燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード167

 

 

 

 

甲子園まで、大まかなイベント事は終わった。

夏も近づき、甲子園に向けて最後の追い込みをかける。

 

 

「そうか、もうそんな季節か。」

 

 

ベンチメンバーの発表まで、あと1週間。

つまり最後の大会に出場する刺客が、選定される。

 

 

 

 

最後の大会に選ばれる、20人のメンバー。

 

3年生だから、最後の大会だからと言って、選ばれる訳では無い。

あくまで実力の上で、選出される。

 

 

2年間、文字通り血の滲むような努力をしても、届かないこともある。

 

 

残酷な話かもしれないが、それが強豪校。

甲子園を目指す、この青道高校なのだ。

 

この部員100人以上の中から選ばれる20人を、精鋭として最後の大会に臨む。

 

 

 

 

「御幸も戻ってきてからより打撃に磨きがかかったな。相当感化されてきたな?」

 

 

俺が打撃練習待ちをしている中、ゲージ内でシート打撃を行う御幸。

それを見て、落合コーチがそう言葉を漏らした。

 

 

「そうっすね。」

 

 

これから戦う相手を直に見たからこそ。

より具体性を帯びると、自然と意識も変わりやすい。

 

他校のライバルの、それこそ中心選手が集まった今回の試合。

 

張り切るには、申し分ないキッカケである。

 

 

 

「でも、それだけじゃないと思いますよ。」

 

「ほう。」

 

 

 

あれでやはり、責任感が強い。

 

俺がエースとしてチームを背負うように、あいつも4番として背負っている。

 

 

それこそ、最後に選手として出られない彼らの為にも。

最後まで勝ち続けなければいけないことを、知っている。

 

 

背負っているのだ。

ナインではなく、青道高校の4番として。

 

一緒に背負おうと、言ってくれたからな。

 

 

 

 

「奴らしいと言えば、らしいな。」

 

「あれで責任感強いっすからね。前キャプテンには主将に推薦されてたくらいですし。」

 

「ただでさえイケメンなくせに、んなキザな感じじゃあ、ずるいよな。」

 

「男前ですよね。」

 

 

 

そう最後に残して、俺は打撃練習に入る。

 

試合では、他の野手に変わって外野に入ることが多い。

エースとしてグラウンドにいるということに意味があるからこそだが。

 

 

しかしそれは、他を押し退けて試合に出場しているということ。

 

投手だから打てませんでは、理由にならない。

せめてグラウンドにいるときは、バッターとしても責任を持ってプレーしなければいけないから。

 

 

 

バッティングピッチャーの東条。

彼の低めのストレートを右、左、センター返しと弾き返していく。

 

一発を打てるパワーもなければ、それをして中途半端な打撃をするのも勿体ない。

 

 

俺に出来るのは、チャンスメイク。

小さなヒットで頼れる後ろに任せる、接着剤として。

 

内野を超えるヒット、若しくは外野を抜けるヒット。

 

出来ることを、やる。

それが秋から続けてきた、俺の攻撃面での役割。

 

 

とにかくランナーとして出て、打点に貢献する。

ホームランを打たないと割り切って、ヒットに極振りしてきた。

 

 

 

最後までそれを貫く。

投打ともに、自分らしく。

 

俺がここまで意識してきた、最も大事にしてきたことだ。

 

 

 

何より。

俺は投手であり、エースだ。

 

チームに勝ちをもたらす投手だ。

 

 

投げて勝つのが俺の仕事であり、俺ができることだ。

 

 

御幸のようなカリスマ性も、白州のような統率力もない。

ただ俺が投げるその闘志で、チームを勢いづける。

 

それこそが。

俺という投手に任された、役割だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

週末。

夏のメンバーが発表される前の最後の週末の練習試合。

 

 

この土曜日の対戦相手は、東郷学園。

 

オーダーを変えての2試合。

その1試合目の先発を任された。

 

 

 

その日のオーダーは、いつもと変わったオーダー。

 

ショートに2年の高津、セカンドに1年の瀬戸。

外野には三村が入る。

 

 

「さて、今日はどうする。」

 

「アピールの場だからな。全力で行く。」

 

「おう。本番のつもりで配球するからな。」

 

 

 

御幸の言葉に、頷く。

 

前回はエースを任されたとはいえ、まだ不透明。

 

沢村も降谷も、俺と御幸が留守の間チームを鼓舞して頑張っていた。

だからこそ、負けられない。

 

 

当確ではない。

俺も選ばれるためには、ここで発揮しなくては。

 

 

 

 

この日は初回からガンガン攻めていく。

課題であった力配分もうまくいき、かなりスタミナに余力を残すことができていた。

 

