市大三高戦でわりとでかいミスやらかしてます。
何となく気がついている人もいると思いますが、完全に勘違いでやってます。
作品上あまり違和感が出ないように修正しますが、多少原作とは異なる部分と違和感が出てしまう可能性があります。
少々お待ちください。
また、本作を描いてるにも関わらず勉強不足故の間違えで読者の方も不快にさせることもあるかと思います。
合わせて、申し訳ございません。
あとはご指摘頂いてる方、また普段から修正等して頂いてる方、いつもありがとうございます。
残り少ない話数にはなってきましたが、改めてお礼を言いたかったのでここに纏めさせて頂きました。
長々失礼致しました、それでは本編どうぞ。
マウンド上で右拳を握り締めるノリが、声を上げる。
逆転に次ぐ逆転。
更に相手は天久光聖という、プロ注目の好投手。
激闘の末に、4-3で勝利を収める。
センターの定位置で俺も小さくガッツポーズを作り、マウンドへと駆け寄った。
「ナイスピッチ。」
そうして、ノリの背中をぽんと叩く。
本当に、ヒヤヒヤした試合だった。
というより、改めて強豪校の強さを再確認させられた。
やはり、強かった。
星田は4番らしいクラッチヒッターだったし、他の打者も怖かった。
沢村が良かったから傷口は浅く済んだが、そうでなかったことを考えると今でもゾッとする。
いや寧ろ、あそこまで研ぎ澄まされた沢村ですら6回で2点も取られたのだ。
俺が登板してたとしても、無事では済まなかっただろう。
天久の投球も凄かった。
スライとストレートは正直見分けがつかなかったし、何よりそれぞれの球種の強度がやはり高かった。
それこそ、御幸があそこで打ってくれたから。
信じていたとはいえ、あそこまで完璧に期待に応えてくれた姿は、哲さんの背中を重ねてしまうほどだ。
それに、終盤の集中力というか。
沢村や降谷を思って打つ姿は、どこか原田さんにも似た所があった。
ただのクラッチヒッターではない。
青道高校の4番として、最高クラスの実力と強さ。
本人には言わないけど。
試合を終える、挨拶。
最後に両チームで集結し、その健闘を称え合う。
互いに向かい合い、礼。
俺は向かい合っていた、相手エースと相対した。
「やられたよ。強いな、お前の後輩たちは。」
「あぁ。本当に、頼もしい限りだ。」
清々しい表情の天久に俺は意外に思いながらも、彼から差し出された右手を握り返した。
「また、会おう。」
そう一言返した天久は、踵を返してそのままベンチへと戻って行く。
それでも市大三高側のベンチからは、大きな拍手。
彼のピッチングを称えるような景色は、天久をエースと表現するには十分すぎると言わざるを得なかった。
涙は、見せなかったか。
やはり、最後までエースだったな。
俺はその背中に描かれた「1」を見送りながら、俺は右拳をぐっと握りしめた。
今日の主役はやはり、沢村。
星田には一発喰らってしまったが、一時は天久を上回るほどの集中力でピッチングをしていた。
はっきり言って、次元で言えば成宮クラス。
それこそ、昨年の成宮以上の集中状態になっていたと思う。
まだ彼自身、力配分が出来ていなかった為か6回途中で降板したが、それでもとてつもない輝きを放っていた。
あとは、御幸。
先制点を奪われた直後の2回裏に、白州と共に同点へ追いつく。
やはり、8回裏の3ランホームラン。
あの時の風格と纏う空気は、流れていた演奏と相まって凄まじいものがあった。
「何はともあれ、並んだな。」
突如背中を叩かれて、俺はその主を見る。
そこには、今日のヒーロー御幸。
彼の発言の意図を読めないほど、遠い仲ではない。
俺は、御幸の言葉にすぐ返答した。
「あぁ。あとは、奴が来るのを待つだけだ。」
そう返して、俺は御幸と共にベンチへと戻って行った。
荷物を整え、俺はベンチを後にする。
