燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード17

地獄の夏合宿は早くも折り返し地点。

4日目を迎えていた。

 

ここまでかなりの追い込みをおこなってきたため、体に来ている。

 

流石に、全身筋肉痛である。

まあ、マッサージを怠っていないから、マシな方だ。

 

丹波さんもまだ余裕ありそうだし、ノリも大丈夫そう。

だが、この一年生2人は絶賛死んでいる。

 

 

さて、と。

 

「そんな君たちに朗報だ。」

 

今日のメニューの一つである体幹トレーニングを終えて倒れ込む一年生2人を見下ろしながら、話し始めた。

 

「今日から軽めのトレーニングに切り替えるぞ。」

 

俺がそう言うと、明らかに表情が和らぐ降谷。

沢村少年は少し安堵の表情を浮かべた後、直ぐに切り替えて質問してきた。

 

「なっさん、その心は!?」

 

「週末に試合があるからだ。2人とも投げるらしいから、それに備えておけと、監督直々に。」

 

「「おおお!」」

 

明らかに喜ぶ2人。

こんだけ疲れていても投げたいと思う心意気は流石だ。

 

ちなみに、降谷が1日目。

沢村が2日目に登板する予定だ。

 

 

 

大阪桐生といえば、関西地区では有名な強豪校。

甲子園の常連校であり、今年も自慢の強打で優勝候補筆頭と言われている。

 

特にエースである舘。

 

高い球威の直球でゴリゴリ押してくる本格派。

制球も安定しており、カーブやスライダーなどの変化球も決め球として十分使えると、かなり高い水準で纏まっている。

 

また打撃面でも大阪桐生の中心を担っており、4番として高い打撃センスも発揮している。

 

 

高い攻撃力と、絶対的エース。

何より、競った試合で勝ち切る強さ。

 

間違いなく、関西を代表する強豪校だ。

 

 

 

ちなみに、沢村は日曜の修北との練習試合に登板予定だ。

先発丹波さんの、リリーフで投げるらしい。

 

「ということだ。まあ体幹トレーニングみたいに試合に影響でない練習はやるからな。」

 

「おおお試合だぁぁぁぁ!」

 

「試合…投げられる…。」

 

聞いていない。

まあ良いんだけど。

 

「さあ、続きやるぞ。」

 

そうして、サーキットレーニングへ。

 

止まることで負荷をかける体幹トレーニングとは違い、全身運動。

身体を動かして、力を出すために効率的な使い方を身体に染み込ませる。

 

 

その後は、ブルペンへ。

軽く投げ込みと、フォームのチェック。

 

これが意外と大事だったりする。

疲労が溜まって体が動かないとなると、疲労が溜まっているその部分を庇うようにバランスが崩れてしまう。

 

そうすると、やはりフォームにも少し影響が出ていつもと同じような投球ができなくなったり、フォームがバラけたりしてしまうのだ。

もちろん、怪我にもつながるしね。

 

 

確認するように投球。

疲労が溜まっているからか、やはりスピードは遅い。

 

変化球のキレも、あまりよくないだろうな。

見てて、そして投げていてわかる。

 

 

チラリと、横に目を向ける。

 

流石の丹波さんも疲れているのか、やはりいつものような球のキレがない。

でも、カーブの落差は相変わらずだ。

 

それに。

 

「フォークですか、結構落ちてますね。」

 

「まあな。決め球に使えるように密かに練習していた。」

 

元々使っていたカーブの他に、決め球としてフォークを投げていた。

 

確かに、緩急と落差で空振りを奪えていたのだが、さらにリードの幅を広げるためには絶好のボールかも知れないな。

 

ふわりと一度浮かんでから緩く沈むカーブと、ストレートとほぼ同じ軌道でストンと沈むフォーク。

 

ストレートと組み合わせたら、奪三振も今以上に多くなるだろう。

基本的に三振を奪って調子を上げる丹波さんであれば、後半で崩れることも少なくなるだろうしね。

 

 

反対側の隣では、降谷。

普段より球威は落ちているが、無駄な力が抜けている分低めに決まっていて悪くない。

 

しかも、球速自体は大して落ちていない。

やはり、こいつの速球は不思議だ。

 

俺が見ていると、降谷は何かを思い出したようにボールを握りなおす。

 

「フォーク。」

 

ああ、思い出したのね。

変化球としてもそうなのだが、力を抜くために定期的に投げておけと兼ねてから言っていたからな。

 

 

まだ落差は丹波さんより劣っているが、純粋な縦振りの分角度とキレは相当いい。

もう少し投げていけば、今後は決め球としてだいぶ使えるぞ。

 

ただ抜け球はまだ多いから、一也もなかなか使いにくいだろうな。

こればかりは、投げていくうちに慣れていくしかない。

 

 

 

その横のノリも、疲れはあるものの安定してコントロールできている。

やはりこいつは、丈夫だ。

 

スライダーもそこそこ切れているし、なんだかんだで1番疲れが残りにくい体質なのかも知れない。

 

よく連投してるし。

そんでもって、意外とやり切れちゃうし。

 

 

「おいしょお!どうですか俺の高速チェンジは!」

 

「ボールだな。」

 

奥でアピールしている奴がいるが、無視しておこう。

 

実はちゃっかりムービングボールも改良している。

元々ストレートと同じ握りだったものから鷲掴みに変えることによって、落差と変化量共に大きくなった。

 

これにより、よりハッキリとストレートとのギャップが生まれた。

初見じゃ、だいぶ内野ゴロが増えるんじゃないかな。

 

 

 

さてと。

俺も少しばかり調整がてら投げないとな。

 

「真っ直ぐ。」

 

「来い。」

 

一也が、ミットを大きく広げる。

なんとなく、的が大きく感じた。

 

腰を大きく捻り、投げ込む。

球速が出ないのはわかっているが、やはりこうやって見ると。

 

「おっせえなあ。」

 

「言うなよ。俺が1番わかってんだから。」

 

球速は110キロほど。

軽く投げているとはいえ、遅い。

 

これでどうやって大阪桐生を抑えっかな。

 

 

球速勝負は鼻から無理だし、今回なんかは回転数とか意識するか。

いつも意識してるけど、それ以上に。

 

後は、変化球だな。

特にツーシームは変化量も落ちていないから、いつも通り軸にしていけるだろう。

 

 

何はともあれ、やるしかあるまい。

如何に疲労が溜まっているとはいえど、そんなこと相手さんには関係がないからな。

 

それに、過酷な夏。

疲労が溜まっている場面で如何に抑えていくのかも問われている。

 

 

 

 

特に、エースならば尚更だ。

 

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