ランナーを出したら力を入れるピッチング。

 

それがうまくいき、7回時点で無失点の投球で試合を作る。

 

 

 

しかし8回。

0アウトの場面から、ヒットとショートの高津のエラーでランナー一、二塁のピンチを作る。

 

 

「まあ、仕方ないな。」

 

「これを背負うのもエースだろう。」

 

 

 

味方のミスもまた、ないことはない。

それこそレギュラーの二遊間2人がおかしいだけで、高校野球だと割とエラーはある。

 

しかしエースならば。

 

 

 

「わかってんじゃん。失点すんなよ。」

 

「ギアを上げる。ねじ伏せるぞ。」

 

 

それを取り返すことも、帳消しにすることもできる。

 

 

 

このあと上位を連続で三振に切ってとり、完全にねじ伏せる。

 

 

2番に対しては、ストレート2球で追い込むと、最後はインハイ吹き上がるカットボールで空振り三振。

 

3番に対しては、カーブで目線をずらしながらバックドアのツーシームで見逃しの三振。

 

4番に対しては、外角低めの出し入れでストレート勝負。

最後まで真っ直ぐを続けて、最後はチェンジアップで完全に崩した。

 

 

要した球数は、11球。

 

ストレートとツーシーム、そしてカットボール。

さらにはカーブやチェンジアップといった遅球など持てる球を駆使して三者連続三振に切り落として見せた。

 

 

今日は調子自体は、あまり良くない。

まあ、ストレートだけで三振を奪えない日、っていう感じだな。

 

他の変化球もまだ制球できるし、キレ自体は出てるから三振は取れるけど。

 

 

 

俺はここまで。

最後の9回に東条が登板し、1回を三者凡退で抑えて試合終了。

 

打線もしっかりコンスタントに得点を重ねていき、7得点。

7−0で快勝することができた。

 

 

 

この日の2試合目。

 

先発の川島が3回に捕まり、一気に4失点を喫する。

 

 

しかし川島を援護しようと打線が奮起。

レギュラー陣がしっかりと得点を重ねていき、8回に逆転する。

 

 

さらには4回から引き継いだ川上が残りを投げ切って1失点と好投。

 

試合自体は7−5でこの日2連勝で東郷を下した。

 

 

 

 

次の日は、埼玉の強豪校である永倉と戸高西を迎え入れる。

 

永倉の先発は、降谷と由井のバッテリー。

この日は無駄な力が抜けており、安定した投球を披露する。

 

 

低め中心の配球で、要所要所で高めを使う攻めで試合の流れを作った。

 

 

8回からは東条と奥村のバッテリー。

 

これも丁寧に低めを攻めながらストライクゾーンでガンガン勝負していき、少ない球数でリズムを作る。

彼らしい投球を奥村も引き出し、いいリズムで終盤を無失点で切り抜けた。

 

 

この試合は4−2で勝利。

御幸を休ませながらもしっかりと試合を展開する層の厚さを見せた。

 

 

 

 

 

続く2試合目、戸高西の試合は沢村ー奥村のバッテリー。

 

この日は変化球が少し暴走気味だったものの、ストレートとチェンジアップでしっかり締め直して試合を組み立てる。

 

 

インサイドとアウトサイドで目線をずらし、相手打者にマトを絞らせない。

さらにピンチになると、インコース中心の強気なリードで沢村を乗せていく。

 

 

さらに中盤からは、カットボール改とスプリームも織り交ぜて三振も奪っていく。

 

彼固有の変化球もしっかりと決まり始めて、いい形で7回まで投げ切った。

 

 

 

 

「いいな、奥村。東条の時もそうだったが、沢村の良さをうまく引き出せている。」

 

「コミュニケーションもしっかりとってるからな、案外。」

 

 

 

 

どことなく御幸に似ているなと感じながら、俺は投球練習に入った。

 

 

8回からは、俺がセンターからマウンドへ。

奥村と実践で初めてバッテリーを組む。

 

 

 

「連投のせいか、あまりストレートが走っていません。感覚はどうですか。」

 

「おっしゃる通り、あまり良くはない。カットツーシームはしっかり変化する。カーブは悪くないかな。」

 

「わかりました。ストレートは見せ球で、変化球中心で組み立てましょう。」

 

「OK。その辺は任せるさ。」

 

 

 

残りの2回。

 

カウント球にもツーシームを混ぜながら、カーブや小さいカットで打たせて取るピッチング。

さらに途中で織り交ぜたストレートを詰まらせて打者にマトを絞らせない。

 

 

打者8人に対して、被安打2の無失点。

奪三振こそ一つだったが、しっかりと抑える。

 

試合は6−1で快勝し、この週末の試合を四連勝で飾った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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