燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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丹波さんが怪我するイベントを作る必要がなくなったので、色々順番を変えています。
あまり深く考えないでくださいお願いします(本当は時系列ごちゃってただけ)


エピソード18

 

 

 

 

 

 

夏の合宿もいよいよ大詰め。

と言うことで、総決済の練習試合である。

 

お相手は、なんと関西地区最強と名高い大阪桐生高校。

エースで4番の舘を中心とした強力打線が売りの強打のチームだ。

 

 

「わかってるとは思うけど、お前今日打ち込まれるからな。」

 

「今更言うなよ。疲れだって取り切れてないし、そもそも普段通りだったとしても、抑えられるとは限らない。」

 

軽くストレッチをしながらそう答えると、一也は少し笑った。

 

「確かにな。けどまあ、俺も最小失点に抑えられるように協力すっから。」

 

「ああ。後は打ってくれることを信じよう。」

 

「それなら任せろ。」

 

あ、哲さん。

 

急に現れたのは、我が主砲で主将。

頼もしいキャプテンの登場に少しびっくりしながらも、俺は息を吐いた。

 

「はい、任せました。」

 

 

ちなみに、メンバーはいつも通り。

レフトに降谷が入る以外は、大して変わらない。

 

基本的にレフトは、打てる俺か降谷が入り、守備固め等の大事な場面では坂田さんか門田さんが入るとのこと。

 

とりあえず今日の試合は、降谷がレフトへ。

俺が降板後は、2人の守備位置を入れ替えて、俺がレフトに入る。

 

と言うことで、早速試合に入っていこう。

 

 

先攻めは、大阪桐生。

と言うことで、先発のマウンドには俺が上がる。

 

身体の調子は、ハッキリ言ってよくない。

だって疲れ溜まってるし。

 

まあ、やるしかあるまい。

 

 

 

先頭打者が、左打席へ。

二年生の、好打者。

 

俺と一也と、同じ歳。

強豪で二年生ながら上位の打線にいる理由も、あるのだろう。

 

 

さてと、まずは様子見だ。

相手の出方ではなく、俺自身の。

 

一也の構えるミットを見る。

コースは、インコース低め。

 

いつも通りのフォーム。

トルネード投法から、全身を縦回転。

 

遠心力と身体の捻転、そして反動全てを生かしてボールにのせる。

 

(うっ)

 

少し、感覚が良くない。

 

案の定、抜けたストレートは甘く入ってしまう。

相手もそれを見逃すことなく、しっかり捉えてきた。

 

「あ」

 

「行ったな。」

 

一也がそう呟いたのも、頷ける。

音も感覚も、完全にスタンドを越えるであろう当たりだった。

 

なんとなく、帽子の鍔に手をかける。

気持ちが、少しばかりリラックスするから。

 

俺は打球の方向すら見ずに、ゆっくり深呼吸をした。

 

「いやー、気持ちいいくらい吹っ飛んだな。」

 

「悪い、感覚と意識にズレが生じた。」

 

駆け寄ってきた一也にそう返し、俺はまた息を吐く。

 

いつもより、感覚が尖っている。

良いように言えば、研ぎ澄まされているというべきか。

 

まだ、自分の中でベストタイミングが掴めていない。

早くこの状態に適応しないと。

 

「わかってるならいい。少し抜けやすいなら、引っ掛けるくらいの気持ちでもいいと思うぞ。」

 

「わかった、そうする。」

 

まあ、一発食らうくらいならボールの方がマシだからな。

一也なら、基本なんでも取ってくれるし。

 

 

2人目のバッターが、右打席へ。

できれば、こいつのうちにアジャストしておきたい。

 

いつもの感覚で少し「早かった」。

なら、少しばかり遅らせてあげたら、どうかな。

 

初球、同じくストレート。

これが低めに外れて、1ボール。

 

(少し引っかけすぎたか。)

 

(大丈夫だ、さっきよりも良くなってる。)

