燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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ちょっと遊びたくなりました。





エピソード192

 

 

 

 

 

「サラッとあれだな。俺らの試合よりも面白そうなカードが多いな。」

 

 

創聖との試合を控えた俺たち青道高校。

 

俺も次の試合に向けてバットを振っていると、御幸がそんなことを言っていた。

 

 

「確かに。隣のブロックでは市大三校と仙泉。反対側では稲実と成孔か。」

 

 

後者が、特に。

超強力打線の成孔に対して、相手は世代最強左腕の成宮。

 

最強の矛と盾。

 

どれだけ緊迫した試合になるかは、見ものだな。

 

 

「そんなことより目の前の試合…と言いたいところだが。正直、俺も気になる。」

 

 

だって、面白そうだもん。

そこまでは言わなかったが、御幸の言葉に肯定するように頷いた。

 

 

「だろ?」

 

「だが、試合の後でいい。それに今は、創聖。そのあとも市大三校も待っている。」

 

 

とてもそっちに、思考は避けられない。

そもそも俺たちは横綱相撲をする気はない。

 

常に攻撃的に、そして攻めの姿勢で。

 

まずは目の前の試合。

 

投手運用や選手起用、今後のことは監督と落合コーチが考えているはずだ。

 

 

だから俺たちは、ただ一つ。

目の前の倒すべき相手に、集中する。

 

 

 

 

「奥村と大野、お前たちは明後日の神宮での試合を見に行ってこい。」

 

 

御幸と話していたのも束の間。

監督から。そんなことを言われた。

 

 

「これから投げ合うエース、明日の試合で必ず投げるはずだ。お前はエースとして、肩を並べている投手たちを直に見てこい。」

 

 

なるほど。

まあ実際俺は先発しないだろうし、1日肩を休める日としていいかもしれない。

 

それにしても、三高の天久はわからないが、稲実は確実に成宮が投げるはず。

 

相手はあの成孔だからな。

ここで出し惜しみしていれば、十分喰われる可能性もある。

 

 

あの強豪打線にどう成宮が投げ切るか。

 

それに気になるのは。

握りを改良して大きく沈むようになったチェンジアップ。

 

そして、恐らく。

 

 

(何かしらの隠し球は、あると思うんだよな。)

 

 

成宮が現状使っている決め球は、主に3つ。

スクリュー回転で大きく沈む魔球チェンジアップと、切れ味鋭く滑る大きなスライダー、そしてフォーク。

 

あとたまにカーブを投げているくらいか。

 

でも、去年のチェンジアップ同様、何かしら武器を隠している可能性がある。

それを見ることができれば、上々かな。

 

 

「わかりました。行かせて頂くからには、必ず収穫は持って帰ってきます。」

 

 

俺が返答すると、監督は大きく頷く。

そして付け加えるように、監督は奥村を見て言った。

 

 

「奥村。お前は渡辺と一緒に細かい分析を頼む。捕手ならではの視点で見ることができるのはお前しかいない。頼むぞ。」

 

「分かりました。」

 

 

おお、なるほどね。

俺は本当に、その投手たちを感じてこいってだけか。

 

監督がそれを許してくれるなら、俺もそうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

夜が明けて、次の日。

 

3日後に控えた創聖の試合に向けて、柳楽対策をしたいところ。

 

 

140キロ前後で、コントロールが良くて、決め球がツーシームの右腕。

どこか聞き覚えのあるこの特徴。

 

 

「球速を盛るな。」

 

「バレたか。」

 

 

まあ確かに。

俺の球速は、平均130キロ前後。

 

というより、最近ようやく130キロを超えてきた。

 

 

最速というか、力を入れた時は140を超えることもぼちぼち出てきたが、先発である以上、ずっと全速力で走るわけにはいかない。

 

マラソンで全速力でダッシュする人がいないように、先発は長いイニングをある程度の力を持たせなくてはならない。

 

 

まあ球速は少し落ちるが。

実戦でできる方が、マシン打撃よかいい練習になるだろう。

 

 

「しゃあねー。じゃあキャッチボールするか。」

 

 

御幸がそう言ってキャッチャーミットを用意する。

何してるの?

 

 

「お前は4番だろ。打撃の軸がやらんでどうする。」

 

「まじ?」

 

「ストレートとツーシームなら奥村も十分取れる。」

 

 

 

ということで、経験も兼ねて奥村とバッテリーを組む。

 

まあ投げるのはストレートとツーシームだけ。

あとのリードは、奥村に完全に委ねている。

 

 

「基本クイックだよね、柳楽のフォームは癖ないし。」

 

「いえ、あまり深く考えなくて大丈夫です。大野先輩はいつも通りで。そのほうがきっといい練習になります。」

 

 

あら、そう。

ならお言葉に甘えて。

 

リードも2軍の試合見てた感じ結構面白いリードするし。

 

特に沢村と降谷をリードしていた時、かなり強気なリード。

つまり御幸に結構近いような配球をしていた。

 

 

「沢村と御幸がお前のことを散々オオカミ小僧って言っていたが、案外普通じゃないか。」

 

「あの2人のいうことは信用しないでください。」

 

 

そう言って表情を歪める。

あー、こういうところね。

 

なんとなく近寄りがたい雰囲気を、意図して出している感じ。

 

過去に何かそういう経験があったのか。

そんなことは聞いても仕方ない。

 

 

「リードは任せる。俺はお前が要求したところに投げ込む自信はある。」

 

