燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード160

 

 

 

 

次の日。

俺たちはアメリカ代表との試合に備えて、大学チームとの練習試合を行う。

 

相手は強豪、明神大学。

 

フィジカル面ではやはり相手に分があるが、それはアメリカチームも同じ。

 

 

俺たちは俺たちで、それぞれできることをやり切る。

 

 

先発は、成宮と乾のバッテリー。

予定ではその後に俺、最後に真田と3回ずつ投げる。

 

 

午後の2試合目は、御幸と楊のバッテリー。

あとは他の東東京の投手が御幸と組んで、投げていく。

 

 

ちなみにポジションと打順は、以下の通り。

 

 

1番 中 カルロス(稲実)

2番 遊 白河(稲実)

3番 一 御幸(青道)

4番 三 長田(成孔)

5番 捕 乾 (帝東)

6番 左 星田(市大)

7番 投 成宮(稲実)

8番 右 真田(薬師)

9番 二 奈良(創成)

 

 

ライトには、打撃も買われて真田が。

俺は途中交代で、投手に入る。

 

まあ、このメンバーじゃ俺は打撃で戦力にはならないわな。

 

 

強力打線の中でもクリーンナップを任されている真田は、やはり打撃の面でもかなり評価されているのだろう。

 

 

 

 

さて、先攻は明神大学。

相対するは、実質エースである(というかそう言って聞かない)成宮。

 

威力のある直球とキレのある大きいスライダー、ストレート軌道から手元でストンと落ちるフォーク。

あとは打ち気を逸らすカーブ。

 

そして決め球、チェンジアップ。

 

最速150キロでさらに左腕という希少性。

さらにコントロールも悪くないという、高ステータス投手である。

 

 

まずは立ち上がり。

先頭打者に対しては4球目のスライダーを振らせて空振り三振。

 

続く打者に対しては、ストレートを詰まらせてショートゴロ。

 

さらに3番に対しては高めのストレートで力押し。

自分よりも強い打者に対して真っ向から勝負していき、捻じ伏せて見せた。

 

 

やはり、すごい。

力、そして完成度。

 

何より、気の強さ。

 

投手としてまた、大きくなりやがった。

 

 

「ナイスピッチ。球走ってんね。」

 

「おうよ!」

 

 

ウキウキでベンチに戻ってくる成宮。

よほど調子がいいのか、いい笑顔である。

 

 

さらに打線も好調。

先頭のカルロスがヒットで出塁すると、盗塁と白河のバントで早くもランナー3塁へ。

 

このチャンスで御幸が内に入ってくるスライダーを上手く弾き返して、早速打点を上げてみせる。

 

 

 

2回表、4番から始まる強打者たちに対して、成宮はチェンジアップを解禁。

 

今日最速の146km/hで力押しをしながら、最後は魔球チェンジアップで崩す。

 

 

さらに彼のチェンジアップ。

以前までのそれと比べると、圧倒的に落ちている。

 

イメージ的には、スクリューのような感じか。

 

ストレートと同じような腕の振りから、緩く、さらに利き手側に大きく沈む。

 

 

更に3回の表も下位打線に全く隙を与えない。

 

ストレートとスライダーを軸に大学チームを全く寄せ付けず、三者凡退で押さえ込んでみせた。

 

 

 

「大野、次の回から行けるか。」

 

「えぇ、勿論。」

 

 

次の回からは、予定通り俺。

 

乾と初めてバッテリーを、組む。

 

 

青道高校ではない。

他チームの監督から評価されて、呼ばれたこの試合。

 

出来ることなら、大会前の大事な時期。

手の内は見せたくないが。

 

 

「目の前であんなの見せられちゃあ、な。」

 

 

見せつけられたまま終われるほど、俺はできた人間じゃない。

 

 

 

追加点を奪った3回の裏を終え。

2-0で迎える、4回の表。

 

 

「高校チーム、選手の交代をお知らせします。ピッチャーの成宮くんに替わって、大野くん。7番ピッチャー大野くん。」

 

 

いつも通り。

フッと息を吐き、ゆっくりとベンチを出る。

 

 

「さぁ、お手並み拝見と行こうかね。」

 

「お前の後ろを守るなんて。」

 

 

稲実コンビに追い抜かれ、頷く。

 

他の内外野が俺を抜いて定位置に向かっていく。

それを見ながら悠然と歩いてマウンドへ赴いて行った。

 

 

玉座のような、小さな山。

今日の相棒が、そこに登ってくる。

 

 

「変化球中心で攻めよう。君にはその器用さがあるからな。相手は身体の強い大学生だ、慎重に来いよ。」

 

 

成宮のときはガンガン押してたんだけどね。

 

俺のときは、躱すピッチングか。

俺じゃあ、力不足というわけか。

 

 

ふーん。

 

 

 

「リードは任せる。」

 

「相手の反応を見て様子は見る。君の凄さを見せてくれ。」

 

 