 

頷く一也に内心少し安堵しながら、俺は続けてモーションに入った。

 

今度は、真ん中低め。

まだ左右のコントロールは少し甘いか。

 

これを掬い上げられて、センター前へ。

決して悪いコースではなかったのだが、やはり相手も上手い。

 

低めのボールをうまく合わせて、内野の頭を越えるシングルヒットを打たれた。

 

(上手いな。)

 

(そりゃ、桐生だからな。)

 

当然と言ったら、当然か。

強打が売りのチームの上位打線なのだから。

 

 

さてと、ここからクリーンナップか。

どうやって抑えるべきかな。

 

ストレートの感覚もだが、変化球だってどうかわからないし。

とりあえずは、そこらへんも試しておきたい。

 

(て感じだけど、どうでしょう。)

 

(焦るなよ。まずはストレートからだ。)

 

そりゃそうだよな。

ここで変に感覚狂ってふり出しからってのも嫌だし。

 

 

ここからクリーンナップ。

前2人は(どちらかというと)好打者だったため、ここからの打者たちは一発が絡んでくるから、より慎重に。

 

とはいえ、感覚を掴むのが最優先。

一也の要求通り、まずはストレートを外角に投げ込んだ。

 

少し引っ掛ける意識で、だけど振り抜く。

お、良い感じかも。

 

俺の感覚通り、この試合初の見送り。

ストレートが、外角の中段に決まった。

 

指先の感覚的にも1番しっくりきたな。

多分力入れたら、もっと。

 

 

再び構えられたコースは、外角。

同じく、ストレートを放る。

 

(さっきの感じでいいぞ。同じところに来い。)

 

(おう。)

 

また、モーションへ。

ランナーが走ろうが、関係ない。

 

今は目の前の打者に、俺の感覚に集中する。

 

少し、甘い。

だけど、回転の感覚や力の入れ具合はいい感じだ。

 

金属特有の快音が、鳴り響く。

 

引っ張り方向に強い打球。

しかし、その打球が抜けていくことはなかった。

 

哲さんが、あわや長打コースというライナーを見事にダイビングキャッチ。

さらに予めリードを取っていた一塁ランナーも戻り切れずに、アウト。

 

思わぬ形でのダブルプレー。

俺はもちろん、チーム全体が盛り上がった。

 

 

「ナイスです哲さん、助かりました」

 

「気にするな。自分が納得できるまで、俺たちが守ってやる。」

 

なんともまあ、心強い。

なんだかんだで、内野は本当に強固な守りだからな。

 

(悪い一也、コントロールは細かくできねえ。)

 

(中々痛いけど、仕方ない。ある程度制球して、後は強いボールだけ頼むぞ。)

 

(了解。)

 

広く構える一也。

コントロールはあまり気にするなという、意思表示か。

 

けどまあ、次のバッターは。

 

「ほな、よろしゅう。」

 

4番か。ここまでのバッターとは違って、ガチの怪物だからな。

投手特有の感覚ってのもあるし、打たれるかも。

 

 

まずは、カーブ。

流石の一也も警戒しているか。

 

外角から、ゾーンに入り込んでくる。

このボールには流石の舘さんも見逃す。

 

変化球の感覚は悪くない。

本調子なら、もっと良くなるだろうし。

 

 

問題はやっぱり、真っ直ぐか。

 

一也が構えたコースは、内角。

とは言え、明らかなボール球。

 

見せ球か。

このボールは見逃され、1ボール1ストライク。

 

次も、ストレート。

今度は外角の低め。

 

コースは完璧、外角低め厳しいコース。

しかし、舘さんの放った打球は大きく上がった。

 

するどい当たりあわやホームランかというところで、打球は左に切れてファール。

 

 

 

やばい、厳しく責めたはずなのに。

どうやって抑える、どうする。

 

頭によぎる、迷い。

その時、一也からボールを投げ返された。

 

