燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード165

 

 

 

 

6回の裏。

 

 

「ッシュ!」

 

 

コンラッドの投げた初球。

外高め、甘く入ってきたこのボールに対して逆らわず右へ。

 

逆方向に飛んだ打球はライト前。

 

 

しかし圧巻だったのは、その後のプレー。

 

ライトのゴロ処理が少しもたついたのを判断すると、すかさず二塁へ。

慌てたライトの送球が逸れたのも重なり、単打の当たりで二塁まで陥れた。

 

 

「あの当たりで二塁行くのかよ。」

 

 

 

ここまで来ると、最早呆れてくるスピードである。

 

味方だから、心強い。

しかし一ヶ月後にはこれが敵になるのだから、笑えない。

 

そんな事を考えながら、大野は苦笑を浮かべた。

 

 

 

 

続く2番の白河は、バントの構え。

 

試合も終盤に近づいてきたこの場面、久しぶりに出たノーアウトのランナー。

 

 

さらに言えば、コンラッドと相対して初のランナーである。

 

 

この大事なチャンスの場面。

順当に、堅実にいくのであればバントで三塁に進めるのがセオリーである。

 

 

『やはり、スモールベースボールか。なら、アウト1つ頂く。』

 

 

捕手のカーライルがバント処理に動こうとした矢先。

白河がバットを引き、振りかぶる。

 

そして、高めの直球に対して振り抜いた。

 

 

バントでチャージしてきたコンラッドの頭を超え、二遊間を抜けるヒット。

 

当たりを見たカルロスは三塁を蹴り、更に加速していく。

 

 

『おいおい、ジョークだろ!?』

 

 

慌ててセンターから返球が来るが、間に合わず。

二塁ランナーのカルロスがあっという間にホームに滑り込み、追加点となる2点目を奪う。

 

更に、打った白河もすかさず二塁へ。

 

 

(あの当たりで帰ってくるか。隙がないな。)

 

 

これに加えて、一発のある山岡もいる。

 

投げては、エース成宮鳴。

守備も鉄壁。

 

やはりこの総合力の高さが、稲実の強さだろう。

 

 

(これが、稲実の野球。俺たちが負けた、そして俺たちが勝たなきゃいけない、チーム。)

 

 

未だ勝てていない、唯一の相手。

夏の、最後の砦。

 

その高さに、大野は息を呑んだ。

 

 

 

 

しかしこの圧巻の速攻に驚嘆したのは、眼前の敵。

アメリカチームもまた、この稲実の一二番コンビの質の高さに、最早リスペクトすら感じていた。

 

 

『ジャパンの選手はエンジン積んでるやつまでいるのか?』

 

『全くだぜ。』

 

 

緻密ながらも、大胆。

理論に乗っ取った、技術と能力によるシンキングベースボール。

 

ただの細かいスモールベースボールではない。

 

 

『これが、ジャパンのベースボール…いや、日本の”野球”か。』

 

 

ベースボールと、野球。

異なる戦略だからこそ、面白い。

 

そして、アメリカチームのナインが、笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続けて打席に入るのは、3番の御幸。

ここまで左バッターはまるで手が出ていないコンラッドに、何とか食らいつきたいところ。

 

 

(とはいえ、あの角度は左にゃちょっときついよなぁ。)

 

 

そんなことを思いながら、ネクストバッターズサークルから立ち上がる。

 

するとその後ろから、というよりベンチからの聞き慣れた声に、思わず振り返った。

 

 

 

「んだよ。」

 

「わかっているとは思うが、簡単に終わるなよ。」

 

 

大野がそう言うと、御幸は思わず眉を動かした。

 

 

「青道のチームはな、白州が率いて、俺がエースで。それで、御幸一也が4番のチームだからな。打線の顔であるお前が簡単にやられて舐められちゃ承知しない。」

 

「わかってるよ、馬鹿。」

 

「足元見られんなよ、青道の主砲。」

 

 

稲実の一二番は、らしい攻撃で見せつけてきた。

ならば、こちらも。

 

そのチームの顔である主砲が、ある種やり返さなければ。

 

 

しかし、相手はコンラッド。

サイドスロー気味のフォームから最速150km/h越えのストレートと切れ味鋭い真横に曲がるスライダーを操る、左腕。

 

一般的に左対左、特にスライダーのように逃げるボールがある場合は、打者が不利になりやすい。

 

特にサイドスローが相手となると、リリースされたボールは見えにくい上に、角度がついて打ちにくさに拍車をかけるのだ。

 

 

 

しかし。

 

 

(ったく、お前に言われちゃあな。)

 

 

 

