燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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試合で長い話が続いていたので、今回は短めで。





エピソード187

 

 

 

「っしゃあ!」

 

 

最後の打者である真田を空振り三振で切り落とし、右拳を握り込むと共に声を上げる。

 

 

直後、胸を撫で下ろすと同時に笑みが零れた。

 

 

真田との、緊迫した投手戦。

そして、轟を筆頭とした強力打線。

 

その2つからの解放された俺は、思わず溜め息をついてしまった。

 

 

 

「良かったぁ…、まじで。」

 

 

まず最初に、零れた本音。

それを聞いて、横にいた御幸が俺の肩を掴んだ。

 

 

「ほんとお疲れさん、夏輝。」

 

「まじで疲れたよほんと。もうこの大会投げられん。」

 

「冗談でもそういうこと言わないで、まじ。」

 

 

それくらい疲れたっていう比喩だろう。

 

内心でそう呟きながら、俺は共に戦った仲間と共に整列した。

 

 

 

 

「届かなかったわ、すげえよお前。」

 

 

礼を終え、声をかけてきた真田。

 

この試合で俺が本当に苦労した、相手。

彼の熱投があったからこそ、今日の試合は死闘になったのだ。

 

 

「また会おう。次に投げ合えることを楽しみにしてる。」

 

 

すると真田が驚いたように、目を見開く。

 

確かに高校野球は彼にとって最後かもしれない。

しかし彼ほどの実力ならきっと。

 

もっと上の舞台で、巡り合わせがあるはずだ。

 

 

いずれ。

きっとそれほど遠くない未来。

 

また、どこかで投げ会えると思うんだ。

 

 

「また、か。」

 

 

真田が苦笑しながらそう返す。

 

今は、まだ考えていないだろうが。

でも真田はきっと。

 

いや、真田だけではない。

きっとこの轟も、いずれまた上の舞台で会えるはずだ。

 

 

最後の打席。

あれははっきり言って、ココ最近で一番怖かった。

 

緊迫と、重圧。

 

でもそれが、楽しかった。

 

 

「強いチームだったな。」

 

「そうだな。きっと来年も、苦労することになる。」

 

 

引き上げる薬師のナインを見送りながら、俺はこの試合ずっとバッテリーを組んだ御幸とそう話した。

 

 

「苦しい試合展開だが、よく我慢して投げきってくれた。」

 

 

ベンチへ戻ると、監督から肩を叩かれる。

 

 

「いえ、エースですから。」

 

「明日はゆっくり休め。今日の投球内容だと、実感以上に疲れが溜まっているだろうからな。」

 

 

落合コーチからそう付け加えられ、俺は小さく頷く。

 

まあ確かに、疲れはしたからね。

ここはお言葉に甘えさせてもらおう。

 

 

苦しい試合だったが、まだ初戦。

まだまだ、先は長い。

 

特に終盤になれば、連戦続きになる。

 

できればそこまで、疲労は残したくない。

 

 

幸いウチには、安心できる投手が他にもいる。

 

 

「次の試合は任せたぞ。」

 

 

「はい喜んで!」「はい。」

 

 

同時に返事をした沢村と降谷。

そして、啀み合う2人。

 

本当に、仲がいい。

 

 

まあ、次の先発は監督のみぞ知る、だ。

どちらでも、信頼をおけることに変わりは無いがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、肘も炎症なさそうだね。投げ終えてこれなら上々。よく我慢してケアしてきた。」

 

 

試合後、念の為病院へ。

 

久しぶりの夏大で、しかもフルイニング投げた。

それも、かなり高い出力で投げ続けていた為、確認がてらね。

 

 

違和感も無かったし、勿論痛みもなかった。

 

だから大丈夫なのはわかっていたけど、実際診てもらってプロからそう言って貰えると、安心できる。

 

 

「試合、見たよ。すごいピッチングだったね。」

 

「…相当待たせましたからね、みんなを。だから、頑張れました。」

 

「そういうのはインタビューで言うんだよ。」

 

 

確かに。

そんな事を思いながら、俺は荷物を左肩にかけた。

 

