク。

 

 

2球目、真ん中のスライダー。

これに空振り、早くも2ストライク追い込まれる。

 

このスライダーとシュートするストレートのギャップが、中々やりにくい。

 

 

 

3球目。

今度はストレート。

 

少し抜けているボールを見送り、1ボール。

 

 

4球目、ストレート。

今度はインコースにしっかり決める。

 

御幸も捉えるが、一塁線切れてファール。

 

 

5球目、同じくストレート。

 

やはり球威で押してきている。

これもファールで、カウントはかわらず。

 

 

 

ここまで、あくまでストレート勝負。

 

このボールを当てにしているのか、はたまた。

決め球に使うボールのための、見せ球か。

 

 

おそらくは、後者か。

 

というよりは、御幸がそうするように誘導している。

 

 

敢えてストレートにタイミングがあっているように見せて、決め球のスライダーを狙っている。

 

 

 

猛田がインコースに構える。

そして石井が、投げ込んだ。

 

少し甘く入った、スライダー。

悪いボールではない。

 

最後はボールに外れるインコースに滑り落ちる決め球には十分。

 

 

 

 

が、これを御幸は狙っていた。

 

元々パワーもあり、狙い球を絞れば悪球でも長打にすることもできる。

そして、今回は狙い球が完璧にあっていた。

 

 

インローのボール球を捉えた御幸。

 

完璧に捉えた打球は悠々と外野フェンスに届き、逆転の一髪を放った。

 

 

 

2アウトランナー二塁。

ここで4番の起死回生の一発で、サヨナラ勝利。

 

甲子園レベルの強豪校相手に二連勝で、俺たちは残りの試合をこなしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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