御幸は、コンラッドを見据えて笑った。

 

ここまで青道が強く、そして甲子園を制したのは間違いなく、この大野夏輝というエースの存在があってこそだ。

 

 

それこそ御幸自身も本塁打や打点で貢献していたが、それでも数多の0を築き上げてきたこのエースの存在には、頭が上がらない。

 

 

何より、今の強い青道を作り上げた最大の功労者は、間違いなく大野だ。

 

怪我をしている期間も他の投手から、悩める野手まで。

できることを最大限やってくれたからこそ、気にかけてくれたからこそここまで強いチームになったのだ。

 

 

 

そんな彼に、チームの象徴だと言われたら。

 

それはもう、やるしかないのだ。

 

 

(そうだな、初球はスライダーも有り得るけど。ここまで右にストレートを打たれてムキにならないような、そんな優しいピッチャーには見えないし。)

 

 

どちらかというと、ガンガン攻めてくる。

 

さらに言えば、左打者に対しては見下ろすように強気にストライク勝負で来る。

 

 

しかし、捉えられているのは外の真っ直ぐ。

お世辞にもコントロールがいいとは言えない彼の、高めに浮いた外の球を弾き返されている。

 

 

(開き直って高めで空振りを奪いに来るか。スライダーで先手を取りに来るか。これに関しては、キャッチャーの性格が出るかな。)

 

 

前者なら、強気。

後者なら、相手に合わせるタイプ。

 

 

とは言え、どちらもコンラッドの決め球。

 

二択とはいえ、優劣は特にない。

 

 

 

傾向を見るに、前者か。

そうヤマを張り、御幸がバットを掲げた。

 

狙い通り、初球はアウトハイのストレート。

 

 

しかしこの力押しに振り遅れ、前に飛ばずファールとなる。

 

 

(強。てか、ギア上がってね?)

 

 

明らかに、球の力が強い。

先程の2人の時よりも、確実に。

 

失点して、目覚めたか。

 

 

どちらにせよ、前の回。

それこそ、直前の2人の打者よりも確実にいい球が御幸に襲いかかっていた。

 

 

 

(けどまあ、大方予想通りね。てなると、今の反応を見るにストレート狙いってのは相手も分かったはず。それでいて打てていないのであれば、ほかの球は決め球に使いたいと思うはず。だからここは…)

 

 

2球目。

外に逃げていくスライダーを見送り、1-1。

 

 

 

(これでスライダーは見切れてると判断するかな。そう思ってくれると助かるんだけど。できれば、甘い変化球狙いとか勘違いしてくれれば超やりやすい。)

 

 

 

3球目。

同じようなスライダー。

 

これも見送り、御幸は息を吐いた。

 

 

 

カウントは2-1。

ボール先行で、打者有利のカウントとなる。

 

ここまでストライクにどんどん放ってきていただけに、バッテリーも少し嫌な感覚を覚えていた。

 

 

 

狙い球は?

何で抑えるか?

 

ここまでの集中力と余裕を見ている限り、中々簡単に打ち取れる相手では無いことは確か。

 

 

『迷うことは無い。ここはフォーシームだ。』

 

『スライダーの送り方を見る限り、狙いは変化球だろう。ここは強気に、カモンコンラッド!』

 

 

ここでバッテリーが選択したのは、やはりストレート。

 

この打席全く着いてこれていないこのボールで、思い切って攻め立てる。

 

 

 

ランナーはいながら、足を振り上げるコンラッド。

 

その長い手足を目一杯大きく使い、全身を横回転。

 

 

大野の重力と縦横の捻転とは違う。

身体のバネと長い手足を使った横回転は、純粋にコンラッドのみの恩恵。

 

彼だけにしかできない豪快なフォームで、唸りを上げるストレートが御幸に向かってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、これを。

 

 

(狙い通り、待ってたよそれ!)

 

 

スライダー狙いに対して、ストレート。

変化球に偽造して振り遅れを狙いに行った、左バッターの外低め。

 

 

威力のあるこの真っ直ぐを、御幸は強く振り抜いた。

 

 

外の難しいボール。

だが少しシュートしながら入ってきたこの球を逆方向へ。

 

高い打球はレフト後方。

 

入るか際どいところだが。

本人は確信して、ゆっくりと一塁方向へと歩き出した。

 

 

 

『Oh my God』

 

 

 

カーライルが思わず呟いた嘆きと同時に、白球はスタンドへと入り込んだ。

 

追加点となる2ランホームラン。

これが勝負を決める一打となり、4-0。

さらにアメリカチームを突き放して見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






甲子園での経験等もあり、御幸もかなり進化してます。

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