燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード170

 

 

 

 

恒例の夏合宿も、中盤。

 

徐々に疲労回復と身体への負荷のバランスが崩れてきて、疲れが蓄積してきた頃。

 

 

それぞれ選手たちの動きも、次第に重くなってくる。

例年であれば練習試合に向けて投手は調整練習に入るのだが、今年は少し変えてみている。

 

 

「残り半分。ペース落とすなよ。」

 

「ウッス!」「はい。」

 

 

ダッシュトレーニングやサーキットなど、全身運動。

 

夏場で尚且つ身体の筋疲労がピークに来ているこの状態で敢えて高強度のトレーニングを加える。

 

 

意図としては、身体が思うように動かない状態でも最大限、その時点での最大出力を出せるようにする。

 

身体がきつい状態で単純且つ高強度、それでいて全身を使う運動をすることで、無理やり限界値での力の引き出し方を身体に覚え込ませるのだ。

 

 

夏場の甲子園、終盤になれば身体は疲れる。

 

そうした時にでも効率的に力を発揮できれば、終盤に打ち込まれるという事故的なリスクも減るのだ。

 

 

 

 

とはいえ、諸刃の剣。

身体が疲れている状態でトレーニングをする訳だから、注意しなければ容易に怪我をする。

 

だからこそ、俺だけでも良かったんだけど。

 

 

「夏輝さんがやってるのに俺たちがやらなきゃ、エースは奪えませんからね!」

 

 

そんなことまで言われちゃ、やらざるを得ない。

 

あとは疲労と身体の管理を、落合コーチにも見てもらいながら注意して行う。

 

 

 

「降谷もだいぶ着いてこられるようになったな。」

 

「そう、ですか。」

 

 

まあ、最初が最初だからな。

 

体力がなくて直ぐにバテていた彼も、気がつけばランメニューに着いてこられるようになった。

 

 

スタミナもついて、長いイニングも投げられるようになった。

うちは継投が中心だからわかりにくいが、それでも終盤までパフォーマンスが落ちない降谷と沢村は、かなり体力も出来ている。

 

 

それに加えて、コントロール。

 

走り込みとトレーニングのお陰か、フォームが安定して前よりも制球が乱れにくくなった。

 

 

今も荒れることには荒れるが、そこまで。

試合を壊すことは、無くなった。

 

 

 

「前に比べて、ということだ。ほら、行くぞ。」

 

「…はい!」

 

 

そうして、俺は再び走る。

 

後ろのふたりに、負けないように。

そして、彼らの中で絶対的な存在でいられるように。

 

 

近くては、ダメなのだ。

圧倒的で、目指すべき道でなくては行けない。

 

超える壁が容易く越えられるようでは、彼らの成長には繋がらない。

 

2人のエースを伸ばす最後の壁として。

それが俺の、青道のエースとしての最後の役目の1つだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の合宿も中盤。

過酷な夏を戦うための最後の追い込みであり、最後まで戦い抜くための体力を作り上げる大事な期間。

 

追い込みということもあり、この中盤までになると皆が体力が削られている。

 

 

特に1年生は顕著。

初日から着いていくので精一杯だった彼らの身体はボロボロ。

 

日を追う事にきつくなって行くメニューに、軽く絶望すら感じていた。

 

 

 

さらに彼らを驚嘆させたのは、他のチームメイト。

特に投手たちの練習メニューを見て、彼らは息を呑んだ。

 

 

 

「あの人たち、夜も走り込んでるのに昼間もどんだけ追い込むんだよ。」

 

 

 

無論、大野を筆頭にトレーニングをする沢村たちである。

 

夏にも負けない、特に運動量の多い投手たちだからこそ、この時期の昼間に追い込みをすることに意味がある。

 

 

 

「化け物だわあの人ら。」

 

 

思わず、瀬戸はそう漏らした。

 

元々同部屋ということもあり、早朝から夜遅くまでトレーニングに勤しんでいることは知っていた。

 

だからこその実力と、試合の時のエースとしての立ち振る舞いがあるだと言うことも分かっていた。

 

 

しかし、ここまでとは。

はっきり言って常人が行っている練習量とは思えなかった程であった。

 

 

 

そしてそれに着いていく降谷と沢村。

他のチームでもエース候補と言われる所以は、この大野に着いていってるからこそなのだろう。

 

超えるべき壁が高いから、それを超えるために努力をする。

 

それに追いつかれない為に、エースもまた壁を高くする。

 

 

 

正に、切磋琢磨。

これが日本一のチーム。

 

そして日本一の投手陣なのだと、1年生の面々もまた再確認させられた。

 

 

夜のランメニューを終えても尚、練習をしようとする彼らの姿。

 

しかしそれで日和るようでは、今のレギュラー陣に食い込むことは出来ない。

そして割っていけるからこそ、選ばれているのだ。

 

 

 

「大野先輩。投げるのであれば受けさせて下さい。」

 

 

先陣を切ったのは、由井であった。

 

 

 

「投げないよ、疲れてるし。」

 

「そう、ですか。」

 

 

確かにそうだ。

 

今は追い込み時期。

特に投手陣はかなり追い込んでいる為、心身ともに疲労はかなり溜まっているはずだ。

 

 

それに、大野は昨年の夏に肘を大怪我している。

 

原因は疲労困憊と、勤続疲労によるもの。

だからこそ、彼の身体のバランスを崩す訳にはいかない。

 

 

配慮が足りなかった。

聞いてから、突っ走った由井は苦虫を噛み潰したように顔を顰めた。

 

 

 

それに対して大野は、少し表情を弛めて答えた。

 

 

「有り余っているのなら、倉持の部屋に行くといい。何かと良くしてくれるはずだ。」

 

 

 

例年というか、昨年から何故か集まるようになった。

 

というのも、ゲーム機関係など色々揃っている彼らの、倉持と沢村の部屋に関しては集まるにはピッタリなのである。

 

 

 

「中々先輩たちと話す機会もなかっただろ。同じチームとして1ヶ月共にするんだ、折角ならゆっくり交流してもいいと思うぞ。」

 

 

 

勿論、シャワー浴びて小綺麗にしてからな。

 

そう付け加えて、大野はグラウンドを後にした。

 

 

合宿中盤で、全員かなり疲れが出てきている。

練習練習で怪我のリスクを抱えるよりは、それ以外の面でチームの連携を高めるというのも、大会を前にするチームには必要なことだ。

 

 

 

 

そうして練習後、1年生の面々もまた倉持の部屋へと赴いた。

 

 

「なんや、お前らまで来おったんか!」

 

「ヒャッハー、大野に諭されたか。」

 

 

この後、小湊が瀬戸にゲーム対決を持ち込んだり、結城と御幸の将棋が始まったりと、案の定盛り上がり。

 

しかしその中に、大野夏輝の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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