「持ちます。」
「悪いな。」
同部屋の瀬戸が俺の荷物を持つと、そのままスタジアム通路へ。
やはり、御幸は囲まれてるな。
それに沢村も。
あとは主将の白州も、やっぱ取材されてるな。
今日登板しなかった俺は瀬戸と共にこっそりと抜け出す。
まあ、折角投げなかった時くらい、さっさと逃げさせてくれ。
そう内心で呟きながら観客席へと向かっていると、俺はとある選手と鉢合わせてしまった。
「あっ。」
「げっ。」
思わず、声が出てしまう。
対して相手は、待っていたと言わんばかりにこちらへと振り返った。
そこには、今日の敗戦投手。
市大三高のエースである天久が待ち構えていた。
この状況に警戒心というか、争いごとを極力避けたい瀬戸は若干焦っているように見える。
その為、彼を先に行くように促すと、俺は天久とまたも向かい合った。
「なんだ、俺も負かしたチームの投手とすぐに切り替えて話せるほど肝は座っていないぞ。」
「まあまあ。投げあってないんだし、そもそも試合が終わったら同じ野球人だろ。」
何とも清々しい言葉に、俺は却って不審に思ってしまう。
それを察してか、天久は更に言葉を続けた。
「まあ、な。話したいことがあったんだよ。同じエースとして…いや、同じ、って言ったらお前に失礼かもしれねーか。」
そう自嘲する天久を、俺は軽く否定をした。
「いや、少なくとも今日の試合を見る限りお前は優れたエースだった。」
俺がそう返すと、天久は安堵するように少し笑う。
そして天久は、抱えるように後頭部を両手で抑えて壁へと身体を預けた。
「まあ、本音言うとさ。お前と投げ合いたかったんだよ。稲実との決勝を控えている上にあんないいピッチャーが2人もいるんだから、出てこないのは分かってたけど。知ってる?俺、お前のこと滅茶苦茶評価してんの。」
相対して、やはり再認識する。
こいつは少し、ズレてるなと。
いや、悪い意味では無いのだ。
ただこう、感性が他の人とは少し異なっている。
どこかさっぱりとしている清々しい姿は、寧ろ尊敬すらできた。
とはいえ、あまりの饒舌に気圧されたのも事実。
少し圧倒され、俺は戸惑いながら返答した。
「あ、ありがとう。」
「なんかさ、お前が投げてる試合見たんだけど、成宮も巨摩大のエースも、薬師の真田も。お前と投げてる時は楽しそうだったんだよな。」
そうか?
いやまあ、成宮と真田は何となくそういうタイプだから分かるけど、本郷なんかは楽しいとは程遠いように見えたけど。
確かに、いいピッチングをしてはいたな。
寧ろ俺がそれに引っ張られているような感じだった。
「俺が圧倒すりゃあ、お前も出てくると思ったんだけどさ。すげーな、沢村ってやつ。あいつもやべーピッチャーになるぜ。勿論、後で出てきた降谷もだけど。」
「まあな。今は、あいつらより信頼できるピッチャーは他にもいないよ。」
俺がそう言うと、天久は意外そうな表情を浮かべた後に、やっぱりなと言わんばかりに肩を竦めた。
「通りで強い訳だ。エースが直々に準決勝を託せる投手が2人も居る投手陣に1人で挑んで、勝てるなんてはずなかったわな。」
俺が怪我で離脱したときは、ノリではなく2人がチームの投手の柱として引っ張っていた。
まあノリもノリで、2人を支える形でいたんだけど。
あの秋、やはり大きく成長してくれた。
だからこそ今でも、大事な試合に任せることができる。
静寂と共に、気まずい空気が流れる。
はーっと大きな溜め息をつくと、天久は寄りかかっていた壁から背中を離す。
凛と立つ姿は、やはり大きい。
少し見上げる形で俺も彼を見ると、天久はこちらへ向き直って言った。
「俺はプロに行く。今すぐは無理でも、必ずな。」
「そうか。」
「また会おうって言っただろ。今度はもっとでけー舞台で。何万人の観客に囲まれた舞台で、投げ合おうぜ。」