パアンと、明らかに強く。

 

 

(大丈夫だ、今のは少し鈍かっただけだ。コースは気にするな、強く来い。)

 

そう、だったな。

今はまず、ストレートの感覚を掴む。

 

 

ここでリセットするように、深呼吸。

集中だ、集中。

 

指先に感覚を集中させろ。

後は、今までの反復でなんとかなる。

 

集中しろ、限界まで研ぎ澄ませ。

 

「フっ!」

 

全力で振り抜かれた右腕。

しかし、指先にカチリとハマるような感覚が、突き抜けた。

 

俺の中で、何かが噛み合った。

 

 

いつもより遅い球速。

しかしそのストレートは、風を切り裂くようにして大地を駆け抜けた。

 

ギュウン!

 

そんな音が、俺の中で響き渡る。

 

 

コースは、真ん中高め。

球速は、たったの114キロ。

 

しかし。

西日本でもトップクラスの舘さんのバットは、空を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、青道高校打線も反撃を開始。

初回からエース舘を叩き、いきなり3得点をあげる。

 

対する大阪桐生は、中々大野のスピンの効いたストレートと変化球の組み合わせを攻略しきれず、4回を2得点と自慢の強力打線も形を潜めていた。

 

5回はお互いに無得点、5−2と青道リードで後半戦へ。

 

ここから大阪桐生は反撃開始。

6回、ついに舘にホームランが飛び出すと、この回4得点とついに逆転をする。

 

「まあ、球が速くなったわけじゃねえし、慣れられたらな。」

 

「るっさい。」

 

尻上がりに調子を上げている舘に、徐々に得点が鈍化していく青道。

対して、徐々に大野を攻略していく大阪桐生。

 

誰の目にも、勝敗が見えてきた頃、青道ベンチが動く。

 

この回で大野は降板。

7回からは、一年生の怪物ルーキーがマウンドへ上がる。

 

 

しかし、これもまた疲労の影響で打ち込まれてしまう。

球速こそあれど、コースが甘い。

 

全国の豪速球投手を見てきた大阪桐生相手に、いきなり2失点してしまう。

 

 

が、一年生の力投に応えるように、打線も奮起。

疲れの見えてきた館を打ち込み、11−10と再度逆転する。

 

こうなると、お互いの強力打線はヒートアップ。

シーソーゲームには拍車がかかり、8回にはお互いに2得点ずつ取り合う。

 

 

13−12で迎えた最終回。

ツーアウトランナー二三塁と最後のピンチの場面で打席には、4番の舘が入る。

 

 

初球、ストレート、高めの釣り球を見逃し1ボール。

 

2球目、今度は低めいっぱいに決まるストレート。

これも見逃して、1ボール1ストライク。

 

3球目、外角高めの真っ直ぐを当てたものの、前に飛ばずファール。

 

4球目、再度高めのストレート。

これもバットに当てたものの、三塁線切れてファール。

 

 

ヒットゾーンには飛んでいないものの、徐々にアジャストしていく舘。

捉えるのも時間の問題かと思われていた。

 

 

5球目、低めのストレート。

これもバットに当たり、レフトポール側切れてファール。

 

 

汗を拭う降谷。

ここで御幸は、とあるボールのサインを出す。

 

(ストレートの軌道はもう染み込ませた。後は、料理するだけだ。)

 

少し驚いた表情を浮かべる降谷に御幸も笑って返す。

 

(散々練習で投げたんだ。いつも通り腕を振り抜けば勝手に落ちる。)

 

コクリと、降谷が頷く。

セットポジションから全身を縦回転。

 

高い打点から投げ込まれたボールはぐんぐん進んでいく。

 

(ど真ん中、貰いやでえ!)

 

そうして振り抜いた舘のバットの遥か下。

 

最後はフォークボールで空振り三振。

接戦の末、大阪の強豪校である大阪桐生を13−12で下した。

 

 

 


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