「よろしくお願いします。」

 

 

そして俺がグローブをつけた左手を肩の高さまで上げる。

 

すると奥村は目を見開いて一度固まる。

そしてすぐに、俺のグローブに向けてとんとミットを当てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大野が投げんのか、珍しいじゃん。」

 

 

バットを両手で持ちながら屈伸する倉持が、そう洩らす。

 

実戦形式のシート打撃。

そう指示をされた為準備をしながら、マウンドに上がる大野に視線を向けた。

 

 

「右で落差の大きいツーシーム。それにコントロールもいい柳楽対策だ。本人も投げる気でいたからな。」

 

 

腕を組み、これを企画した片岡がそう言った。

 

柳楽のツーシームは、大野のそれに比べると速度も遅く、縦の変化が大きい。

しかしこの高速変化に慣れておくだけでも少し変わってくると思ったからだ。

 

 

「それで、明日試合見に行かせるようにしたんですね。」

 

「あぁ。アイツのことだ、練習で投げただけだと言って次の日もブルペンに入りかねないからな。半強制的に休ませる。」

 

 

よく無理をする選手。

それは、昨年の夏からよくわかっている。

 

 

「さあ、やろうぜ。言っておくが、まるで打たせる気はないからな。」

 

 

マウンド横に置かれたロージンバックを右手に乗せて、トントンと揺すりながら大野は不敵に笑う。

 

 

「ヒャッハー。やる気満々じゃんか。真剣勝負といこうぜ。」

 

「ハナからそのつもりだ。」

 

 

右手に乗せていたロージンバックを落とし、指先についた余分な粉を吹き飛ばす。

 

そして、覗き込むようにして前屈みに奥村のミットへ視線を向けた。

 

 

(さて、と。どうする?)

 

(球種を指定されている以上、わかりやすく攻める必要はありません。ここは押さえ込みに行きましょう。)

 

(そう言ってくれて嬉しいよ。)

 

 

実戦形式の練習とはいえ、折角チームメイトと対戦できる機会。

 

それも相手は、強打と名高い青道。

選抜でもその得点力の高さで優勝まで上り詰めた、強打のチームだ。

 

仲間とはいえ、強い相手と戦える喜び。

 

それは、変わらない。

 

 

(左バッターですが、バットコントロールは極端に良いわけじゃありません。ここは外の出し入れで。)

 

(OK。見せ球で内は使った方がいいと思うが。)

 

(いえ、変に詰まって内野安打も有り得ます。しつこく攻めてみましょう。創聖もそういう配球をしてくるかもしれません。)

 

(なるほど。そういう事なら。)

 

 

まずは外、ストレート。

状態の良い大野の、吹き上がるような真っ直ぐがストライクゾーン一杯に決まり1ストライク。

 

 

「遠く見えるけど、やっぱ入ってんだ。」

 

 

思わず倉持が洩らす。

 

あまりの、際どいコース。

普通ならボールと言われても仕方ないようなコースだが。

 

これもまた、奥村のキャッチングのセンスと大野の精密機械ばりのコントロールの賜物である。

 

 

(いい反応。)

 

(そうですね。次はここで。)

 

 

2球目、またも外低めのストレート。

1球目よりも少し内に入っているが、決して甘くは無い。

 

先程よりも内、それこそさっきのストレートでも外いっぱいに入っている。

 

 

倉持もここを振りに行くが、ボールは急激に失速。

 

さきほどのフォーシームとは違いノビがない。

振り抜いたあとに、倉持は思わず目を見開いた。

 

 

(こんなに速えのか。まじでストレートにしか見えなかった。)

 

 

コース然り、軌道然り。

特にスピード感とボールの軌道はまるでストレートそのものであった。

 

 

通りで、強打者がきりきり舞いにされている訳だ。

 

こんなにも速さと軌道は近いのに、最終地点は全く別なのだ。

 

 

ストレートは伸び上がるように。

ツーシームは途中で失速して逃げるように大きく落ちる。

 

 

(さあ、決めるか。それとも餌を撒くか。)

 

(決めましょう。わざわざ間を開ける必要はありません。)

 

 

なにより貴方はその方が燃えるでしょ。

そう心の中で呟き、奥村は己のミットをコースに構えた。

 

 

(ほう。)

 

 

奥村の構えたコースは、外角高め。

 

ここまで低めで攻めていただけに、大野は眉を顰める。

それと同時に、見慣れたそのリードに思わず口角が上がった。

 

 

(思い切る。)

 

(遊び球はいりません。ここは押し切りましょう。)

 

(分かっている。)

 

 

ノーワインドアップから身体の正面を三塁側へ向ける。

 

そしてそのままゆっくりと腰を捻転。

ある地点まで到達するとそこで一瞬制止。

 

身体を大きく振るい、左足を踏み込む。

 

若干アーム気味で振るう腕。

出処の見えにくさを犠牲にしてより、兼ねてより弱かった肘を、怪我をしにくく、更には強いボールを投げ込むことに振り切った。

 

 

そのフォームから繰り出された速球は風を切り、高めから吹き上がりながら伸びるストレートを生み出す。

 

力の乗ったストレートは、倉持のバットを軽くすり抜けた。

 

 

「言ったろ。まるで打たせる気はないとな。」

 

 

実戦形式の、練習。

緊迫感の走ったこの時間は、まだ始まったばかり。

 

 

 

 

 

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