燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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RGのHi-νガンダム組んでたら遅くなってしまった…


エピソード19

練習試合2日目。

今日は、同地区のライバルである稲実と修北が来ているため、総当りの変則ダブルヘッダーで試合をしていく。

 

修北戦での先発は、丹波さん。

昨日みたいな俺から降谷への継投みたいに、大体6回まで丹波さんが投げ、その後は沢村が残りの回を投げる。

 

稲実との試合は、ノリが9回まで投げる。

流石に同地区のライバル同士で手の内を見せ合う必要はないからな。

 

相手先発も、2年生の平野。

ノリと同じで、リリーフを中心に回している控え投手だ。

 

 

ということで、早速試合。

やはりというべきか、稲実も控え選手が中心。

 

こちらも同じくで、キャッチャーはクリス先輩だ。

内野にも1年生の小湊を使うなど、メンバーを入れ替えている。

 

 

 

 

前半はクリス先輩のリードと安定したノリのピッチングで最小失点に抑えていく。

対する平野も上手く躱していくピッチングで、6回終了時点まで3-2と落ち着いた試合展開となった。

 

 

しかし、7回。

フォアボールとヒットでピンチを背負うノリ。

 

この場面で打席には4番。

甘く入ったストレートを叩かれて、スリーランホームランを浴びてしまう。

 

疲れも残っているからか、いつもよりボールに力がない。

何より、上手く制球もできていない。

 

 

いつもなら、この後ズルズルと崩れていくのがノリ。

だが、今日の彼は一味違った。

 

マウンドでクリス先輩と少し話すと、丁寧に低めを攻めていくいつもの投球。

打たせてとる理想的な投球で、後続を断ってみせた。

 

 

 

「おお、ノリ頑張ってんじゃん。」

 

「クリス先輩の声掛けもそうだけど、やっぱり粘り強くなったよな。」

 

連打を浴びても、後続を断つ。

今までにはない、打ち込まれても粘り強く投げ続ける心の強さ。

 

特に援護が多いうちのチームであれば、多少点を取られても逆転されなければ問題はない。

 

だからこそ、そう言う強さが必要になってくる。

 

 

 

「よっ、なっちゃん。」

 

グラウンド横で試合を見ていると、ふと声を掛けられる。

目を向けると、そこには見覚えのある小柄な青年がいた。

 

艶やかな白銀色の髪と、端正な顔立ち。

本の中から出てきたかのような、そんな彼はやってきた。

 

「鳴、久しぶりだね。」

 

「約1年ぶりかな?秋大は怪我してたみたいだし、本当に久しぶりだね。」

 

「一也も、久しぶりじゃん。」

 

「ああ。」

 

成宮鳴。

俺と一也の幼なじみであり、稲実のエース。

 

そして、去年の夏に俺たちを負かした投手。

 

「今日は投げんの?」

 

「まあね。修北の時に投げるから、楽しみにしておきなよ。面白いものみせてあげ…ってえ!」

 

「アップ中抜け出したと思ったら、こんなとこで油売ってやがったか。」

 

鳴が言いかけたところで、寸断。

何故なら、その綺麗な頭に鉄槌が下ったからだ。

 

「原田さん、ご無沙汰してます。」

 

「すまんな、ウチのが迷惑をかけた。」

 

「いえいえ。彼も口は滑らせてないですから、安心して下さい。」

 

滑らせかけてたけどな。

まあ、面白いものとしか言ってないしセーフか。

 

「じゃあ、俺らもここら辺で。ああ後、お前らも後輩の扱いには気をつけろよ。コイツと違って口を滑らせてる奴がいたからな。」

 

「あぁ、沢村っすね。さっき純さんが絞めてたんで大丈夫ですよ。」

 

さっき、ペラペラと昨日の試合内容を白状していた。

恐らくだが、ライバル校に自分たちの強さを誇示したかったのだろう。

 

甲子園常連校である大阪桐生に打ち勝った。

まあ裏を返せば、乱打戦になるくらい投手は打ち込まれたということだけどね。

 

 

「じゃあ、俺行くわ。」

 

「おう、しっかり研究させてもらうぜ。」

 