そう言って、天久はニヤリと笑った。
「勝てよ。成宮にも、甲子園のピッチャーにも。甲子園優勝投手、ドラフト最有力のピッチャーとしてプロの舞台で待ってろよ。」
そして、彼はこちらに背を向ける。
まだつけられた「1」の大きな数字を見て、天久の口から出てきた言葉に俺は漠然と考えた。
「プロ…か。」
今は、目の前の戦いか。
ただ真っ直ぐに、成宮との投げ合いに集中する。
そして、右手を上げて離れていく天久を、俺はじっと見ていた。
「行けよ、甲子園。」
最後に呟かれた言葉を、俺は彼にも伝わるようにしっかり答えた。
「あぁ、必ず。」
天久、思っていたよりもアツい男だったな。
そんなことを思っていたが、俺は次の試合が近づいていることに気がつく。
午後は、成宮擁する稲実と西東京地区に突如現れたダークホース紅海大菅田。
決勝戦の相手を決める、準決勝。
順当に行けば、やはり稲実。
エースの成宮を筆頭に、強力な打線を誇るバランスのいいチームだ。
前の成孔との試合を見てれば、嫌でも強さがわかる。
「待たせた。」
横の席を開けてくれていた御幸に一声かけ、座る。
そうして座席へ腰掛けると、御幸は溜め息混じりに言ってきた。
「なんかお前、試合後に呼ばれること多いよな。」
「言われてみれば確かに。何でだろうな。」
楊然り、真田然り。
何かと、呼ばれることが多い。
まあ、なんかの因果があるのだろう。
知らんが。
「稲実は、やはり鳴は投げないか。」
マウンドで準備する1年の赤松を見て、俺はそう聞く。
独特な軌道のカーブを武器に、登板した試合ではかなりいい投球を見せている。
やはりコントロールやストレートの強度で言うとまだまだな部分があるが、それでも有り余るカーブの質の高さ。
この試合でも菅田の打線を全く寄せつけず、5回を投げて1失点としっかりまとめあげている。
更に、打線は爆発。
昨年同様、カルロスや白河、そして山岡らを中心とした個性溢れる攻撃陣で投手を一気に捲し立てる。
初回から3得点を奪うと、5回裏には今年4番の山岡が堂々の2ランホームランを放つ。
更にこれを皮切りに、稲実打線は一気に加熱。
6回には白河のタイムリーと3番の早乙女のツーベースで更に2点。
7回は捕手の多田野が今大会2本目のホームラン、さらにはエラーも絡んで追加点を奪う。
投手陣で言えば、残りのイニングは平野。
先発から抑えまでどこでもこなせる彼は、最後の大会でもブルペンを守り、その高い安定感で相手打線に隙を与えない。
若干サイド気味のスリークォーターからテンポよく放り、スライダーとカーブを軸にしながら低めで打たせていく。
6回、7回とさらに援護を受けた平野がピシャリと抑えてゲームセット。
最終的には7回時点で9-1。
正に、王者の貫禄。
昨年の秋こそ転けたが、それでも最後の最後に仕上げてきた、最強のチーム。
わかっていたことだが、やはり彼らが上がってきたか。
カルロスに白河、山岡に成宮、あと矢部か。
それに、2年の多田野と早乙女も悪くない。
昨年同様、やはり打線も凶悪なものになっている。
何より。
(お前も、見据えているんだろう。決戦を。)
ベンチでふんぞり返る成宮。
きっと彼も同じように、俺との投げ合いを想定して今日は登板回避をしたはずだ。
「負けてねえよ、うちは。」
御幸の言葉に、俺は反応して横目で彼を見る。
勿論、その通りだ。
彼らに負けたあの日から、俺たちはもっと強くなった。
秋大で優勝し、センバツを勝ち抜き。
そして、全国一位の称号も得た。
しかしまだ、やり残したことがある。
それこそが、この稲実。
彼らに負けた昨年の夏、そのリベンジは未だ果たせていない。
「とうとう来たな、ここまで。」
「あぁ。」
3年最後の大会。
全国高校野球選手権西東京大会決勝。
奇しくも昨年と同様のカードは、目前に迫っていた。