燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード178

 

 

 

 

 

薬師高校との初戦を明日に控えた俺たち青道高校。

 

この字面になんとなく違和感を感じながらも、俺は食堂の椅子に深く腰掛けた。

そりゃ、初戦に薬師だもん。

 

 

表に出る前だった昨年までならまだしも。

 

今の彼らは、センバツベスト4の強豪校だぞ。

 

 

「決まっちまったもんは仕方ないんだけどな。」

 

「まあな。」

 

 

そんなことを御幸と話しながら、俺は渡辺が指すホワイトボードに目を向けた。

 

 

 

薬師高校。

高い攻撃力でガンガン攻める、勢いのあるチームであり、良くも悪くも積極さと荒さが目立つチーム。

 

特に4番の轟を中心とした上位打線は、打ち始めると止まらない怖い打線。

 

さらに下位打線も思い切って振ってくるため、上から下までいきのつく間がない。

 

 

 

 

「怖いのはやっぱり4番の轟。この間の試合でも敬遠されて2打席しか打てなかったのに、その2打席でホームランを打ってる。あのシャープなスイングにも磨きがかかってるし、どんな場面でも一発に警戒しなきゃならない。」

 

 

鋭いスイングから高い弾道で打球を飛ばすアーチスト。

 

純粋なパワーもそうだが、特筆すべきはその対応力。

ミート力もありスイングが速いため、変化球への対応やコンタクト力も非常に高い。

 

正直、怖い。

 

しかし逃げるつもりは毛頭ない。

 

 

高速変化への対応力は、いい。

去年の真中さんのスライダーも弾き返していたし、俺のツーシームにも対応できていた。

 

下半身の粘り強さはあるが、緩急にはあまり強い印象がない。

それこそ春の都大会では成宮のチェンジアップに手も足も出ていなかった。

 

初見のカットボールをどれだけ有効に使えるかと、ゆるいボールでカウントが取れるか。

 

 

まあそこらへんの配球は御幸任せになるかな。

 

 

 

あと注意したいのは、秋葉か。

イメージは左の小湊くらいの印象がある。

 

打率も高いしホームランも狙えるため、轟の次には危険視している。

 

 

 

あとは三島。

彼も中々しぶとい打撃をするし、パンチ力もある。

 

 

チャンスでの真田も要注意だな。

 

彼も集中力を研ぎ澄ました場面での打撃は、かなり怖い。

 

 

 

打線は怖い。

が、そこまで怯えることもない。

 

 

 

「守備面も、春を経てかなり安定してきています。エラーもかなり少なくなり、そこでの乱れはあまり期待できませんね。」

 

「まあ、端からそんなのには期待できないよね。」

 

 

秋の時点では割りかし連携ミスもあった。

しかし今の時点では、エラーの数自体もかなり減っているように見える。

 

まあ、相手のミスを期待しても仕方ない。

 

 

何より、投手。

エースである真田を温存している為、まずこの男が先発するのは間違いない。

 

 

「エースの真田は昨年の秋とは全く別人になっています。」

 

 

最速146km/hの直球と、切れ味抜群のシュート。

そしてシュートと相反する方向に変化するカットボールと、縦に落ちるツーシーム。

 

左腕を高く上げて遠心力を使い、地面を弾き返して反発のエネルギーを使う。

 

それにより、高い球威の真っ直ぐを投げ込めるのだ。

 

 

さらに投球動作にも変化が。

 

今までオーソドックスに使っていたプレート。

それを敢えて一塁側に目一杯使うことで、その自慢のシュートにより角度がつくように工夫している。

 

 

右打者のインコースにくい込んでくるボールは勿論、左打者の外に逃げるボールも角度が付いているため、左もまたやりにくいのだ。

 

文字通り、彼の攻撃的な性格を体現した武器。

それを、磨いてきたのだ。

 

 

 

「けど、コントロールはやっぱり荒いね。ゾーンに集まってるからフォアボールは少ないけど、所々甘いコースに来ることはあるよ。」

 

 

まあ、そうだな。

 

降谷が外れるタイプのノーコンだとしたら、真田はその逆。

ゾーンに集まるが、その中でかなり散らばる。

 

まあ、キャッチャーとしては操作はしやすい。

 

 

 

「狙いは終盤。お世辞にもスタミナがあるとはいえないし、特に7回以降は失投も増え始めます。」

 

 

清正社との試合でも、大量失点したのは終盤。

エラーも絡んでの失点が続いていたが、早い回はあの強打の清正社ですら手も足も出ていなかった。

 

 

 

やはり肝になるのは、攻めか。

真田に対してどれだけプレッシャーをかけられるかが、試合の鍵になるな。

 

 

 

「打者はとにかく粘り強く。簡単にアウトにならず、強いスイングで真田に対してプレッシャーをかけ続ける。ムービングボールは確かに詰まりやすいが、それを恐れずにバットを思い切って振りきり、内野を超える打球を狙おう。」

 

 

監督がそう言うと、野手たちが大きな声で答える。

 

 

一発ではない。

内野を超える打球で、とにかく繋いでいく。

 

 

 

「打順はいつも通り、金丸は六番、前園は七番でいく。薬師は一点入るだけでも大きく勢い付く、付け入る隙を作らないためにレフトには麻生を入れる。」

 

 

 

まあ、ベターだな。

 

敢えて変える必要もないし、左右苦にしない真田に対してはいつも通りの布陣でいくに越したことはない。

 

 

 

「薬師は勢いに乗ると手がつけられない相手だ。こちらとしても、付け入る隙を見せたくない。先発は大野でいく。こちらも全力でぶつかりにいくぞ。」

 

 

監督の指名を受け、俺は小さく頷いた。

 

 

 

 

 

打順は、以下の通り。

 

1番 遊 倉持

2番 投 大野

3番 二 小湊

4番 捕 御幸

5番 右 白州

6番 三 金丸

7番 一 前園

8番 左 麻生

9番 中 東条

 

 

 

上位打線はいつも通り。

入れ替えられているのは 、しぶとい打者である東条を敢えて9番に置き、上位打線に繋げる。

 

 

「初戦とはいえ、大きな山場の試合になる。しかし、ここがゴールでもない。まずは一戦必勝、目の前の試合に集中して取り切るぞ。」

 

 

 

監督の締めに、ナインが大きな返事で答える。

 

 

 

 

 

 

 

「敢えて、その道で来たか。」

 

 

都内でも有数の好投手になった。

 

強いストレートに攻めの投球。

そして、味方を鼓舞する覇気と気迫。

 

それでも彼は、挑戦的な姿を貫いている。

 

 

 

同じく、怪我を経験した仲。

境遇も、そしてピッチングに関することも何となく通ずる所があった。

 

強気に攻める姿は、正に修羅。

 

 

負ける訳にはいかない。

彼がそうであるように、俺もまた青道を勝たせる「エース」なのだ。

 

背番号と、その名だけではない。

 

 

 

明日の試合。

もちろん強力打線の薬師だが、それよりも。

 

 

(開会式でのあの瞳を見ちまったら、俺だって熱くなっちまう。)

 

 

開会式の日。

彼の鋭く、そして輝く瞳は彼のその力の入れ具合を表している。

 

 

 

(戦う準備はできている。)

 

 

向こうも、同じように。

きっと俺との投げ合いを、待ち望んでいる。

 

なら俺も全力で。

 

魂を、全身全霊をかけて。

青道のエースである大野夏輝を、ぶつけさせてもらう。

 

 

 

 

勝負だ。

日本一アツい投手よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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