そうして、鳴と別れを告げる。

丁度、ノリが稲実の打者を三振に切ってとっているところだった。

 

「俺達も戻るか。」

 

「あぁ。早くしねえと、鳴みたいにゲンコツ食らっちまうかもしれねえしな。」

 

冗談はさておき、実際いい研究材料になる。

練習試合という、数少ない実戦での投球を、目の前で見ることができるのだ。

 

特に、この成宮。

俺たちとの試合では、おそらくこいつが完投まで持っていくと思う

 

最速148キロの快速球と、キレのあるスライダーとフォークの縦横の変化。

そして、多少荒れているもののそこそこ安定した制球と、一試合を十分に投げ切ることができるスタミナ。

 

まさに、教科書通り。

お手本のようなサウスポー投手だ。

 

去年の夏も、こいつの前にうちの打線は手も足も出なかった。

 

「性格だけはお手本とは言えねえけどな。」

 

「ちげえねえや。」

 

そうこうしているうちに、稲実と修北の試合が始まる。

 

先発は、その成宮。

対する相手先発も、エースである戸川を投入する。

 

試合は初回から動き、先攻である稲実がいきなり2得点を挙げて先制。

堅実ながら思い切りのいい攻撃で得点力の高さを見せつけてきた。

 

対する稲実の先発である成宮はというと。

 

「ストライク、バッターアウト!」

 

三者連続三振の立ち上がりである。

威力のあるストレートを軸に、キレのある2種類の決め球で三振を奪う、これまたお手本のような投球である。

 

この圧倒的な投球は試合中盤まで続き、5回までで被安打1の好投。

そして、5回。

 

5番6番をすぐに打ち取り、早くもツーアウトまで持っていく。

 

打席には、7番。

 

初球、138キロのストレートで空振り。

やはり、数字以上に速い。

 

続けて、ストレート。

今度は、140キロを超えるほど力を入れたボール。

 

3球目、これは少し外れてボール。

しかし、威力キレ共に絶品のボールである。

 

「スライダーもそうだけど、ストレートの威力が半端じゃないな。」

 

「ええ。元々威力ありましたけど、球速が上がった分より強力になってますね。」

 

気をつけるのは、やはりあの強いストレート。

後は、左打者からは逃げるように変化するスライダーはかなり強力だな。

 

 

追い込んでいるのは成宮。

もう一つ遊び球は…あいつなら、きめに行くな。

 

決め球はやっぱりスライダーか?

右バッターだし、フォークもありえるな。

 

中々サインが決まらないバッテリー。

成宮のことだし、きっとストレートで押し切ろうとしているのだろう。

まあ、悪くない選択だ。

 

ようやく、サインに頷く成宮。

 

美しいワインドアップから、右足を高く上げて静止。

沢村のそれとも少し近いが、遥かに洗練されている。

 

高いリリースポイントから、振り抜かれる左腕。

そこから放たれたのは、これまで成宮が投げてこなかった未知のボールであった。

 

 

ストレートと同じ腕の振りで、緩く利き手側に沈む変化球。

打者のタイミングを外す、魔球。

 

チェンジアップ。

成宮のそれは聞き手側にスクリュー気味に沈むから、サークルチェンジといったところか。

 

緩急もそうだが、落差もあるから空振りも楽に奪える絶好のボールだな。

 

「縦横の変化に加えて、緩急まで身につけやがったか。」

 

腕を組みながらぼやくように呟く純さん。

その気持ちも、わからんではない。

 

ただでさえ手のつけられなかった投手だというのに、さらに進化されたらな。

 

ため息をつきそうになり、飲み込む。

すると、今度は主将である哲さんが呟いた。

 

「面白い。」

 

どでかいオーラを放ちながら、そういう。

まあ、心配いらないか。

 

あいつが進化している以上に、俺たちだって進化しているんだ。

今年は、負けない。

 

今度こそ、勝ってみせるんだ。

俺には頼れる捕手(あいぼう)だっているんだからな。

 

「勝つぞ、一也。」

 

「当たり前だ。」

 

そうして、俺たちは互いの拳を突き合わせた。

 

 

 

 


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