怪我をしてから、約1年弱。

 

フォーム改善から、肘に負荷が掛かりにくい状態をつくり、最近は全く問題もなくなった。

 

 

この先生にも。

そして、フォーム改善を手伝ってくれた御幸と落合コーチにも。

 

勿論、支えてくれたチームメイトのみんな。

我慢してくれた、監督にも。

 

 

本当に、皆に支えてもらってきた。

 

皆に、助けてもらった。

だからこそ、恩返しも込めて。

 

チームを背負って、闘う。

 

それも俺の、「らしさ」だから。

 

 

 

「ありがとうございます。」

 

「今日は帰って休むんだよ。明日もノースロー、明後日からゆっくり動かしなさい。」

 

「そのつもりです。流石に疲れましたからね。」

 

 

 

頷き、俺は病院を後にした。

 

 

 

 

「お勤めご苦労様です!」

 

「おかえり、どうだった。」

 

 

学校に戻ると、お出迎え。

 

なぜか門前で待っていた沢村と御幸に右手をあげて答える。

 

 

「どうもなにも、確認でしかないからな。良好だってよ。」

 

「ま、だろうな。」

 

 

 

 

次の試合は、3日後。

当然俺は投げる予定は、ない。

 

いざとなれば投げるが、その必要はない。

 

おそらく先発で降谷、状況次第で第2先発の沢村か。

 

とはいえ、次の試合で降谷が炎上するとも思えない。

そう考えると、沢村は次の試合は投げないかな。

 

 

降谷が長いイニング持ってくれれば、試合慣れの為に東条を投げさせると思う。

 

 

3試合目までに皆に投げさせたいと思うから、ここで先発沢村か。

 

順当に行けばここでノリと、登板間隔が空きすぎないように俺も少しなげると思う。

 

 

準々決勝で再度降谷。

ここは沢村も準備しておいて欲しいが、ノリと東条。

 

おそらく2人への継投で、降谷は長いイニングあまり投げさせないようにしたい。

 

 

 

で、準決勝。

恐らくは、というよりほぼ確実に市大三高が来ると思う。

 

決勝は、ほぼ間違いなく稲実。

 

 

この連戦で、俺は2試合とも先発になる予定。

 

準決勝の天久との投げ合い。

春の投球を見る限りは、ここはかなり厳しい試合になる。

 

決勝を控える中で消耗したくない。

なのでここは、継投で沢村、降谷も投げてもらう。

 

 

 

あくまで予定だが、一応こんな流れで投手運用はしていくと落合コーチと監督から言われている。

 

 

これが最低限先発の疲れを分配した計画。

それでいて準決勝、決勝の超高校級2人との投げ合いで俺たち3人が全開で投げられるようにした、投手運用。

 

予定だけど。

 

 

長いイニングを俺と沢村、降谷で投げて、ノリと東条の2人で中を継いでもらう。

 

この炎天下だからこそ、5人でしっかり回すことでこの過酷な夏を乗り越える。

 

 

 

しかし、それができるには前提として、勝つこと。

 

1度負ければ終わりのこのトーナメントで、最悪のケースは敗退。

だからこそ、その危険性があれば。

 

勝つために、いつでも俺は投げるがな。

 

 

 

まあ、その心配はおそらく要らない。

 

そんなにヤワな野手じゃなければ、貧打ではない。

 

 

真田の前に中々得点を奪えなかったが、あれは正直真田が良すぎた。

向こうが点を奪えなかったのと同じように、こちらも真田を打ちあぐねていただけ。

 

当の本人たちは、そんなこと思ってないだろうけど。

打てなくて相当歯痒い思いというか、フラストレーションが溜まっていると思う。

 

 

だからきっと、次の試合からは爆発してくれるはずだ。

 

そう簡単に割り切るような、諦めるヤツらはここにはいないからな。

 

 

そうそう、心配はいらないと思う。

 

 

 

 

まずは、次の試合。

投手としてはしっかり休んで、他の投手に任せる。

 

それで、来るべき決戦のために。

 

 

力を蓄える。

 

 

 

 

 

 

 

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