頷き、乾が離れて行くのを待つ。

それを確認して俺は数回、マウンド上で跳ねた。

 

身体の調子は、良い。

 

調整してきているから。

仕上がりとしては、悪くない。

 

 

右肩を大きく二回し。

 

すると馴染み深いいつもの女房役の声が、近くで聞こえた。

 

 

「おい。」

 

「なんだ。腹は立ててねぇぞ。」

 

「言ってる時点で腹立ててんだろうが。」

 

 

口元を、普段とは違う形状のグローブで覆う御幸の姿を見て、俺は溜息混じりに答えた。

 

 

「わかってる、ちゃんと…」

 

「やられっぱなしで終わんなよ。お前は甲子園優勝投手でウチのエースなんだからな。」

 

 

そう言って、御幸が俺の背中をぽんと叩く。

 

思ってもみなかったその返答に、俺は呆気に取られてしまった。

 

 

「日和んなよ、バカ。」

 

「黙れ、ファースト御幸一也。」

 

「へぇへぇ。」

 

 

全く。

 

しかし、さっきよりも何となく、背中の方からジワジワ熱を感じる。

 

 

言いたくはないが、やはり俺の乗せ方をわかっている。

 

言いたくはないが。

 

 

 

目を瞑り、胸に手を当てる。

深く深く息を吸い込み、雑念とともに全てを吐き出す。

 

迷いも、弱さも。

 

今は、ない。

 

 

 

「敵わないな、お前には。」

 

 

そう呟いて、俺は目を少しずつ開いた。

 

 

 

正面にいるのは、いつもとは違う捕手。

しかし都内でも有数の、名捕手。

 

相棒であり、敵だ。

 

まずはこいつから、認められる。

 

 

打席に立つのは、好打者の1番。

相手は大学生とはいえ、打たれるわけにはいかない。

 

意識している相手が、完璧に抑えているからな。

 

 

ここは、ねじ伏せる。

 

 

 

 

要求されたコースは、外低めのツーシーム。

 

替わりっ鼻を狙われている。

だからこそ、打ち気の打者に対しては、逃げるボールで振らせる。

 

 

これは狙い通り、完全に振らせて1ストライク。

 

 

 

2球目も、同じようなボール。

しかしこれは見られて、ボールとなった。

 

 

3球目。

二つの見せ球があったからこそ、光るストレート。

 

同じ視点で今度は伸び上がる真っ直ぐで、打者も反応できず見逃した。

 

 

追い込んだ。

要求されているのは、高めの釣り球。

 

おそらくは、見せ球。

 

最後に投げる低めの決め球を有効に活かすための、ボール。

 

 

 

高めのボールゾーンのストレート。

 

意図は、わかる。

しかしその予測を超えなくては。

 

 

(そうじゃなきゃ勝てないことは、わかっている。)

 

 

高めのストレート。

最後はギアを入れた132キロの直球を、振らせた。

 

 

鈍いミットの音。

 

同時にぱさりとかぶっていた帽子が落ち、勢いのまま右足を振り上げる。

 

そして、振り遅れた打者と。

捕手乾を、見下ろした。

 

 

2番に対しても、ストレートでカウントを取ったのち、最後は左打者のインコースを抉る高めのカットボールを振らせて空振り三振に切ってとる。

 

 

 

「ナイスボール!」

 

 

乾から投げ返された白球を受け止め、右手の小指と人差し指を立てる。

 

ツーアウト。

ここまできたら、初回はねじ伏せたい。

 

 

右の大砲。

打席に立つのは、まさにそういうにふさわしい。

 

 

厳しいコースをついていき、追い込んだ。

カウントは1ボール2ストライク。

 

ここで乾の構えたコースとサインに、俺は笑って頷いた。

 

 

 

大きく腰を捻り、捻転。

全身を縦回転して、白球に強い力を込めた。

 

 

打者のバットは、出ない。

 

小気味良いミットの破裂音と共に、審判の右手が上がる。

 

 

「っしゃあ。」

 

 

小さく拳を握り込み、最後のアウトを奪った俺はマウンドを降りた。

 

 

「ナイスピッチ。」

 

「流石、青道のエースなだけある。」

 

 

ゆっくりとグラウンドを横断する俺に、声。

それを帽子の鍔に手を当てて答えつつ、ベンチに戻った。

 

ドリンクに手をかけ、ベンチに座る。

 

ふっと一息ついた俺の横に、乾が腰掛けた。

 

 

「すまない、大野。俺は君を少々過小評価していたみたいだ。失礼なことをしたな。」

 

「俺もムキになっていないといえば嘘になるが、どうあれ今の捕手は君だ。それに応えるのが、投手だろう。」

 

 

俺がそう返すと、彼は笑って答えた。

 

 

「配球を少し変える。力押しで、真っ向からねじ伏せる。ついて来てくれるな?」

 

「リードは任せると言った。力は尽くす。」

 

 

そう言って2人で、右拳を突きあわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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